海外の情報
過敏性腸症候群
Irritable Bowel Syndrome
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
■ このページの内容
- 過敏性腸症候群の詳細
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英語版改訂年月(翻訳時):2015年3月要点は?
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)に対する補完療法の有効性についてわかっていることは?
IBSに対する補完療法の安全性についてわかっていることは?
- 心身療法は、IBSには安全なようです。
- IBSに対して研究されたサプリメントの中には、副作用を引き起こしたり、医薬品や他のサプリメントと相互作用したり、ラベルに記載されていない成分が含まれていたりすることがあります。
IBSとは?
IBSは大腸に影響する慢性疾患で、腹痛、けいれん、便秘、下痢などの症状が出ます。
IBSについてのさらなる情報
アメリカ人の5人に1人がIBSの症状を持っています。IBSの原因はよくわかっていませんが、ストレス、大食い、特定の食物、アルコールなどがこの疾患がある人の症状の引き金になることがあります。
IBSについてのさらなる情報は、米国国立消化器疾患情報センター(National Digestive Diseases Information Clearinghouse)のウェブサイトのIBSに関するページ(英語サイト)をご覧ください。
科学的観点から見たIBSに対する補完療法の有効性
一部の補完療法がIBSに対して有用である可能性を示すエビデンスが出てきています。しかし、その研究は限定的なため、確かなことはわかっていません。
IBSに対する心身療法
- 鍼治療
- IBSの重症度を軽減することについて、実鍼治療は擬似的鍼治療よりも優れてはいなかったと、2012年のシステマティックレビューが報告しています。
- レビュー対象の2009年の臨床試験では、IBSがある参加者230例のうち、実鍼治療または擬似的鍼治療のいずれかを受けた人のほうが、鍼治療を受けていない人よりも優れていたことがわかりました。
- 催眠療法(催眠術)。研究者たちは、腸の症状を改善することに焦点を当てた腸指向型催眠療法(gut-directed hypnotherapy:GDH)を研究しています。一部のIBSに対する研究では、催眠療法と消化器症状、不安、抑うつ、障害、生活の質の長期的な改善との間に関連性があることが判明しています。米国消化器病学会は2014年の論文で、催眠術がIBSの症状に役立つという一部エビデンスがあると述べていますが、研究は非常に不確かなものです。
催眠療法についてのさらなる情報
- IBSの成人90例を対象とした2013年の研究では、12週間に渡って10回のGDHを受けた参加者では半数以上が良くなったと感じていたのに対し、GDHを受けなかった参加者では25%でした。その効果は少なくとも15カ月間持続しました。非GDH介入グループも、ストレスなどに関連した疾患の訓練を受けた医師と支援的な話し合いを持ったセッション数は同じでした。
- 研究レビューでは、GDHを受けたIBSの小児は、標準治療を受けた小児よりも腹痛の軽減が大きいことが示唆されました。これは、子供が施術者と一緒にGDHを受けた場合、または音声録音を聴いた場合に関係なく当てはまりました。しかし、研究者は基準を満たした3件の小規模な研究しか同定していないため、この結果は信頼できない可能性があります。
- 軽度のIBS症状がある多くの小児や青少年は、医療スタッフから安心感を得るだけで、時間の経過とともに改善していきます。
- マインドフルネス瞑想トレーニング一部の研究では、マインドフルネスのトレーニングがIBSの人に有用であることを示唆していますが、確固たる結論を出すには十分なエビデンスがありません。
- 米国消化器病学会は2014年の論文で、IBSに対するマインドフルネス瞑想トレーニングを調べた少数の研究では、有意な効果は見つけなかったと述べています。しかし著者らは、研究の数が限定的なことを考えると、それが有用でないとは断言できないと指摘しています。これらの研究や他の研究を対象とした2013年のレビューでは、マインドフルネスのトレーニングはIBSに関連した痛みや生活の質を改善するが、うつ病や不安は改善しないと結論しています。改善はわずかな量でした。
マインドフルネスについてのさらなる情報
- 2011年に行われたIBSの女性75例を対象としたNCCIH支援の臨床試験(2013年のレビュー対象)によると、マインドフルネスのトレーニングは、サポートグループに参加する場合と比較して、心理的苦痛を含むIBSの症状の重症度を低下させる可能性があることが示されました。この効果は、トレーニング終了後少なくとも3カ月間続きました。
- ヨガ。2014年に行われたNCCIH支援の小規模な研究では、若い成人(18歳〜26歳)は、待機者リストの対照群と比較して、一連のヨガクラスを修了した後に全般的に体調が良くなり、疼痛や便秘、吐き気が少なくなったと報告しています。研究の2カ月間の経過観察で、体調は良いままでした。
- IBSに対する瞑想、リラクゼーションのトレーニング、リフレクソロジーへの有効性について結論を出すには、エビデンスが少なすぎます。
IBSに対するプラセボ、プラセボ効果
介入の有用性を理解するためには、厳密な研究を行い、検査されている療法を、同等ですが不活性な製品や療法(「プラセボ」)と比較することが必要です。プラセボ効果は、研究されている治療とは具体的には関連のない改善効果を説明していますが、それ以外にも「何か有用なものを飲んでいる」という人の思い込みなど、他の要因も含まれています。臨床医が患者とどのように話をするかということでも、治療とは無関係に肯定的な反応が出ることがあります。プラセボ効果は、IBS治療の研究でよく見られます。
プラセボ効果についてのさらなる情報
