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インフォグラフィックでわかる統合医療

海外の情報

喘息
Asthma

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2013年4月

はじめに

喘息はあらゆる年代の人がかかる慢性の肺疾患です。喘鳴や咳、息切れ、胸部の締めつけ感を引き起こします。喘息が治癒する治療法はありませんが、喘息のあるほとんどの人は薬と行動の変化で疾患を管理することができます。

研究者はまた、喘息を軽減するためのさまざまな補完療法も研究しています。このファクトシートでは、喘息に関する基本的な情報、喘息に対する補完療法の有効性と安全性に関する科学的研究をまとめ、追加の情報源を提示しています。

キーポイント

  • 喘息の症状を管理するためには、従来の内科的治療が非常に有効です。喘息の総合的な内科的治療計画については、かかりつけの医療スタッフに相談してください。
  • 喘息の緩和のために補完療法の使用を支持する十分な科学的根拠(エビデンス)はありません。

喘息について

喘息では、肺に空気を出し入れする気道が炎症を起こし、その結果狭くなります。気道周辺の筋肉が締め付けられ、気道の細胞が通常よりも多くの粘液を分泌するようになります。そのため、肺に空気が出入りしにくくなり、喘鳴や息切れなどの症状が出てきます。
アメリカでは2400万人を超える人々が喘息と診断されており、その中には約700万人の小児が含まれています。なぜ喘息を発症する人がいるのかはわかっていませんが、家系的に発症する傾向があり、特に小児の間で喘息を発症する確率が高くなっているようです。
従来の喘息治療は、発作を予防し、発作が起きてから症状を緩和することに重点が置かれています。予防法としては、「喘息の誘因」(症状を引き起こしたり悪化させたりするもの)を避けたり、症状を予防するために毎日薬を服用することが考えられます。
喘息の発作が進行すると、気道周辺の筋肉を弛緩させ、気道を開いて空気が流れるようにするために、速効性のある薬を使用することがあります。一般的には、速効薬よりも予防法の方が好まれます。

喘息に対する補完療法

ほとんどの人は、通常の治療や喘息発作を引き起こす物質を避けることで喘息をコントロールすることができます。それでも、症状を緩和するために補完療法を利用する人もいます。アメリカ人による補完療法の使用に関して広範囲にわたる調査を行った、2002年の米国国民健康調査(National Health Interview Survey:NHIS)によると、成人の補完療法の使用を促す症状・疾患として、喘息は13位にランクされています。回答者(推定78万8000人の成人)の1.1%が、過去1年間に喘息に対し補完療法を使用したことがあると答えました。成人と小児の両方を対象とした2007年のNHIS調査では、喘息は小児の補完療法の使用を促す疾患の中で8位にランクされていましたが、成人の同様のランキングには含まれていませんでした。

科学的観点からみた喘息に対する補完療法

研究を評価したレビュアーらによると、喘息の緩和のために補完療法を使用することを支持する十分なエビデンスはありません。

  • 複数の研究では、喘息に対して、実際または真の鍼治療(細い金属製の針で体の特定の点を刺激する)を評価してきました。少数の研究では、薬物使用の一部減少や症状および生活の質の改善が示されていますが、ほとんどの研究では、喘息の症状に対する実鍼治療と擬似的鍼治療や偽鍼治療との間に違いは見られませんでした。現時点で、鍼治療が喘息の有効な治療であるというエビデンスはほとんどありません。
  • 過呼吸を減らし、呼吸を整え、血液中の二酸化炭素と酸素のバランスを良くするための呼吸法や再訓練に、患者の関心が新たに高まっています。7件のランダム化比較試験のレビューでは、呼吸法で症状が改善する傾向がみられましたが、確固たる結論を出すには十分なエビデンスがありません。
  • 2011年の研究では、慢性喘息患者を対象にプラセボ反応を調べたところ、プラセボ(プラセボ吸入器と擬似的鍼治療)を受けた患者では、胸の締め付け感などの症状や呼吸困難の知覚が有意に改善したと報告されました。しかし、これらの患者で肺機能は改善しませんでした。これは、患者の気分が良くなったにもかかわらず、未治療の喘息から重症化するリスクが軽減されなかったという点で、重要な特徴です。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは現在、以下の可能性を判断するための研究を助成しています。

  • マインドフルネス瞑想の実践は、喘息患者の症状管理や生活の質の向上に役立つかどうか
  • ビタミンEは、アレルギー性喘息があるマウスおよび人間の肺の炎症を抑えるかどうか
  • ボラージオイルやイチョウ葉は気道の炎症を抑えるかどうか
  • 舌下免疫療法は、アレルギー性喘息の誘因となる物質に対する耐性を作るかどうか

喘息に対する補完療法をお考えの方へ

  • 喘息の症状を管理するためには、従来の内科的治療が非常に有効です。喘息の総合的な内科的治療計画については、かかりつけの医療スタッフに相談してください。
  • 喘息に似た症状や健康上の問題について、かかりつけの医療スタッフへの受診を先延ばしにするために補完療法を使用しないでください。
  • 喘息の通常の治療を、実証されていない製品や療法に置き換えないでください。
  • サプリメントは医薬品と同じように作用する可能性があることを覚えておきましょう。正しく使用しなかったり、大量に使用したりすると健康問題を引き起こす可能性があり、服用している医薬品と相互作用するものもあります。かかりつけの医療スタッフがあなたにアドバイスしてくれます。妊娠中、授乳中、あるいは子供にサプリメントを与えることを検討している人は、医療スタッフに相談しましょう。(さらなる情報は、NCCIHファクトシート「サプリメントを賢く使う」を参照してください)
  • あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

米国国立衛生研究所(NIH)が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:https://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)

■ National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)

The NHLBI Health Information Center provides information to health professionals, patients, and the public about heart, lung, and blood diseases and sleep disorders and accepts orders for publications.

P.O.Box 30105
Bethesda, MD 20824-0105

米国内の無料通話:301-592-8573, or dial 7-1-1 for access to free Tel
ウェブサイト:https://www.nhlbi.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:nhlbiinfo@nhlbi.nih.gov

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

喘息の情報
ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

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参考文献

謝辞

  • NCCIHは、このサイトの情報における技術的な専門知識とレビューに対して次の人に感謝します:Lori Pbert, Ph.D., University of Massachusetts Medical School; Robert Smith, Ph.D., National Heart, Lung, and Blood Institute; Carol Pontzer, Ph.D., and John (Jack) Killen, Jr., M.D., NCCIH.
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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