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セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)
St. John's Wort
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2022年12月1日
- 一般名(英名):
- St. John’s wort, hypericum, Klamath weed, goatweed
- 学術名:
- Hypericum perforatum
背景
- セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ、St. John's Wort)は、黄色い花を咲かせる植物で、古くは古代ギリシャ時代からヨーロッパの伝統医学に使用されてきました。セントジョーンズワートという名前は、6月下旬の洗礼者ヨハネの祝日の頃に花が咲くことから、洗礼者ヨハネ(St. John)にちなんでいるようです。
- 歴史的には、セントジョーンズワートは、腎臓や肺の病気、不眠症、うつ病など、さまざまな症状・症状に用いられ、傷の治癒を助けるとされてきました。
- 現在では、うつ病、更年期の症状、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder :ADHD)、身体症状症(身体症状に対して極端で誇張された不安を感じる状態)、強迫性障害などさまざまな症状・疾患に対してプロモーション(宣伝・販売促進)されています。セントジョーンズワートの局所使用(皮膚への塗布)は、外傷、打撲、筋肉痛などのさまざまな皮膚症状に使用されています。
これまでに解明されていること
研究で明らかになったこと
- セントジョーンズワートは、軽度および中等度のうつ病に対して、プラセボ(不活性物質)よりも有用であり、標準的な抗うつ薬と同等の有用であるようです。ただし、重度のうつ病や12週間を超えるような長期間の効果については、この効果が当てはまるかどうかは明らかにされていません。
- セントジョーンズワートは、うつ病以外の症状についても研究されています。過敏性腸症候群、慢性C型肝炎ウイルス(chronic hepatitis C virus:HCV)感染症、HIV感染症、社会不安障害などの症状・疾患については、現在のエビデンス(科学的根拠)ではセントジョーンズワートは有用でないことが示唆されています。
- セントジョーンズワートは、更年期の症状、創傷治癒、身体症状症に有用である可能性がありますが、確証を得るためのエビデンスは不十分です。
- セントジョーンズワートが禁煙や記憶力改善に有用であるか、あるいは不安症、ADHD、季節性情動障害など多くの症状・疾患に有用であるかを示す信頼できるエビデンスは不十分です。
安全性について
- 研究では、セントジョーンズワートを12週間まで経口摂取しても安全であると考えられています。しかし、セントジョーンズワートは多くの薬と相互作用するため、多くの人、特に従来の薬を服用している人にとっては安全ではない可能性があります。
- セントジョーンズワートは、以下のような非常に重要なものを含む多くの医薬品の効果を弱める可能性があります。
- 抗うつ剤
- 経口避妊薬(避妊用ピル)
- シクロスポリン (Cyclosporine)(移植臓器に対する身体の拒絶反応を防ぐ)
- ジゴキシン (Digoxin)、イバブラジン (Ivabradine)などの一部の心臓病治療薬
- インジナビル(Indinavir)やネビラピン(Nevirapine)などの一部のHIV感染症治療薬
- イリノテカン(Irinotecan)やイマチニブ(Imatinib)などの一部の抗がん剤
- ワルファリン(Warfarin)および類縁の抗凝固剤(抗凝血剤)
- シンバスタチン(Simvastatin)などの特定のスタチン系薬剤
- 神経細胞で生成される物質であるセロトニンに影響を与える特定の抗うつ剤などとセントジョーンズワートを併用すると、セロトニンに関連した副作用が増加し、重篤になる恐れがあります。
- セントジョーンズワートは、特に大量に摂取した場合、日光過敏症を引き起こす可能性があります。その他の副作用としては、不眠、不安、口渇(ドライマウス)、めまい、胃腸症状、倦怠感、頭痛、性機能不全などが考えられます。
- セントジョーンズワートを局所的に使用した場合の安全性については、信頼できる情報が不十分です。日光暴露による重篤な皮膚反応を引き起こす可能性があります。
- 妊娠中または授乳中のセントジョーンズワート摂取は安全ではない可能性があります。動物実験で先天異常を引き起こすことが確認されています。セントジョーンズワートを摂取した母親の母乳育児中の乳児は、疝痛、眠気、ぐずり泣きを起こす可能性があります。
注意事項
- うつ病は深刻な病気である可能性があります。自身や家族がうつ病の可能性がある場合は、医療機関に相談しましょう。
- 自分の健康を守るために、自分が行っている補完療法について今かかっている医療機関※に相談しましょう。そうすることで、十分な情報を得た上で意思決定をすることができます。あなたが利用している補完療法を今かかっている医療機関に伝えることは重要ですが、特にセントジョーンズワートは非常に多くの薬と相互作用するので重要になります。セントジョーンズワートとの相互作用により、命を救う薬の効果が弱まったり、危険な副作用が出たりすることがあります。
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
さらなる情報
関連トピック
医療関係者向け
- セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ) - Randomized Controlled Trials(PubMed®) [英語サイト]
- セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ) - Systematic Reviews/Reviews/Meta-analyses(PubMed®) [英語サイト]
- うつ病に対する補完療法
関連するファクトシート
参考文献
- Apaydin EA, Maher AR, Shanman R, et al. A systematic review of St. John’s wort for major depressive disorder(英語サイト). Systematic Reviews. 2016;5(1):148.
- Cott JM. St. John’s wort. In: Coates PM, Betz JM, Blackman MR, et al., eds. Encyclopedia of Dietary Supplements. 2nd ed. New York, NY: Informa Healthcare; 2010:727-737.
- Gurley BJ, Fifer EK, Gardner Z. Pharmacokinetic herb-drug interactions (part 2): drug interactions involving popular botanical dietary supplements and their clinical relevance(英語サイト). Planta Medica. 2012;78(13):1490-1514.
- Ng QX, Venkatanarayanan N, Ho CYX. Clinical use of Hypericum perforatum (St John’s wort) in depression: A meta-analysis(英語サイト). Journal of Affective Disorders. 2017;210:211-221.
- Qaseem A, Barry MJ, Kansagara D. Nonpharmacologic versus pharmacologic treatment of adult patients with major depressive disorder: a clinical practice guideline from the American College of Physicians(英語サイト). Annals of Internal Medicine. 2016;164:350-359.
- Soleymani S, Bahramsoltani R, Rahimi R, et al. Clinical risks of St John's wort (Hypericum perforatum) co-administration(英語サイト). Expert Opinion on Drug Metabolism & Toxicology. 2017;13(10):1047-1062.
- St. John’s wort. In: Blumenthal M, Goldberg A, Brinckmann J, eds. Herbal Medicine: Expanded Commission E Monographs. Newton, MA: Integrative Medicine Communications; 2000:359-366.
- St. John’s wort. Natural Medicines website. Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on May 10, 2020. [Database subscription].
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
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■ PubMed®
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■ 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements:ODS)
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ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:ods@nih.gov(メール送信用リンク)
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更新日:2023年3月7日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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