2008年のプラセボを用いた臨床試験では、IBSの成人262例を、擬似的鍼治療を受けるグループ、施術者による積極的な配慮を加えた擬似的鍼治療を受けるグループ、介入なしのグループに分けました。どのグループも実際の鍼治療を受けませんでした。追加の積極的な配慮を受けたグループが最も改善し、擬似的鍼治療グループは介入を受けなかったグループよりも良い結果を示しました。
通常、研究者は研究参加者にプラセボあるいは試験中の治療のどちらかを受けることを伝えますが、どちらを受けたかは研究が終わるまでわかりません。しかし、NCCIHによって一部助成を受けた2010年の研究では、研究者は、40例のIBSがある人にプラセボ投与を受けていること、そしてプラセボの有用性は認められていることを伝えました。残りの40例は何の介入も受けませんでした。両グループともに、患者と医師との対話は同程度でした。プラセボ投与を受けた人は、何の治療も受けなかった人よりも大きな改善が見られました。
IBSに対するサプリメントについて
中薬(中医学の薬草療法)やハーブの合剤が多くを占めるさまざまなサプリメントがIBSに対し調査されていますが、研究の質が低いものが多いため、結論を出すことができません。
- 中薬(中医学の薬草療法)。2008年のシステマティックレビューでは、中薬とハーブの合剤はIBSの症状の改善と関連がありましたが、3つの中薬単剤の抽出物(エキス)には有益な効果はありませんでした。
- ペパーミントオイル。ペパーミントオイルのカプセルは、腹痛や膨満感など、一般的な一部のIBSの症状の軽減にやや有用である可能性があります。IBSの症状の改善する点ではプラセボよりも優れていると、米国消化器病学会は2014年の論文で述べています。
- プロバイオティクス。一般的にプロバイオティクスは、IBSの症状、膨満感、鼓腸を改善すると、米国消化器病学会は2014年の論文で述べています。しかし、既存の研究の質は限定的であると指摘されています。研究では異なる菌種、菌株、調合製剤、用量が使用されていることもあり、IBSのための特定のプロバイオティクスについて確固たる結論を出すことはできません。
プロバイオティクスについてのさらなる情報
- 患者131例を対象とした2013年の臨床試験では、プロバイオティクスを摂取したIBS患者は、プラセボを摂取した患者よりも良くはなりませんでした。このグループは、プラセボまたはプロバイオティクスのいずれかの摂取を6カ月間受けました。
- 2012年のレビューでは、IBSの症状に対するプロバイオティクスに関する42件の研究のうち34件で、プロバイオティクスを摂取している人の方がプラセボよりも改善が大きいことが明らかになっています。しかし、プロバイオティクス摂取グループとプラセボ摂取グループ間での改善の差は、研究間で大きなばらつきがありました。
- プロバイオティクス菌の株に関する研究を対象とした2011年のレビューでは、プロバイオティクスの摂取とIBSの小児の症状の減少との関連性が明らかになっています。
さらに考慮しなければならないこと
- 実証されていない製品や療法は、IBSに対する通常の治療に代わるものとして、あるいはIBSの症状やその他の健康問題について医療スタッフへの診察を先延ばしにする理由として使用すべきではありません。
- 催眠療法や鍼治療など、施術者が提供する補完療法を検討している場合は、信頼できる情報源(あなたのIBSを治療している医療スタッフや近くの病院など)に施術者を推薦してもらうようにしてください。検討している補完療法の施術者のトレーニングと経験について調べてみましょう。補完療法の施術者を選ぶことについては、nccih.nih.gov/health/tips/selecting(英語サイト)およびnccih.nih.gov/health/howtofind.htm(英語サイト)をご覧ください。
- サプリメントは、服用・摂取している薬や他のサプリメントと相互作用を起こしたり、ラベル表示にない成分を含んだりしていることがあります。かかりつけの医療スタッフがあなたにアドバイスしてくれます。妊娠中、授乳中、あるいは子供にサプリメントを与えることを検討している人は、医療スタッフに相談しましょう。
- あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
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さらなる情報
■ NCCIH 情報センター
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
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ウェブサイト:https://www.niddk.nih.gov/health-information/digestive-diseases(英語サイト)■ PubMed®
米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(英語サイト)をご覧ください。
■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)
米国国立衛生研究所(NIH)が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。
ウェブサイト:https://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)
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謝辞
NCCIHは、技術的な専門知識とこの出版物の更新に対するレビューについて、次の人々に感謝します:Wendy Weber, N.D., Ph.D., M.P.H., John (Jack) Killen, Jr., M.D., and David Shurtleff, Ph.D., NCCIH.
