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海外の情報

亜鉛
Zinc

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終改訂年月(翻訳時):2013年6月5日

はじめに

亜鉛についての簡単な説明は、一般向けファクトシートを参照のこと。

一般向けファクトシートの翻訳サイトは以下を参照してください

亜鉛は、一部の食品の中に含まれ自然界に存在する必須ミネラルである。他の食品に添加され、サプリメントとして販売されている。亜鉛は、風邪薬として販売されている多くの風邪用トローチや一部の市販薬にも含まれている。

亜鉛は、細胞代謝のさまざまな側面に関係している。亜鉛は、約100種類の酵素の触媒活性に必要で [1,2]、免疫機能 [3,4]、蛋白合成 [4]、創傷治癒 [5]、DNA合成 [2,4] および細胞分裂 [4] に重要な役割を果たす。また、妊娠期、小児期、および青年期の正常な成長と発達も支え [6-8]、適切な味覚や嗅覚に必要である [9]。体には特別な亜鉛の貯蔵システムがないので、亜鉛を毎日摂取することは定常状態を維持するために必要である [10]。

推奨摂取量

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)が設定した食事摂取基準(DRIs)には、亜鉛や他の栄養素の推奨摂取量が提示されている[2]。DRIは、健常人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。これらの基準値は年齢や性別ごとに異なり、次のような項目がある。

  • 推奨栄養所要量(RDA):ほとんどすべての(97~98%)健常人が栄養所要量を満たすのに十分な平均1日摂取量。
  • 適正摂取量(AI):RDAを設定するためのエビデンスが不十分である場合に示され、十分な栄養が確保できると推定される値に設定されている。
  • 許容上限摂取量(UL):健康上の有害作用を引き起こすとは考えにくい最大1日摂取量。
亜鉛の現在のRDA値を表1に示している [2]。0~6カ月の乳幼児については、健康な母乳栄養児における平均摂取量に相当する亜鉛のAI値をFNBが定めている。
表1 亜鉛の推奨栄養所要量(RDA)[2]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6(カ月) 2 mg* 2 mg*
7~12(カ月) 3 mg 3 mg
1~3(歳) 3 mg 3 mg
4~8(歳) 5 mg 5 mg
9~13(歳) 8 mg 8 mg
14~18(歳) 11 mg 9 mg 12 mg 13 mg
19(歳)以上 11 mg 8 mg 11 mg 12 mg

*適正摂取量(AI)

亜鉛の摂取源

食品

さまざまな種類の食品が亜鉛を含んでいる(表2) [2]。牡蠣は、その他の食品と比べて1食当たりに含まれる亜鉛の量が多いが、米国人の食事に含まれる大半の亜鉛を提供しているのは、赤身の肉や鶏肉である。その他の良好な供給源として、豆類、ナッツ類、一部の魚介類(カニやロブスターなど)、全粒穀類、栄養強化朝食用シリアル類、および乳製品などが挙げられる[2,11]。

フィチン酸塩:全粒粉のパン、シリアル類、マメ製品、およびその他の食品に含まれており、亜鉛と結合して亜鉛吸収を阻害します[2,12,13]。したがって、穀物や植物性食品からの亜鉛の生物学的利用能は、動物性食品と比べて低くなります。ただし、多くの穀物や植物を中心とした食事は、依然として亜鉛の良好な供給源である[2]。

