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科学を知ろう:健康に関する研究を理解するための9つの質問
Know the Science: 9 Questions To Help You Make Sense of Health Research

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2021年2月12日

はじめに

ほぼ毎日、医学研究に関する新たな知見が発表されており、中には補完療法に関するものもあります。

科学雑誌に掲載されている診断や治療に関する研究は、ニュース記事の情報源であることが多く、健康管理に役立つ重要なツールとなります。

しかし、科学雑誌の論文を見つけ、研究内容を理解し、結果を解釈することは難しいものです。

科学雑誌で見つけた情報を理解しやすくする1つの方法は、その情報を医療スタッフと共有し、意見を聞くことです科学研究の基礎や専門用語を理解すれば、健康に関してより良い情報に基づいた判断をするのに役立ちます。

科学論文を理解するのに役立つ9つの質問を見てみましょう

1.科学論文はどのような構成ですか?

科学雑誌のほとんどの論文は、同じような構成や形式になっています研究論文には5つの重要なパートがあり、ほとんどの論文に存在します。

抄録:科学論文の重要なポイントの簡単な要約

方法:研究の実施方法に関する詳細な情報

結果:研究が明らかにしたこと。ここでは、研究結果の意味を評価することはしません。研究から収集されたデータとその概要、および解析結果を記載するだけです。また、結果を示す表、グラフ、図を含むことが多いです。

考察と結論:研究結果が意味すること。ここでは、研究があなたの健康とどのように関連するのかを知ることができる場合があります。結果が意味することについて、著者の説明と意見が記載されることが多いです。結論はその著者によるものであり、他の研究者が結果の説明に完全に同意するとは限りません。

参考文献:著者は以前に公開された論文を参照して関連する。先行研究を調べ、自分の研究計画や結果の解釈に役立てます。

2.研究の目的は何ですか?

基礎研究では、基本的な生物学的プロセスや、治療が身体に影響を与えると考えられるメカニズムについて理解することを目的としています。

橋渡し研究では、ヒトの臨床試験における介入の効果と安全性について、厳密な調査に必要な情報の「構成要素」を作成することを目的としています。基礎研究と橋渡し研究ではいずれも、実験室で研究を行ったり、臨床現場で参加者に対して研究を行ったりする場合があります。

臨床試験の目的は、介入がヒトにおいて有益で安全かどうかを検証することです。試験の規模や種類が異なる場合があります。

  • 予備的研究、探索的研究、パイロット研究は、介入の安全性と有用性について重要な足がかりとなる情報を提供し、研究者がより大規模で、より決定的な臨床試験を実施するかどうか判断するのに役立ちます。
  • 十分に計画された臨床試験では、治療やライフスタイルの変更が有効かつ安全であるかどうかについて、最も明確な情報を提供します。しかし、臨床研究は複雑で長期にわたり、多額の費用がかかるため、通常は小規模な予備的研究が完了し、治療が患者に有益である可能性が期待できる場合のみ行われます。

基礎研究から橋渡し研究や臨床研究まで、すべての研究は非常に重要ですが、中でも臨床研究はヒトで行われるため、おそらくニュースで最も頻繁に耳にする研究であり、健康増進や病気の治療に最も早く影響する研究です。そのため、これ以降の質問では臨床試験に焦点を当てます

3.臨床研究の規模は?

参加者が多い研究では、一般的に参加者の少ない研究よりも信頼性の高い結果が得られます。より大規模な研究では、研究結果の精度を高め、研究で観察された影響が偶然によるものである可能性を減らすことができます。参加者が少なすぎると、不確定な結果が残るだけで、研究全体が失敗に終わる可能性があります。統計学者や研究者はツールを使用して、臨床研究を意味のあるものにするために必要な参加者数を算定します。

概して、参加者の多い大規模研究では、小規模研究では得られないような決定的な結果が得られることが多いです。

4.その研究は比較臨床試験でしたか?

比較臨床試験では、治療以外のすべての条件が可能な限り同一となる参加者群を対象に、研究者が異なる治療の効果を比較します。例えば、新しい「実験的」治療を受けた参加者群の転帰を、標準治療を受けた「対照群」の転帰と比較します。つまり、対照群の結果は、新しい治療の効果を測るための「基準」となります。この場合、標準治療は「対照」介入です。

新しい治療を標準治療と比較する臨床試験のデザイン

対照群はどんな治療を受けましたか?

