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海外の情報

カルシウム
Calcium

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英語版最終改訂年月(翻訳時):2013年11月21日

はじめに

カルシウムについての簡単な説明は、一般向けファクトシートを参照のこと。

一般向けファクトシートの翻訳サイトは以下を参照してください

カルシウムは体内に最も多く含まれるミネラルで、一部の食品にも含まれているが、他の食品に添加されたり、サプリメントとして利用されたりしている。一部の医薬品(制酸薬など)にも配合されている。カルシウムは、筋肉の収縮と拡張、筋肉の機能、神経の伝達、細胞内のシグナル伝達およびホルモン分泌に必要とされているが、これらの極めて重要な代謝機能を促すのに必要な体内総カルシウム量は、1%未満である[1]。血清中カルシウム濃度は極めて厳格に制御され、食事摂取の変化によって変動することはない;身体は、血液、筋肉および細胞内液におけるカルシウム濃度を一定に維持するため、骨組織をカルシウムの貯蔵庫またはカルシウムの供給源として利用する[1]。

体内で必要なカルシウムを供給した後の残りの99%は、骨および歯に貯蔵され、その構造と機能を支える[1]。骨自体は、安定した再吸収および新生骨へのカルシウム沈着によって連続的にリモデリングを行うる。骨の再吸収と沈着のバランスは加齢に伴って変化する。骨の形成は児童および青少年の成長期には再吸収を上回るが、成人早期および中年期に両過程はほぼ同等となる。高齢者、特に閉経後の女性では、骨の破壊が骨の形成を上回って、骨量が減少し、骨粗鬆症のリスクが経時的に増加する[1]。

推奨摂取量

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)が設定した食事摂取基準(DRIs)には、カルシウムや他の栄養素の推奨摂取量が提示されている[2]。DRIは、健常人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。これらの基準値は年齢や性別ごとに異なり、次のような項目がある。

  • 推奨栄養所要量(RDA):ほとんどすべての(97~98%)健常人が栄養所要量を満たすのに十分な平均1日摂取量。
  • 適正摂取量(AI): RDAを設定するためのエビデンスが不十分である場合に示され、十分な栄養が確保できると推定される値に設定されている。
  • 推定平均必要量(EAR):健常者の50%において所要量を満たすと推定される平均1日摂取量。通常、個人ではなく、母集団の栄養摂取量の妥当性を評価するために使われる。
  • 許容上限摂取量(UL):健康上の有害作用を引き起こすとは考えにくい最大1日摂取量。

FNBは、健常者における骨の健康と適切なカルシウム保持率を維持するために必要とされるカルシウムのRDAを設定した。表1にそれらをmg/日単位で示す。

表1:カルシウムの推奨栄養所要量(RDA) [1]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6カ月* 200 mg 200 mg
生後7~12カ月* 260 mg 260 mg
1~3歳 700 mg 700 mg
4~8歳 1,000 mg 1,000 mg
9~13歳 1,300 mg 1,300 mg
14~18歳 1,300 mg 1,300 mg 1,300 mg 1,300 mg
19~50歳 1,000 mg 1,000 mg 1,000 mg 1,000 mg
51~70歳 1,000 mg 1,200 mg
71歳以上 1,200 mg 1,200 mg

*適正摂取量(AI)

カルシウムの摂取源

食品

牛乳、ヨーグルトおよびチーズは天然の豊富なカルシウム源であり、米国では食品から摂取する主要なカルシウム源とされている[1]。乳製品以外のカルシウム源には、白菜、ケール、ブロッコリーなどの野菜がある。ほうれん草にもカルシウムが含まれているが、吸収されにくい欠点がある。ほとんどの穀物には、強化されていない限り、大量のカルシウムは含まれていない;しかし、少量のカルシウムが含まれているため、頻繁に食べていれば食事からカルシウムを摂取できる。カルシウム強化食品には多くのフルーツジュース、飲料、豆腐およびシリアルなどがある。表2にカルシウム源となる食品群を示す。

表2:カルシウム源となる食品群 [2]
食品(1オンスは約28g、1カップは240ml) 1回当たりの摂取量(mg) %DV*
低脂肪ヨーグルト(プレーン)、8オンス(約227g) 415 42
モツァレラ(スキムミルク併用)、1.5オンス(約43g) 333 33
中骨入りイワシのオイル缶、3オンス(約85g) 325 33
低脂肪ヨーグルト(フルーツ)、8オンス(約227g) 313–384 31–38
チェダーチーズ、1.5オンス(約43g) 307 31
無脂肪牛乳、8オンス**(約227g) 299 30
カルシウム強化豆乳、8オンス(約227g) 299 30
低脂肪乳(乳脂肪2%)、8オンス(約227g) 293 29
低脂肪乳(バターミルク)、8オンス(約227g) 284 28
全乳(乳脂肪3.25%)2、8オンス(約227g) 276 28
カルシウム強化オレンジジュース、6オンス(約170g) 261 26
木綿豆腐(硫酸カルシウム添加)1/2カップ***(120ml) 253 25
中骨入りピンクサーモン缶詰(固形)、3オンス(約85g) 181 18
カッテージチーズ(乳脂肪1%)1カップ(240ml) 138 14
絹ごし豆腐(硫酸カルシウム添加)1/2カップ***(120ml) 138 14
カルシウム強化シリアル(インスタント)1カップ(240ml)  100–1,000 10–100
フローズンヨーグルトバニラ味(ソフトクリーム)
1/2カップ (120ml)
103 10
カブラ菜(新鮮なカブラ菜をゆでたもの)1/2カップ(120ml)  99 10
ケール(生のままみじん切り)1 カップ (240ml) 100 10
ケール(新鮮なケールを調理したもの)1カップ (240ml) 94 9
アイスクリームバニラ味1/2カップ  (120ml) 84 8
白菜(パクチョイ:生のままみじん切り)1カップ (240ml) 74 7
精白パン1枚   73 7
チョコレートプディング(冷凍)、4オンス (約113g) 55 6
コーントルティーヤ成型生地(焼成用/フライ用)
直径6インチ1枚
46 5
トルティーヤ粉(焼成用/フライ用)直径6インチ1枚  32 3
低脂肪の発酵サワークリーム大さじ2杯  31 3
全粒粉パン1枚  30 3
生のブロッコリー1/2カップ (120ml) 21 2
クリームチーズ(レギュラー)大さじ1杯  14 1