表2 亜鉛源の食品群 [11]
食品 1食当たりの
含有量(mg)
%DV*
牡蠣フライ、3オンス 74.0 493
牛のチャック肉の蒸し煮、3オンス 7.0 47
調理済みアラスカキング蟹、3オンス 6.5 43
網焼きにした牛肉パティ、3オンス 5.3 35
朝食用シリアル、亜鉛DVの25%強化、3/4カップ 3.8 25
調理済みロブスター、3オンス 3.4 23
調理済み豚の腰肉切り身、3オンス 2.9 19
缶入りベークドビーンズ、プレーン
またはベジタリアン用、1/2カップ
2.9 19
調理済み鶏もも肉、3オンス 2.4 16
低脂肪フルーツヨーグルト、1カップ 1.7 11
乾燥カシューをローストしたもの、1オンス 1.6 11
調理済みヒヨコ豆、1/2カップ 1.3 9
スイスチーズ、1オンス 1.2 8
水で調理したインスタントのオートミール、プレーン、1袋 1.1 7
低脂肪または無脂肪ミルク、1カップ 1.0 7
乾燥・ローストしたアーモンド、1オンス 0.9 6
調理済みインゲン豆、1/2カップ 0.9 6
ローストした鶏の胸肉、皮を取り除いたもの、1/2個 0.9 6
チェダーまたはモツァレラチーズ、1オンス 0.9 6
冷凍したグリーンピースを茹でたもの、1/2カップ 0.5 3
調理したヒラメまたはシタガレイ、3オンス 30.3 2

*DV = 1日摂取量。FDAは、消費者が食事全体における製品の栄養素含有量を比較するのに役立つようDVを設定した。亜鉛に対するDVは成人および4歳以上の小児で15 mgである。ただし、亜鉛強化食品でなければ、食品ラベルに亜鉛量を記載する必要はない。DVが20%以上となる食品は高栄養源と考えられる

米国農務省(USDA)の栄養素データベースウェブサイト[11] では、数多くの食品の栄養素含有量を表示しており、亜鉛を含む食品を網羅している。

サプリメント

サプリメントには、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛など、数種類の形の亜鉛が含まれている。亜鉛元素の比率は、種類によって異なる。たとえば、硫酸亜鉛では、約23%が亜鉛元素で構成されている。したがって、220 mgの硫酸亜鉛には50 mgの亜鉛元素が含まれる。亜鉛元素の含有量は、サプリメント容器のSupplements Factsパネルに表示されている。吸収、生物学的利用能、または忍容性の点で亜鉛の形によって相違が生じるかどうかは、研究では明らかになっていない。

標準的な錠剤とカプセルに加え、亜鉛含有風邪用トローチにはサプリメントとラベル表示されているものがある。

その他の供給源

亜鉛は、さまざまな製品に含まれている。その中には、ホメオパシー薬としてラベル表示され、風邪の治療・予防目的で市販されている製品もある。亜鉛を長期または永続的に使用している症例の中で、多くのの無嗅覚(嗅覚の消失)の症例報告が、亜鉛を含む鼻腔用ジェルまたはスプレー式点鼻薬の使用に関係するものであると報告されている[14,15]。2009年6月に、FDAは、無嗅覚を引き起こす可能性があるとして、3種類の亜鉛含有鼻腔内投与製品の使用を停止するよう、消費者に勧告した [16]。製造業者は、市場からこれらの製品を回収した。これまでのところ、これらの安全性に関する問題が、亜鉛を含む風邪用トローチに関係しているとは考えられていない。

亜鉛は、17~34 mg/gの比率で一部の義歯接着クリームにも含まれている[17]。これらの製品を指示通り(0.5~1.5 g/日)に使用する場合には問題ないが、慢性的に過度に使用すると亜鉛毒性を引き起こし、銅欠乏症や神経疾患に至る恐れがある。この毒性は、1週間に標準的な2.4オンス(約100 g)の義歯接着クリームを2本以上使用した人から報告されている [17,18]。現在では、多くの義歯クリームには、亜鉛が除去されている。

亜鉛の摂取状況

2つの全国調査、すなわち1988~1991年の国民健康栄養調査 (NHANES III) [19] と1994年の個人別食物摂取継続調査(CSFII) [20] によると、米国の大多数の乳幼児(特に調整乳保育児)、小児、および成人は、推奨量の亜鉛を摂取している

しかし、高齢者の亜鉛摂取量はぎりぎりであることが示唆されている。 NHANES IIIデータを分析した結果、60歳以上の成人の35~45%で、亜鉛摂取量が高齢女性の推定平均所要量6.8 mg/日、高齢男性の推定平均所要量9.4 mg/日を下回っていることが判明した。食品およびサプリメントの両方からの摂取を考慮すると、高齢者の20~25%で亜鉛摂取量が依然として不適正であることが判明した [21]。