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。
- 過敏性腸症候群に対する補完療法:概要
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英語版改訂年月(翻訳時):2019年5月過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)は結腸の正常な機能を妨げる慢性疾患であり、その多様性、非特異的症状、一過性、および確定診断検査がないことから研究が困難です。一部の補完療法がIBSの治療に使用できる可能性を示唆する科学的根拠(エビデンス)が出ていますが、方法論的に欠陥のある研究がほとんどです。IBSの症状に対する補完療法について評価したシステマティックレビューでは、よくデザインされた大規模試験はわずかであり、補完療法や統合医療がIBSの治療に有効かどうかを判断するには、さらなる研究が必要であると結論づけています。
- 過敏性腸症候群に対する補完療法:科学的根拠
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英語版改訂年月(翻訳時):2019年5月プロバイオティクス
一部の科学的根拠(エビデンス)では、プロバイオティクスが過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の症状を改善する可能性を示唆しています。しかし、効果は決定的に証明されたわけではなく、すべてのプロバイオティクスに同じ効果があるわけでもありません。
研究でわかったことは?
- 2018年のモノグラフ(英語サイト)では、米国消化器病学会(American College of Gastroenterology)がプロバイオティクスを数種類まとめて摂取すると、膨満感、鼓腸などのIBSの症状全般が改善すると結論付けました。しかし、それは「弱い」推奨でエビデンスの質は「低い」ものでした。
- 5,545人を登録した53件の研究を評価した2018年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、プロバイオティクスがIBSの症状全般および腹痛に有効である可能性を示しましたが、その効果について決定的な結論を導き出せませんでした。またプロバイオティクスのいずれの種、菌株、組み合わせが主に有益の傾向があるかを特定することができませんでした。
- 43件のランダム化比較試験を評価した2014年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、プロバイオティクスがIBSの症状全般、腹痛、膨満感、鼓腸のスコアに有益な効果を示しましたが、最も有益なプロバイオティクスの種、菌株については不明でした。
安全性
- 健常者におけるプロバイオティクスの副作用は、仮にあったとしても軽微なものです。しかし、健康上問題のある人(免疫系が弱っているなど)にとっては、感染症などの重篤な合併症が報告されることがあります。
- プロバイオティクスの安全性に関するほとんどの研究は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)(いわゆる乳酸菌)とビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)(いわゆるビフィズス菌)に関するもので、そのほかの菌株についてはほとんど知られていません。
催眠療法
一部の研究では、消化器症状、不安、うつ、身体的障害、健康関連の生活の質などIBSの症状に対する催眠療法の効果を示唆しています。小児において催眠療法後に疼痛関連の機能性消化器症状が、標準ケア群または待機リスト群と比較して、有意に緩和したことが報告されましたが、全般にエビデンスは限定的でした。
研究でわかったことは?
- 2018年の米国胃腸病学会のモノグラフ(英語サイト)では、「IBS患者の症状全般の改善における心理療法(治療者主導の認知行動療法、リラクゼーション法、催眠療法、さまざまな要素の心理療法)は「弱い」推奨と評価され、エビデンスの質は「非常に低い」と結論付けました。
- 疼痛関連の機能性消化器症状の小児計1,390人を登録した24件のランダム化比較試験を評価した2015年のシステマティックレビュー(英語サイト)では、標準ケア群または待機リスト群と比較して、催眠療法後に腹痛の有意な改善が認められました。
- IBS治療に対する腸管に焦点を当てた催眠療法を評価した7件のランダム化比較試験を評価した2015年のシステマティックレビュー(英語サイト)では、そのうちの6件の試験が支持療法単独と比較して、消化器症状全般の有意な減少を示しました。レビューアらは、腸管に焦点を当てた催眠療法は、IBSの患者に持続的な効果があると結論づけたが、催眠療法がIBSの患者の一次治療か、あるいは補助療法かどちらの選択になるのかを判断するのには十分なエビデンスはない。
- IBSの小児250人を登録した2017年のランダム化臨床試験(英語サイト)では、CDを使い自宅で行う自己催眠療法と、有資格者が行う個別の催眠療法の効果を比較しました。この研究では治療直後に、CD群では36.8%、個別催眠療法群では50.1%の小児が、疼痛の頻度および程度が有意に減少(50%以上)したことが認められました。1年間の追跡調査後では、両群ともにこれらの症状において同等の有意な減少を示しました。
安全性
- 腸管に焦点を当てた催眠療法は、特別な訓練を受けた有資格者の催眠療法士の元で行えば、比較的安全で小児や成人にも耐えうる療法だと考えられます。
ペパーミントオイル
ペパーミントオイルの腸溶性カプセルは、IBSでよくみられる諸症状、特に腹痛、膨満感、ガスの軽減に、短期的に中程度の効果があるというエビデンスがいくつかあります。長期的な効果は確立されていません。
研究でわかったことは?
