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イチョウ
Ginkgo
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年8月
- 一般名(英名):
- ginkgo, Ginkgo biloba, fossil tree, maidenhair tree, Japanese silver apricot, baiguo, yinhsing
- 学術名:
- Ginkgo biloba
背景
- イチョウの木は、世界でも最も古い種類の木の一つであり、中国伝統医学として長い歴史があります。王宮では、老化防止のためにイチョウの実が利用されていました。イチョウはほかにも歴史的に、喘息、気管支炎、腎臓や膀胱の障害で利用されていました。
- 現在では、イチョウ葉の抽出物(エキス)はサプリメントとして不安症、アレルギー、認知症、眼疾患、末梢動脈疾患(頭部、内臓および手足に血液を運ぶ血管内にプラークが蓄積されて、血管が細くなる)、耳鳴りなどのさまざまな症状・疾患に良いとされています。
これまでに解明されていること
- イチョウの使用において人の健康に対する効果やリスク(危険)について多くの研究がされてきました。
研究で明らかになったこと
- いかなる健康状態についてであれ、イチョウが有用であるという決定的な科学的証拠(エビデンス)は存在しません。一部の研究ではイチョウが認知症の症状をわずかに改善させることが示唆されていますが、この知見は信頼性が低いと考えられています。また、ほかの研究では相反する結果が得られています。イチョウは、認知症または認知機能低下を予防することはできず、アルツハイマー病に関連した認知症の悪化を予防することもできませんでした。これは、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が一部資金提供し、3000人以上の高齢者を対象とした長期的なイチョウの記憶への影響評価研究(the long-term Ginkgo Evaluation Memory Study)を含む研究による知見です。
- さまざまな健康上の問題に関して、イチョウの有益性を示唆するわずかなエビデンスがあるものの、全体的な決め手となるエビデンスは得られていません。評価対象の症状・疾患には、不安、糖尿病性網膜症、緑内障、末梢動脈疾患、月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)、統合失調症、めまいなどが挙げられます。
- 健康な人の記憶力向上、高血圧、耳鳴り、多発性硬化症、季節性情動障害、および心臓発作や脳卒中のリスクに対しては、イチョウは有用ではないことが、研究によって示唆されています。
安全性について
- ほとんどの人にとって、適量のイチョウ葉抽出物(エキス)を経口(口から)摂取した場合、安全であると考えられます。
- イチョウの副作用は頭痛、胃のむかつき、めまい、動悸、便秘、アレルギー性皮膚反応などです。既知の出血リスクを有する場合は、出血のリスクを高める可能性があるためイチョウの摂取には注意が必要です。
- イチョウの葉の抽出物(エキス)を与えられたげっ歯類は、2年間の研究終了時に肝臓がんおよび甲状腺がんを発症するリスクが高かったことが2013年の研究調査で明らかとなっています。この結果が人にも当てはまるかどうかは不明です。
- 研究レビューにより、イチョウには、抗凝固剤(血液希釈剤)など従来の医薬品との相互作用の可能性があることが示されています。
- 妊娠中のイチョウの経口(口から)摂取は安全でない可能性があります。出産に近い時期にイチョウを使用すると、早産や分娩時の過剰出血を引き起こす可能性があります。授乳中のイチョウ摂取の安全性についてはほとんどわかっていません。
- 生または煎ったイチョウの種子および加工していないイチョウの葉は、有害な量の毒性物質を含んでいる可能性があります。
注意事項
- 自分の健康に責任を持ちましょう。利用している補完療法のすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
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参考文献
- Asher GN, Corbett AH, Hawke RL.Common herbal dietary supplement-drug interactions.American Family Physician.2017;96(2):101-107.
- Ginkgo Natural Medicines website.Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on March 9, 2020.[Database subscription].
- Kang JM, Lin S. Ginkgo biloba and its potential role in glaucoma(英語サイト).Current Opinion in Ophthalmology.2018;29(2):116-120.
- Quidel Kramer F, Ortigoza Á.Ginkgo biloba for the treatment of tinnitus(英語サイト).Medwave.2018;18(6):e7295.
- Strømgaard K, Vogensen SB, Steet J, et al. Ginkgo In:Coates PM, Betz JM, Blackman MR, et al., eds.Encyclopedia of Dietary Supplements, 2nd ed. New York, NY:Informa Healthcare; 2010:332-338.
- Yang G, Wang Y, Sun J, et al.Ginkgo biloba for mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials(英語サイト).Current Topics in Medicinal Chemistry.2016;16(5):520-528.
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
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Website:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov
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国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed」(英語サイト)をご覧ください。
ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)■ ODS(ダイエタリーサプリメント室)、NIH(米国国立衛生研究所)
ダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)は、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、および啓蒙活動を通して、国民のサプリメントに関する知識や理解が深まるよう努めています。この情報は(「知っておきたいこと:サプリメント」など)、さまざまなサプリメント製品や具体的な成分(ビタミンDやマルチビタミン/ミネラルサプリメントなど)に関するファクトシート、PubMed Dietary Supplement Subset(PubMedでダイエタリーサプリメントに関する論文を自動検索する機能)(英語サイト)などを提供しています。
ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
Email:ods@nih.gov
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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