海外の情報
ペパーミント油
Peppermint Oil
英語版最終改訂年月(翻訳時):2016年9月
- 一般名(英名):
- peppermint oil
- 学術名:
- Mentha x piperita
■ このページの内容
はじめに
このファクトシートには、ペパーミント油に関する基本的情報(一般名、科学的根拠、起こりうる副作用と注意事項、詳しい情報の入手先)が記載されています。
ペパーミントは、2種類のミント(ウォーターミントおよびスペアミント)の自然交配種で、欧州および北米全土で生育します。ペパーミントリーフおよび精油は、ともに健康増進のため使用されています。(精油は、ペパーミントに特徴的な香気や芳香をもたらす物質を含む濃縮オイルです。)ペパーミントは食品に含まれる一般的な香料添加剤であり、ペパーミント精油は石鹸や化粧品等に心地よい香りを添加するために使用されます。
ミントは数千年前より健康増進のために使用されてきました。古代ギリシャ、ローマおよびエジプトの記録に同記載があります。しかしながら、ペパーミントは、1700年代まではっきりとほかのミントと区別されていませんでした。
現在、ペパーミントは過敏性腸症候群(IBS)、その他の消化器系疾患、風邪、頭痛およびその他の疾患のためのサプリメントとして使用されています。ペパーミント精油は、頭痛、筋肉痛、掻痒およびその他の問題のために局所的にも使用(皮膚に塗布)されます。ペパーミントリーフは、お茶、カプセル、および流エキス剤として市販されています。ペパーミント精油は、溶液、および腸溶性カプセルなどカプセル内容物として市販されています。
これまでに解明されていること
- ペパーミント精油については、主にIBSに重点を置いて、少数の研究が実施されています。
- ペパーミントリーフの研究はほとんど行われていません。
研究で明らかになったこと
- ペパーミント精油の研究は、IBSで最も広範に行われています。ペパーミント精油の腸溶性カプセル剤がIBS症状を改善する可能性があることを示す研究結果もあります。
- ペパーミント精油はキャラウェイ油と組み合わせると消化不良の症状を緩和させるとする研究もありますが、本エビデンスは予備的なものであり、試験で使われた製品は米国で入手不能です。
- ペパーミント精油は、緊張性頭痛のため局所使用されており、同症状に有用である可能性を示唆する限られたエビデンスがあります。
- ペパーミント精油が、吐き気や風邪、他の疾患に有用であるか否かを結論するに足る十分なエビデンスはありません。
- ペパーミントリーフがどのような症状に有用かどうかについての十分なエビデンスはありません。
安全性について
- ペパーミント精油は、一般的使用量を経口摂取すれば安全だとされています。ペパーミント精油の過剰摂取は、有毒となる可能性があります。
- ペパーミント精油の副作用として、アレルギー反応や胸焼けなどが考えられます。ペパーミント精油含有カプセルは一般的に、胸焼けを回避するため腸溶性カプセルです。ペパーミント精油の腸溶性カプセルを制酸剤と同時摂取した場合、コーティングの分解が早すぎる可能性があります。
- ペパーミント精油は他の精油同様、高度濃縮されています。不希釈の精油を健康増進目的で使用する場合、数滴のみを使用します。
- ペパーミント精油を皮膚に塗布する場合の副作用には、皮膚発疹および掻痒が挙げられます。オイルに含まれるメントール成分を吸うと重篤な副作用が起こる可能性があるため、乳児または幼児の顔や胸にペパーミント精油を塗布しないでください。
- ペパーミントリーフから作ったお茶には副作用の報告はありません。しかしペパーミントリーフを大量に長期使用した場合の安全性については不明です。
- あなたが行っている補完療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
医療スタッフに補完療法について話す際のポイントについては、NCCIH’s Time to Talk campaign(英語サイト)をご覧ください。
【補足】
NCCIH’s Time to Talk campaignの翻訳サイトは以下を参照してください参考文献
- Ford AC, Talley NJ, Spiegel BM, et al. Effect of fibre, antispasmodics, and peppermint oil in the treatment of irritable bowel syndrome: systematic review and meta-analysis.(英語サイト) BMJ. 2008;337:a2313.
- Kligler B, Chaudhary S. Peppermint oil. (英語サイト)American Family Physician. 2007;75(7):1027-1030.
- McKay DL, Blumberg JB. A review of the bioactivity and potential health benefits of peppermint tea (Mentha piperita L.)(英語サイト). Phytotherapy Research. 2006;20(8):619-633.
- Peppermint. In: Blumenthal M, Goldberg A, Brinckmann J, eds. Herbal Medicine: Expanded Commission E Monographs. Newton, MA: Integrative Medicine Communications; 2000:297-303.
- Peppermint. Natural Medicines Web site. Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on April 20, 2015. [Database subscription].
- Ruepert L, Quartero AO, de Wit NJ, et al. Bulking agents, antispasmodics and antidepressants for the treatment of irritable bowel syndrome. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2011;(8):CD003460 [edited 2013]. Accessed at http://www.thecochranelibrary.com(英語サイト) on April 20, 2015.
詳細情報
■ Using Dietary Supplements Wisely
nccih.nih.gov/health/supplements/wiseuse.htm(英語サイト)■ NCCIH 情報センター
国立補完統合衛生センター(NCCIH)[米国]の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト: nccih.nih.gov(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov
■ PubMed®
国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。
■ ODS(ダイエタリーサプリメント室)
国立衛生研究所(NIH)[米国]内に設置されたダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements:ODS)は、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、啓発活動を通して、国民のサプリメントの知識と理解が深まるよう努めています。出版物(例えば「サプリメント:知っておきたいこと」など)、さまざまなサプリメント成分や製品に関する個別のファクトシート(例えば「ビタミンD、マルチビタミン・ミネラルサプリメント」など)、および「PubMed Dietary Supplement Subset(PubMedで検索する際、サプリメントに関する論文を自動的に限定検索可能)」等を提供しています。
PubMed Dietary Supplement Subset(パブメッド・ダイエタリーサプリメント・サブセット)(英語サイト)
ウェブサイト: ods.od.nih.gov(英語サイト)
E-mail: ods@nih.gov
更新日:2020年3月18日
監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日
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