十分な食事をしていない(時に、またはしばしば十分な食物が摂取されていない)米国の家庭の2~4%の高齢成人でも、亜鉛の摂取量が不足しているかもしれない [22]。 NHANES IIIデータから、食料が不足している家庭の60歳以上の成人では、食料が十分にある家庭と比較して、亜鉛やその他の複数の栄養素の摂取量が少なく、1日における亜鉛摂取量がRDAの50%を下回る傾向の強いことが示されている [23]。

亜鉛欠乏症

亜鉛欠乏症の特徴は、発育遅延、食欲不振、および免疫機能障害である。重症の場合、亜鉛欠乏症は脱毛、下痢、性的発達の遅延、インポテンス、男性の性腺機能低下、および目と皮膚の病変を引き起こす [2,8,24,25]。体重減少、創傷治癒遅延、味覚障害や精神的無気力も起こる場合がある[5,8,26-30]。これらの症状の多くは非特異的で、多くの場合、その他の健康状態に関係している。したがって、亜鉛欠乏症かどうかを確認するには、検診が必要である。

亜鉛は、さまざまなタンパク質や核酸[33]の構成要素として体全体に分布するため、臨床検査[2,31,32]で適切に亜鉛の栄養状態を測るのは困難である。血漿中または血清中亜鉛濃度は、亜鉛欠乏症の評価に最も一般的に使用される指標である。ただし、これらの値は、厳しいホメオスタシス制御メカニズム[8]により、必ずしも細胞内亜鉛状態を反映するとは限らない。亜鉛欠乏症の臨床的影響は、臨床検査値に異常がなくても存在しえる。臨床医は、亜鉛補充の必要性を判断する際に、リスク要因(不適切なカロリー摂取、アルコール依存症、消化器疾患など)および亜鉛欠乏症の症状(乳幼児・乳児の成長障害など)を考慮する。

亜鉛欠乏のリスク群

北米では、顕性の亜鉛欠乏症はまれである [2]。亜鉛欠乏症が発生するのは、亜鉛摂取または吸収が不十分、体内からの亜鉛損失が増加、または亜鉛必要量が増加[26,27,34]する場合が一般的である。亜鉛欠乏症または亜鉛不足のリスクのある人は、毎日の食事に良好な亜鉛源が含まれている必要がある。亜鉛のサプリメントの補充も、状況によっては適切な処置であるかもしれない。

消化器疾患などがある人

消化器手術や消化器疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、短腸症候群など)は、亜鉛の吸収を抑制し、おもに消化管からであるが、それほどでないが腎臓からの内因性の亜鉛の喪失を増加させる。 [2,26,35,36]。亜鉛欠乏症と関係するその他疾患には、吸収不良症候群、慢性肝疾患、慢性腎疾患、鎌状赤血球症、糖尿病、悪性腫瘍などの慢性疾患がある[37]。慢性下痢も、過度の亜鉛の喪失を引き起こす[24]。

菜食主義者

菜食主義者が食事から摂取する亜鉛の生物学的利用能は、非菜食主義者と比較して劣る。これは、生体が利用可能な亜鉛を多く含み、亜鉛吸収を高めることができる肉を菜食主義者が食べないからである。さらに、菜食主義者は、一般的に、亜鉛を結合してその吸収を阻害するフィチン酸塩を含むマメ製品や全粒穀類を多く摂取している[31,38]。

菜食主義者は、非菜食主義者よりも、RDA値より50%程度多くの亜鉛を必要とする場合がある[2]。また、菜食主義者は、フィチン酸塩と亜鉛の結合を抑制し、亜鉛の生物学的利用能を高める食物調理法を用いると有益だと思われる。亜鉛の生物学的利用能を高める方法には、豆類、穀類、および種子類を数時間水に浸してから調理する、芽が出るまで浸漬しておくなどがある [38]。菜食主義者は、無発酵の製品(クラッカーなど)よりも発酵させた穀物製品(パンなど)を摂取することによって、亜鉛摂取量を増やすこともできる。発酵させると、フィチン酸塩が一部分解されるからである。体内には、無発酵の穀物より発酵させた穀物から多くの亜鉛が吸収される。

