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海外の情報

ビタミンB6
Vitamin B6

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終改訂年月(翻訳時):2011年9月15日

はじめに

ビタミンB6についての簡単な説明は、一般向けファクトシートを参照のこと。

一般向けファクトシートの翻訳サイトは以下を参照してください

ビタミンB6は、多くの食品に自然の形で含有されており、また食品に添加されることもあり、サプリメントとしても入手できる水溶性ビタミンである。また、ビタミンB6の活性を持つ6つの化合物(ビタマー)の総称名でもある。アルコール型のピリドキシン、アルデヒド型のピリドキサール、アミノ基をもつピリドキサミンと、それぞれに対応する5'-リン酸エステル型がある。ピリドキサール-5'-リン酸(PLP)とピリドキサミン-5'-リン酸(PMP)は、ビタミンB6の活性型補酵素である[1,2]。果物、野菜、穀物に自然に含まれるピリドキシンは、かなり多くの割合が生物学的利用率の低いグリコシル化された形態で存在します[3]。

補酵素型のビタミンB6は、体内で幅広い機能を果たしており、きわめて汎用性があり、100以上の酵素反応に関与し、そのほとんどがタンパク質代謝にかかわる[1]。PLPとPMPはいずれもアミノ酸代謝に関与する。また、PLPは一炭素単位、炭水化物、脂質の代謝にも関与する[3]。ビタミンB6は、神経伝達物質の生合成を通じた認知機能の発達や、アミノ酸の一種であるホモシステインの血中濃度を正常に保つ役割も果たしている[3]。ビタミンB6は糖新生と糖原分解、免疫機能(たとえば、リンパ球とインターロイキン2の産生を促進する)、ヘモグロビン形成に関与する[3]。

人体は空腸でビタミンB6を吸収する。ビタミンのリン酸化体は脱リン酸化され、遊離型ビタミンB6は受動拡散によって吸収される[2]。

ビタミンB6濃度はPLPや他のビタマー濃度、あるいは血漿中、あるいは赤血球中、尿中の総ビタミンB6量を測定することによって直接見積もることができる[1]。また、ビタミンB6濃度は、PLPによる赤血球アミノトランスフェラーゼ飽和度あるいはトリプトファン代謝物を計算することによって間接的に見積もることもできる。血漿PLPは、ビタミンB6の状態を評価するのに最も良く用いる尺度である。

PLP濃度30 nmol/L以上は、成人でのビタミンB6が十分であることを示す、従来からの指標であった[3]。ただし、米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)は、成人の栄養所要量(RDA)を計算する際に、血漿PLP値20 nmol/Lを妥当性の主要な指標として用いていた[1,3]。

推奨摂取量

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)が設定した食事摂取基準(DRI)には、ビタミンB6や他の栄養素の推奨摂取量が提示されている[2]。DRIは、健常人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。これらの基準値は年齢や性別ごとに異なり、次のような項目がある。

  • 推奨栄養所要量(RDA):ほとんどすべての(97~98%)健常人が栄養所要量を満たすのに十分な平均1日摂取量。
  • 適正摂取量(AI): RDAを設定するためのエビデンスが不十分である場合に示され、十分な栄養が確保できると推定される値に設定されている。
  • 許容上限摂取量(UL):健康上の有害作用を引き起こすとは考えにくい最大1日摂取量。

表1には、現在のビタミンB6のRDAを示す[1]。出生から12カ月までの乳児の場合、FNBは、健康な母乳栄養の乳児におけるビタミンB6の平均摂取量に相当するビタミンB6のAIを設定している。

表1: ビタミンB6の推奨栄養所要量(RDA)[1]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6カ月 0.1 mg* 0.1 mg*    
7~12カ月 0.3 mg* 0.3 mg*    
1~3歳 0.5 mg 0.5 mg    
4~8歳 0.6 mg 0.6 mg    
9~13歳 1.0 mg 1.0 mg    
14~18歳 1.3 mg 1.2 mg 1.9 mg 2.0 mg
19~50歳 1.3 mg 1.3 mg 1.9 mg 2.0 mg
51歳以上 1.7 mg 1.5 mg    

*適正摂取量(AI)

