海外の情報
ゴールデンシール
Goldenseal
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2022年12月1日
- 一般名(英名):
- goldenseal, yellow root
- 学術名:
- Hydrastis canadensis
背景
- ゴールデンシール(Goldenseal)は北アメリカが原産の植物です。乱獲や生息地の減少により、野生のゴールデンシールは入手しにくくなっていますが、現在ではアメリカのブルーリッジ山脈を中心に商業的に栽培されています。
- 歴史的には、アメリカ先住民が皮膚疾患、潰瘍、発熱などさまざまな症状・疾患にゴールデンシール使用していました。その後、ヨーロッパからの入植者が薬用植物として取り入れ、さまざまな症状・疾患に使用しました。
- 現在では、風邪などの呼吸器系感染症、アレルギー性鼻炎(花粉症)、潰瘍、下痢や便秘などの消化器系の不調を改善するダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIM内:一般向け・医療関係者向け)としてプロモーション(宣伝・販売促進)されています。また、歯ぐきの痛みにはマウスウォッシュとして、目の炎症にはアイウォッシュとして使用され、発疹などの皮膚のトラブルには皮膚に塗布したりもします。
これまでに解明されていること
研究で明らかになったこと
- エビデンス(科学的根拠)は、健康に関連する目的のためにゴールデンシールの使用を支持していません。
- ゴールデンシールに含まれる物質であるベルベリンは、心不全、下痢、感染症、その他の健康上の問題について研究されています。しかし、ゴールデンシールを経口摂取した場合、体内に吸収されたり血流に入ったりするベルベリンはごくわずかであるため、ベルベリンに関する研究結果はゴールデンシールには当てはまらない可能性があります。
安全性について
- ゴールデンシールを単独で摂取した場合の安全性については、ほとんど情報がありません。ゴールデンシールは、短期的に口から摂取する場合、ほとんどの成人にとって安全である可能性があります。ゴールデンシールを長期的に使用した場合の安全性については、信頼できる情報が不十分です。
- 妊娠中または授乳中の女性は、ゴールデンシールを使用すべきではなく、乳児にも与えてはいけません。ベルベリンは、新生児の黄疸を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があり、ケルニクルス(核黄疸)と呼ばれる命にかかわる問題につながる恐れがあります。
- 国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が資金提供した研究では、市販のゴールデンシールサプリメントの中には、ゴールデンシールがあまり含まれておらず、代わりにラベルに記載されていない成分が含まれているものがあることがわかりました。
- ゴールデンシールは、多くの医薬品の体内処理方法(薬物代謝)を変える可能性があります。NCCIHが資金提供した研究では、健康な成人にゴールデンシール抽出物(エキス)と最も一般的に処方されている糖尿病治療薬であるメトホルミンとを併用すると、メトホルミンの濃度が約25%低下したことがわかりました。この低下は、メトホルミンを服用している2型糖尿病患者の血糖値コントロールを潜在的に妨げるのに十分なものです。そのため、メトホルミンを服用している2型糖尿病の人は、ゴールデンシールを使用する前に今かかっている医療機関※に相談する必要があります。
注意事項
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
さらなる情報
関連トピック
関連するファクトシート
参考文献
- Asher GN, Corbett AH, Hawke RL.Common herbal dietary supplement-drug interactions(英語サイト).American Family Physician.2017;96(2):101-107.
- Goldenseal Natural Medicines website.Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on December 23, 2019.[Database subscription].
- McKenna DJ, Plotnikoff GA.Goldenseal In:Coates PM, Betz JM, Blackman MR, et al., eds.Encyclopedia of Dietary Supplements.2nd ed. New York, NY:Informa Healthcare; 2010:379-390.
- Nguyen JT, Tian D-D, Tanna RS, et al. Assessing transporter-mediated natural product-drug interactions via in vitro-in vivo extrapolation: clinical evaluation with a probe cocktail(英語サイト). Clinical Pharmacology and Therapeutics. November 11, 2020. Epub ahead of print.
- Wallace ED, Oberlies NH, Cech NB, et al.Detection of adulteration in Hydrastis canadensis (goldenseal) dietary supplements via untargeted mass spectrometry-based metabolomics(英語サイト).Food and Chemical Toxicology.2018;120:439-447.
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov(クリックでメール送信)
■ PubMed®
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ウェブサイト: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)■ 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements:ODS)
ODSは、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、および啓蒙活動を通して、国民のダイエタリーサプリメントに関する知識や理解が深まるよう努めています。情報源として、出版物(「ダイエタリーサプリメント:知っておきたいこと」など)、さまざまなサプリメント製品や具体的な成分(ビタミンDやマルチビタミン/ミネラルサプリメントなど)に関するファクトシートなどを提供しています。
ウェブサイト: https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
E-mail: ods@nih.gov(メール送信用リンク)
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更新日:2023年2月7日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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