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インフォグラフィックでわかる統合医療

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睡眠障害
Sleep Disorders

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2022年11月

要点は?

睡眠障害に対する補完療法の有用性についてわかっていることは?

  • リラクゼーション法は、不眠症に有用である可能性があります。
  • メラトニンのサプリメントは、交代勤務や時差ぼけ(時差症候群)による睡眠障害に有用であるかもしれません。メラトニンは、不眠症の人にも有用であるかもしれませんが、その有用性は低いです。
  • その他の補完療法については、エビデンス(科学的根拠)が一貫していないか、非常に限定的であるため、睡眠障害に有用であるかどうかの結論を出すことはできません。

睡眠障害に対する補完療法の安全性についてわかっていることは?

  • リラクゼーション法は一般的に安全と考えられています。
  • メラトニンは、短期間の使用では比較的安全であると思われますが、長期的な安全性は確立されていません。
  • カバ (kava)製品(重篤な肝障害との関連が指摘されている)および L-トリプトファンサプリメント (好酸球増加筋痛症候群という重篤となり得る疾患に関連するかもしれない)には、安全性に関する重大な懸念があります。
  • 睡眠の問題に対して補完療法を使用している場合は、今かかっている医療機関※に伝えましょう。使用している補完療法を伝えることによって、より良いケアが可能となります。

睡眠障害とは、そしてその重要性は?

睡眠障害は80種類以上あると言われています。このファクトシートでは、不眠症(寝つきが悪い、眠りが浅い)に焦点を当てます。不眠症は、最も一般的な睡眠障害の一つです。

慢性的かつ長期的な睡眠障害は、毎年何百万人もの米国人に影響を及ぼしています。これらの障害とそれが引き起こす睡眠不足は、仕事、運転、社会活動、生活の質全体に支障をきたし、健康に深刻な影響を与える可能性があります。睡眠障害は、毎年推定160億ドルの医療費に加え、欠勤や生産性の低下などによる間接的なコストの原因となります。

さらなる情報については、米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute:NHLBI)のウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。

睡眠障害なのか、睡眠不足なのか?

日中に疲れを感じる人々のうち、本当の意味で睡眠障害を抱えている人もいますが、睡眠時間を十分に確保できていないことが現実の問題である人もいます。成人が十分に身体を休めるためには、毎晩少なくとも7〜8時間の睡眠が必要ですが、成人の夜間睡眠時間は平均7時間未満です。

睡眠は、食べること、飲むこと、呼吸することと同じように、人間の基本的な欲求であり、良好な健康状態とウェルビーイング(well-being)のために不可欠です。睡眠時間を削ることにより、思考や反応速度が低下し、イライラしやすくなり、怪我のリスクも高まります。さらに、感染症に対する抵抗力を低下させ、肥満のリスクを高め、心疾患のリスク(危険)を増加させるかもしれません。健康的な睡眠や睡眠不足の影響のさらなる情報については、NHLBIのウェブサイト「Your Guide to Healthy Sleep(健康的な睡眠へのガイド)」(英語サイト)および「What Are Sleep Deprivation and Deficiency?(睡眠不足と睡眠欠乏とは?)」(英語サイト)をご覧ください。

科学的観点から見た補完療法と不眠症

補完療法は、主要な療法の介入(療法の利用方法や提供方法)によって次のように分類することができます。

栄養学的アプローチには、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)がこれまで天然物に分類していたものが含まれ、心理的・身体的アプローチには、これまで心身療法と呼ばれていたものが含まれます。

不眠症に対する補完療法として、リラクゼーション法などの研究があり、有望な結果が得られているものもあります。しかし、ほとんどの製品や療法について、有用性を示すエビデンスはまだ限られており、一部については安全性への懸念も指摘されています。

