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インフォグラフィックでわかる統合医療

海外の情報

糖尿病
Diabetes

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

糖尿病とサプリメント
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2018年5月

要点は?

糖尿病に対するサプリメントについて解明されていることは?

  • 2型糖尿病やその合併症(このファクトシートの主題)の予防や治療のために多くのサプリメントが研究されています。
  • 糖尿病に対するサプリメントの効果についてわかっていることは?
  • 研究されたサプリメントのいくつかについては利益がある可能性を示す弱いエビデンスが得られました。例えば、クロミウムは血糖コントロールに有用である可能性があり、α−リポ酸は糖尿病性ニューロパチー(神経障害)に有用である可能性があります。しかし、ほとんどのサプリメントについては、糖尿病やその合併症に対する有益な効果を裏付ける科学的根拠(エビデンス)はありません。

糖尿病に対するサプリメントの安全性について

  • 一部のサプリメントには副作用があることもあり、中には腎障害などの深刻な副作用を引き起こすこともあります。
  • 米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、「糖尿病薬の代わりに」または「天然の糖尿病治療」と標ぼうする製品など、話がうますぎる糖尿病の製品について消費者に警告しています。これらの製品は違法に販売されています。中には製品自体が有害なものもあり、有用な糖尿病治療の代わりに使用すると、いずれも有害です。
  • 従来の内科的糖尿病治療を、効果が証明されていない療法や関連製品で置き換えないことが非常に重要です。

糖尿病について

  • 糖尿病は血中グルコース濃度、つまり血糖値が上昇しすぎたときに起こる疾患です。血中の過剰なグルコースは、時間の経過とともに深刻な健康障害を引き起こします。
  • アメリカの成人の約9.4%が糖尿病に罹患していますが、このうち四分の一の人が糖尿病の診断を受けていません。
  • 糖尿病に治癒はありませんが、糖尿病患者は健康を維持するために対策を講じることができます。一般的に、インスリンや他の糖尿病薬の服用に加えて健康的な食生活や運動が糖尿病治療の鍵となります。
  • 最も一般的なタイプの糖尿病は2型糖尿病で、体がインスリンをうまく作ったり利用したりできません。このタイプの糖尿病は中高年に最も多くみられますが、どの年齢層にも、小児期でも発症します。
  • 45歳以上、糖尿病の家族歴、または過体重の場合、2型糖尿病になる可能性が高くなります。運動不足や人種、また高血圧、糖尿病前症、妊娠中の妊娠糖尿病などの健康問題も、2型糖尿病を発症する可能性に影響します。
  • 糖尿病や関連疾患についてさらに詳しく知りたい場合は、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所)のホームページ(英語サイト)を参照してください。

腎疾患は一部のサプリメントの使用と関連があります。糖尿病は腎疾患の主な原因であるため、糖尿病患者では特に問題となります。腎疾患に罹患しているまたは腎疾患のリスク(危険)がある場合は、サプリメントを使用する際に医療スタッフに注意深く観察してもらいましょう。

科学的観点から見た糖尿病に対するサプリメントの有効性と安全性

α−リポ酸
  • α−リポ酸は、糖尿病性黄斑浮腫(視力喪失を引き起こす可能性のある目の病気)や糖尿病性ニューロパチー(糖尿病による神経障害)など、糖尿病の合併症に対する効果が研究されています。
    • 2011年に報告された2型糖尿病患者235例 を対象とした1件の研究では、2年間α−リポ酸を補充しても黄斑浮腫の予防には役立ちませんでした。
    • 2016年に報告された糖尿病性ニューロパチーの症状に対する治療の評価では、経口α−リポ酸に関する2件の研究(参加者合計205例)でα−リポ酸が有効であることが示されました。
  • 安全性
    • α−リポ酸のサプリメントを高用量で摂取すると胃腸障害がおこる場合があります。

