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海外の情報

線維筋痛症
Fibromyalgia

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2016年5月

要点は?

線維筋痛症に対する補完療法の有効性についてわかっていることは?

  • 線維筋痛症に対する太極拳ヨガマインドフルネス瞑想およびバイオフィードバック(行動療法)に関する一部の研究では、有望な結果が得られていますが、科学的根拠(エビデンス)があまりにも限定的なため、これらの療法が有用かどうか明確な結論は得られていません。
  • 鍼治療が線維筋痛症の痛みに有用かどうかは明らかにされていません。
  • ビタミンDのサプリメントは、このビタミンが欠乏している線維筋痛症の人の痛みを軽減する可能性があります。
  • 線維筋痛症の症状に対する経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)に関する一部の予備研究では、有望な結果が得られています。

線維筋痛症に対する補完療法の安全性についてわかっていることは?

  • ここで議論されている心身療法は、一般的に安全性に優れています。しかし、一部は、線維筋痛症の人にとって安全で快適なものにするために、適応させる必要があるかもしれません。
  • 線維筋痛症のために研究されてきた天然物の中には、副作用があったり、薬物と相互作用したりするものもあります。
  • 線維筋痛症に対するTMSの副作用として、頭痛が起こることがあります。磁石を使ったTMSなどの処置は、金属製のインプラントやペースメーカーなどの医療機器を体内に入れている人には安全とは言えないかもしれません。

線維筋痛症とは?

線維筋痛症は、痛みや圧痛、倦怠感などの症状が広範囲に及ぶ一般的な疾患です。関節炎の一形態ではありませんが、関節炎のように人の日常の活動を行う能力を妨げることがあります。推定500万人のアメリカ成人が線維筋痛症を患っています。線維筋痛症の人の80~90%は女性ですが、男性や小児もこの疾患になることがあります。

線維筋痛症についてのさらなる情報

線維筋痛症の人は、痛みや疲労以外にも、認知・記憶障害、睡眠障害、朝のこわばり、頭痛、生理痛、四肢のしびれやうずき、レストレスレッグス症候群、温度過敏症、大きな音や明るい光に過敏になるなどの症状がみられます。
ひとりの人が、2つ以上の慢性疼痛疾患を併発している場合もあります。このような症状・疾患には、慢性疲労症候群、子宮内膜症、線維筋痛症、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、側頭顎関節機能障害および外陰部痛があります。これらの疾患・症状が共通の原因によるものかどうかはわかっていません。
線維筋痛症のはっきりした原因は不明ですが、傷害、感情的苦痛または脳が痛みを知覚する方法を変更するウイルスに関連している可能性があります。線維筋痛症の診断検査はないため、医療スタッフは、患者を診察して、症状を評価し、他の疾患を除外することによって診断します。
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は 、線維筋痛症を治療するためにいくつかの医薬品を承認していますが、薬物療法は従来の内科的治療の一部に過ぎません。運動や質の良い睡眠習慣など、薬物以外の療法も症状の管理に役立ちます。定期的な運動は、線維筋痛症の最も効果的な治療法の一つであることが研究で繰り返し示されています。痛みや疲労が強すぎて激しい運動ができない線維筋痛症の人は、ウォーキングなどの穏やかな運動から始め、徐々に持久力や強度を高めていくとよいでしょう。

線維筋痛症についてのさらなる情報は、国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所(NIAMS; National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases)のウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。

科学的観点からみた線維筋痛症に対する補完療法

心身療法

鍼治療

  • 鍼治療は、施術者が経穴として知られる身体の特定の点を刺激する療法です。皮膚に刺す鍼を使って行うことが最も多いですが(手技鍼)、電流を使用するなどの他の療法(電気鍼)を使用することもあります。
  • 限られたエビデンスによると、線維筋痛症の人は、鍼灸治療を受けている人は、受けていない人(待機者リストの人など)に比べて、痛みやコリなどの症状が改善することが示されています。しかし、線維筋痛症の症状を緩和するという点において、模擬鍼よりも鍼の方が効果的であるとは示されていません。電気鍼治療は、手技の鍼治療よりも良い結果をもたらす可能性があります。
  • 鍼治療は、経験豊富な施術者が滅菌した鍼を使用して行う場合は、一般的に安全であると考えられています。鍼治療が不適切に行われると、潜在的に重篤な副作用を引き起こす可能性があります。

鍼治療についてのさらなる情報

バイオフィードバック(行動療法)

