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加齢に伴う一般的な症状・疾患に対する天然物の使用について知っておくべき5つのこと
5 Tips:Natural Products Used for Common Aging-Related Conditions
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
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英語版最終アクセス確認日:2021年2月12日
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多くの高齢者は、健康とウェルビーイング(well-being)を促進するために、補完・統合医療に頼っています。サプリメントとしてよく市販されている天然物は、安全性が懸念され、それらの使用を支持する科学的根拠(エビデンス)がないにもかかわらず、多くの高齢者に頻繁に使用されています。多くの人々は天然物は安全であると信じていますが、これらの製品は薬理学的に活性な化合物を含んでいることがあり、処方薬と相互作用するおそれや、副作用やリスクのおそれがあります。以下に挙げる加齢に伴う一般的な症状・疾患に対する天然物について科学的に知っておくべきことを確認し、天然物の摂取を検討している場合は、かかりつけの医療スタッフに相談しましょう。加齢に伴う一般的な症状・疾患に対する心身療法については、これらのヒントを必ず確認してください。
- 変形性関節症。グルコサミンとコンドロイチン硫酸を単独にまたは併用して摂取する研究の知見では、グルコサミンとコンドロイチン硫酸が変形性関節症(osteoarthritis :OA)の痛みや機能を改善することはほぼなく、あったとしても意味のある改善はみられないことを示唆しています。2012年に米国リウマチ学会により、そして2010年に米国整形外科学会により独立して公表された診療ガイドラインでは、OAのためにグルコサミンやコンドロイチンを使用しないことを推奨しています。
- 認知機能低下とアルツハイマー病。魚油やイチョウ葉を含む天然物は、記憶力を改善し頭を冴えさせるために広く販売されていますが、これらの製品を認知機能低下や認知症予防のために使用することを支持するエビデンスは不十分です。
- 睡眠障害。現時点の研究では、メラトニン(概日リズムを調節することが知られているホルモン)が、時差症候群(時差ぼけ)、睡眠相後退障害および交代制勤務睡眠障害のような一部の睡眠障害を治療するのに有用である可能性が示唆されています。米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)のガイドラインでは、夜勤労働者の日中の睡眠を促すために、メラトニンのサプリメントの使用が推奨されています。また、ガイドラインでは、時差症候群(時差ぼけ)の症状を軽減し、複数の時間帯を越えて旅行した後の睡眠を改善するためにも、メラトニンが推奨されています。
- 更年期障害の症状。ブラックコホシュのような多くの天然物は、更年期障害の症状に対する効果について研究されてきましたが、これらが有用であるというエビデンスはほとんどありません。ハーブや植物のなかには市販薬や配合薬によく含まれているものもありますが、これらの配合製品の多くは研究が行われていません。また、更年期障害の症状に対して使用される天然物は副作用を有するおそれや、ほかの植物、サプリメントおよび医薬品との相互作用する可能性もあり、この分野の研究では、有用性だけでなく安全性についても注目されていることを留意してください。
- 前立腺肥大症。複数の小規模研究では、前立腺肥大症(Benign prostatic hyperplasia:BPH)の症状の治療に対してノコギリヤシがわずかな効果を有することが示唆されていますが、高用量のノコギリヤシを評価する大規模な研究では、ノコギリヤシは前立腺肥大症に伴う尿路症状の治療についてプラセボを上回る効果を有していないことがわかりました。
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監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください
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