妊婦と授乳婦

妊婦、特にぎりぎりの亜鉛状態で妊娠期間が開始した場合、胎児の亜鉛必要量が多いことからも、亜鉛不足になるリスクが高くなる[39]。授乳も、母体の亜鉛貯蔵を枯渇させる可能性がある[40]。これらの理由により、妊婦や授乳婦では亜鉛のRDA値がその他の女性よりも高くなる(表1を参照)[2]。

母乳だけで保育されている月齢の高い乳児

母乳には、生後4~6カ月の乳児には十分な亜鉛(2 mg/日) が含まれているが、1日に3 mgを必要とする7~12カ月の乳児に対する推奨量の亜鉛は供給されない[2,33]。7~12カ月の乳児は、母乳に加え、亜鉛を含む年齢相応の食品や調製乳を摂取するべきである[2]。亜鉛の補充は、軽度から中等度の発育不全を示す小児や亜鉛欠乏症の小児の成長率を改善している [24,41]。

鎌状赤血球症患者

大規模な横断的調査の結果から、鎌状赤血球症小児患者の44%は、おそらく栄養所要量の増加および/または低栄養状態が原因で[43]、血漿中亜鉛濃度が低いことが示唆されている[42]。鎌状赤血球症患者成人の約60~70%にも亜鉛欠乏症がみられる[44]。亜鉛補充は、鎌状赤血球症小児患者の成長を向上させることが示されている[43]。

アルコール依存症患者

アルコール依存症患者の約30~50%が低亜鉛状態である。これは、エタノール消費摂取によって亜鉛の腸内吸収が減少し、尿中への亜鉛排泄が増加するからである [44]。さらに、多くのアルコール依存症患者が摂取する食物の種類と量は限られているので、亜鉛摂取量が不十分となる[2,46,47]。

亜鉛と健康

免疫機能

重度の亜鉛欠乏症は免疫機能を抑制し[48]、軽度から中程度の亜鉛欠乏症でも、マクロファージ・好中球の機能、ナチュラルキラー活性、および補体活性を低下させる可能性がある[49]。生体では亜鉛によりTリンパ球が誘導され、活性化するよう求める[2,50]。亜鉛が少ないと、マイトジェンに対するリンパ球増殖反応が低下したり、その他免疫機能が低下するが、こうした変化は亜鉛の補充により改善される。亜鉛補充で改善できる免疫に対するその他悪影響が示されている[49,51]。これら免疫機能の変化によって、発展途上国の小児および高齢者における肺炎やその他感染症に対する感受性亢進が、低亜鉛状態と関連する理由が説明される[52-55]。

創傷治癒

亜鉛は、皮膚や粘膜の状態を良好に保つのに役立つ[49]。慢性下腿潰瘍の患者では、亜鉛代謝が異常で、血清中亜鉛濃度が低く[56]、臨床医は、皮膚潰瘍をしばしば亜鉛のサプリメントで治療する[57]。系統的レビューの著者は、血清亜鉛濃度が低い患者の下腿潰瘍の治療に硫酸亜鉛が有効であると結論づけた[58,59]。ただし、慢性下腿潰瘍や動脈性または静脈性潰瘍の患者に、硫酸亜鉛を一般的に使用することが有効であるとは研究で示されていない[58,59]。

下痢

急性下痢は、発展途上国における小児の高い死亡率と関係している[60]。亜鉛欠乏症は、免疫反応の変化を引き起こし、特に小児において下痢を引き起こす感染症などに対する易感染性を亢進させる[49]。

インド、アフリカ、南米、東南アジアの貧しい栄養不良児で、亜鉛のサプリメント摂取後に感染性下痢の期間が短縮することが示されている[61]。これらの研究では、小児は、1日に4~40 mgの亜鉛を酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛または硫酸亜鉛の形で摂取した[61]。

