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緑茶
Green Tea
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年10月
- 一般名(英名):
- green tea
- 学術名:
- Camellia sinensis
背景
- 緑茶、紅茶およびウーロン茶は、すべてカメリアシネンシスという植物から、それぞれ異なった方法で作られます。緑茶は、葉の部分を蒸したり、釜で煎ったりしたものを乾燥させて作ります。
- お茶は何千年もの間、中国や日本で薬用として用いられてきました。
- 緑茶は飲料(お茶)またはサプリメントとして、注意力向上、消化器症状の軽減、頭痛の緩和および減量促進に良いとされています。緑茶および没食子酸エピガロカテキン(epigallocatechin-3-gallate:EGCG)をはじめとする緑茶成分は、心疾患やがんの予防効果の可能性に関する研究がおこなわれてきました。
- 米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)が承認したシネカテキンス局所軟膏(商品名Veregen)には緑茶の葉から抽出された成分が含まれており、尖圭コンジローマ(性器いぼ)の治療に使用されています。
これまでに解明されていること
- 緑茶やその抽出物(エキス)に関する多くの研究が実施されていますが、ほとんどの用途について、緑茶が有用であるかどうかについてはまだ完全な結論には達していません。
研究で明らかになったこと
- 緑茶にはカフェインが含まれています。1日をとおしてカフェインを含む飲料を飲用すると、注意力散漫を防止できるかもしれません。1件の研究では、緑茶の主成分であるEGCGのみを摂取した場合、精神的能力に影響するかどうかを調べました。この研究では、成人の精神的能力は改善しませんでした。
- FDAは、緑茶抽出物(エキス)を含む特定の軟膏を、尖圭コンジローマ(性器いぼ)の治療に対する処方薬として承認しました。
- 人における緑茶とがんの研究からは、一貫した結果は示されませんでした。米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)は、いずれの種類のがんリスクを軽減するためにも、緑茶の使用を推奨する立場も反対する立場もとっていません。
- 緑茶および紅茶が、血圧やコレステロールなどの心疾患リスク因子に有益な効果をもたらす可能性があることが、わずかな研究によって示唆されています。しかし、これらの研究には、データの評価方法の問題や対象集団が異なることなど、いくつかの限界があるため、確実な結論には至っていません。
- 緑茶抽出物(エキス)によって、過体重または肥満の成人に意味のある減量が認められたという報告はありません。また、緑茶抽出物(エキス)が減量維持に役立つかどうかも不明です。
- 緑茶が、そのほかの症状・疾患に有用かどうかは不明です。
- 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、緑茶とその抽出物(エキス)に関する研究、例えば炎症性腸疾患の症状を抑える、コレステロール値を低下させる、などの目的で、新しい形体の緑茶抽出物(エキス)を用いた研究を助成しています。
安全性について
- 緑茶をお茶として飲用した場合、1日8杯までは安全であると考えられます。製品ラベルには、添加したカフェインの量だけが記載されている必要があり、緑茶に含まれる天然のカフェインについては記載されないことに注意してください。
- 妊娠中または授乳中に緑茶を飲用する場合、1日6杯(カフェイン約300 mg以下)までは、おそらく安全であると考えられます。妊娠中にこれより大量の緑茶を飲用すると安全ではない可能性があり、望ましくない作用が生じるリスクが高まる可能性もあります。さらに緑茶は、葉酸欠乏に起因する先天異常のリスクを高める可能性もあります。カフェインは母乳中に移行するため、乳児に影響をおよぼす可能性があります。
- まれに、緑茶製品(主に緑茶抽出物(エキス)の錠剤)を摂取した人で肝疾患が報告されています。肝疾患を有する人は、緑茶抽出物(エキス)を摂取する前に、医療スタッフに相談すべきです。緑茶抽出物(エキス)を摂取している人、特に肝疾患がある人は、肝疾患の症状(腹痛、暗色尿、黄疸など)が出た場合は、使用を中止し、医療機関を受診してください。
- 緑茶は大衆薬として売られている多数のダイエット製品に含まれており、これらは肝疾患を引き起こすまれな事例の原因であると考えられています。
- 多量の緑茶は、高血圧および心臓疾患に使用されるβ遮断薬、ナドロールの血中濃度を低下させ、その効果を減弱させることが示されています。ほかの医薬品と相互作用を引き起こす可能性もあります。
注意事項
- 自分の健康に責任を持ちましょう。利用している補完療法のすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
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参考文献
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- Van Baak MA, Mariman ECM.Dietary strategies for weight loss maintenance(英語サイト).Nutrients.2019;11(8):pii:E1916.
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
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ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)■ ODS(ダイエタリーサプリメント室)、NIH(米国国立衛生研究所)
ダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)は、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、および啓蒙活動を通して、国民のサプリメントに関する知識や理解が深まるよう努めています。この情報は(「知っておきたいこと:サプリメント」など)、さまざまなサプリメント製品や具体的な成分(ビタミンDやマルチビタミン/ミネラルサプリメントなど)に関するファクトシート、PubMed Dietary Supplement Subset(PubMedでダイエタリーサプリメントに関する論文を自動検索する機能)(英語サイト)などを提供しています。
ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
Email:ods@nih.gov
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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