クロミウム

  • クロミウムは多数の食物に含まれる必須微量元素です。食物クロミウム含量が少なすぎると、グルコースを効率的に利用できなくなります。
    • 2014年に報告されたレビューによると、通常の治療に加えてクロミウムのサプリメントを摂取した結果、血糖コントロールが不十分な糖尿病患者(主に2型)の血糖コントロールが改善されました。しかし、改善の割合はごくわずかでした。このレビューでは25件(参加者約1,600例)の研究が対象でした。
  • 安全性
    • クロミウムのサプリメントは腹痛および鼓腸の原因となる可能性があり、大量摂取した場合は腎障害、筋障害および皮膚反応が報告されています。クロミウムを長期摂取した場合の影響については十分に検証されていません。
α−ハーブ系サプリメント
  • ハーブ系サプリメントが糖尿病やその合併症の管理に役立つことを示した信頼できるエビデンスは得られていません。
    • 糖尿病患者に対するシナモンの利益は明らかではありません。
    • このほか、糖尿病に対して研究されているハーブ系サプリメントには、ゴーヤ、中薬(中医学の薬草療法)、コロハ朝鮮人参、オオアザミ、およびサツマイモがあります。このいずれも有効性が実証されておらず、副作用が認められるものもあります。
  • 安全性
    • 糖尿病患者に対するハーブ系サプリメントの安全性に関する確実な情報はほとんどありません。
    • カッシア・シナモンはアメリカおよびカナダで最も多く販売されているシナモンの種類ですが、クマリンと呼ばれる化学物質がさまざまな濃度で含有されるため、肝障害を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。一般的に、障害を生じるほど大量のクマリンがカッシア・シナモンに含まれることはありません。しかし、肝障害を有する人などでは、カッシア・シナモンを大量に摂取すると状態が悪化する可能性があります。
    • セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)、ウチワサボテン、アロエ、朝鮮人参などのハーブを従来の糖尿病薬と併用すると望ましくない副作用が生じる場合があります。
マグネシウム
  • マグネシウムはブランシリアル、一部の種子類やナッツ類、ホウレンソウなど多数の食物に含まれており、体内でのグルコース処理に欠かせません。
    • マグネシウム欠乏は糖尿病の発症リスクを増大させる可能性があります。多数の研究において、マグネシウムサプリメントが糖尿病患者または糖尿病の発症リスクを有する人に有用かどうか検証されています。しかし、その多くは研究規模が小さく、確実な結果は得られていません。
  • 安全性
    • マグネシウムを大量に含むサプリメントは下痢や腹部疝痛をおこす可能性があります。非常に高用量(1日あたり5,000 mg以上)を摂取した場合は生命にかかわります。
    • マグネシウムについてさらに知りたい場合は、Office of Dietary Supplements(ODS)マグネシウム:一般向けファクトシート(英語サイト)をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳]
オメガ-3系脂肪酸
  • 魚油などのオメガ-3脂肪酸サプリメントの摂取が、糖尿病の人が血糖値をコントロールしたり、心疾患のリスクを低下させたりするのに役立つとは実証されていません。
    • 魚やその他の魚介類、特にサーモンやマグロなどの冷水性の脂肪が多い魚にはオメガ-3脂肪酸が含まれています。2012年に報告された数十万人を対象とした2件の研究レビューと、1件の2017年のレビューによると、魚摂取の効果に関する研究は、矛盾した結果が示されています。アメリカおよびヨーロッパの研究では、魚の摂取量が多い人の方が糖尿病発生率が高いことが明らかになりました。アジアおよびオーストラリアの研究では反対の結果が得られ、魚の摂取量が多いと糖尿病リスクが低下しました。これらの相違を説明する強固なエビデンスはありません。
  • 安全性
    • 通常、オメガ-3サプリメントは副作用が認められません。副作用が認められる場合、通常、症状は軽く、口臭、消化不良、下痢などが認められます。
    • オメガ-3サプリメントは血液凝固に影響する薬物との相互作用が認められる可能性があります。
    • オメガ-3サプリメントについてさらに知りたい場合は、 NCCIHのオメガ―3系脂肪酸のウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳]

