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腰痛
Low-Back Pain

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2020年1月

要点は?

腰痛に対する補完療法の有用性についてわかっていることは?

  • 鍼治療、筋電図バイオフィードバック、低出力レーザー治療、マインドフルネス・ストレス軽減法、漸進的筋弛緩法、脊椎マニピュレーション太極拳、およびヨガなどさまざまな心身療法が、慢性腰痛に役立つかもしれないことが示されていますが、エビデンス(科学的根拠)の質は低い、もしくは中等度です。
  • 急性腰痛(ぎっくり腰)に対して、鍼治療、マッサージ療法、脊椎マニピュレーションが役立つかもしれないことが示されていますがエビデンスの質は低いです。
  • 局所的に用いるハーブのカイエン製剤は、腰痛の緩和に役立つかもしれません。

腰痛に対する補完療法の安全性についてわかっていることは?

  • 上記の心身療法(鍼治療、筋電図バイオフィードバック、低出力レーザー治療、マッサージ療法、マインドフルネス・ストレス軽減法、漸進的筋弛緩法、脊椎マニピュレーション、太極拳、ヨガ)は、適切に行えば安全性が高いとされています。しかし、すべての人にリスク(危険)がないわけではありません。補完療法の安全性は、健康状態や特別な状況(妊娠など)に左右されるかもしれません。
  • 経口(口から)摂取や局所塗布するハーブ製品などの天然物を検討している場合は、天然物が必ずしも安全とは限らず、中には副作用があったり、医薬品と相互作用したりするかもしれないことを覚えておいてください。

腰痛に関する基礎知識

腰痛は米国をはじめ世界中で非常によく見られる問題です。約80%の成人が一生のうちに一度は腰痛を経験します。職務に関連する身体障害の一番の原因であり、欠勤や医療機関の受診の主因となっています。

腰痛の症状出現(エピソード)は、短期間であることがほとんどです。医療従事者は、これを急性腰痛(ぎっくり腰)と呼んでいます。急性腰痛は、しばしば最長4週間にわたって続く疼痛と定義されます。ほとんどの場合、急性腰痛は後遺症も残らず治ります。

4週間以上12週間未満にわたって続く腰痛は、亜急性腰痛と呼ばれます。

12週間以上続く腰痛は、慢性腰痛と呼ばれます。治療によって慢性腰痛がうまく緩和されることもありますが、治療しても疼痛が残る場合もあります。

腰痛の治療に関する診療ガイドライン

診療ガイドラインでは、医療従事者や患者がどのようなケアを行うべきかについて情報に基づいた決定ができるように支援するために、専門家グループが作成した推奨事項を提供しています。診療ガイドラインは、エビデンスのレビューと、さまざまな治療選択肢の潜在的なベネフィット(有益性)と有害性に関する評価に基づいています。ガイドラインは、新しいエビデンスが出るたび頻繁に更新されます。

2017年に米国内科学会(The American College of Physicians)は、腰痛の治療に関する診療ガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、慢性腰痛の第一選択治療として、医療従事者と患者が非薬物療法を用いることを推奨しています。また、急性腰痛に対しては、薬物療法の有無にかかわらず、非薬物療法の使用を推奨しています。複数の補完療法が、急性腰痛、慢性腰痛、もしくはその両方に対する治療選択肢として挙げられています。

科学的観点からみた腰痛に対する補完療法

心身療法

鍼治療
  • 鍼治療とは、施術者が身体の特定部位を刺激する手技で、多くの場合、皮膚に細い鍼を刺入することにより行います。
  • 2017年に報告された、腰痛に対する鍼治療について7,900例以上を対象とした49件の研究の評価では、鍼治療が急性腰痛に対してわずかなベネフィット(有益性)があり、慢性腰痛に対しては中等度のベネフィット(有益性)があることがわかりました。
  • 2018年に報告された、医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality、AHRQ)のレビューでは、治療終了から少なくとも1カ月後の慢性腰痛に対する鍼治療の影響について検証しました。鍼治療は、偽(擬似的)鍼治療や通常ケアなどと比較した場合、1~6カ月時点での疼痛や機能に対する有用性がわずかに高いことがわかりました。1件の研究でも、12カ月を上回り優れた疼痛の緩和が認められました。
  • 米国内科学会(American College of Physicians)が公表している腰痛治療に関する診療ガイドラインには、慢性腰痛に対する初期治療の選択肢として鍼治療(質が中等度のエビデンスに基づく)が、急性・亜急性の腰痛に対する治療選択肢として鍼治療(質の低いエビデンスに基づく)が挙げられています。
  • 鍼治療による重篤な合併症はまれです。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「鍼治療[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