ビタミンB6の摂取源

食品

ビタミンB6は、さまざまな食品に含まれている[1,3,4]。ビタミンB6を豊富に含む食品として、魚、牛レバー、その他の内臓肉、ジャガイモその他の澱粉質の野菜、果物(柑橘類を除く)が挙げられる。米国では、成人は食事由来のビタミンB6のほとんどを、栄養強化されたシリアル、牛肉、鶏肉、澱粉質の野菜、一部の非柑橘系の果物から摂取している[1,3,5]。混合食から摂取されたビタミンB6の約75%は体内で吸収されて利用することが可能である[1]。

「ビタミンB6の供給源となる食品例」の表は、多くのビタミンB6供給源であることを示唆している。

表2: ビタミンB6源となる食品群[4]
食品 1食分当たりの
ミリグラム数(mg)
パーセントDV*
ヒヨコマメ、缶詰、1カップ 1.1 55
牛レバー、焼き、90 ml 0.9 45
キハダマグロ、鮮魚、調理済み、90 ml 0.9 45
ベニザケ、調理済み、90 ml 0.6 30
鶏むね肉、ロースト、90 ml 0.5 25
朝食用シリアル、ビタミンB6をDVの25%強化 0.5 25
ジャガイモ、ゆで、1カップ 0.4 20
シチメンチョウ、可食部のみ、ロースト、90 ml 0.4 20
バナナ、中1本 0.4 20
マリナーラ(スパゲッティ)ソース、調理済み、1カップ 0.4 20
牛ひき肉、パテ、85%赤身、焼き、90 ml 0.3 15
プレーンワッフル、半加工品、加熱済み、1個 0.3 15
ブルグア、調理済み、1カップ 0.2 10
カッテージチーズ、1%低脂肪、1カップ 0.2 10
クリカボチャ、オーブン焼き、½カップ 0.2 10
白米、長粒種、強化米、調理済み、1カップ 0.1 5
ミックスナッツ類、ドライロースト、30 ml 0.1 5
レーズン、種なし、½カップ 0.1 5
タマネギ、みじん切り、½カップ 0.1 5
ホウレンソウ、冷凍、みじん切り、ゆで、½カップ 0.1 5
豆腐、生、木綿、硫酸カルシウム使用、½カップ 0.1 5
スイカ、生、1カップ 0.1 5

*DV = 1日摂取量。FDAは、消費者が食事全体における製品の栄養素含有量を比較するのに役立つようDVを設定した。ビタミンB6に対するDVは成人および4歳以上の小児で2 mgである。しかし、FDAは食品ラベルにビタミンB6の含有量を記載することを要求していない(ビタミンB6が強化されている場合を除く)。DVが20%以上となる食品は高栄養源と考えられる。

米国農務省(USDA)の栄養素データベースウェブサイト[USDA24版] では、数多くの食品の栄養素含有量を表示しており、カルシウムを含む食品を網羅している。

サプリメント

ビタミンB6は、マルチビタミンとして、また他のビタミンB群も含むサプリメントや単剤のサプリメントとして入手できる[6]。サプリメントに最も多く含まれるビタミンB6ビタマーは、ピリドキシンである(ピリドキシン塩酸塩[HCl]として)が、PLPを含むのもある。ビタミンB6サプリメントには、経口カプセルあるいは錠剤(舌下錠および咀嚼錠含む)、液剤がある。サプリメントからのビタミンB6の吸収は食品を供給源とする場合と同様であり、さまざまな形態のサプリメントの間でもほとんど差はない[1]。身体は薬理量の高用量のビタミンB6をよく吸収するが、そのほとんどは尿中に速やかに排出される[7]。

米国人全体の約28%-36%はビタミンB6を含むサプリメントを使用している[8,9]。51歳以上の成人および9歳未満の小児は、他の年齢層よりもビタミンB6を含むサプリメントを多く摂取しているとみられる。

ビタミンB6の摂取状況

2003-2004年の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)のデータ解析結果によると、米国の小児、青年、成人のほとんどは、推奨される量のビタミンB6を摂取している[9]。ビタミンB6の平均摂取量は、女性で約1.5 mg/日、男性で2 mg/日である[1]。

