海外の情報
グルコサミンとコンドロイチン
Glucosamine and Chondroitin
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2014年11月
要点は?
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントについて
- 人を対象とした質の高い大規模試験から、グルコサミンとコンドロイチンの安全性および有用性に関する情報が得られています。
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの有効性について
- コンドロイチンは変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みに有効ではないことが研究結果から示唆されています。
- グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、また、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントがそれぞれ他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは不明です。
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの安全性について
- 研究により、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントは、抗凝固剤(血液希釈剤)薬であるワルファリン(Coumadin)と相互作用を起こすおそれがあることがわかっています。概して、研究ではほかの重大な副作用は示されていません。
- グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントを摂取している場合は、かかりつけの医療スタッフに連絡してください。使用しているサプリメントをかかりつけの医療スタッフが把握していれば、より良い治療が受けられます。
グルコサミンとコンドロイチンとは?
グルコサミンとコンドロイチンは、関節の衝撃を吸収する組織である軟骨の構成要素です。どちらも体内で自然に生成され、サプリメントとしても利用できます。よくみられる関節症で、関節の軟骨が破壊される変形性関節症において、このサプリメントを単体または併用した際の効果を調査する研究が行われています。
軟骨は関節の骨端にあり、衝撃を吸収する結合組織です。変形性関節症では、関節の軟骨の表面が摩耗します。それにより骨同士が擦れ、痛みを引き起こしたり腫れたりして、関節の動きが悪くなります。最も変形性関節症になりやすい体の部位は、膝、臀部、脊椎、手です。
変形性関節症に関する情報は、米国国立関節炎筋骨格皮膚疾患研究所のページ(英語サイト)をご覧ください。変形性関節症の補完療法に関する情報は、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)のファクトシート、変形性関節症と補完療法をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳]
科学的観点からみた変形性関節症に対するグルコサミンとコンドロイチン
膝と臀部
グルコサミン
変形性膝関節症に対するグルコサミンの主な研究では、相反する結果が出ています。
- 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が行った大規模研究、グルコサミン・コンドロイチン関節炎介入試験(Glucosamine/chondroitin Arthritis Intervention Trial :GAIT)では、変形性膝関節症の患者さんを対象とし、グルコサミン塩酸塩、コンドロイチン、両方のサプリメント併用、セレコキシブ(変形性関節症の痛みの処方薬)、プラセボ(不活性物質)を比較しました。ほとんどの参加者は、軽度の膝の痛みでした。
・処方薬を服用した参加者では、プラセボを服用した人と比較して、短期間(6カ月の時点)により痛みの緩和がみられました。
・全般に、サプリメントを摂取した参加者では、膝の痛みまたは機能に有意な改善はみられませんでしたが、痛みが中等度~重度でグルコサミンとコンドロイチンを併用した参加者の小規模サブグループに改善のエビデンスが認められました。
・試験の詳細については、NCCIHのウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。 - ヨーロッパで行われたいくつかの研究では、参加者がグルコサミンを摂取後に膝の感覚が良くなり、機能も改善したことを報告しています。その研究の参加者は、ヨーロッパで処方されているグルコサミン硫酸塩の製剤を1日1回高用量服用しました。
- これらの大規模でよくデザインされた研究結果がなぜ異なるのかは、わかっていません。それはおそらく異なる種類のグルコサミンを使用(NIHの研究ではグルコサミン塩酸塩に対して、ヨーロッパの研究ではグルコサミン硫酸塩)し、異なる投与法(NIHの研究では3回の低用量に対して、ヨーロッパの研究は1日1回の高用量)で、異なる研究の実施方法であった可能性、または全くの偶然であったことが考えられます。
コンドロイチン
一般的にコンドロイチンに関する研究では、変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みにコンドロイチンが有用であることは示されていません。
- 20件を上回る研究において、変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みに対しコンドロイチンの効果を検証しています。それぞれの研究の質が異なるため、結果も異なります。しかし、大規模で良質な複数の研究(「グルコサミン」の項で前述したNIH研究など)では、コンドロイチンは変形性関節症の痛みを軽減しませんでした。