バイオフィードバック(生体自己制御)
  • バイオフィードバックは、身体の機能を測定し、その制御を学ぶのに役立つ情報を提供する技術です。筋電図(electromyography:EMG)バイオフィードバックと呼ばれる、筋肉の緊張を測定するバイオフィードバックの一種が、腰痛に対して評価されています。
  • 2010年に報告された、64例を対象とした3件の研究のレビューでは、筋電図バイオフィードバックが慢性腰痛の短期的な緩和に役立つとする質の低いエビデンスがあります。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会(The American College of Physicians)の診療ガイドラインには、慢性腰痛に対する初期治療の選択肢として筋電図バイオフィードバックが記載されています(質の低いエビデンスに基づく)。
  • 腰痛に対する筋電図バイオフィードバックの有害作用は報告されていません。
カッビング(吸角療法)
  • カッピングは、ガラス製、セラミック製、竹製、プラスチック製などのカップを使用して、皮膚上に吸引力を生み出す施術です。
  • 2017年に報告された、腰痛に対するカッピングについて458例を対象とした6件の研究のレビューでは、通常のケアや医薬品よりもカッピングのほうが良い結果を示しましたが、それぞれの研究で使用されたカッピングの種類が異なったことから比較が難しく、また研究の中には質の低いものもあったため、研究結果で示された差が真実かどうかは不明です。
  • カッピングは、持続的な皮膚の変色、傷跡、火傷、感染症などの副作用を引き起こす可能性があります。カッピング器具は血液で汚染される可能性があるため、滅菌や消毒を怠ると、血液による感染症が患者の間で蔓延する可能性があります。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「カッピング[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

ドライニードル
  • ドライニードルは、筋肉にある痛みを生じるしこり(筋膜トリガーポイント)に細い針を直接刺入する施術です。鍼治療で使用されるのと同じ種類の鍼を使用しますが、刺入する部位の選び方が異なります。
  • 腰痛に対するドライニードルについて1,233例を対象とした16件の研究に関する評価では、役立つかもしれないことが示されました。しかし、研究の質は高くなく、明確な結論には至っていません。
  • ドライニードルによる重篤な合併症はまれです。
低出力レーザー治療
  • 低出力レーザー治療は光源を利用した療法であり、レーザー鍼治療は低出力レーザー治療の一種です。低出力レーザー治療が疼痛を緩和するかもしれない作用機序は、よくわかっていません。
  • 腰痛に対する低出力レーザー治療について1,039例を対象とした15件の研究に関するレビューでは、有益であるかもしれないことを示すエビデンスがありましたが、比較的短期間(30カ月未満)の疼痛に対してやや高出力のレーザーを照射した場合のみ有益で、鍼治療を伴わない研究でのみ示されました。
  • 2018年に報告された、AHRQによるレビューでは、治療終了から1カ月以上経過した慢性腰痛に対する治療の影響を調べたところ、低出力レーザー治療に関する研究は1件しかありませんでした。その研究では、1~6カ月後に偽(擬似的)レーザー治療と比較して、レーザー治療のほうが疼痛に対する効果がある程度高く、機能に対する効果もわずかに高いことが示されました。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、慢性腰痛に対する初期治療の選択肢として低出力レーザー治療が挙げられています(質の低いエビデンスに基づく)。
  • 米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、低出力レーザー治療器の販売を許可しています。腰痛に対する低出力レーザー治療の研究では、有害作用を示すエビデンスはみられませんでした。
マッサージ療法
  • マッサージ療法は、健康状態の管理や健康増進を目的とした、体の軟部組織に働きかける手技です。
  • 2015年に報告された、腰痛に対するマッサージについて約3,000例を対象とした25件の研究のレビューでは、疼痛を短期的に改善するかもしれないことがわかりました。エビデンスの質は低い、もしくは非常に低いものでした。
  • 2018年に報告された、AHRQによるレビューでは、治療終了から1カ月以上経過した慢性腰痛に対する治療の影響を調べたところ、1~6カ月後に偽(擬似的)マッサージや通常のケアと比較して、マッサージ療法の方が疼痛と機能に対する効果がわずかに高いことが示されました。6~12カ月後の効果に関するエビデンスはありませんでした。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、急性・亜急性の腰痛に対する治療選択肢としてマッサージが記載されています(質の低いエビデンスに基づく)。慢性腰痛に対する選択肢としては、マッサージ療法を推奨していません。
  • マッサージ療法による有害な影響のリスクは低いようです。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「マッサージ療法[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