さらに、発展途上国における亜鉛補充のランダム化対照試験の蓄積された解析の結果、亜鉛欠乏児または栄養不良児の下痢の期間短縮および重症度軽減に亜鉛が役立つことが示唆されている[62]。2008年に出版されたメタアナリシスならびに下痢予防および治療のための2007年のレビューでも、同じような所見が報告されている[63,64]。たとえば米国の大多数の小児のような、亜鉛状態が十分な小児における下痢に対する亜鉛補充の効果は、不明である。

世界保健機構およびユニセフは、現在、小児期の急性下痢症の治療に短期亜鉛補充(10~14日間、1日に亜鉛20 mg 、6カ月未満の乳児には10 mg)を推奨している[60]。

感冒

亜鉛は、鼻粘膜内でのライノウイルスの結合および複製を直接阻害し、炎症を抑えることにより、風邪症状の重症度および期間を軽減・短縮できるという仮説を立てている[65,66]。風邪症状に対する亜鉛治療の効果を調べる研究の結果は多少矛盾しているが、全体的に亜鉛は、特定の状況下では有益なように思われる。いくつかの研究が下記に示されているが、この中で亜鉛は口腔内または咽喉内で一時的に「粘着する」トローチまたは亜鉛含有シロップとして投与される。これによって、亜鉛はそれらの部位のライノウイルスと接触ができるようになる。

ランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、50人の被験者(感冒発症後24時間以内)には酢酸亜鉛トローチ(亜鉛13.3 mg)またはプラセボを覚醒時に2~3時間ごとに摂取させた。プラセボと比較して、亜鉛トローチは、風邪症状(咳、鼻汁および筋肉痛)を有意に軽減した[67]。

実験的に誘発した感冒患者273人が参加した別の臨床試験では、グルコン酸亜鉛トローチ(亜鉛13.3 mgを提供)がプラセボよりも有意に罹患期間を短縮したが、症状の重症度には効果がなかった[68]。しかし、酢酸亜鉛トローチ(亜鉛5 mgまたは11.5 mg)の場合、感冒罹患期間にも重症度にも効果がなかった。別の試験では、自然に(実験的な誘発によらない)風邪をひいた281人の被験者において、グルコン酸亜鉛または酢酸亜鉛のトローチのどちらも風邪症状の期間や重症度を変化させなかった [68]。

自然に風邪をひいた77人の被験者において、グルコン酸亜鉛スプレー式点鼻薬とオロチン酸亜鉛トローチを併用したところ(覚醒時、2~3時間ごとに37 mg)、7日間の治療後に無症候性患者の数に変化の見られないことが判明した [69]。

2007年の9月に、Caruso氏らは、亜鉛トローチ、スプレー式点鼻薬および鼻腔用ジェルが感冒に及ぼす効果に関する構造化レビューを発表した[66]。14のランダム化プラセボ対照試験のうち、7試験(5試験:亜鉛トローチを使用、2試験:スプレー式点鼻薬を使用)で亜鉛治療が有益な効果を生じることが示され、7試験(5試験:亜鉛トローチを使用、1試験:スプレー式点鼻薬を使用、1試験:トローチとスプレー式点鼻薬を使用)では何も効果が示されなかった。

ごく最近、コクラン・レビューは、「亜鉛(トローチまたはシロップ)は、症状が発現して24時間以内に摂取すると、健康な人の感冒の期間と重症度を短縮・軽減するために有益である」と結論づけている [70]。2004年に完成した別のレビューの著者も、亜鉛は風邪症状の期間および重症度を短縮・軽減できると結論づけた[65]。しかし、感冒治療に対する亜鉛の一般的推奨度を作成する前に、至適用量、亜鉛配合および投与期間を確定するための研究を重ねる必要がある[70]。

先述のとおり、亜鉛の鼻腔内投与安全性は、亜鉛を含む鼻腔用ジェルまたはスプレーの使用による、一部で長期または永久的な無嗅覚(嗅覚の消失)の報告多数のため、疑問視されている[14-16]。