関節の構造
数件の研究では、グルコサミンまたはコンドロイチンが関節の構造に利益的な効果があるかどうかを検証しました。全てではありませんが一部の研究では、コンドロイチンに有用性のエビデンスが示されましたが、改善が少なく患者さんに変化を与えるほどではありませんでした。グルコサミンが関節の構造に有益な効果があることを示すエビデンスはほとんどありません。
専門家の推奨
専門家は、グルコサミンとコンドロイチンが変形性膝関節症や変形性股関節症に有用である可能性を否定しています。米国リウマチ学会( American College of Rheumatology:ACR)は、変形性膝関節症または変形性股関節症の人に対するグルコサミンとコンドロイチンの使用を推奨していません。しかしその推奨は強いものではなく、ACRは議論の余地があることを認めています。
体の他の部位
膝や臀部以外の変形性関節症に対するグルコサミンとコンドロイチンに関する研究は、ほんの少数しか行われていません。比較的小規模の少数の研究であるため、決定的な結論が出ていません。
- 手の変形性関節症に対するコンドロイチン重度の手の変形性関節症の参加者162人を対象とした6カ月の試験では、コンドロイチンが痛みと機能を改善する可能性が示されました。
- 変形性顎関節症に対するグルコサミン45人の変形性顎関節症の人を対象とした研究では、グルコサミンを摂取した人は、イブプロフェンを服用した人と比較して、痛みが軽減したことが示されました。しかし別の研究では、59人の変形性顎関節症の患者さんを対象とし、グルコサミンを摂取した人に対する効果は、プラセボ(有効成分を含まない錠剤)を服用した人と同等でした。
- 慢性腰痛と変形性脊椎症に対するグルコサミン慢性腰痛の痛みや腰部変形性脊椎症の人250人を対象としたノルウェーの試験では、グルコサミンを摂取した参加者に対する効果は、プラセボを服用した人と比較して、6カ月の時点で同等でした。
科学的観点から見た安全性および副作用
- グルコサミン、コンドロイチン、または両方を3年間に上り摂取した大規模で良質の研究では、重篤な副作用は報告されませんでした。
- しかし、グルコサミンまたはコンドロイチンは抗凝固剤(抗凝血剤)のワルファリン(クマディン)と相互作用を有する可能性があることが明らかにされています。
- ラットを用いたある研究では、比較的高用量のグルコサミンを長期間摂取すると腎臓を損傷する可能性が示されました。動物の研究結果は、必ずしも人に当てはまりませんが、この研究により懸念が生じました。
- グルコサミンは、特に糖尿病の人やインスリン抵抗性または糖耐能に異常があるなど血糖値に問題がある人では、体の糖代謝に影響を及ぼす可能性があります。
グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントを摂取している人は、ラベル表示に従い「自然」と表示されているものが常に「安全」ではないことを認識する必要があります。
米国食品医薬品局は、サプリメントの規制を行っていますが、サプリメントの規制は、処方薬またはOTC医薬品と異なり規制が緩くなっています。
サプリメントの中には、薬剤との相互作用を有し、症状のある人または手術に臨む人に危険性をもたらす可能性があります。多くのサプリメントは、妊婦、授乳中の母親、あるいは子供を対象に検証が行われていません。
詳細については、サプリメントを賢く使う
さらに考慮しなければならないこと
- もし関節が痛んだら、かかりつけの医療スタッフに相談しましょう。関節の痛みの原因を知ることが重要です。疾患の中には関節の痛みをもたらすもの(関節リウマチなど)もあり、すぐに治療が必要です。
- ワルファリンを服用、または血糖値に問題がある人で、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントの摂取を考えている場合、または摂取している場合は、かかりつけの医師に副作用の可能性について相談しましょう。
- 妊娠中または授乳中の場合は、医薬品の服用またはグルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントを摂取する前にかかりつけの医療スタッフ相談することが特に重要です。
- かかりつけの医療スタッフにあなたが行っている療法をすべて話しましょう。そうすることでより良い組織的で安全なケアが受けられます。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。
医療関係者向け情報
関連するファクトシート
参考文献
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謝辞
NCCIHは、このサイトの情報における技術的な専門知識とレビューに対して次の人に感謝します。Daniel Clegg, M.D., University of Utah; Marc Hochberg, M.D., M.P.H., University of Maryland; Julian Leakey, Ph.D., U.S. Food and Drug Administration; Allen Sawitzke, M.D., University of Utah; and Partap Khalsa, D.C., Ph.D., and John (Jack) Killen, Jr., M.D., NCCIH.
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監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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