マインドフルネス・ストレス軽減法
  • 「マインドフルネス」という言葉は、さまざまな実践を指しますが、ほとんどの定義では、今この瞬間の体験に注意や意識を向け続け、その体験に対してオープンであること、または受け入れることを意味します。マインドフルネス・ストレス軽減法(Mindfulness-based stress reduction:MBSR)は、瞑想とマインドフルネスを教える体系化されたプログラムで、日常生活にマインドフルネスを取り入れることも含まれます。
  • 2017年に報告された、腰痛に対するマインドフルネス・ストレス軽減法を評価した864例を対象とした7件の研究のレビューでは、疼痛の強さや身体機能に短期的な改善を示すエビデンスがありましたが、患者にとって意味のある改善かどうかは不明でした。
  • 2018年に報告された、AHRQによるレビューでは、少なくとも治療終了後1カ月以上経過してからのマインドフルネス・ストレス軽減法による影響を調べたところ、通常のケアと比較して1~6カ月後と6~12カ月後で、マインドフルネス・ストレス軽減法のほうが疼痛に対する効果がわずかに高いことが示されました。機能への影響に関するエビデンスはありませんでした。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、慢性腰痛の初期治療に対する選択肢としてマインドフルネス・ストレス軽減法が挙げられています(質が中等度のエビデンスに基づく)。
  • マインドフルネスに基づく介入は、通常、ほとんどの人にとって安全であると考えられています。しかし、有害な作用をシステマティックに詳しく調べた研究は少ないため、安全性について明確な声明を出すことはできません。
プログレッシブリラクゼーション(漸進的弛緩法)
  • プログレッシブリラクゼーションとは、体のさまざまな部位の筋肉群をシステマティックに緊張させたり、弛緩させたりする方法です。身体的にも精神的にも緊張感を取り除くことを目的としています。
  • 2017年に報告された、腰痛に対するプログレッシブリラクゼーションについて74例を対象とした3件の研究のレビューでは、この方法を実践した人の疼痛の強さが低下することを示す、質の低いエビデンスがあります。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、慢性腰痛の初期治療に対する選択肢としてプログレッシブリラクゼーションが挙げられています(質の低いエビデンスに基づく)。
  • プログレッシブリラクゼーションなどのリラクゼーション療法で、副作用が出ることはほとんどありません。心臓病のある人はプログレッシブリラクゼーションを行う前に今かかっている医療機関に相談してください。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「リラクゼーション療法[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