しかし、ビタミンB6サプリメント使用者の11%と、ビタミンB6を含むサプリメントを使用していない米国人の24%は、血漿PLP濃度が低い(20 nmol/L未満)[9]。2003-2004年NHANESの分析では、現在のRDAより多い2.0-2.9 mg/日を摂取していた群でも血漿PLP濃度が低いという結果が得られた。サプリメント使用者と非使用者の間では、血漿PLP濃度は、男性より女性の方がかなり低く、非ヒスパニック系白人よりも非ヒスパニック系黒人が、喫煙未経験者より喫煙者の方が、正常な体重の人より低体重の人の方が低値であった。ティーンエイジャーは最もビタミンB6濃度が低く、次いで21-44歳の成人が低値を示した。しかし、高齢者では、サプリメントを使用していない人でも、血漿PLP濃度は特に低くなかった。これらのデータに基づいて、現在のRDAは多くの母集団において十分なビタミンB6の状態を保証していない可能性があると、この分析の筆者らは結論付けた[9]。

PLP濃度は、アルコール依存症の人、肥満の人、妊娠中の女性、特に子癇前症または子癇のある女性で低い傾向がある[1]。また、吸収不良症候群(セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎など)の人でも低い [3]。

ビタミンB6欠乏症

ビタミンB6単独の欠乏症は、あまりみられない。ビタミンB6不足は通常、他のビタミンB群(ビタミンB12や葉酸など)の不足と同時におこります[2]。ビタミンB6欠乏症は、進行するに従って生化学的な変化が顕著になる[2]。

ビタミンB6欠乏症は、小球性貧血、脳波の異常、口唇症(口唇の鱗屑と口角のひびわれ)を伴う皮膚炎、舌炎(舌の腫脹)、抑うつと錯乱、免疫機能の低下に関連している[1,2]。ビタミンB6濃度が境界域の人や軽度の欠乏症の人は、何カ月あるいは何年も徴候や症状が認められないことがある。乳児では、ビタミンB6が欠乏すると、易刺激性、聴覚過敏、けいれん発作を引き起こす[2]。

末期の腎疾患、慢性腎不全、およびその他の腎疾患はビタミンB6欠乏症を引き起こす[3]。さらにビタミンB6欠乏症は、吸収不良症候群(セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎など)が原因でも起こる。ある種の遺伝性疾患(ホモシスチン尿症など)もビタミンB6欠乏症を引き起こします[2]。抗てんかん薬など一部の薬物の長期にわたる使用によって欠乏症をきたすこともある。

ビタミンB6欠乏のリスク群

明らかなビタミンB6欠乏症は、米国では比較的まれであるが、一部にビタミンB6の状態が境界域の人がいる[2]。以下に挙げる群では、ビタミンB6の摂取量が不足しやすい。

腎機能障害のある人

末期の腎疾患患者や慢性腎不全患者など、腎機能が低下した人では、しばしばビタミンB6濃度の低下がみられます[3]。血漿PLP濃度は、持続的な腎臓透析あるいは間欠的腹膜透析を受けている患者、腎移植を受けた患者でも低い。これはおそらく、PLPの代謝クリアランスが増加するためである[10]。腎疾患患者は、しばしばビタミンB6欠乏症と同様の臨床症状を呈する[10]。

自己免疫疾患の患者

関節リウマチの患者は、ビタミンB6濃度が低いことが多く、疾患重症度が上がるほどビタミンB6濃度が下がる傾向にある[3]。ビタミンB6の低値は、疾患によって引き起こされた炎症が原因であり、その結果、この疾患に関連する炎症が増悪する。ビタミンB6のサプリメントは、関節リウマチ患者のビタミンB6濃度を正常化できるが、炎症性サイトカインの産生を抑制したり、炎症性マーカーのレベルを低下させたりはしない[3,11]。

セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびその他の吸収不良性自己免疫疾患の患者は、血漿PLP濃度が低い傾向にある[3]。この作用機序は不明である。しかし、セリアック病はピリドキシン吸収の低下と関連しており、炎症性腸疾患の低PLP濃度は、炎症反応が原因である可能性がある[3]。

アルコール依存症患者

血漿PLP濃度は、アルコール依存症患者できわめて低い傾向がある[1]。アルコールから産生されるアセトアルデヒドは、細胞による正味のPLP産生量を減少させ、タンパク質結合においてPLPと競合する[1,3]。結果として、細胞内のPLPは膜に結合した脱リン酸化酵素による加水分解の影響をさらに受けやすくなる。アルコール依存症患者は、ピリドキシンの補充が有用である可能性がある[3]。