*DV = 1日摂取量。FDAは、消費者が食事全体における製品の栄養素含有量を比較するのに役立つようDVを設定した。カルシウムに対するDVは成人および4歳以上の小児で1,000 mgである。DVが20%以上となる食品は高栄養源と考えられるが、DVのパーセンテージが低い食品でも健康的な食事をとることができる。米国農務省(USDA)の栄養素データベースウェブサイト[13] では、数多くの食品の栄養素含有量を表示しており、カルシウムを含む食品を網羅している。
** カルシウム含有量は脂肪含有量によって若干変動;脂肪含有量が多いほど、食品中のカルシウム含有量は少なくなる。
***カルシウム塩で処理された豆腐のカルシウム含有量。他の塩で処理された豆腐にはそれほど大量のカルシウムは含量されない。

米国農務省は食品ガイダンスシステムMyPlateにおいて9歳以上の人々は乳製品から1日当たり3カップの食品をとることを推奨している[3]。1カップは、牛乳では1カップ(240ml)、ヨーグルト1カップ、ナチュラルチーズ(チェダーなど)45ml、プロセスチーズ(アメリカンチーズなど)60mlに相当する。

サプリメント

カルシウムサプリメントには主に炭酸塩とクエン酸塩の2種類がある。炭酸カルシウムは入手しやすく、安価で使いやすい。炭酸カルシウムは吸収にあたって胃酸に依存するため、食事と一緒に摂取すると最も効率的に吸収されるのである。これに対し、クエン酸カルシウムは食事に関係なく同じように十分吸収される[4]。また、クエン酸カルシウムは無塩酸症、炎症性腸疾患または吸収障害のある人々にも有用 [1]。サプリメントや強化食品に含まれるカルシウムには、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウムなどがある。クエン酸リンゴ酸カルシウムは一部の強化されたジュースに含まれ、非常に吸収しやすい形のカルシウムである[5]。

カルシウムサプリメントにはさまざまな量のカルシウム成分が含有されている。例えば、炭酸カルシウムは重量によって40%がカルシウム、クエン酸カルシウムは21%がカルシウムである。サプリメントファクトパネルにカルシウム成分一覧が掲載されているため、消費者はさまざまなカルシウムサプリメントによって供給されるカルシウムの量を算出する必要はない。

カルシウム吸収率は1度に消費されたカルシウム総量によって異なる;総量が多いほど、吸収率は下がる。吸収率は500mg以下で最も高くなる[1]。例えば、カルシウム1,000mg/日をサプリメントから摂取している場合、投与回数を分割して、1日2回500mgずつ摂取しても構わない。

カルシウムサプリメントを摂取している人々の一部では、消化器系の副作用(ガス、腹部膨満、便秘またはこれらの症状の組合せ)が発現することがある。炭酸カルシウムはクエン酸カルシウムよりも多くの副作用を誘発するとされている[1]。このため、このような副作用が報告されたら、カルシウムサプリメントの種類について検討する必要がある。症状を緩和する他の方法には、1日のカルシウム摂取回数を分割する、食事と一緒にサプリメントを摂取するなどの方法がある。

医薬品

炭酸カルシウムには胃酸を中和する能力があるため、一部のOTC制酸薬(Tums®、Rolaids®など)に含有されている。その力価によって異なるが、各チュアブル錠やソフトチューは200~400mgの単体カルシウムを放出する。上述したように、炭酸カルシウムは、特に胃酸レベルが正常な人々には受け入れられやすいサプリメントである。

カルシウムの摂取状況

2003年から2006年に行われた米国全国健康栄養調査(NHANES)[6]から、米国における食品およびサプリメントの両方からの推定カルシウム摂取量が明らかになった。生後1歳以上の男性における食事性カルシウムの平均1日摂取量は、どのライフステージに該当するかによって、871~1,266mgの範囲内であった;女性では748~968mgの範囲内であった。平均摂取量がそれぞれのEARを下回っていたグループ(50%以上の人々で栄養摂取の妥当性が認められないグループ)には、9~13歳の男女児童、14~18歳の女子児童、51~70歳の女性および70歳以上の男女が含まれている[1,6]。全体として、女性では男性よりも食品から十分な量のカルシウムを摂取している可能性が低いものと考えられる[7]。