プロロセラピー
  • プロロセラピーとは、背中の靭帯に刺激性のある溶液を繰り返し注入して靭帯を強化し、腰痛を軽減させる手技です。
  • 2010年に報告された、腰痛に対するプロロセラピーについて366例を対象とした質の高い5件の研究のレビューでは、この手技が有用かどうかについて相反するエビデンスが出ています。
  • 腰痛に対するプロロセラピーの研究では、治療後に疼痛やこわばりの増強がよくみられましたが、これらの影響は短期的なものでした。
脊椎マニピュレーション
  • 脊椎マニピュレーションとは、施術者が手や器具を使って脊椎関節に一定の力を加える手技です。力の強さはさまざまですが、強さよりも関節を動かすように力を加えることが重要です。脊椎マニピュレーションは、力を加えない脊椎モビライゼーションとは異なるものです。
  • 2017年に報告された、急性腰痛に対する脊椎マニピュレーションについて1,699例を対象とした15件の研究のレビューでは、この治療法が最大6週間の時点までにわずかに疼痛を改善することを示す、質が中等度のエビデンスが示されています。このレビューでは、12件の研究(1,381例)で脊椎マニピュレーションが機能を改善することが示されました(エビデンスの質は中等度)。
  • 2018年に報告された、1,176例を対象とした9件の研究の統合解析では、マニピュレーションやモビライゼーションが慢性腰痛の疼痛の軽減や機能改善に有効な可能性があることを示す、質が中等度のエビデンスが示されています。マニピュレーションは、モビライゼーションよりも大きな効果をもたらすと考えられています。
  • 2018年に報告された、AHRQによるレビューでは、治療終了から1カ月以上経過した慢性腰痛に対する治療の影響を調べたところ、偽(擬似的)マニピュレーションや他の治療法と比較して、脊椎マニピュレーションでは1~6カ月後と6~12カ月後の機能および6~12カ月後の疼痛に対する効果がわずかに高いことが示されました。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、急性・亜急性の腰痛の治療選択肢として脊椎マニピュレーションが挙げられており(エビデンスの質は低い)、慢性腰痛の初期治療の選択肢としても挙げられています(エビデンスの質は低い)。
  • 脊椎マニピュレーション後の軽度で一時的な副作用として、マニピュレーション部位の局所的な不快感や疼痛の増大がよく見られます。腰にマニピュレーションを受けた患者で重篤な副作用が発生した例がありますが、実際にその治療が原因であるかどうかは不明です。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「脊椎マニピュレーション[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

太極拳
  • 太極拳は何世紀も続く心身鍛錬、特定の姿勢や穏やかな動きを精神集中、呼吸、リラックスと組み合わせています。
  • 2016年に報告された、腰痛に対する太極拳について385例を対象とした3件の研究のレビューでは、いずれの研究でも太極拳を10週間以上継続すると有用であることがわかりました。レビューには含まれていない別の2件の研究では、太極拳は少なくとも腰痛に対する他の治療法と同程度に有用であり、無治療よりも優れていました。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、慢性腰痛の初期治療に対する選択肢として太極拳が挙げられています(質の低いエビデンスに基づく)。
  • 太極拳は一般的に安全とされています。軽い鈍痛や疼痛が生じることもあるかもしれませんが、深刻な怪我を引き起こすことはまずありません。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「太極拳[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

経皮的電気神経刺激
(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)
  • 経皮的電気神経刺激では、疼痛を感じる部分の皮膚に電極が付いた電池式の装置を装着して行います。この装置は、疼痛の知覚を修正するかもしれないある電気的刺激を発生させます。
  • 2018年に報告された、腰痛や首の痛みに対する経皮的電気神経刺激または干渉波電流刺激と呼ばれる関連技術について、404例を対象とした9件の研究のレビューでは、これらの施術が有用であるかどうかについて結論は得られませんでした。
  • 経皮的電気神経刺激の副作用として、電極を貼る部位の皮膚に炎症や発疹を生じることがあります。経皮的電気神経刺激を行う前に、安全かどうか、今かかっている医療機関に相談してください。妊娠中の女性、てんかんなど特定の健康上の問題がある人、ペースメーカーなど植え込み型医療機器を使用している人は、経皮的電気神経刺激装置を使用しないでください。

ヨガ
  • 米国で行われているヨガでは、一般的に身体の姿勢、呼吸法、瞑想を重視しています。
  • 2017年に報告された、腰痛に対するヨガについて1,080例を対象とした12件の研究のレビューでは、運動を伴わない介入と比較した場合、ヨガは3カ月後と6カ月後の腰に関連する機能に小から中等度の改善をもたらし、疼痛に対する有益性もわずかに高いかもしれないと結論付けました。腰痛や機能に対する効果について、ヨガと運動に違いがあるかどうかは不明でした。
  • 2018年に報告された、AHRQによるレビューでは、治療終了から1カ月以上経過した慢性腰痛に対する治療の影響を調べたところ、対照群(ヨガプログラムの待機リストに載っている人など)と比較して、ヨガ群では1~6カ月と6~12カ月の時点で、疼痛に対する効果が中等度に大きく、機能に対する効果もがわずかに高いことがわかりました。
  • 腰痛治療に関する米国内科学会の診療ガイドラインには、慢性腰痛の初期治療に対する選択肢としてヨガが挙げられています(質の低いエビデンスに基づく)。
  • ヨガは、資格を持ったインストラクターの指導のもとで適切に行えば、健康な人には一般的に安全とされています。しかし、他の運動と同様に、怪我をすることもあります。健康上のある人、高齢者、妊娠中の女性は、いくつかのヨガのポーズや実践を控えたり修正したりしなければならないかもしれません。