加齢黄斑変性

亜鉛および抗酸化剤のいずれも、おそらく網膜の細胞傷害を抑止することにより、加齢黄斑変性(AMD)および視力障害の進行を遅らせることが示唆されている[71,72]。オランダの集団ベースのコホート研究では、ベータカロチン、ビタミンC、ビタミンEと同様、亜鉛の食事摂取量の多いことが高齢被験者におけるAMDリスクの軽減と関係していた[73]。しかし、2007年に出版された系統的レビューおよびメタアナリシスの著者達は、進行AMDへの進行リスクを軽減するものの、亜鉛は早期AMDの一次予防に効果的でないと結論づけた。

加齢性眼疾患研究(AREDS)に関する大規模ランダム化プラセボ対照臨床試験(n= 3,597)において、さまざまな程度のAMD高齢患者において、高用量の抗酸化物質(ビタミンC 500 mg、ビタミンE 400IU、ベータカロチン15 mg)に亜鉛(酸化亜鉛として80 mg)を併用、または併用せずに投与し、進行AMD発症への影響について評価した[72]。被験者は、亜鉛の大量摂取に関連する銅欠乏症を防ぐため、銅2 mgも摂取した。平均6.3年の追跡期間後に、抗酸化剤と亜鉛の補充(ただし、抗酸化剤単独投与の場合は異なる)によって、進行AMDおよび視力障害の発症リスクを有意に軽減した。亜鉛の補充だけの場合、高リスクの被験者が進行AMDを発症するリスクは有意に軽減したが、研究の集団全体における軽減効果はみられなかった。視力障害は、亜鉛補充だけでは有意な効果が見られなかった。AREDS2追跡研究で、中央値5年の追跡期間にわたるAMD進行抑制におけるこのサプリメントの有用性が確認された[75]。重要なことに、亜鉛25 mg(元のAREDS製剤の約1/3の量)を含む製剤が、進行AMDの発症に対して同じ保護効果を示すことがAREDS2で判明した。

その他の2つの小規模臨床試験では、ドル-ゼンまたは加齢黄斑変性の被験者に2年間硫酸亜鉛200 mgを補充(亜鉛45 mgを提供)することによる効果を評価した。亜鉛補充は、1つの試験では視力障害を有意に軽減したが[76]、もう1つの試験では効果がなかった[77]。

コクラン・レビューでは、AMDに抗酸化ビタミンと亜鉛を使用することを支持する根拠は、主にAREDS研究をもとにしていると結論づけている[71]。AMD患者またはAMDを発症しつつある患者は、亜鉛含有AREDSサプリメントの摂取について、医療スタッフと相談すること。

鉄・銅との相互作用

鉄欠乏性貧血は、深刻な世界的公衆衛生上の問題である。何百万人もの女性、乳児、小児の鉄状態を改善する鉄強化プログラムが実施されている。鉄による食品強化は、亜鉛の吸収に有意な影響を及ぼさない。しかし、多量の鉄補充(25 mgを越える)によって亜鉛の吸収は低下すると考えられる[2,78]。食間に鉄のサプリメントを摂取すると、亜鉛吸入に及ぼす影響の緩和に役立つ[78]。

亜鉛を多く摂取すると、銅の吸収を阻害し、時には銅欠乏症やそれに関連した貧血を生じることがある[79,80]。このため、AREDS研究[72]に使用されている製剤のように、多量の亜鉛を含むサプリメント製剤には、銅が含まれることがある。