米国一般集団(約70%が高齢女性)の約43%がカルシウム含有のサプリメントを摂取し、サプリメント摂取者ではカルシウム摂取量が約330mg/日まで増加している[1,6]。NHANES 2003-2006データによると、年齢1歳以上の人々における食品およびサプリメントからのカルシウムの平均総摂取量は918~1,296 mg/日の範囲内であった[6]。総カルシウム摂取量を考慮すると、複数の年齢群についてカルシウム不足が懸念されている。そのような年齢群には4歳以上の女性(特に思春期の女子児童)、9~18歳の男児、51歳以上の男性が含まれている[1,8]。スペクトラムのもう一端では、一部の高齢女性において、食品およびサプリメントの両方からのカルシウムを摂取するとULを超える可能性がある[1]。

すべてのカルシウムが実際に消化管で吸収されるわけではない。ヒトでは食品に含有されるカルシウムの約30%が吸収されるが、これは摂取した食品の種類によって異なる[1]。また、カルシウムの吸収は以下のような他の要因からも影響を受けるのである:

  • 摂取量:カルシウム摂取量が増加すると、吸収の効率が低下する[1]。
  • 年齢およびライフステージ:骨の形成のために大量のミネラルを必要とする新生児および乳幼児では、正味のカルシウム吸収率は60%と高くなっている[1,9]。カルシウム吸収率は成人期に15~20%に低下し(妊娠中は増加します)、加齢に伴って若年成人と比べ低下していくのである。推奨されるカルシウム摂取量は、50歳以上の女性、70歳以上の男性および女性の双方においてより高くなる[1,9,10]。
  • ビタミンDの摂取:この栄養素を食品から摂取したり、十分な強度の太陽に当たることで皮膚によって生成されたりすると、カルシウムの吸収が促進される[1]。
  • 食品中に含有される他の成分:フィチン酸およびシュウ酸は、一部の植物に元々含まれており、カルシウムに結合し、その吸収を阻害する。シュウ酸を大量に含有する食品には、ほうれん草、コラードの若葉、サツマイモ、ダイオウ、豆などがある。フィチン酸を大量に含有する食品には線維を含有する全粒製品およびふすま、種、ナッツ、分離大豆などがある[1]。カルシウムの吸収に影響を及ぼす程度にはばらつきがある。研究では、例えば、ほうれん草と牛乳を同時に摂取すると牛乳に含有されるカルシウムの吸収が低下することが判明している[11]。対照的に、小麦製品(ふすまを除く)はカルシウムの吸収を低下させることされている[12]。さまざまな食品を摂取していれば、相互作用によって栄養上の悪影響がほとんどまたはまったく生じないものと考えられ、混合食におけるカルシウム吸収率の違いを考慮した総カルシウムDRIに計上される。

吸収されたカルシウムの一部は、身体から尿、便および汗を介して排泄される。この排泄量は以下の要因から影響を受ける:

  • ナトリウムおよび蛋白質の摂取:ナトリウム摂取量が多いと尿中カルシウム排泄量が増加する[13,14]。また、蛋白質摂取量が多いときも尿中カルシウム排泄量が増加し、カルシウムの状態に好ましくない影響が生じるものと考えられる[13,14]。しかし、近年実施された研究では、蛋白質の摂取量が多いと腸でのカルシウム吸収量も増加し、カルシウムへの影響が効率的に相殺され、体内カルシウム蓄積量は変化しないことが示唆されている[15]。
  • カフェインの摂取:カフェインやお茶に含まれる刺激物カフェインは、カルシウム排泄量をやや増加させ、カルシウムの吸収を低下させる[16]。例えば、入れたてのレギュラーコーヒーを1杯飲んでも、カルシウム減少量はわずか2~3mgである[14]。若年女性がやや多めのカフェイン(1日当たりコーヒー1杯またはお茶2杯)を摂取しても、骨に好ましくない影響が生じることはない[17]。
  • アルコールの摂取:アルコールを摂取すると、カルシウムの吸収が低下[18]し、ビタミンDを活性型に変換するのを促す肝酵素が阻害され [19]、カルシウムの状態に影響が生じることがある。しかし、カルシウムの状態に影響するアルコール摂取量およびやや多めのアルコール摂取が骨への悪影響に関与するかは明らかになっていない。
  • リンの摂取:このミネラルはカルシウムの排泄にほとんど影響しない。複数の観察的研究では、大量のリンを含有する炭酸清涼飲料を摂取すると骨密度が低下し骨折のリスクが増大することが示唆されている。しかし、その原因はリン自体よりミルクをソーダ―に替えたことによるものと考えられる[20,21]。
  • 果物および野菜の摂取:蛋白質を大量に含有する食事や穀物から摂取された代謝性酸は、カルシウム排泄量を増加させる[22]。果物や野菜が代謝されると、重炭酸塩が生成され体内の酸塩基バランスがアルカリ性に移行し、カルシウム排泄量が減少する。しかし、果物や野菜を大量に摂取すると骨塩密度に影響が生じるのかについては明らかになっていない。これらの食品は、カルシウム排泄量を低下させるだけでなく、消化管からのカルシウム吸収量を減少させる可能性があることから、カルシウムのバランスに実際に影響することはない。