対照群には多くの種類があります。理想的には、参加者を研究群のいずれかにランダムに割り当てます。これにより、2つのグループで、参加者が受ける介入以外のすべての条件が可能な限り同一になるようにします。他の種類の対照群が用いられることもありますが、介入以外の要因が結果に影響する可能性が高くなります。

プラセボ対照試験では、対照群に研究中の治療薬に似た、治療効果のない偽薬を投与します。プラセボの例として、医学的に不活性(効果がない)ですが、研究中の治療薬のように見える錠剤があります。シャムと呼ばれる偽治療は、研究中の治療が製剤ではなく鍼などの手技である場合に用いられます。シャム手技は有効な治療をまねたものですが、有効性はありません。可能であれば、「プラセボ」治療と「実験的」治療を「二重盲検」で実施します。二重盲検では、治療を施す医師も参加者も、治療の種類を知りません。そのため、参加者自身が受けている治療を知る可能性が低くなります。

プラセボや偽治療を使用した臨床試験のデザイン

5.バイアスを最小化するための手順が取られていますか?

臨床試験において、バイアスを回避することは驚くほど困難です。例えば、患者が受けた治療を患者本人や研究者が知っている場合、患者が改善したかどうかの印象に影響しないよう努力しても、影響してしまう可能性があります。したがって、バイアスを最小化するためにどのような手順が取られたのかを確認することが重要です。例えば、試験は「盲検化」または「マスク」されており、参加者も研究者も誰がどちらの治療を受けているのかを知らずにいたか、ということです。研究者は常に、研究が客観的で、結果がデータを正確に反映するように努めなければなりません。

6.潜在的な利益相反はありますか?

研究の結果を評価するには、潜在的な利益相反や他のバイアスの原因を探すことが重要です。誰が研究に資金提供したのかを知ることは有用です。研究依頼者と研究者は、研究結果における金銭的利害や個人の名声とは無関係でしたか? 他の独立した情報源から同様のエビデンスが得られていますか? 幸い、ほとんどの医学雑誌の論文には、関連する金銭的関係についての情報が記載されています。

7.報告された結果は、以前の研究とどのように比較されていますか?

介入が有益かつ安全であるかどうかの最も有力な根拠とは、さまざまな研究者による複数の研究結果から成り立つものです。単一の研究が最終的で決定的な答えを示すことはめったにありません。異なる参加者と研究者により同様の方法で研究を複数行う必要があります。複数の研究で同様の結果が得られることは、結果が信頼できて有効であるという確信を与えます。また、複数の研究結果をまとめてデータの質を厳密に評価する、第三者による評価が特に有用です。これらの評価はシステマティックレビューやメタアナリシスと呼ばれます。

8.研究結果が統計的に有意ではあるが臨床的に重要ではないと記載されている場合、どのような意味を持ちますか?

「統計的に有意」とは、研究群間の差が偶然によるものである可能性は低い、ということです。「臨床的に重要」とは、研究で観察された影響の大きさを表しています。例えば、研究では2つの治療群の統計的に有意な差を見つけることができたとしても、その差が非常に小さければ、患者にとっての有用性や安全性に関して臨床的に重要ではありません。

9.研究はいつ行われたものですか?

研究の日付を見てみましょう。この数年間に実施されたものですか? もっと新しい研究がありましたか? 米国国立医学図書館(National Library of Medicine:NLM)のPubMedで公開されている研究を検索できます。

新しい研究は、研究者のトピックに対する見解を劇的に変えることがあります。例えば、古いパイロット研究では、ある補完療法が特定の健康問題に有益である可能性を示唆したとしても、新規の大規模臨床試験では有益な効果がないことが示される場合もあります。認知症に関するイチョウのGEM研究はその一例です。この研究は、認知症の発症に関するイチョウの効果を評価する最も大規模な臨床研究です。結果的に高齢者の認知症予防におけるイチョウの効果を示すことはできませんでしたが、この研究は、補完療法の治療効果を判断するうえで、無作為化試験の重要性を裏付けるものとなりました。また、研究の観点からこの研究は、高齢者を対象とした大規模な認知症予防試験を計画し実施する方法について、研究者に重要な情報をもたらしました。

これらの質問や、科学研究についてあなたが疑問に思うことを調べることは、あなたを知識のある目の高い消費者にし、あなた自身の健康についてより良い判断を下すのに役立ちます。米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)(英語サイト)のウェブサイトをチェックして知識のある消費者となり、あなたの健康管理に役立てましょう。

より多くの情報を調べるには 「科学を知ろう」を参照してください。

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監訳:大野智、北島慎太郎(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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