セレニウム

  • 4件の研究(参加者2万例を上回る)の評価では、セレニウムを補充しても2型糖尿病を発症する可能性は低下しないことが明らかになりました。
  • 安全性
    • セレニウムの長期摂取量が多すぎると、毛髪や爪脱落、胃腸症状、神経質系の異常などの有害作用が生じることがあります。
    • セレニウムについてさらに知りたい場合は、ODSのセレニウム:一般向けファクトシートを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]
ビタミン
  • 一般に、糖尿病患者がビタミンCを摂取しても血糖コントロールやその他の症状が改善しないことが研究によって示されています。しかし、2017年に報告された22件の研究(参加者937例)のレビューでは、ビタミンCを30日以上摂取した場合、2型糖尿病患者の血糖コントロールに有用であるという弱いエビデンスが得られました。
    • ビタミンD濃度が低いと2型糖尿病、メタボリック症候群、インスリン抵抗性などの代謝障害を生じるリスクが上昇することが過去5年間の研究およびレビューによって明らかになりました。しかし、2014年に報告された35件(参加者43,407例)の研究レビューでは、正常血糖値、前糖尿病、または2型糖尿病の成人がビタミンDを摂取しても糖尿病予防や血糖値改善にはつながらないことが示されています。
  • 安全性
    • ビタミンDの過剰摂取は危険で、悪心、便秘、虚弱、腎障害、見当識障害および不整脈を生じる可能性があります。食物や日光からビタミンDを過剰摂取することはありません。
    • ビタミンDについてさらに知りたい場合は、ODSのビタミンD:一般向けファクトシートを参照してください。 [eJIMサイト内日本語訳]
その他のサプリメント
  • ポリフェノールは茶、コーヒー、ワイン、果物、穀物および野菜に含まれる抗酸化物質ですが、ポリフェノールのサプリメントやポリフェノールが豊富な食物が糖尿病にどのような影響を与えるかについてのエビデンスは依然として非常に不確定なものしかありません。

糖尿病患者の栄養と運動について

栄養と運動は、糖尿病患者の健康的な生活習慣の重要な部分を占めます。よく食べることと体を動かすことは、あなたのためになります。

  • 血中グルコース値、血圧、コレステロールを目標範囲内に維持しましょう。
  • 体重を減らす、または健康な体重をキープしましょう。
  • 糖尿病の問題を予防、または進行を防ぎましょう。
  • 気持ち良く、イキイキと過ごしましょう。

さらに詳しくお知りになりたい方は、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)のウェブサイト(英語サイト)を参照してください。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは以下の研究を助成しています。

  • 血糖コントロールに対するブドウの皮の成分の効果
  • 心臓発作の既往を有する糖尿病患者の心臓の健康に対するキレート療法の効果
  • 身体の代謝および2型糖尿病発症リスクに対するマリファナの効果
  • 治療が不十分な患者における有痛性糖尿病性神経障害(神経の損傷)に対する鍼治療

さらに考慮しなければならないこと

  • FDAは消費者に、糖尿病の予防、治療、治癒を標ぼうし、違法に販売されている危険な製品を購入しないよう警告しています。このような製品には「血糖値が自然に下がる」または「2型糖尿病に打ち勝つ安価な治療法」などと標ぼうされています。これらのサプリメントは有害な成分が含まれている可能性があり、実際の摂取内容物がラベル表記と異なる場合があります。
  • 効果が実証された糖尿病治療の代わりに不正な糖尿病製品を使用すると特に危険です。間違った糖尿病管理は、深刻な合併症を生じる可能性があります。
  • サプリメントは薬物や他のサプリメントと相互作用を有する可能性があることに注意してください。詳細はNCCIHのウェブページDietary and Herbal Supplements(サプリメントおよびハーブのサプリメント)(英語サイト)を参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]
  • 自分の健康に責任を持ちましょう。あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

米国国立衛生研究所(NIH)が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:https://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)

■ National Diabetes Education Program

National Diabetes Education Programは、NIHと米国疾病予防管理センターが後援しており、多くの連邦、州、および地方のパートナーが参加しています。そのサービスには、糖尿病に関する情報や出版物が含まれています。

電話 :1-301-496-3583 ウェブサイト:www.ndep.nih.gov(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるリソースを提供するため、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)が国立衛生研究所および他の政府機関と健康関連団体からの信頼できる情報をまとめています。

Information on diabetes(英語サイト)
ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

参考文献

謝辞

NCCIHは、この出版物の2018年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。 David Shurtleff, Ph.D., NCCIH

