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高血圧症(高血圧)
Hypertension (High Blood Pressure)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
- 高血圧症(高血圧)
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英語版改訂年月(翻訳時):2018年7月High Blood Pressure (高血圧)[英語サイト]とも呼ばれる高血圧症は、米国では3人に1人が罹患しています。時間とともに、心臓、血管、腎臓やその他の器官が損傷を受けます。合併症としては、心臓発作、心不全、脳卒中、慢性腎臓病などがあります。高血圧は、健康的な食事、身体活動、健康的な体重の維持、飲酒量の制限、ストレスの管理や対応など、生活スタイルの改善で管理できます。生活スタイルの改善のみでは十分には血圧が低下しない場合、高血圧の治療に薬剤が使用されるかもしれません。
要点は?
血圧低下に役立つ生活スタイル改善プログラムの一貫として、いくつかの補完療法に効果が示されています。
- 研究結果から、瞑想、太極拳、気功、ヨガなどの心身療法は、高血圧症患者の血圧に対して軽度な有益性が認められると示唆されています。リラクゼーション法が役立つかどうかは不明です。
- 2013年、米国心臓協会(American Heart Association)は、従来の治療に加えて行われるバイオフィードバック[英語サイト]および超越瞑想[英語サイト]は血圧を低下させるのに役立つことを示唆しました。
- 研究結果から、ココア、にんにく、魚油(オメガ3脂肪酸)、亜麻仁、緑茶や紅茶、プロバイオティクス、ハーブとして用いたローゼル(学名Hibiscus sabdariffa)などの食物やサプリメントが高血圧症患者の血圧低下に役立つことが示唆されています。しかし、これらの製品が血圧を低下させることを示すエビデンスは限定的なものであり、血圧に対する製品の効果はわずかです。高血圧症の治療に使用される薬剤の効果と同等の効果を有することが示されたサプリメントはありません。
安全性
- 高血圧の場合、医療スタッフが処方する治療計画に従うことが重要です。なぜなら、高血圧の重篤な合併症を回避または遅らせることができるからです。処方された治療薬を、証明されていない製品や療法に変えないでください。高血圧に対して補完療法・統合医療を検討している場合、医療スタッフに相談してください。
- 摂取したり検討したりしているすべてのサプリメントについて、医療スタッフに話してください。例えばダイダイ、マオウ、朝鮮人参、甘草などのハーブを使用したサプリメントには血圧を上昇させる可能性があり、また、高血圧を治療する薬剤に有害な相互作用を有するサプリメントもあります。
- 心身療法は、資格のある施術者が適切に実施したり、十分に訓練を積んだインストラクターが適切に教えたりすれば、健康な人にとっては全般的に安全です。しかし、疾患のある人にとっては適切ではない療法もあります。例えば、高血圧患者はヨガの一部のポーズを修正または回避する必要があるかもしれません。高血圧の場合、心身療法を検討していることをかかりつけ医や療法施術者およびインストラクターに相談してください。
- さらに詳しく知りたい方は、「National Heart, Lung, and Blood Institute Web site(国立心肺血液研究所ウェブサイト)」[英語サイト]をご覧ください。
医療関係者向け情報
関連するファクトシート
- 高血圧に対する補完療法
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英語版改訂年月(翻訳時):2021年5月補完療法の中には、血圧を下げるための生活習慣改善プログラムの要素として有望視されているものがあります。研究結果によると、リラクゼーション法やヨガなどの心理的・身体的療法が、高血圧の人の血圧を下げるのに役立つかもしれないことが示されています。ニンニク、オメガ3脂肪酸、緑茶抽出物(エキス)の補給は、血圧の低下にわずかな効果があるかもしれないとする限定的なエビデンス(科学的根拠)があります。高血圧症の治療に使用される医薬品の効果と同等の効果を有することが示されたダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)はありません。
科学的観点:
高血圧に対する補完療法[英語サイト]各種補完療法と最新研究の要約
リラクゼーション法
リラクゼーション法では、緩やかで短期的な血圧の低下が認められていますが、これらの研究の多くは質が低いものです。
高血圧症に対するリラクゼーション法の研究についての詳細はこちら[英語サイト]
ヨガ
ヨガが高血圧の管理に有用な補助的介入であるという質の低いエビデンスがいくつかあります。
ニンニクのサプリメント