カルシウム欠乏症

食品およびサプリメントからのカルシウム摂取量が不十分であっても、短期的には顕著な症状が発現することはない。カルシウムの循環血中濃度は厳密に制御される。低カルシウム血症は、主に医学的な問題や治療(腎不全、胃の外科的切除、利尿剤などの特定の医薬品の使用など)の結果として発現する。低カルシウム血症の症状は、手指のしびれやうずき、筋けいれん、けいれん、嗜眠、食欲減退、心拍リズムの異常などです[23]。カルシウム欠乏症は治療しなければ死に至ることがある。

長期的には、カルシウム摂取量が不十分であると骨減少症が発現する。骨減少症は治療しなければ骨粗鬆症に至ることがある。特に高齢者では、骨折のリスクも増大する[1]。また、カルシウム欠乏症によってくる病が発現することもあるが、これはカルシウム欠乏症よりビタミンD欠乏症との関連性が強い[1]。

カルシウム欠乏のリスク群

明らかなカルシウム欠乏症はあまり見られないが、栄養摂取量が推奨量を下回ると、長期的に見て健康上好ましくない影響が生じることがある。以下のグループでは、カルシウムを余分に摂取する必要が高いものと考えられる。

閉経後の女性

閉経すると、エストロゲンの生成量が低下して骨再吸収が増加しカルシウム吸収が低下するため、骨量低下に至る[10,24,25]。閉経後最初の1年間は骨量が年3~5%減少することが多いが、65歳以降になると通常年1%未満になる[26]。閉経時にカルシウム摂取量を増やしても骨量減少が完全に相殺されることはない[27,28]。エストロゲンおよびプロゲステロンによるホルモン補充療法(HRT)は、カルシウム濃度を上昇させ骨粗鬆症および骨折を予防する。エストロゲン療法は、閉経後の骨リモデリングを閉経前と同レベルまで回復させて骨減少率を低下させる[24]。これには消化管におけるカルシウム吸収量の増加が関与している可能性がある。複数の医療グループおよび専門家の学会は、骨粗鬆症および骨折のリスクの高い女性に対する選択肢としてHRTの使用を裏づけている[29-31]。このような女性は、この件について担当の医療スタッフと話しあう必要がある。さらに、すべての女性において、食品から十分な量のカルシウムを摂取すると骨減少率が緩やかになるものと考えられる。

無月経の女性および女性競技者三主徴

無月経とは、月経が停止している状態または妊娠可能年齢に達しても月経が開始しない状態を指し、その結果としてエストロゲンの循環血液中濃度が低下し、カルシウムのバランスに悪影響が生じる。神経性無食欲症の女性では、健常女性と比べてカルシウムの吸収が低下し、尿中カルシウム排泄率が上昇するだけではなく骨形成速度が低下する[32]。「女性競技者三主徴」とは、不規則な食事、無月経および骨粗鬆症が同時に認められる状態を指す。運動によって無月経になると、通常、骨密度が低下する[33,34]。女性競技者や軍隊に所属している活動的な女性では、骨塩密度の低さ、月経不順、特定の食事パターンおよび疲労骨折の既往が将来的な疲労骨折のリスクの高さと関連している[35]。このような女性は、カルシウムおよびビタミンDの適切な摂取量についてアドバイスを求める必要がある。海軍に所属する女性では基礎訓練中、これらの栄養素のサプリメントによって疲労骨折のリスクが低下することが証明されている[36]。

乳糖不耐症または牛乳アレルギーの人

乳糖不耐症とは、小腸により生成される酵素ラクターゼが乳糖の成分である単糖、グルコースおよびガラクトースに加水分解できるよりも多くの乳糖(牛乳に元々含有される砂糖)を摂取した場合に発現する症状(腹部膨満、鼓腸、下痢など)を指す[37]。これらの症状は、乳糖の摂取量、乳糖含有食品の摂取歴および食事の種類によって左右される。乳糖不耐症であるか否かは判別が困難であるが[38]、一部の報告から米国の成人約25%(アジア系85%、アフリカ系アメリカ人50%、白人10%)で乳糖を消化する能力に限界があるものと示唆される[39,40,41]。

乳糖不耐症の人で、乳製品を摂取しないとカルシウム欠乏症が発現するリスクが高くなる[1,38,39]。研究によると、乳糖不耐症の人々の大部分は、他の食品と一緒に摂取すれば12gまでの乳糖(牛乳240ml中の含有量)を摂取でき、症状は極めて軽微かまったく発現しないと示唆されている;多くの場合、1日に何回か分散して他の食品と摂取すれば大量の乳糖を摂取できる[1,38,39]。症状を軽減する他の選択肢としては、熟成チーズ(チェダーやスイスチーズ)、ヨーグルト、低乳糖または無乳糖牛乳の摂取などがある[1,38,39]。一部の研究では、乳糖負荷量を経時的に増量し順応を誘発できるか否かについて検討されたが[42,43]、この方法を裏づけるエビデンスには一貫性がない[38]。

牛乳アレルギーは乳糖不耐症よりも頻度が低く、一般集団の0.6~0.9%です[44]。牛乳アレルギーの人々は、牛乳中の蛋白質を含有するあらゆる製品を摂取することができないため、カルシウム不足となる危険性が高い。

乳糖不耐症の人々および牛乳アレルギーの人々は、適切な量のカルシウムを摂取するために、乳製品以外の栄養源(ケール、チンゲン菜、白菜、ブロッコリー、コラード、強化食品など)を選択するか、カルシウムサプリメントを摂取することがでる。