  • バイオフィードバック法は身体機能を測定し、その情報を知ることでそれらをコントロールすることを学びます。
  • バイオフィードバック、特に筋電図(electromyographic:EMG)バイオフィードバックの少数の短期研究では、人が筋肉の緊張をコントロールし減少させることを習得することで、線維筋痛症の痛みを軽減できる可能性があるかもしれないと示されています。しかし、バイオフィードバックに関する全体的なエビデンスが非常に限定的なため、線維筋痛症の症状に有用かどうか明確な結論は得られていません。
  • 線維筋痛症に対するEMGバイオフィードバックの研究では、一部の参加者は、手順がストレスであったと報告しています。他の副作用は報告されていません。

誘導イメージ療法

  • 誘導イメージ法とは、ネガティブな感情やストレスを感じる感情の代わりに、気持ちの良いイメージに焦点を当てるよう教える療法です。誘導イメージ療法は自分で指示するもの、または施術者や録音により指導するものがあります。
  • 線維筋痛症の症状に対する誘導イメージ療法の研究では、一貫性のない結果が得られています。一部の研究では、誘導イメージ療法を教わった患者は痛みや疲労などの症状が減少しましたが、他の研究では効果がありませんでした。
  • 誘導イメージ法は、リラクゼーション法と呼ばれる補完療法一つですリラクゼーション法は、健康な人には一般的に安全と考えられています。しかし、時折、不安感の増大などの不快な体験を報告する人もいます。

誘導イメージ法やその他のリラクゼーション法についてのさらなる情報

マッサージ療法

  • マッサージ療法には、施術者が身体の軟部組織を操作するさまざまな方法があります。
  • 複数の研究では、線維筋痛症に対するマッサージ療法のさまざまなタイプを評価しています。ほとんどは、マッサージがいくつかの線維筋痛症の症状に短期的な軽減をもたらすと示しています。しかし、現時点でのエビデンスはあまりにも限定的なため、決定的なものとは考えられていません。専門家は、線維筋痛症のためのマッサージ療法は痛みを感じさせないように行うことを推奨しています。最初は非常に穏やかなマッサージから始め、時間をかけて徐々に強度を上げていく必要があるかもしれません。
  • マッサージ療法は、熟練の施術者が行う場合、ほとんどリスクがないようです。

マッサージ療法についてのさらなる情報

瞑想的な運動の実践(太極拳、気功、ヨガ)

  • 中国発祥の太極拳と気功、インド発祥のヨガは、いずれも身体のポーズや動き、呼吸への集中、瞑想やリラクゼーションを組み合わせたものです。これら3つの施術・療法には共通して多くの特徴があるため、瞑想的な運動活動としてグループ化されることもあります。
  • 運動は線維筋痛症の人にとって有益であり、瞑想的な運動活動は身体活動を伴うため有用である可能性があります。また、これらの施術・療法の瞑想的な要素も役立つ可能性があります。線維筋痛症の症状に対する太極拳、気功、ヨガの個別研究では、有望な結果が得られています。しかし、その効果について明確な結論を出すには、これらの療法について十分な質の高いエビデンスがありません。
  • 瞑想的な運動活動は、資格を持ったインストラクターの指導の下で行う場合、一般的に安全性に優れています。ヨガ、太極拳、気功の研究では、副作用はほとんど報告されていなません。しかし、これらの施術・療法は、線維筋痛症の人に適したものにするために改変する必要があるかもしれません。

ヨガ太極拳、気功についてのさらなる情報

マインドフルネス瞑想

  • マインドフルネス瞑想とは、その瞬間その瞬間での体験に完全に集中する瞑想の一種です。
  • 一部の研究では、マインドフルネス瞑想のトレーニングにより、線維筋痛症の人々の痛みと生活の質が短期的に改善しました。しかし、研究数が少なく、エビデンスの質も相対的に低いため、明確な結論は得られていません。良い結果を得るためには、マインドフルネスの技術・手技を頻繁に実践することが大切かもしれません。線維筋痛症に対するマインドフルネスの2014年の研究では、マインドフルネスをより頻繁に実践した参加者の方が、症状がより軽減しました。
  • マインドフルネスや他の形式の瞑想は、一般的に健康な人にとって安全であると考えられています。しかし、なんらかの疾患がある人にとって安全で快適なものにするためには、マインドフルネスなどのやり方を改変する必要があるかもしれません。

瞑想についてのさらなる情報

ほかの心身療法

線維筋痛症に対するカイロプラクティック療法と催眠術についての研究はほとんど行われていないため、これらの療法について結論は得られていません。

線維筋痛症の治療法として、さまざまな心身療法を含む扁桃体再トレーニングと呼ばれる療法が提案されています。この療法についてはほとんど研究が行われていないため、その有効性や安全性を評価することができません。