心理的・身体的アプローチ

リラクゼーション法が 慢性不眠症の治療に有用である可能性を示すエビデンスがあります。

  • 漸進的弛緩法は 、不眠症や夜間不安症に有用であるかもしれません。
  • 音楽を用いたリラクゼーション法は 、睡眠に問題がある人の睡眠の質の改善に中等度の有用性があるかもしれませんが、研究数はわずかです。
  • さまざまなリラクゼーション法と認知行動療法の要素(睡眠制限や刺激制御など)を組み合わせることで、良い結果が得られています。
  • 就寝前のリラクゼーション法は、睡眠習慣を改善する方法の一部として、他の手段、例えば、一貫した睡眠スケジュールを維持すること、就寝間際のカフェイン・アルコール・胃にもたれる食事・激しい運動を避けること、静かで涼しく暗い部屋で眠ることなどと合わせることがよいと考えられます。
  • リラクゼーション法は一般的に安全です。しかし、重篤な身体的・精神的疾患がある人は、まれに副作用が報告されています。重篤な健康上の基礎疾患がある人は、リラクゼーション法を行う前に、今かかっている医療機関※に相談しましょう。
  • 予備的研究では、瞑想の一種である マインドフルネス・ストレス軽減法 が、不眠症の少人数グループにおいて処方薬と同等の有用性がありました。
  • 他の複数の研究では、マインドフルネス・ストレス軽減法が睡眠を改善することが報告されていますが、これらの研究の参加者らは、がんなど他の健康問題を抱えていました。
  • 閉経後の女性や変形性関節症の女性を対象とした予備的研究では、 ヨガが不眠症に有用であるかもしれないことが示唆されています。
  • 不眠症を治療する施術者の中には、 催眠療法が患者の認知行動療法やリラクゼーション法の有用性を高めたという報告もありましたが、不眠症に対する催眠療法の使用に関する厳密な研究はほとんど行われていません。
  • 2012年に報告された、マッサージ療法に関する1件の小規模な研究では、閉経後の女性の不眠症に有望な結果が示されました。しかし、1件の研究に基づいて結論を出すことはできません。
  • 不眠症に対する鍼治療を評価した研究のほとんどは、科学的な質が低いものでした。現在のところ、不眠症に対する鍼治療の有用性を示す厳密といえるエビデンスはありません。

栄養学的アプローチ

メラトニンおよび関連するダイエタリーサプリメント

  • メラトニンは 、時差ぼけや交代勤務に関連する睡眠障害を改善する可能性かもしれません。
  • 2013年に報告された、19件の研究結果に対する評価では、メラトニンによって不眠症の人は早く、長く、そしてよく眠れるようになる睡眠に問題を抱える小児におけるメラトニンの研究では、一かもしれませんが、メラトニンの有用性は不眠症の他の治療法と比べるとわずかであると結論づけられました。
    • 睡眠に問題を抱える小児におけるメラトニンの研究では、一般的に健康な小児でも、自閉症や注意欠如・多動症などの疾患を持つ小児でも、メラトニンが有用であるかもしれないことが示唆されています。しかし、研究の数も参加小児の数も少なく、どの研究もメラトニンを短期間でしか検証していません。
    • メラトニンのサプリメントは、短期間の使用であれば比較的安全なようですが、ある研究では、メラトニンの使用が高齢者(そのほとんどが認知症)の不機嫌と関連していることが明らかになりました。
    • メラトニンのサプリメントに関する長期的な安全性は確立されていません。
  • 体内でメラトニンに変化する物質であるL-トリプトファンや 5-ヒドロキシトリプトファン (5-HTP)を含むダイエタリーサプリメントが睡眠補助薬として研究されています。
    • 不眠症治療としてのL-トリプトファンのサプリメントに関する研究では、一貫した結果が得られておらず、5-HTPのサプリメントに関する不眠症に対する有用性も確立されていません。
    • L-トリプトファンのサプリメントの使用は、激しい筋肉痛を含む複数の症状を持つ複合的で致命的な疾患である好酸球増加性筋痛症候群(eosinophilia-myalgia syndrome :EMS)と関連しているかもしれません。L-トリプトファンのサプリメントに関連するEMSのリスク(危険)が、L-トリプトファン製剤中の不純物によるものか、L-トリプトファンそのものによるものかは不明です。

ハーブ

  • カモミールは 伝統的に不眠症に使用され、多くはお茶として飲まれていますが、有用性を示す臨床試験の決定的なエビデンスはありません。特にブタクサやその関連植物にアレルギーのある人は、カモミールにアレルギー反応を起こすかもしれません。
  • カバ(kava)には鎮静作用があると言われていますが、不眠症に対するこのハーブの有用性については、ほとんど研究されていません。さらに重要なことは、 カバのサプリメントが重篤な肝障害を引き起こすリスク(危険)があることです。
  • バレリアン(セイヨウカノコソウ、鎮静作用があると言われるハーブの一つ)の臨床試験の結果は一貫しておらず、不眠症に対する価値は実証されていません。バレリアンによる副作用の報告はほとんどありませんが、このハーブを長期間使用しても安全であるかどうかは不明です。
  • 「睡眠改善用」ダイエタリーサプリメントの中には、バレリアンにホップ、レモンバーム、パッションフラワー、 カバなどのハーブや、メラトニン、5-HTPなどの成分を配合したものがあります。これらの製剤については、人を対象とした研究によるエビデンスはほとんどありません。

さらなる情報については、「サプリメントおよびハーブ」をご覧ください。

その他の補完療法

  • アロマセラピーは、植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)を使用する治療法です。不眠症の治療に対するアロマセラピーの有用性については、厳密な研究がほとんど行われていないため明らかにされていません。
  • 2010年に報告されたシステマティックレビューによれば、現時点でのエビデンスでは不眠症に対する ホメオパシー薬の有意な影響は証明されていないと結論づけられています。

睡眠障害に関するNCCIHの研究

NCCIHは、睡眠障害に対する補完療法に関する研究を助成しています。
最近のプロジェクトには、以下のような研究があります。

  • マインドフルネス瞑想トレーニングが睡眠の量と質に与えうる影響
  • アルツハイマー病患者の睡眠障害に及ぼす青白い光の影響
  • 鍼治療が不眠症に有用であるかどうかの可能性
  • 不眠症の治療において、2種類のマインドフルネス療法と行動療法との比較
睡眠時無呼吸症候群である可能性は?