菜食主義者

菜食主義者は、シュウ酸およびフィチン酸を含有する植物性製品を多く摂取するため、何でも食べる人々よりもカルシウム吸収量が低くなることがある[1]。乳卵菜食主義者(卵および乳製品は食べる人々)および非菜食主義者ではカルシウム摂取量はほぼ同等である[45,46]。しかし、完全菜食主義者(動物性製品を一切食べない人々)およびオボベジタリアン(卵は食べるが乳製品は食べない人々)は、乳製品を摂取しないため、カルシウム摂取量が十分ではないことがある[47,48]がんと栄養に関する欧州前向きコホート研究」のオックスフォードコホートでは、骨折のリスクは肉食者、魚食者および菜食主義者とほぼ同等であったが、完全菜食主義者ではおそらく平均カルシウム摂取量が低いためにそのリスクが高かった [49]。食習慣に大きな違いがあるため、カルシウムの状態に関して、菜食主義者の食事が与える影響を評価することは困難であることから、個別に検討しなければならない。

カルシウムと健康

健康増進、疾患の予防や治療にカルシウムの潜在的な利益に関する主張が多くある。本項では、カルシウムが関与する/関与する可能性のある複数の領域、すなわち、骨の健康と骨粗鬆症、心血管障害、血圧の制御と高血圧、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、腎臓結石および体重管理に注目している。

骨の健康と骨粗鬆症

骨は、児童期および思春期の成長期に大きさおよび密度が増加し、30歳ごろに骨密度はピークに達します。最高骨密度が高いほど、加齢による深刻な骨量減少の発生が遅くなる。従って、すべての人々が、児童期、思春期および成人期早期全体を通して適切な量のカルシウムおよびビタミンDを摂取する必要がある。骨粗鬆症は、多孔性で脆弱な骨を特徴とする疾患で、米国では1000万人以上(うち80%が女性)の成人にとって深刻な公衆衛生上の問題である(さらに3400万人では骨粗鬆症の前段階である骨減少症または骨密度低下が認められている)。骨粗鬆症は、股関節、脊椎、手首、骨盤、肋骨および他の骨の骨折と最も強く関連している[50]。米国では、骨粗鬆症による骨折が年間で推定150万件発生している[51]。入院中の高齢者では、カルシウムとビタミンDのサプリメントを摂取することで、骨折や転倒(骨折の原因)の減少に有効であったことが示されている[52,53]。

カルシウム摂取量が少ない場合または消化されたカルシウムの吸収が良好でない場合、正常な生物学的機能維持のために体内に貯蔵されているカルシウムが利用されて骨破壊が生じる。また、正常な加齢の一過程として、特に閉経後の女性では、エストロゲン分泌量の低下によって骨量低下が生じる。女性、痩身、非活動的、高齢、喫煙、アルコールの過剰摂取、骨粗鬆症の家族歴などのさまざまな要因によって骨粗鬆症の発現リスクが増大する[54]。

さまざまな骨塩密度(BMD)測定検査が現在利用できる。これらの検査から得られたTスコアに基づいて、個人のBMDと最適なBMD(30歳の健常成人における値)を比較した。Tスコアが-1.0以上であれば骨密度は正常、-1.0~-2.5であれば骨密度が低く(骨減少症)、-2.5以下では骨粗鬆症が疑われる[55]。骨粗鬆症はすべての人種、民族、性別の人々に影響するが、女性では男性よりも骨格が小さく閉経に伴って骨量減少が加速するためにリスクが最も高くなっている。生涯を通して健康な骨を形成し維持するためには、定期的な運動と適切な量のカルシウムとビタミンDを摂取することが最重要である。体重負荷運動(ウォーキング、ランニング、足を踏み切って地面を蹴飛ばし重量に反する動きをすることなど)および抵抗運動(健康体操や体重にかかわる運動など)も骨の健康を保つのに有用である。

1993年、米国食品医薬品局(FDA)は食品およびサプリメントに対するカルシウムおよび骨粗鬆症に関連する栄養機能表示を承認した[56]。2010年1月、この栄養機能表示が拡大され、ビタミンDも含まれるようになったのである。典型的な栄養機能表示は以下の通り:「十分にバランスのとれた食事の一環として、適正量のカルシウムを摂取すると、骨粗鬆症のリスクが低下することがある」、「身体的活動とあわせて、健康的な食事の一環として適切な量のカルシウムとビタミンDを摂取すると、晩年における骨粗鬆症のリスクが低下することがある」[56]。

結腸直腸癌

結腸直腸癌の予防におけるカルシウムの役割の可能性に関する観察的および実験的研究から得られたデータは、やや一貫性に欠けるが、予防効果があることを強く示唆していると考えられる[1]。複数の研究では、食品(低脂肪乳製品による栄養源)および/またはサプリメントから大量のカルシウムを摂取すると大腸癌のリスクが低下することが判明している[57-60]。「カルシウムによるポリープ予防に関する研究」の追跡調査では、炭酸カルシウムのサプリメントを摂取したところ、癌の前段階である大腸腺腫(非悪性腫瘍)のリスクが低下した[61,62]。その効果はサプリメント摂取中止から5年経過しても継続していた[63]。2件の大規模な前向き疫学的研究では、700~800 g/日のカルシウムを摂取した男女で左側大腸癌の発現リスクが40~50%低下した[64]。しかし、他の観察的研究ではこのような関連性が決定的なものではないことが判明している[60,65,66]。