2型糖尿病に対するサプリメント:概要
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2017年7月

広く販売されているサプリメント製品の多くは、糖尿病患者に対して健康効果があると謳っています。研究者らは、2型糖尿病を管理したり発症リスクを下げたりするのに有用であるかどうかを確認するためさまざまなサプリメントを研究してきましたが、現時点では、サプリメントが2型糖尿病の予防や管理に有用である可能性を示唆する十分な科学的根拠(エビデンス)はありません。一部のサプリメントは、糖尿病治療薬と相互作用したり、腎疾患のリスクを高めたりする可能性があります。

この概要では、糖尿病に対して研究されている多くのサプリメントのうち、α-リポ酸、クロミウムマグネシウムオメガ3系脂肪酸など臨床試験が行われているものを中心に取り上げています。

科学的根拠:
2型糖尿病に対するサプリメント(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

科学文献

患者のための情報

2型糖尿病に対するサプリメント:科学的根拠
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2017年7月

総じて、サプリメントが2型糖尿病の管理や予防に有用であることを示す科学的根拠(エビデンス)は十分ではありません。サプリメントの使用が腎疾患につながるという複数の症例報告があります。アメリカでは、糖尿病は慢性腎臓病と腎不全の主な原因であるため、これらの症例報告は特に懸念すべきものであることに留意してください。サプリメントの使用に関しては、腎疾患の患者や腎疾患のリスクのある患者の場合、厳密に監視されなければなりません。

α−リポ酸

参加者570人による2件の臨床試験では、α−リポ酸のサプリメントは、糖尿病に伴う症状・疾患を予防も改善もしないことがわかりました。

研究でわかったことは?

一部の研究では、糖尿病の合併症に対するα−リポ酸の効果が検討されています。

  • 467人の2型糖尿病患者が参加した2011年の臨床試験(英語サイト)では、600ミリグラムのα−リポ酸を毎日摂取しても、かすみ目を引き起こす眼の症状である糖尿病性黄斑浮腫は予防されないことがわかりました。
  • 102人の2型糖尿病患者が参加した2011年の臨床試験(英語サイト)では、α−リポ酸とビタミンEのサプリメントは、別々に摂取しても一緒に摂取しても、コレステロール値やインスリンに対する反応を改善しませんでした。

安全性

  • α−リポ酸のサプリメントを高用量で摂取すると胃腸障害がおこる場合があります。

クロミウム

臨床試験では、クロミウムのサプリメントは、2型糖尿病の管理や発症のリスク低下に対する利益がほぼないか全くないことがわかっています。

研究でわかったことは?

2型糖尿病の管理や予防に対するクロミウムの効果を検討するために、いくつかの臨床試験が行われてきました。しかし、これらの研究の多くは非常に小規模であるか、質が高いものではありません。

  • およそ1600人が参加した25件のランダム化比較試験についての2014年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、入手可能な報告から、クロミウムのサプリメントは糖尿病患者の血糖管理に対して好ましい効果がある可能性が示唆されると結論づけられています。クロミウムサプリメントの長期の有効性については、研究が続けられています。
  • 中等度の肥満または過体重である糖尿病予備軍62人が参加した2015年の無作為化比較対照試験(英語サイト)では、シナモン、クロミウム、カルノシンを含むサプリメントを用いて4ヶ月の治療を行うと、参加者の空腹時血糖値が下がり、除脂肪体重が増えたと結論づけられました。
  • 875人が参加した14件のランダム化比較試験についての2015年のレビュー(英語サイト)では、ビール酵母によるクロミウムの補充は、プラセボと比較して、2型糖尿病患者の空腹時血糖値の低下にある程度有益な可能性があるが、A1cに対する効果はないと結論づけられました。

安全性

  • クロミウムのサプリメントは腹痛および鼓腸の原因となる可能性があり、大量摂取した場合は腎障害、筋障害および皮膚反応が報告されています。
  • 上記の2014年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、クロミウムのサプリメントを通常の用量で使用しても、プラセボと比較して有害事象のリスクが高まることはないと結論づけられました。クロミウムのサプリメントの長期の安全性については、未だ、検証されていない。

シナモン

臨床試験のデータでは、シナモンは糖尿病患者に対して明らかな効果がなく、いくつかのリスクがあることが示されています。

研究でわかったことは?