ビタミンB6と健康

心血管疾患

ビタミンB群の一部(葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6)は、ホモシステイン濃度を低下させることによって心血管疾患リスクを低下させるという仮説が立てられている[1,12]。そのため、心疾患リスクを低下させるビタミンB群の追加用量の安全性と有効性を評価する臨床試験が行われている。これらの臨床試験の多くは、葉酸とビタミンB12の補充も含まれているため、ビタミンB6の影響を評価することは難しい。たとえば、既知の心血管疾患を有する成人5,500人以上が登録されたHeart Outcomes Prevention Evaluation 2(HOPE 2)試験では、ビタミンB6(50 mg/日)、ビタミンB12(1 mg/日)、葉酸(2.5 mg/日)を5年間補充して、ホモシステイン濃度が低下し、脳卒中リスクが約25%低下した。しかし、この試験ではビタミンB6のみを補充した群が設定されていなかった[13]。

さらに、他の大規模臨床試験のほとんどでは、ビタミンBの補充によってホモシステイン濃度が低下したが、実際に心血管イベントのリスクが低下するかどうかは証明されなかった。たとえば、42歳以上の女性5,442人を登録したランダム化試験で、ビタミンB6 (50 mg/日)を葉酸2.5 mg、ビタミンB12 1 mgと組み合わせて補充した場合の心血管疾患リスクに対する影響はみられなかった[14]。2つの大規模ランダム化対照試験、Norwegian Vitamin試験とWestern Norway B Vitamin Intervention試験では、ビタミンB6(40 mg/日)のみを補充した群が設定されました。これら2試験のデータの統合解析では、虚血性心疾患患者6,837人で、葉酸(0.8 mg/日)とビタミンB12 (0.4 mg/日)を併用した場合および併用しなかった場合に、主要な心血管イベントに対するビタミンB6補充の利益は示されなかった[12]。機能障害にまでは至っていない脳卒中に罹患した成人の試験で、ビタミンB6、ビタミンB12および葉酸の高用量または低用量の組み合わせを2年間補充した結果、脳卒中の再発、心血管イベント、死亡リスクに影響を及ぼさなかった[15]。

現在までの研究で、ビタミンB6の単独、または葉酸およびビタミンB12と組み合わせた補充量が心血管疾患および脳卒中のリスクと重症度を低下させるというエビデンスはほとんどない。

がん

いくつかの研究で、血漿ビタミンB6濃度の低値と、ある種の癌のリスク上昇が関連付けられている[3]。たとえば、複数の前向き研究のメタアナリシスで、ビタミンB6摂取量が最高の五分位にある人は、最低の五分位にある人と比べて大腸癌のリスクが20%低いことが示された[16]。

しかし、現在までに完了した数少ない臨床試験で、ビタミンB6の補充が癌の予防に役立つ、あるいは癌による死亡率を低下させることは示されていない。たとえば、ノルウェイの2つの大規模ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを解析した結果、ビタミンB6補充と癌の発生率、死亡率、または全死因死亡との間に関連性は認められなかった[17]。

認知機能

ビタミンB6の不足した状態は、高齢者にしばしば起こる認知機能低下に関与しているという仮説が立てられている[18]。いくつかの研究で、高齢者におけるビタミンB6と脳機能との関連が示されている。たとえば、Boston Normative Aging研究のデータを解析し、54-81歳の男性70人において、血清ビタミンB6濃度の高値と記憶テスト高スコアとの間の関連が示された[19]。

しかし、14のランダム化対照試験のシステマティックレビューでは、正常な認知機能、認知症、または虚血性の血管疾患を有する人において、ビタミンB6補充のみ、あるいはビタミンB12または葉酸あるいはその両方との併用が認知機能に及ぼす影響についてのエビデンスは十分ではなかった[18]。このレビューによると、ほとんどの試験は質が低く、妥当性も限られている。Cochraneレビューでは、筆者らが評価した2つの研究で、短期間(5-12週間)のビタミンB6補充が認知機能または気分を向上させるというエビデンスは見いだせなかった[20]。このレビューでは、健康な高齢男性において、毎日のビタミンB6補充(20 mg)がビタミンB6の状態を示す生化学的指標に影響を及ぼすというエビデンスが複数示されたが、これらの変化は認知機能に全体的な影響を及ぼさなかった。