女性の健康イニシアチブ(Women's Health Initiative)では、36,282人の閉経後女性を対象とする臨床試験で、1日当たり1,000 mgのカルシウムと400国際単位(IU)のビタミンD3のサプリメントが7年間投与されたが、進行結腸直腸癌のリスクにはプラセボと比べて有意差は認められなかった[67]。コクラン・システマティックレビューの著者らは、カルシウムサプリメントの摂取は結腸直腸腺腫の予防に多少効果があるかもしれないが、結腸直腸癌の予防を目的としてカルシウムのサプリメントの常用を推奨するためのエビデンスは十分ではないという結論に達した[68]。大腸癌の発現までに長い潜伏期間があることを考慮すると、カルシウム摂取が結腸直腸癌リスクに影響するか否かを十分に理解するためには、長期にわたる研究が必要である。

前立腺癌

複数の疫学的研究では、カルシウム、乳製品またはその両方の大量摂取と前立腺癌発症リスクの増加に関連性があることが判明している[69-75]。しかし、結果には一貫性がなく、カルシウム摂取と前立腺癌リスクにおいて弱い関連性があるという結果やまったく関連性がないという結果、または好ましくない関連性があるという結果が得られている[76-79]。前向き研究のメタ解析の著者らは、乳製品およびカルシウムを大量に摂取すると前立腺癌リスクがわずかに増加する可能性があるという結論に達した[80]。

入手可能なエビデンスの解釈には複雑さが伴う。それは、乳製品の影響とカルシウムの影響を区別することが困難なためである。しかし、全体的に、観察的研究の結果から、カルシウムの1日総摂取量が1,500 mgまたは2,000 mg以上であれば、それがもっと低い場合(500-1,000 mg)と比べて、前立腺癌(特に進行性または転移性癌)のリスクが増大する可能性があるものと示唆される[1,81]。前立腺癌のリスクへのカルシウムおよび/または乳製品の影響を明らかにし、潜在的な生物学的メカニズムを解明するためには、さらなる研究が必要とされる。

心血管障害

カルシウムは、脂質の腸管吸収の低下、脂質排泄量の増加、血中コレステロールの低下および細胞へのカルシウム流入促進によって、心血管障害(CVD)のリスクを低下させるのに役立つものと考えられている[1]。しかし、CVDのリスクへのカルシウムの影響に関する前向き研究のデータには一貫性がなく、乳製品中のカルシウムがサプリメントに含有されるカルシウムと比べて心血管系に異なった影響を及ぼすのか否かは明らかになっていない。アイオア女性健康研究では、閉経後の女性が食事および/またはサプリメントからカルシウムを大量に摂取したところ、虚血性心疾患による死亡率が低下した[82]。対照的に、スウェーデンの高齢女性から成るコホートでは、総カルシウム摂取量および乳製品からのカルシウム摂取量の両方が1,400 mg/日を上回ると、600~1,000 mg/日であった場合と比べ、CVDおよび虚血性心疾患による死亡率が上昇した[83]。他の前向き研究では、カルシウム摂取と心臓系イベントまたは心血管障害による死亡率のあいだに有意な関連性は存在しないことが証明されている[81]。発作のデータには一貫性がなく、カルシウムを大量摂取すれば発作のリスクが低下するという結果が得られた試験もあれば、まったく関連性がないまたは反対の傾向があるという結果が得られた試験もある[81,83]。

最近実施された研究では、CVDに関連するカルシウムサプリメントの安全性について懸念事項が明らかになった。Xiaoらの報告によると、1,000 mg/日以上のカルシウムをサプリメントから摂取した男性ではカルシウムのサプリメントを摂取しなかった男性に比べて全体的なCVDによる死亡のリスクが20%高かったが、女性ではサプリメントからのカルシウム摂取とCVDによる死亡率に関連は認められなかった[84]。Bollandらは、女性の健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)から得られたデータを再解析したところ、カルシウムのサプリメント(1,000 mg/日)をビタミンD(400IU/日)とともに摂取した場合とカルシムのサプリメントのみ摂取した場合、試験登録時にカルシウムのサプリメントを摂取していなかった女性では心血管系イベントのリスクが増大したことが明らかになった[85]。他の研究でも、カルシウムのサプリメントを摂取すると心筋梗塞[86-88]や冠動脈疾患[89]などの心血管系イベントのリスクが増加することが証明されている。しかし、93,000人を超える閉経後女性を約8年間追跡調査したWHI臨床試験データとWHI観察的研究データを併合した解析を2013年に行った著者らは、「心筋梗塞、冠動脈疾患、全体的な心疾患、発作または全体的な心血管障害へのカルシウムおよびビタミンDのサプリメント摂取において、好ましくない影響を示すエビデンスはほとんどない」という結論に達しました[90]。

研究者らは、心血管系へのカルシウムサプリメントの好ましくない影響には過剰なカルシウム摂取によって血清中カルシウム濃度の正常な恒常性調節が機能しなくなったときに生じる高カルシウム血症が関与しているという仮説を立てている[83]。高カルシウム血症は血液凝固の亢進、血管の石灰化および動脈壁の硬化と関連があり、これによってCVDのリスクが増加する[84,85,91,92]。また、大量のカルシウムを摂取すると、心血管系イベントのリスク増加と関連のある線維芽細胞増殖因子23の循環レベルが上昇する[83]。特にカルシウムサプリメントを摂取すると血清中カルシウム濃度が上昇する。一部の研究者らはカルシウム総負荷というよりもこの急激な変化が観察された有害な影響に関与しているという仮説を立てている。[85]