ニンニク製剤が高血圧の人の血圧を下げるかもしれないというエビデンスはありますが、研究のほとんどは小規模、予備的、または質の低いものです。
高血圧症に対するニンニクの研究についてはこちら[英語サイト]
オメガ3脂肪酸のサプリメント
ランダム化比較試験の結果に一貫性はありませんが、全体として、魚油から得られるオメガ3脂肪酸には血圧を下げるベネフィット(有益性)があることを示唆するデータがあります。
オメガ3脂肪酸(魚油)の高血圧症に対する研究についてはこちら[英語サイト]
緑茶のサプリメント
研究の結果、緑茶抽出物(エキス)のサプリメントは短期的に血圧を下げるかもしれないことが示唆されています。
高血圧症に対する緑茶サプリメントの研究についてはこちら[英語サイト]
科学文献
患者のための情報
- 心血管系疾患
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英語版改訂年月(翻訳時):2020年1月心血管系疾患(心臓や血管の疾患)は、アメリカでは死因の1位になっています。最もよくみられる心血管疾患は冠動脈疾患です。冠動脈疾患では、心臓に血液を送る血管が狭くなったり詰まったりします。
高コレステロール血症、あるいは高血圧の場合、医療スタッフが処方する治療計画に従ってください。従来の治療を、ほかの製品や療法に置き換えないでください。あなたが検討している補完療法について、かかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
- エチレンジアミン四酢酸(ethylene diamine tetra-acetic acid:EDTA)二ナトリウムを使用するキレーション療法は、冠疾患に対する補完療法として議論の的となっています。
- 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が助成する、TACT(Trial to Assess Chelation Therapy)と呼ばれる冠疾患に対するキレーション療法に関する大規模な試験では、有効であるというエビデンスが示されましたが、その効果は、少なくとも1回の心臓発作を既に起こしたことのある糖尿病患者にのみ認められるものでした。この試験はキレーション療法の有益性を示す初の臨床試験であったため、この試験の結果だけでは、糖尿病患者に対する心臓発作後の治療としてキレーション療法を常用することを支持するには十分なではありません。
- TACT2と呼ばれる、NIHが助成する第2の試験では、心臓発作を起こしたことのある糖尿病患者に対するキレーション療法に明らかな有益性が認められるかどうかについて、現在評価が行われています。
消費者向け情報
医療関係者向け
- Myth-Busting Popular Natural Products Marketed for Disease Prevention and Wellness(誤解の検証:疾患予防とウエルネスに対する人気のある天然物製品)[英語サイト]
- Heart Disease - Systematic Reviews/Reviews/Meta-analyses(心疾患 - システマティックレビュー/レビュー/メタアナリシス(PubMed®)[英語サイト]
- Heart Disease - Randomized Controlled Trials(心疾患 - ランダム化比較試験)(PubMed®)[英語サイト]
関連するファクトシート
- エチレンジアミン四酢酸(ethylene diamine tetra-acetic acid:EDTA)二ナトリウムを使用するキレーション療法は、冠疾患に対する補完療法として議論の的となっています。
- ビタミンC・Eサプリメントは妊娠中の血圧障害のリスクを軽減せず
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英語版改訂年月(翻訳時):2010年4月国立衛生研究所リサーチ・ネットワークの研究によると、妊娠初期にビタミンC・Eサプリメントを摂取開始しても、妊娠中の高血圧障害やその合併症のリスクは軽減しません。
注目すべき点として、同サプリメントは、死に至る可能性のある妊娠高血圧の一種である妊娠高血圧腎症のリスクも軽減しませんでした。この所見は、過去の小規模な一部の研究で、ビタ
ミンは妊娠高血圧腎症のリスクを軽減するという示唆に反するものです。これらの研究結果は、以降の大規模研究で確認されませんでした。現在のところ最も大規模な研究であり、治療を妊娠初期に開始したアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の研究でも、妊娠に伴う高血圧症とその合併症の軽減は認められませんでした。
同研究に資金提供したNIH研究所の1つであるユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development :NICHD)の所長Alan E. Guttmacher医師は、「本研究の結果からは、妊娠中にみられる高血圧障害を予防する方法としてビタミンC・Eサプリメントを認められない」と述べました。