ビタミンB6補充が高齢者における認知機能低下の予防または治療に役立つかどうかを判断するには、さらに多くのエビデンスが必要である。

月経前症候群

ビタミンB6補充が月経前症候群(PMS)の症状を緩和する可能性をいくつかのエビデンスが示唆しているが、ほとんどの研究の質は高くないため、結論は限定的である[21]。公表されている9試験のメタアナリシスで、PMSの女性約1,000人のデータを解析した結果、ビタミンB6はプラセボと比較してPMS症状の緩和に有効であったが、解析対象となった試験のほとんどは小規模であり、いくつかの試験は方法論的な欠点があった[21]。94人の女性が登録された最近の二重盲検ランダム化対照試験では、毎日80 mgのピリドキシンを月経周期で3周期投与したところ、気分のむら、易刺激性、もの忘れ、腹部膨満、そして特に不安など、幅広いPMSの症状に統計的に有意な減少がみられた[22]。PMSの気分関連症状緩和へのビタミンB6の潜在的な有効性は、神経伝達物質の生合成における補助因子としての役割による可能性がある[23]。ビタミンB6はPMS症状を緩和する見込みがあるが、確固とした結論を導き出すには、さらに多くの研究が必要である。

妊娠中の悪心・嘔吐(つわり)

妊娠初期の2-3カ月の間に、約半数の女性が悪心嘔吐を、約50%-80%は悪心のみを経験する[24,25]。 この状態は、一般に「つわり」として知られているが、症状はしばしば終日続く。この症状は生命を脅かすものではなく、通常は12-20週を過ぎると解消するが、女性の社会的機能や身体機能を妨げる。

つわりを治療するビタミンB6補充療法の前向き研究は、結果がまちまちであった。2つのランダム化プラセボ対照試験では、経口ピリドキシン1日30-75 mgによって、悪心を有する妊娠中女性の悪心が有意に減少した[26,27]。妊娠中の悪心嘔吐への治療介入に関する研究の最新のCochraneレビューの筆者らは、つわりの症状をコントロールするためのビタミンB6の効果について、確実な結論を引き出せなかった[25]。

複数のランダム化試験で、ビタミンB6とドキシラミン(抗ヒスタミン薬)の併用によって、妊婦の悪心・嘔吐が70%減少し、悪心・嘔吐による入院率が低下することが示された[24,28]。

米国産科婦人科学会(American Congress of Obstetrics and Gynecology (ACOG))は、妊娠中の悪心・嘔吐の治療に、ビタミンB6を1回10-25 mg、1日3-4回投与する単剤療法を推奨している[28]。患者の症状が改善しない場合、ACOGはドキシラミンを追加することを推奨している。用量がULに達する可能性があるため、妊婦はビタミンB6サプリメントを摂取する前に、医師に相談すべきである。

ビタミンB6過剰摂取による健康上のリスク

食物からビタミンB6を大量に摂取して有害作用を引き起こしたという報告はない[1]。しかし、経口ピリドキシンを1-6 g/日で12-40カ月長期投与すると、運動失調(動作の制御の喪失)を特徴とする重度の進行性の感覚ニューロパチーを引き起こす可能性がある[7,29-32]。症状の重症度は用量依存性であると考えられるため、神経症状が現れたらすぐにピリドキシン補充を中止すれば、通常は症状も消失した。ビタミンB6過剰摂取によるその他の影響には、痛みを伴い外観を損なう皮膚病変、光線過敏症、消化器症状(悪心や胸やけなど)がある[1,2,29]。

科学的文献の中には、妊娠期間の前半にピリドキシンのサプリメントを投与された妊婦から生まれた乳児に先天性欠損症が発生したという症例報告が1例ある[7]。しかし、さらに最近の観察研究では、妊娠7週目にピリドキシンの補充(平均用量132.3 ± 74 mg/日)を開始し、9 ± 4.2週間継続した妊婦から生まれた乳児で催奇性作用との関連を認めなかった[33]。

FNBは、食物とサプリメントの摂取量に適用するビタミンB6のUL(許容上限摂取量)を設定した(表3)[1]。FNBによると、500 mg/日未満の用量で感覚ニューロパチーが発生したという報告がいくつかあるが、最長5年間ビタミンB6を投与(平均用量200 mg/日)した患者でこの作用のエビデンスが得られなかったとしている。長期使用によって起こる潜在的な被害についてのデータが限られていたため、FNBは成人のUL(100 mg/日)を設定するための試験での用量を半量に設定した。ULは、小児および青年では身体の大きさに基づいてさらに低い値としている。ULは、治療のためにビタミンB6を投与されている患者には適用されないが、そのような患者は医師の監督下で投与されるべきである。