サプリメントによるカルシウム摂取とCVDリスクの関連性について、試験の副次的解析においてのみCVDの転帰を評価しており、現時点ではいずれのカルシウムサプリメントに関する試験もこれらの転帰を主要エンドポイントとしていないことから[91,93]、多くの研究者はエビデンスの強さに疑問を抱いている。 2012年に行われた前向き研究とランダム化臨床試験のレビューにおいて、Wang氏らは食事またはサプリメントからカルシウムを摂取してもCVDのリスクにほとんどまたはまったく影響がないとみられるが、現存のエビデンスから確定的な結論を出すことはできないと述べている[91]。カルシウムサプリメントが心血管系に有害な影響を及ぼす可能性があるということは、科学界で大きな議論となっており、さらなる研究が必要とされている。

血圧および高血圧

複数の臨床試験においてカルシウム摂取量の増加と低血圧および高血圧リスクの双方に関連があることが示されたが[94-96]、そのリスク減少は一貫していないが、「女性の健康調査」(Women's Health Study)では、中高年女性においてカルシウム摂取量は高血圧のリスクと逆の相関が認められた[97]。しかし、他の研究では、カルシウム摂取量と高血圧の発現頻度には関連がないことが判明している[81]。カルシウムサプリメントの高血圧への影響についてのシステマティックレビューでは、大部分の研究で質に問題があり、方法が異なっていることを主な理由として、そのような関連性が認められたとしてもわずかであることが著者らによって明らかになった[98]。

血圧へのカルシウムの影響は、試験対象とする集団によって異なることがある。高血圧の被験者ではカルシウムサプリメントの摂取によって収縮期血圧が2~4 mmHg低下するようであるが、血圧正常の被験者では収縮期または拡張期血圧への顕著な影響は生じないとみられる[81]。

他の観察的および実験的研究では、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)や線維が豊富で脂肪が少ない非菜食を摂取している人々では血圧が低い傾向があるものと示唆されており[48,99-102]。3種類の食事パターンの血圧への影響を検証するために、「高血圧症を予防するための食事法」(DASH)の研究が実施された。3種類の食事パターンとは、「典型的な」アメリカ人の食事を対照群として、果物や野菜が豊富に含まれる食事、そして果物、野菜、低脂肪乳製品が豊富に含まれる食事であった。乳製品が含まれた食事では最も顕著な血圧の降下が認められたが[103]、この影響へのカルシウムの関与については評価されなかった。追加情報およびサンプルとしてDASHメニュープランについては国立心肺血液研究所ウェブサイトを参照のこと。

腎臓結石

尿路の腎臓結石は通常、その大部分がシュウ酸カルシウムから構成されている。一部の研究(全てではない)では、サプリメントによるカルシウム摂取と腎臓結石のリスクに正の相関があると示唆され、これらの所見は成人におけるカルシウムULの設定の基準として用いられた[1]。女性の健康イニシアチブでは、閉経後の女性がカルシウムサプリメント1,000 mg/日とビタミンD 400IU/日を7年間摂取したところ、プラセボを摂取した被験者と比べて腎臓結石のリスクが17%高かったことが判明した[104]。看護師健康調査でも、サプリメントによるカルシウム摂取と腎臓結石の形成に正の関連が認められた[105]。一方、食事から大量のカルシウムを摂取しても腎臓結石が形成されることはないとみられ、実際に腎臓結石の形成が予防できる可能性がある[1,105-108]。ほとんどの場合、腎臓結石の他のリスクファクター(食事によるシュウ酸塩の大量摂取、不十分な水分摂取など)が、カルシウム摂取よりも大きな役割を果たしている可能性が高いものと考えられる[109]。

体重管理

複数の研究において、カルシウムの大量摂取と低体重または経時的な体重増加の緩やかさに関連があることが判明している [110-113]。2つの説が提唱されている。1つ目は、カルシウムの大量摂取によって2種のホルモン(甲状腺ホルモンと活性型ビタミンD)の生成量が低下して脂肪細胞中のカルシウム濃度が低下し、脂肪細胞中の脂肪分解が促進され脂肪蓄積が妨げられるというものである[112]。2つ目は、食事またはサプリメントにより摂取されたカルシウムが消化器で少量の食物脂肪と結合しその吸収が妨げられるというものである[112,114,115]。特に乳製品にはカルシウム含有量のみから推測されるよりも大きな影響を体重に及ぼす他の成分が含まれている可能性がある[116-121]。