大きないびきをかいていませんか?あなたのベッドパートナー(一緒に寝る人)から、夜中に息が止まったりいびきをしたりすると言われませんか?日中、眠気をこらえていませんか?

これらの症状が一つでもあれば、今かかっている医療機関※に相談しましょう。睡眠時無呼吸症候群(呼吸が止まってしまうことで睡眠が妨げられる病気)かもしれません。さらなる情報については、「NHLBI ウェブサイト」(英語サイト)をご覧ください。

睡眠障害に対する補完療法を検討している場合

  • 今かかっている医療機関※に相談しましょう。あなたが検討している補完療法を伝え、質問があれば何でも聞いてください。睡眠障害は、より深刻な症状・疾患の徴候である可能性があり、処方薬や市販薬の中には睡眠障害を助長するものがあるため、補完療法の製品や療法を試す前に、睡眠に関する症状について今かかっている医療機関※に相談することが重要です。
  • 処方薬、市販薬、ダイエタリーサプリメント、ホメオパシー療法など、あらゆる睡眠関連製品の使用には注意が必要です。副作用の可能性、長期間の使用や製品の組み合わせによるリスク(危険)について確認しましょう。
  • 「ナチュラル(天然)」が必ずしも「安全」を意味しないことも覚えておきましょう。例えば、カバ製品は肝臓に深刻な害を及ぼす可能性があります。また、製造業者が使用する「規格化(標準化)」(または「検証済」、「認証済」)といった文言は、製品の品質や安定性を必ずしも保証するものとは限りません。ダイエタリーサプリメントは、正しく使用しないと健康被害を引き起こす可能性があります。今かかっている医療機関※で睡眠障害についてのアドバイスを受けることができます。
  • 妊娠中、授乳中の場合、または子供にダイエタリーサプリメントを与えることを検討している場合、あなた(またはあなたの子供)が今かかっている医療機関※に相談することが特に重要です。
  • 施術者が提供する補完療法を検討している場合は、サービスが保険適用対象であるかを保険会社に確認し、信頼できるところ(今かかっている医療機関※や近くの病院、医科大学など)で施術者を推薦してもらいましょう。
  • あなたが行っている補完療法について今かかっている医療機関※に相談しましょう。あなたが健康管理のために行っていることをすべて話しましょう。そうすることで連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

関連するファクトシート

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用): 1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ Know the Science(科学を知ろう):

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)と米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、科学研究の基礎と用語を理解し、自分の健康について十分な情報を得た上で意思決定できるようにするためのツールを提供しています。「Know the Science(科学を知ろう)(英語サイト)」(eJIM内)は、インタラクティブなモジュール、クイズ、ビデオなどのさまざまな教材や、消費者が健康情報を理解できるように設計された連邦政府のリソースから有益なコンテンツへのリンクを提供しています。

Explaining How Research Works(研究のしくみを知る)(英語サイト) (NIH)
科学を知ろう:科学雑誌の論文を理解する方法
Understanding Clinical Studies(臨床試験を理解する)(英語サイト)(NIH)

■ 米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute:NHLBI)

NHLBI健康情報センターは、心臓、肺、血液の病気と睡眠障害に関する情報を医療従事者、患者、一般市民に提供し、出版物の注文を受け付けています。

P.O.Box 30105
Bethesda, MD 20824-0105
国立睡眠障害研究センター(National Center on Sleep Disorders Research)
米国内の無料通話:1-877-NHLBI4U (1-877-645-2448)
ウェブサイト: https://www.nhlbi.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:nhlbiinfo@nhlbi.nih.gov(メール送信用リンク)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

Information on sleep disorders(睡眠障害に関する情報)(英語サイト)
ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「補完・統合医療に関する情報をPubMed® で検索する方法」をご覧ください。

ウェブサイト: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

さらなる情報

その他の参考文献

謝辞

NCCIHは、この出版物の2014年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。
Ronald Glick, M.D., University of Pittsburgh; Nalaka Gooneratne, M.D., University of Pennsylvania; Michael Twery, Ph.D., National Heart, Lung, and Blood Institute; and D. Lee Alekel, Ph.D., and John (Jack) Killen, Jr., M.D., NCCIH
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このサイトの情報は著作権で保護されておらず公開されています。複製も奨励されています。

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関※の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関※に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2023年3月7日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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