- 2018年の米国胃腸病学会のモノグラフ(英語サイト)は、IBSの患者の全般的な症状管理にペパーミントオイルを提案しています。しかし「弱い 」推奨でエビデンスの質は「低い 」と評価しました。
- 計 726 人を登録した9 件の研究の2014年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、ペパーミントオイルが IBS の症状全般の改善と腹痛の改善に対してプラセボよりも優れていることが認められました。
安全性
- ペパーミントオイルの非腸溶性の形態は、胸焼けの症状を引き起こしたり、悪化させたりすることがありますが、それ以外の場合は、短期的に概ね安全であるようです。(補足:日本では、ペパーミントのエッセンシャルオイルの経口(口から)摂取は認められていません)
薬草療法
薬草療法がIBSの症状を改善するというエビデンスは非常に限定的で、現時点でのデータの多くは、不適切な実施方法やサンプル数の少ない研究に基づくものです。
研究でわかったことは?
- 99人を登録した2017年の二重盲検ランダム化プラセボ比較試験(英語サイト)では、魚油、ペパーミントオイル、キャラウェイ油、ビタミンB1、B9、D3の他に、クルクミノイドおよび異なるウコン種からなるエッセンシャルオイルの混合物を含んだ薬草療法(IQP-CL-101)を行った人は、プラセボと比較してIBSの症状が有意に減少したことが認められました。
- IBSの参加者7,957人を登録した75件のランダム化比較試験を評価した2011年のコクランレビュー(英語サイト)では、一部の薬草療法はIBSの症状を改善する可能性があるものの、あまり厳密ではない試験から得られた肯定的な知見は、不十分な実施方法、小さいサンプルサイズ、確定のためのデータ欠損のため、慎重に解釈されるべきであると結論付けています。
安全性
- 薬草系サプリメントは何十種類もの化合物が含まれていることがあり、すべての成分がわからないこともあります。
- 薬草の中には、医薬品と相互作用する可能性もあります。例えば、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、シトクロムP450酵素と腸内P-糖タンパク質の両方を強力に誘導します。セントジョーンズワートはシクロスポリン、抗レトロウイルス薬インジナビル、経口避妊薬、クマジン、ジゴキシン、ベンゾジアゼピンなどとの臨床的に重要な相互作用が報告されています。
- 一部の薬草には重篤な副作用を引き起こすものもあります。例えば、コンフリーやカバは肝毒性の可能性があります。
鍼治療
偽鍼(シャム鍼)対照ランダム化比較試験では、鍼治療がIBSの症状の重症度または健康関連の生活の質(Quality of Life:QOL)においてプラセボより優れていないということが明らかとなりました。中国の研究では、二種類の鎮痙薬と比較して、鍼治療はより有益であることが示されましたが、これらの効果は患者の好みや改善への期待による可能性があります。
研究でわかったことは?
- 6件のランダム化プラセボ比較試験の2014年メタアナリシス(英語サイト)では、IBSの症状に対する鍼治療の有益性が示されましたが、肯定的な効果を示したのは、6件の試験のうち1件のみでした。研究著者らは、長期的な結果の確立または鍼治療を第一選択治療として推奨するにはデータが不十分であると結論付けました。
- 1,806 人を登録した 17 件のランダム化比較試験を評価した2012年のコクランレビュー(英語サイト)では、偽鍼治療と比較して、鍼治療は症状の程度や生活の質に対する改善のエビデンスがないことが示されました。また、このレビューは中国で行われた4件の有効性比較試験を対象としており、軽微な効果をもたらすことが知られている2つの鎮痙薬(臭化ピナベリウムとマレイン酸トリメブチン)と比較して、鍼治療はIBSの症状に対し、より大きな効果をもたらすことが示されました。しかし、これらの研究における鍼治療の効果が、患者の好みまたは改善への期待によるものであるのかは不明です。
安全性
- 鍼治療による合併症はほとんど報告されていません。合併症があるとすれば、滅菌されていない鍼の使用や、不適切な方法での治療によるものです。
- 適切な治療でない場合、鍼治療は感染症、出血、気胸、中枢神経系の傷害などの重篤な有害作用を引き起こします。
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監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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