上記の知見が得られているものの、臨床試験の結果はその大部分が好ましくないものであり。例えば、過体重および肥満の成人340例では、カルシウム(炭酸カルシウム)1,500mg/日をサプリメントから2年間摂取しても、プラセボを摂取した被験者と比べて体重への臨床的に重大な影響は認められなかった[122]。カルシウムまたは乳製品から摂取されたカルシウムの体重管理への影響に関する公開された試験について3件のレビューが行われたが、いずれでもほぼ同様の結果が得られた[81,123,124]。2006年に公表された13件のランダム化比較試験のメタ解析では、サプリメントからカルシウムを摂取した場合でも乳製品を大量摂取した場合でも体重減少への統計学的に有意な影響は認められなかった[123]。さらに近年では、2009年の医療研究品質庁によるエビデンスレポートにおいて、全体的に、臨床試験の結果からサプリメントから摂取されたカルシウムの体重減少への影響は裏づけられないという結論が得られた[81]。また、2012年に実施された29件のランダム化比較試験のメタ解析でも、長期試験において乳製品を大量に摂取しても体重や脂肪減少へのベネフィットは認められなかったことが判明した[124]。全体として、臨床試験の結果から、カルシウムの大量摂取と低い体重または体重減少との関連は裏づけられない。

カルシウム過剰摂取による健康上のリスク

カルシウム血中濃度が過度に上昇すると(高カルシウム血症)、腎機能不全、血管/軟組織の石灰化、高カルシウム尿症(尿中カルシウム濃度の上昇)および腎臓結石が発現することがある[1]。カルシウムを過剰摂取すると高カルシウム血症が発現する可能性があるが[83]、ほとんどの場合、原発性副甲状腺機能亢進症または悪性病変に伴って発現する[1]。

カルシウムを大量に摂取すると便秘が発現することがある。また、鉄や亜鉛の吸収が妨げられることもあるが、この影響については十分に確認されていない[1]。食品ではなくサプリメントからカルシウムを大量に摂取すると、腎臓結石のリスクが上昇する[1,104,105]。いくつかのエビデンスによるとカルシウムの大量摂取と前立腺癌のリスクに関連があるようであるが、この影響は十分に理解されていない。その理由の1つとして、乳製品による影響とカルシウムによる影響を区別することが困難であることが挙げられる[1]。また、一部の研究でも、特にサプリメントからカルシウムを大量摂取すると心血管障害のリスクが増大することが示されている[83-89]。

食品栄養委員会によって設定されたカルシウムの許容上限摂取量(UL)を表3に示している(1日当たりのmg単位)。食品からカルシウムを過剰摂取することは稀である。カルシウムの過剰摂取はカルシウムサプリメントを摂取した場合に生じる可能性が高い。2003~2006年のNHANESデータから、50歳以上の高齢女性のうち約5%で、食品およびサプリメントによる推定総カルシウム摂取量がULを約300~365mgを上回っているものと示唆される[1,6]。

表3:カルシウムの許容上限摂取量(UL) [1]
年齢 性別 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6カ月 1,000 mg 1,000 mg
生後7~12カ月 1,500 mg 1,500 mg
1~8歳 2,500 mg 2,500 mg
9~18歳 3,000 mg 3,000 mg 3,000 mg  3,000 mg 
19~50歳 2,500 mg 2,500 mg 2,500 mg 2,500 mg
51歳以上 2,000 mg 2,000 mg

医薬品との相互作用

カルシウムのサプリメントは種々の医薬品との相互作用を引き起こす。以下に例を記載する。定期的にこれらの医薬品を服用している人は、カルシウム摂取について医療スタッフと話し合う必要がある。

カルシウムと下記の医薬品を併用するとこれらの医薬品の吸収が低下することがある:ビスホスホネート(骨粗鬆症の治療薬)、フルオロキノロン系およびテトラサイクリン系の抗生物質、レボチロキシン、フェニトイン(抗けいれん薬)およびチルドロン酸二ナトリウム(パジェット病の治療薬)[125-127]。

チアジド系利尿薬は、炭酸カルシウムおよびビタミンDのサプリメントと相互作用を起こし、高カルシウム血症や高カルシウム尿症のリスクを増加させることがある[126]。

アルミニウムおよびマグネシウムを含有する制酸薬はいじれも尿中カルシウム排泄量を増加させる。鉱油および刺激性下剤はカルシウムの吸収を低下させる。プレドニゾンなどのグルココルチコイドは、カルシウム枯渇を引き起こし、数か月間使用すると最終的に骨粗鬆症に至ることがある[126]。

カルシウムと健康的な食事

米連邦政府が発行する「アメリカ人のための食生活の指針2010」では、「栄養は主として食事から摂取すべきである。栄養分を豊富に含む食品(多くは未加工品)には、サプリメントに含まれることの多い必須ビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維や体によい天然成分も含有している。・・サプリメントは・・特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるには有益と考えられる」と述べている。

健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)と米国農務省の食事の指針システム、MyPlate(私の食事)を確認すること。

「アメリカ人のための食生活指針」では健康的な食事を次のように述べている。

  • さまざまな果物、野菜、全粒穀物、無脂肪もしくは低脂肪ミルクおよび乳製品の積極的な摂取
    牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの多くの乳製品にはカルシウムが豊富に含まれている。一部の野菜にも、強化シリアルやジュースと同じように、大量のカルシウムが含まれている。
  • 赤身の肉、鶏肉、魚、豆類、卵、ナッツなど。
    カルシウム塩によって作られる豆腐は、食べられる骨のついたイワシや鮭の缶詰と同じように、素晴らしいカルシウム源である(ラベルをチェック)。
  • 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、塩分(ナトリウム)および添加糖質の摂取を少なくする。
    低脂肪および無脂肪の乳製品には脂肪分の高い乳製品とほぼ同等のカルシウムが含まれている。
  • 1日に必要なカロリー摂取量を超えないこと。

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監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

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