同研究の主な資金は、国立心肺血液研究所と国立資源研究センターのクリニカル・トランスレーショナル・サイエンス・アワード・プログラムによって提供されました。双方ともNIHに属します。
この所見は、New England Journal of Medicineの4月8日号に掲載されます。
同研究は、NICHDの母体・胎児部門(Maternal–Fetal Medicine Units :MFMU)ネットワーク内の16施設で実施されました。論文の筆頭著者は、ピッツバーグ大学産婦人科のJames M. Roberts医師です。
研究では、妊娠の高血圧障害を発症するリスクが高い初産の女性のみを対象としました。全般的に、対象女性は健康であり、高血圧、尿蛋白(腎臓に対するストレスの指標)、妊娠糖尿病(妊娠中に認められる糖尿病の一種)は認められませんでした。妊娠9週〜16週の女性を10,000名以上組み入れ、出産まで追跡しました。ビタミンC・Eサプリメントまたはプラセボを毎日投与しました。NICHDの妊娠・周産期部門の主任であり、MFMUネットワークのプログラム科学者である論文共著者のCatherine Y. Spong医師は、「アメリカでは、特にバランスの取れた食事が取れない場合、妊娠向けに調整したマルチビタミンを摂取するよう、産婦人科医は一般的に妊娠女性に推奨しています」と述べました。「私たちの研究では、参加者は、摂取していた妊娠用ビタミンに加え、ビタミンCとEを多く含むサプリメント(通常の出産前のビタミン量の約10倍)を摂取しました。」
研究者らは過去の研究に基づいて、ビタミンCとEによって、フリーラジカル(身体の酸素使用の副産物)として知られる分子からの障害を予防することによって妊娠高血圧腎症の可能性を軽減すると仮説を立てました。この理論では、フリーラジカルが胎盤の適切な発達を防ぎ、母体から胎児への血流を阻害すると考えられています。Spong医師によると、今回の所見は、フリーラジカルの障害が妊娠高血圧腎症を引き起こすという考えを支持も反論もするものではありませんが、ビタミンCとEを用いた治療はこの状況を予防しないということを示しています。
妊娠に伴う高血圧症、けいれん発作、尿蛋白、妊娠高血圧腎症、血液または肝臓の異常、流産、低体重児、早産の合併症発症率について、2群間で統計学的な差は認められませんでした。合併症の併発率は、ビタミン投与群で6.1%、プラセボ投与群で5.7%でした。
また、2群間で妊娠高血圧腎症に統計学的差は認められませんでした:ビタミン投与群で7.2%、プラセボ投与群で6.7%。
Spong医師は、本結果が明確さについて満足のいくものであると述べています。
また、「結果はとても有用です」と述べています。「今回の場合、期待できる治療と元々考えられていたものから、実際には何の臨床的有益性も得られないことがわかりました。」
Spong医師との対談を求める方は、301-496-5133に電話をかけ、Robert Bock氏またはMarianne Glass Miller氏にお問い合わせください。
NHLBIの専門家との対談を求める方は、301 496-4236またはNHLBI_news@nhlbi.nih.gov[英語サイト](リンク先からメールを送れます)でNHLBI Communications Officeにお問い合わせください。
国立衛生研究所の一部である、国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute :NHLBI)は、心臓、血管、肺、血液の疾患および睡眠障害の原因、予防、診断、治療に関連する研究を計画、実施、支援します。NHLBIはまた、女性、心疾患、子供の健康な体重、その他のトピックに関する全国的な健康教育キャンペーンを実施しています。NHLBIのプレスリリースやその他の公表は、www.nhlbi.nih.gov[英語サイト]からオンラインで閲覧できます。
NICHDのスポンサーは、出産前後の発達、母親・子ども・家族の健康、生殖発生学、人口問題、医学的リハビリテーションに関して研究しています。詳細は、研究所のウェブサイトhttp://www.nichd.nih.gov/[英語サイト]をご覧ください。
国立衛生研究所(National Institutes of Health :NIH)について国の医療研究機関であるNIHには、27箇所の研究機関および施設があり、米国保険社会福祉省の一部です。NIHは、基礎、臨床、トランスレーショナル医学研究を実施および支援する主要な政府機関であり、一般的および稀な疾患の原因、管理、治療を検証しています。NIHおよびそのプログラムについての詳細は、www.nih.gov[英語サイト]をご覧ください。
更新日:2024年8月9日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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