海外の情報
パッションフラワー
Passionflower
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年8月
- 一般名(英名):
- passionflower, maypop, apricot vine, maracuja, water lemon
- 学術名:
- Passiflora incarnata
背景
- パッションフラワーはアメリカ東南部、中央アメリカおよび南アメリカが原産のつる植物です。
- アメリカの先住民は、パッションフラワーを鎮静剤として使用していました。16世紀にスペイン人探検家らが南アメリカを訪れた際に、パッションフラワーの存在を知りました。パッションフラワーはヨーロッパに持ち帰られ、広く栽培されるようになり、ヨーロッパの民間療法に取り入れられました。
- 現在では、パッションフラワーはサプリメントとして不安や睡眠障害のほか、疼痛、心調律(心臓リズム)異常、更年期障害の症状、注意欠陥多動性障害に対して良いとされています。火傷や痔を治療するときには、皮膚に塗布します。
これまでに解明されていること
- 不安やそのほかさまざまな症状・疾患に対するパッションフラワーの効果は十分には研究されていません。
研究で明らかになったこと
- わずかな研究において、パッションフラワーが非特異的な不安および手術や歯科処置前の不安の軽減に有用である可能性が示唆されていますが、確実な結論には至っていません。
- パッションフラワーが注意欠陥多動性障害、うっ血性心不全、不眠症、ストレスなどそのほかの健康上の問題に有用であるかどうかを示すには、科学的証拠(エビデンス)が不足しています。
安全性について
- パッションフラワーのアルコール抽出物(エキス)を乾燥させたものを1日最高800 mg、最長8週間にわたり連日摂取した研究では、パッションフラワーは安全に使用されましたが、一部の人には、眠気や錯乱および協調性のない動き(運動失調)を引き起こす可能性があります。パッションフラワーの過剰摂取(例:特定の抽出物(エキス)製剤3.5 gを2日間)は安全ではない可能性があります。
- パッションフラワーの皮膚への局所的な塗布が安全であるかは不明です。
- 妊娠中のパッションフラワーの摂取は、子宮を収縮させる可能性があるため使用すべきではありません。授乳中のパッションフラワー摂取の安全性についてはほとんどわかっていません。
注意事項
- 自分の健康に責任を持ちましょう。利用している補完療法のすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
さらなる情報
関連トピック
参考文献
- Anheyer D, Lauche R, Schumann D, et al.Herbal medicines in children with attention deficit hyperactivity disorder (ADHD): a systematic review(英語サイト).Complementary Therapies in Medicine.2017;30:14-23.
- Miroddi M, Calapai G, Navarra M, et al.Passiflora incarnata L: ethnopharmacology, clinical application, safety and evaluation of clinical trials(英語サイト).Journal of Ethnopharmacology.2013;150(3):791-804.
- Ozturk Z, Kalayci CC.Pregnancy outcomes in psychiatric patients treated with Passiflora incarnata(英語サイト).Complementary Therapies in Medicine.2018;36:30-32.
- Passionflower Natural Medicines website.Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on April 3, 2020.[Database subscription].
- Sarris J. Herbal medicines in the treatment of psychiatric disorders:10-year updated review(英語サイト).Phytotherapy Research.2018;32:1147-1162.
詳細情報
■ NCCIH 情報センター
NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
tty (聴覚障害者や難聴者向け):
1-866-464-3615
Website:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov
■ PubMed®
国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed」(英語サイト)をご覧ください。
ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)■ ODS(ダイエタリーサプリメント室)、NIH(米国国立衛生研究所)
ダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)は、科学情報の評価、研究支援、研究結果の共有、および啓蒙活動を通して、国民のサプリメントに関する知識や理解が深まるよう努めています。この情報は(「知っておきたいこと:サプリメント」など)、さまざまなサプリメント製品や具体的な成分(ビタミンDやマルチビタミン/ミネラルサプリメントなど)に関するファクトシート、PubMed Dietary Supplement Subset(PubMedでダイエタリーサプリメントに関する論文を自動検索する機能)(英語サイト)などを提供しています。
ウェブサイト:https://ods.od.nih.gov/(英語サイト)
Email:ods@nih.gov
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。