さらなる情報については、NCCIHのウェブサイト「ヨガ[英語サイト]」(eJIM内)をご覧ください。

天然物

ハーブ製品
  • 経口(口から)摂取または局所使用(皮膚に塗布)するさまざまなハーブ製品が、腰痛に対して研究されています。局所使用するカイエン製剤が、疼痛を軽減するというエビデンスがあります。有益であるかもしれない他のハーブ製品には、経口摂取するデビルズクローやヤナギの樹皮、局所使用されるコンフリー、ブラジル産アルニカ、ラベンダーオイルなどがあります。
  • ハーブ製品は、副作用を引き起こしたり医薬品と相互作用したりするかもしれないことを認識しておくことが重要です。腰痛を緩和する目的でハーブ製品を検討中、もしくは使用中の人は、安全性について今かかっている医療機関※に相談してください。
ビタミンD (eJIM内:一般向け医療関係者向け)
  • 腰痛のある人とない人の血中ビタミンD濃度を比較した研究では、概して腰痛のある人はビタミンが不足しがちであることがわかっています。この傾向は60歳未満の人や、女性で顕著にみられました。しかし、2018年に報告された、ビタミンDの補給について747例を対象とした8件の研究のレビューでは、腰痛の改善に対するビタミンDが有用であるかについては示されませんでした。
  • ビタミンDの過剰摂取は有害となる可能性があります。成人のビタミンD摂取量の推奨上限は4,000IU/日です。

NCCIHによる研究助成

国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)では他の機関と協同で、軍人や退役軍人の医療制度における疼痛の管理を目的とした、非薬物療法の実施に関する11件の大規模研究に資金を提供しています。これらの研究の一部は、特に腰痛に焦点を当てています。

NCCIHは、米国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)によるHEAL(Helping to End Addiction Long-term SM)イニシアティブに参加しています。HEALは、オピオイド依存症を断ち切ることを支援する長期的な取り組みで、オピオイドに関連した公衆衛生の危機に対処するための新しい方法を見出すことを目指しています。HEALには、腰痛に対するより良い治療法の必要性に取り組むNIHの腰痛研究コンソーシアム(NIH BACPAC)やオピオイド処方を減らすための疼痛の管理に関する実践的・実装研究(Pragmatic and Implementation Studies for the Management of Pain to Reduce Opioid Prescribing:PRISM)プログラムがあり、高齢者の慢性腰痛に対する鍼治療の研究など複数の研究に資金を提供する予定となっています。

他にもNCCIHが資金提供する研究では、次のような腰痛に対するさまざまな補完療法を扱っています。

  • 腰痛に対するマインドフルネスに基づくダンス/運動療法
  • 高齢者の慢性腰痛に対する太極拳
  • 慢性腰痛に対する心理社会的治療の機序

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレコム・リレー・サービス(Telecommunications relay service:TRS)7-1-1
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/[英語サイト]
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ 科学を知ろう

NCCIHと米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、科学研究の基礎と用語を理解し、自分の健康について十分な情報を得た上で意思決定できるようにするためのツールを提供しています。科学を知ろうは、インタラクティブなモジュール、クイズ、ビデオなどのさまざまな教材や、消費者が健康情報を理解できるように設計された連邦政府のリソースから有益なコンテンツへのリンクを提供しています。

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

腰痛に関する情報
ウェブサイト: https://www.medlineplus.gov/[英語サイト]

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed[英語サイト]をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/[英語サイト]

謝辞

NCCIHは、本稿の執筆や見直しに貢献したNCCIHのDavid Shurtleff博士に謝意を表します。

このサイトの情報は著作権で保護されておらず公開されています。複製も奨励されています。

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関※の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関※に相談することをお勧めします。

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)この資料に記載されている特定の製品、サービス、施術・療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

関連トピック

消費者向け

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研究結果

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参考文献

その他の参考文献

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更新日:2024年8月9日

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

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