天然物

  • ビタミンDの欠乏が線維筋痛症の症状を悪化させる可能性が示唆されています。ビタミンDが少ない線維筋痛症の女性を対象にしたある研究では、20週間のビタミンD補充で痛みの軽減がみられました。
  • 研究者は、マグネシウム値の低さが線維筋痛症に関与するどうか、またマグネシウムのサプリメントが症状を軽減するのに役立つ可能性について調査しています。
  • 線維筋痛症のために研究されている他の天然物には、大豆、S-アデノシル-L-メチオニン(SAMe)、クレアチンなどのサプリメントや、カプサイシン(唐辛子に熱さを与える物質)を含む外用剤があります。これらの製品が有用かどうかを判断するには、十分なエビデンスがありません。
  • 「ナチュラル(天然)」は必ずしも「安全」を意味するとは限りません。天然物にも副作用の可能性があり、薬物と相互作用するものもあります。ビタミンやミネラル(ビタミンDやマグネシウムなど)でも、過剰に摂取すると有害な場合があります。

ほかの補完療法

温泉療法

  • 温泉療法とは、健康目的で水道水やミネラルウォーターを使って入浴する療法で、泥パックなどの関連する施術も含まれています。線維筋痛症に対する温泉療法の研究はいくつか行われていますが、症状を緩和するかどうかについて明確な結論を出すには十分なエビデンスがありません。
  • 温泉療法は安全性に優れています。

ホメオパシー療法

  • ホメオパシーは、健康な人に似たような症状を引き起こす物質を高希釈した溶液を使うことで病気が治るという、従来とは異なる考えに基づいた医療制度です。ホメオパシーの研究では、線維筋痛症にホメオパシーが有益であるとは証明されていません。
  • 高希釈されたホメオパシー療法は一般的に安全です。しかし、ホメオパシーとラベル表示されているすべての製品が高希釈されているわけではなく、中にはかなりの量の成分が含まれている場合があり、そのため副作用を引き起こす可能性があります。

ホメオパシーについてのさらなる情報

磁気治療

  • 静的(永久的)磁石は磁気マットレスのパッド、靴の中敷き、ブレスレットなどの製品にも使用されています。静電磁石について、結論を出すには十分なエビデンスがありません。
  • 電磁石は、脳の活動に影響を与える経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)と呼ばれる治療の一種で使用されています。FDAは、片頭痛および治療抵抗性うつ病の治療用に特定のTMS装置を承認しています。線維筋痛症の症状に対するTMSの評価を行った予備的研究は少数ですが、一部では有望な結果が得られたものもあります。
  • 磁石や磁気デバイスは、金属製のインプラントやペースメーカーなどの医療機器を体内に入れている人には安全ではない可能性があります。線維筋痛症に対するTMSの一部の研究では、副作用として頭痛が報告されています。

磁石(英語サイト)についてのさらなる情報

レイキ

  • レイキは、施術者が受ける人の体の上に軽く手を置くまたは上方に手をかざし、その人自身の治癒反応を促進することを目的とした療法です。米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が助成した研究では、線維筋痛症に関連した痛みに対するレイキの使用を調査しました。この研究では、痛みや研究で測定された他のアウトカム(身体的・精神的機能、薬物の使用、医療機関への訪問など)にレイキの効果は見られませんでした。
  • レイキは一般的に安全なようです。

レイキについてのさらなる情報

NCCIHによる研究助成

NCCIHが支援した最近の研究では、線維筋痛症に対する補完・統合的介入のさまざまな可能性が研究されていますが、その中には以下のようなものがあります:

  • 線維筋痛症の治療における中国伝統医学の有効性
  • 線維筋痛症の症状に対する補助的治療としての太極拳と有酸素運動との比較
  • 線維筋痛症の人と健康な人の間でプラセボに対する脳の反応が異なるかどうか

さらに考慮しなければならないこと

関連トピック

消費者向け情報

医療関係者向け情報

関連するファクトシート

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用): 1-866-464-3615
ウェブサイト:nccih.nih.gov(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov

■ 国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所 (NIAMS; National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases)

NIAMSの使命は、関節炎、骨格筋、皮膚疾患の原因、治療、および予防に関する研究の支援、この研究を行うための基礎および臨床科学者の訓練、これらの疾患の研究の進捗に関する情報の普及です。

米国内の無料通話:1-877-22-NIAMS
ウェブサイト:https://www.niams.nih.gov(英語サイト)

■ PubMed®

国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、公表文献の情報および(ほとんどの場合)科学・医学雑誌の論文からの短い要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(PubMedで補完療法情報を探す)(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト: www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

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参考文献

その他の参考文献
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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