糖尿病患者におけるシナモンの効果を検討したランダム化比較試験とコクランレビューがいくつか存在します。

  • 543人が参加した10件のランダム化比較試験についての2013年のシステマティックレビューとメタアナリシス(英語サイト)では、シナモンは、空腹時血糖値、総コレステロール、LDL-C、トリグリセリド値を統計学的に有意に下げて、またHDL-C値を上げるが、ヘモグロビンA1c値については有意な効果はみられないと結論づけられました。レビューアらは、解析に含まれた研究にかなりの不統一性がみられる(すなわち、治療薬用量や治療期間が不明である)ため、これらの知見を患者の治療に適用するのには限界があるだろうと報告しています。
  • 計577人が参加した10件のランダム化比較試験についての2012年のコクランのシステマティックレビュー(英語サイト)では、1型糖尿病と2型糖尿病に対するシナモンの使用を支持する証拠は十分に得られませんでした。

安全性

  • アメリカとカナダで市販されている最も一般的な種類のシナモンであるカッシア・シナモンは、肝疾患を発症したり悪化させたりするおそれのある、さまざまな量のクマリンを含んでいます。

マグネシウム

2型糖尿病に対するマグネシウム補充の有効性に関する臨床試験の結果は限られており、数件の研究でいくらかの利益が認められましたが、全ての研究で利益が認められたわけではありません。

研究でわかったことは?

マグネシウム不足の人は2型糖尿病を発症するリスクが高く、このことから、マグネシウム補充は、2型糖尿病患者や2型糖尿病を発症するリスクがある人に有益な可能性があることが示唆されています。しかし、臨床試験の結果からは、はっきりとした利益はまだ示されていません。

  • 2015年のレビュー(英語サイト)では、全てではないが一部の研究から、マグネシウム補給が糖尿病患者の代謝プロファイルに対して有益であることが分かっており、マグネシウム補給が2型糖尿病の管理に対して有効である可能性を支持するために、より大規模な前向きのランダム化比較試験が必要とされると結論づけられています。
  • 2011年のメタアナリシス(英語サイト)では、人々がサプリメントまたは食物による食事からどの程度マグネシウムを摂取しているか、そして人々の糖尿病のリスクについて調べた13件の試験の結果がレビューされています。選択された13件の研究のうち9件では、マグネシウム摂取と糖尿病のリスクとの間に、統計学的に有意な逆相関がみられました。つまり、マグネシウムの摂取量が低い人ほど、糖尿病を発症するリスクが高くなります。

安全性

  • マグネシウムを大量に含むサプリメントは、下痢や腹部疝痛をおこす可能性があります。非常に高用量(1日あたり5,000 mg以上)を摂取した場合は生命にかかわります。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸のサプリメントは、糖尿病患者の血糖値を改善するとは示されていません。

研究でわかったことは?

オメガ3脂肪酸に2型糖尿病の発症のリスクを下げる効果があるかどうかについては、多くの研究で検討が行われています。

  • 2017年のアメリカ心臓協会の科学的報告(英語サイト)では、10,000人を超える参加者を含む5件の試験に基づき、ランダム化比較試験からの全体的な報告から、オメガ3脂肪酸のサプリメントは糖尿病患者または糖尿病のリスクがある人の心血管疾患の予防に対して効果がないことが示唆されると結論づけられました。
  • 1,075人が参加した23件のランダム化比較試験についての2008年のコクランシステマティックレビュー(英語サイト)では、2型糖尿病におけるオメガ3脂肪酸補充は、血糖管理や空腹時インスリンに対して統計学的に有意な効果がないことがわかりました。
  • メタアナリシスとシステマティックレビューを組み合わせた2012年の研究(英語サイト)では、オメガ3を含む魚介類や植物を食べることと2型糖尿病を発症するリスクとの間に関連があるかどうか検討されています。研究では、これらのオメガ3脂肪酸を含む食物が糖尿病を発症するリスクに影響を与えるというエビデンスはほぼみられませんでした。

安全性

  • 通常、オメガ3脂肪酸サプリメントには副作用が認められません。副作用がもし認められる場合には、典型的にはおくび、消化不良、下痢などの軽度の胃腸症状が挙げられます。
  • オメガ3脂肪酸サプリメントは出血時間を延長させる可能性があります。

参考文献

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米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。
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監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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