表3:ビタミンB6の許容上限摂取量(UL)[1]
年齢 男性 女性 妊娠中 授乳中
生後0~6カ月 設定不能* 設定不能*    
7~12カ月 設定不能* 設定不能*    
1~3歳 30 mg 30 mg    
4~8歳 40 mg 40 mg    
9~13歳 60 mg 60 mg    
14~18歳 80 mg 80 mg 80 mg 80 mg
19歳以上 100 mg 100 mg 100 mg 100 mg

*乳児のビタミンB6摂取源は母乳、調合乳、食物のみとする。

医薬品との相互作用

ビタミンB6は、ある種の薬物との相互作用があり、一部の薬物はビタミンB6濃度に有害に作用することがある。以下にいくつかの例を示す。ここに挙げる薬物やその他の薬物を定期的に服用している人は、医療従事者にビタミンB6の状態を相談する必要がある。

サイクロセリン

サイクロセリン(Seromycin®)は、結核の治療に用いる広域スペクトル抗生物質である。ピリドキサールリン酸とサイクロセリンを併用すると、ピリドキシンの尿中排泄が増加する[6]。ピリドキシンの尿中への排泄によって、サイクロセリンに関連するけいれんと神経毒性が増悪する可能性がある。ピリドキシンの補充は、これらの有害作用の予防に役立つ可能性がある。

抗てんかん薬

一部の抗てんかん薬(バルプロ酸(Depakene ®、Stavzor®)、カルバマゼピン(Carbatrol®、Epitol®、Tegretol ®など)、フェニトイン(Dilantin®)などは、ビタミンB6ビタマーの異化代謝の割合を増大させるため、低血漿PLP濃度と高ホモシステイン血症を引き起こす[34,35]。抗てんかん薬使用者における高ホモシステイン値は、てんかん発作と全身性の血管障害(脳卒中など)のリスクを増大させ、てんかん患者の発作をコントロールする能力が低下する可能性がある。加えて一般に患者は抗てんかん薬を何年も使用するため、慢性血管障害のリスクが高まる。

また、いくつかの研究で、ピリドキシン補充(200 mg/日、 12-120日間)によってフェニトインとフェノバルビタールの血清中濃度が低下することが示されている。これは、おそらくこれらの薬物の代謝が亢進するためである[32,36]。低用量のピリドキシン投与の影響は不明である[6]。

テオフィリン

テオフィリン(Aquaphyllin®、Elixophyllin®、Theolair®、Truxophyllin®など)は、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、およびその他の肺疾患によって起こる息切れ、喘鳴、その他の呼吸障害を予防または治療する。
テオフィリンを投与されている患者は、しばしば血漿PLP濃度の低下をきたし、そのためにテオフィリンに関連する神経性および中枢神経系の副作用(けいれんなど)が起こることがある[6,32]。

ビタミンB6と健康的な食事

米連邦政府が発行する「アメリカ人のための食生活の指針2010」では、「栄養は主として食事から摂取すべきである。栄養分を豊富に含む食品(多くは未加工品)には、サプリメントに含まれることの多い必須ビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維や体によい天然成分も含有している。・・サプリメントは・・特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるには有益と考えられる」と述べている。 」[37]。

健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)と米国農務省の食事の指針システム、MyPlate(私の食事)を確認すること。

「アメリカ人のための食生活指針」では健康的な食事を次のように述べている。

  • さまざまな果物、野菜、全粒粉、無脂肪または低脂肪の牛乳、乳製品を摂取することを強調している。
    さまざまな果物、野菜、全粒粉は、ビタミンB6の良質な供給源である。一部のインスタント朝食用シリアルは、ビタミンB6が栄養強化されている。
  • 赤身の肉、鶏肉、魚、豆類、卵、ナッツ類を摂取すること。
    魚、牛肉、シチメンチョウには、ビタミンB6が多く含まれている。豆類とナッツ類もビタミンB6の供給源である。
  • 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、塩分(ナトリウム)および添加糖質の摂取を少なくする。
  • 1日に必要なカロリー摂取量を超えないこと。

参考文献

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監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

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