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ダイダイ
Bitter Orange
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年5月
- 一般名(英名):
- bitter orange, Seville orange, sour orange, zhi shi
- 学術名:
- Citrus aurantium
背景
- ダイダイ(ビターオレンジ)の木は、東アフリカ、アラビア半島、シリアおよび東南アジアが原産です。現在では、地中海地域全体やカリフォルニア、フロリダなど、各地で栽培されています。
- ダイダイ(ビターオレンジ)は、中国伝統医学で消化不良、吐き気および便秘の治療に使用されてきました。
- 現在では、さまざまなダイダイ(ビターオレンジ)製品が胸焼け、鼻づまり、減量、食欲の増進または抑制、および運動能力向上に利用されています。ダイダイ(ビターオレンジ)は、疼痛、打撲傷(あざ)、真菌感染症および褥瘡(床ずれ)に対して、皮膚に塗布することもあります。ダイダイ(ビターオレンジ)は料理のほか、ビールや蒸留酒の風味付けとしても利用されています。
- ダイダイ(ビターオレンジ)の果実には、p-シネフリンなどの天然化学物質が含まれています。p-シネフリンの構造は、ハーブのエフェドラ(マオウ)の主成分であるエフェドリンと類似していますが、p-シネフリンの薬理作用(どのように作用するか)は、エフェドリンとは異なっています。エフェドラは血圧を上昇させ、心臓発作や脳卒中と関連しているため、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)によってサプリメントの販売が禁止されています。ダイダイ(ビターオレンジ)は一般的にサプリメントのエフェドラ(マオウ)の代替品として使用されています。
- 全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association:NCAA)は、「シネフリン(ビターオレンジ)」を禁止薬物の最新リストに興奮剤として掲載しています。
これまでに解明されていること
- 人を対象として健康に対するダイダイ(ビターオレンジ)の有用性を調べた研究は少ししかありません。
研究で明らかになったこと
- ダイダイ(ビターオレンジ)のオイルを皮膚に塗布すると、白癬、頑癬(いんきんたむし)および足の水虫に効果があるかもしれません。
- ダイダイ(ビターオレンジ)に減量効果、不安、月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome)など、他の健康上の効果があるかどうかを証明するには、十分な科学的根拠(エビデンス)はありません。
安全性について
- ダイダイ(ビターオレンジ)は、食物に通常含まれる量を経口(口から)摂取しても安全である可能性が高いです。
- ダイダイ(ビターオレンジ)のみを含有するサプリメントを摂取したあとに、安静時の心拍数が正常値より増加したという女性の症例報告があります。このほか、健康な人がダイダイ(ビターオレンジ)を成分に含む複合型サプリメントを摂取したあとに、失神、狭心症、心臓発作および脳卒中が認められたという報告があります。しかし、これらの製品には複数の成分が含まれていたため、ダイダイ(ビターオレンジ)がどのような役割を果たしたか知ることは難しいです。
- 心臓や循環器に対するダイダイ(ビターオレンジ)の効果(単独、またはカフェインや緑茶などとの併用)に関する確実な根拠は得られていません。ダイダイ(ビターオレンジ)は血圧や心拍数を上昇させるという研究もあれば、ダイダイ(ビターオレンジ)を通常量で使用した場合は、そのような作用はないという研究もあります。
- ダイダイ(ビターオレンジ)を興奮剤のリストに掲載している機関もあれば、通常量では興奮作用はないとする機関もあります。
- 妊娠中、あるいは授乳中のビターオレンジ摂取の安全性についてはほとんどわかっていません。
注意事項
- 自分の健康に責任を持ちましょう。利用している補完療法のすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
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関連トピック
消費者向け情報
関連するファクトシート
参考文献
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ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
Email:ods@nih.gov
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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