海外の情報
ビルベリー
Bilberry
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年8月
- 一般名(英名):
- bilberry, European blueberry, whortleberry, huckleberry
- 学術名:
- Vaccinium myrtillus
背景
- ビルベリーの低木は北ヨーロッパ、アジア、北アメリカ、そしてカナダの原産です。その濃い色の果実はブルーベリーに似ています。
- その名前は、「ダーク(濃い)ベリー」を意味するデンマーク語のbollebarに由来しています。
- ビルベリーは、中世の時代から薬用として用いられてきました。その果実と葉が使われます。歴史的に、ビルベリーは下痢、口の炎症、尿の諸症状、糖尿病など、さまざまな症状・疾患に使用されてきました。また、ビタミンCの含有量が高いため、壊血病を予防するためにも伝統的に使用されています。第二次世界大戦中には、英国人パイロットが、夜間の視力が良くなると考えてビルベリージャムを食べていました。
- 現在、ビルベリーは、暗視、白内障、静脈瘤、およびアテローム性動脈硬化症(動脈にプラークが蓄積する)などの他の状態のサプリメントとして市販されています。
これまでに解明されていること
- ビルベリーサプリメントに関する質の高い臨床試験(人を対象とした研究)は、ほとんど実施されていません。
研究で明らかになったこと
- さまざまな症状に対して、ビルベリーを使用する裏付けとなる科学的根拠(エビデンス)はほとんどありません。
- 最近のいくつかの研究では、ビルベリーの有益な効果の可能性が示唆されています。しかし、これらの研究は少数例を対象としたものでした。これらの知見を裏付けるためにはさらに多くの研究が必要です。
- 小規模な臨床研究(24例)の結果は、ビルベリーを摂取することで歯茎の炎症と出血を減らすことができることを示唆しています。
- 会社員88例を対象とした日本の研究のデータは、ビルベリー抽出物が目の疲れを助けたことを示唆しています。
- 21例を対象とした小規模な研究のデータによると、ハーフマラソンの5日前と2日後にビルベリージュースを摂取すると、レクリエーションで訓練されたランナーの筋肉痛と炎症が一時的にわずかから中程度に増加する可能性があります。
- 果実にはアントシアニンと呼ばれるポリフェノールが高濃度で含まれています。アントシアニンは健康に有益であることが、いくつかの研究で示唆されています。
安全性について
- ビルベリーの果実は、通常食物に含まれる量を摂取したり、抽出物(エキス)の推奨用量を半年から1年間摂取したりする場合には安全と考えられます。
- ビルベリーの葉は、長期間にわたって大量に(口から)摂取すると危険な場合があります。
- 妊娠中、あるいは授乳中のビルベリー摂取の安全性についてはほとんどわかっていません。(食物に通常見られる量を消費することは安全であると考えられています。)
- ビルベリーは、エルロチニブ(Tarceval)と呼ばれる抗がん剤、抗糖尿病薬、または血液凝固を遅らせる薬と相互作用する可能性があります。薬を服用している人は、ビルベリーのサプリメントを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
注意事項
- 自分の健康に責任を持ちましょう。利用している補完療法のすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
さらなる情報
関連トピック
参考文献
- Bilberry Natural Medicines website.Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on October 14, 2019.[Database subscription].
- BilberryーLiverTox:Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury [Internet].Bethesda, MD:National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases.Accessed at https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK548250/(英語サイト) on October 29.2019.
- Lynn A, Garner S, Nelson N, et al.Effect of bilberry juice on indices of muscle damage and inflammation in runners competing a half-marathon(英語サイト): a randomised, placebo-controlled trial.Journal of the International Society of Sports Nutrition.2018;15:22.
- Ozawa Y, Kawashima M, Inoue S, et al.Bilberry extract supplementation for preventing eye fatigue in video display terminal workers(英語サイト).Journal of Nutrition, Health & Aging.2015;19(5):548-554.
- Tjelle TE, Holtung L, Bøhn SK, et al.Polyphenol-rich juices reduce blood pressure measures in a randomized controlled trial in high normal and hypertensive volunteers(英語サイト).British Journal of Nutrition.2015;114(7):1054-1063.
- Widén C, Coleman M, Critén M, et al.Consumption of bilberries controls gingival inflammation(英語サイト).International Journal of Molecular Sciences.2015;16(5):10,665-10,673.
- Yamaura K, Shimada M, Ueno K. Anthocyanins from bilberry (Vaccinium myrtillus L.) alleviate pruritus in a mouse model of chronic allergic contact dermatitis(英語サイト).Pharmacognosy Research.2011;3(3):173-177.
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
tty (聴覚障害者や難聴者向け):
1-866-464-3615
Website:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov
■ PubMed®
国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed」(英語サイト)をご覧ください。
ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)■ NIEHS(国立環境衛生科学研究所)
国立環境衛生科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences:NIEHS)[米国]が取り組んでいる国家毒性プログラムが提供する(アロエベラの非脱色全葉抽出物)に関する技術レポートの詳細について知りたい方はこちら:
www.niehs.nih.gov/news/interviews/aloevera/(英語サイト)■ ODS(ダイエタリーサプリメント室)、NIH(米国国立衛生研究所)
ダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)は、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、および啓蒙活動を通して、国民のサプリメントに関する知識や理解が深まるよう努めています。この情報は(「知っておきたいこと:サプリメント」など)、さまざまなサプリメント製品や具体的な成分(ビタミンDやマルチビタミン/ミネラルサプリメントなど)に関するファクトシート、PubMed Dietary Supplement Subset(PubMedでダイエタリーサプリメントに関する論文を自動検索する機能)(英語サイト)などを提供しています。
ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
Email:ods@nih.gov
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。