亜鉛過剰摂取による健康上のリスク

亜鉛の毒性については、急性および慢性のいずれもが発生する。大量の亜鉛摂取による急性の副作用は、悪心、嘔吐、食欲不振、腹部痙攣、下痢、頭痛などです[2]。ある症例報告で、グルコン酸亜鉛4 g(亜鉛元素570 mg)摂取から30分以内の重度悪心と嘔吐が取り上げられている[81]。1日に150~450 mgの亜鉛を摂取すると、銅含有量の低下、鉄機能の変化、免疫機能の低下、および高比重リポ蛋白の濃度低下などの慢性的影響がみられた[82]。銅代謝のマーカーである、銅含有酵素の減少が、1日に約60 mgとやや大量の亜鉛を最大10週間摂取した結果報告されている[2]。AREDS研究で使用した亜鉛用量(平均で、酸化亜鉛の形で1日に80 mgの亜鉛を6.3年間)は、泌尿生殖器系に起因する入院の有意な増加と関係し、慢性的な亜鉛の大量摂取が、尿路系の生理機能の一側面に悪影響を与える可能性が提起される[83]。

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会は、亜鉛の上限摂取量(UL)を定めている(表3)。UL値を越える長期摂取は、健康に悪影響を与えるリスクを増加させる[2]。UL値は、薬物治療で亜鉛を摂取する患者には適用されない。ただし、これらの患者は、健康上の悪影響について医師の管理下に置かれる。

表3 亜鉛の許容上限摂取量 (UL) [2]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6(カ月) 4 mg 4 mg
7~12(カ月) 5 mg 5 mg
1~3(歳) 7 mg 7 mg
4~8(歳) 12 mg 12 mg
9~13(歳) 23 mg 23 mg
14~18(歳) 34 mg 34 mg 34 mg 34 mg
19(歳)以上 40 mg 40 mg 40 mg 40 mg

医薬品との相互作用

亜鉛のサプリメントは種々の医薬品との相互作用を引き起こす。以下に例を記載する。定期的にこれらの医薬品を服用している人は、亜鉛摂取について医療スタッフと話し合う必要がある。

抗菌薬

キノロン系抗菌薬(Cipro®)やテトラサイクリン系抗菌薬(Achromycin®、Sumycin®)は、どちらも消化管の亜鉛と相互作用し、亜鉛と抗菌薬の両者の吸収を阻害する[84,85]。抗菌薬は、亜鉛のサプリメントを摂取する2時間前まで、または摂取の4~6時間後に服用すると、この相互作用が最小限になる[86]。

ペニシラミン

亜鉛は、関節リウマチの治療に使用されるペニシラミンの吸収と作用を低下させる[87]。この相互作用を最小限にするには、患者は、ペニシラミン服用前後2時間を避けて亜鉛サプリメントを摂取すること。

利尿薬

「クロルタリドン」(Hygroton®)などのサイアザイド系利尿薬およびヒドロクロロチアジド(Esidrix® とHydroDIURIL®)は、尿への亜鉛排泄を60%ほど増加させる[88]。サイアザイド系利尿薬を長期的に使用すると、亜鉛の組織中濃度を枯渇させる可能性があるので、臨床医はこれらの薬剤を服用する患者における亜鉛状態を監視すること。

亜鉛と健康的な食事

米連邦政府が発行する「アメリカ人のための食生活の指針2010」では、「栄養は主として食事から摂取すべきである。栄養分を豊富に含む食品(多くは未加工品)には、サプリメントに含まれることの多い必須ビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維や体によい天然成分も含有している。・・サプリメントは・・特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるには有益と考えられる」と述べている。

健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)と米国農務省の食事の指針システム、MyPlate(私の食事)を確認すること。

「アメリカ人のための食生活指針」では健康的な食事を次のように述べている。

  • さまざまな果物、野菜、全粒穀物、無脂肪もしくは低脂肪ミルクおよび乳製品の積極的な摂取が重要。
    全粒穀類や乳製品は、良好な亜鉛の供給源である。多くのすぐに食べられる朝食用シリアルは、亜鉛で強化されている。
  • 赤身の肉、鶏肉、魚、豆類、卵、ナッツ類も摂取すること。
    牡蠣、赤身の肉および鶏肉は、亜鉛の優れた供給源である。ベークドビーンズ、ヒヨコ豆やナッツ類(カシューナッツやアーモンドなど)も亜鉛を含んでいる。
  • 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、塩分(ナトリウム)および添加糖質の摂取を少なくする。
  • 1日に必要なカロリー摂取量を超えないこと。

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監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

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