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海外の情報

マグネシウム
Magnesium

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英語版最終改訂年月(翻訳時):2013年11月4日

はじめに

マグネシウムは体内に豊富にあるミネラルで、多くの食物中に自然に存在する。他の食品に添加されたり、サプリメントとして利用されたり、また制酸剤や緩下剤のような薬剤に含まれることもある。マグネシウムは、体内におけるさまざまな生化学反応(タンパク質合成、筋肉や神経の機能、血糖や血圧のコントロールなど)を制御してする300種類以上の酵素系の補助因子である[1-3]。マグネシウムはエネルギー産生、酸化的リン酸化、解糖のために必要である。また、骨格系の発達に役立ち、DNAやRNA、抗酸化物質グルタチオンの合成にも必要である。この他、マグネシウムは、神経インパルス伝導や筋収縮、正常な心調律にとって重要な過程であるカルシウムやカリウムの細胞膜通過時に、能動輸送の役割を担っている[3]。

成人の体はおよそ25gのマグネシウムを含有し、そのうち50%~60%のマグネシウムは骨に、残りの大半は軟部組織に存在する[4]。総マグネシウム量の1%未満が血清に含まれており、この量は厳密にコントロールされている。血清マグネシウム濃度の正常値は0.75~0.95ミリモル/L(mmol)である[1,5]。低マグネシウム血症の定義は、血清マグネシウム濃度が0.75 mmol/L未満と定められています[6]。マグネシウムの恒常性は主として腎臓で調節され、通常1日に約120 mgのマグネシウムが尿中に排泄する[2]。マグネシウム濃度が低いと尿中排泄量は低下する[1]。

大半のマグネシウムは細胞内または骨中に存在するため、マグネシウム量を評価することは困難である[3]。マグネシウム量を評価するために最も多く利用されている簡便な方法は血清マグネシウム濃度測定法であるが、血清濃度は体内の総マグネシウム量や特定の組織中の濃度との相関関係はほとんどない[6]。その他のマグネシウム量評価法には、赤血球中や唾液中、尿中のマグネシウム濃度を測定する方法、血中、血漿中または血清中のマグネシウムイオン濃度を測定する方法、マグネシウム負荷試験などがある。どの方法も単独では不十分ではない[7]。専門家の中には、マグネシウム負荷試験(マグネシウム非経口注入後に尿中マグネシウムを測定)が成人のマグネシウムの状態を評価する最良の方法だと考えている人もいる[4]が、反対意見もみられる[3]。マグネシウムの状態を総合的に評価するためには、臨床検査と臨床評価の両方を行う必要があると思われる[6]。

推奨摂取量

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)が設定した食事摂取基準(DRIs)には、マグネシウムや他の栄養素の推奨摂取量が提示されている[2]。DRIは、健常人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。これらの基準値は年齢や性別ごとに異なり、次のような項目がある。

  • 推奨栄養所要量(RDA):ほとんどすべての(97~98%)健常人が栄養所要量を満たすのに十分な平均1日摂取量。
  • 適正摂取量(AI): RDAを設定するためのエビデンスが不十分である場合に示され、十分な栄養が確保できると推定される値に設定されている。
  • 推定平均必要量(EAR):健常者の50%において所要量を満たすと推定される平均1日摂取量。通常、個人ではなく、母集団の栄養摂取量の妥当性を評価するために使われる。
  • 許容上限摂取量(UL):健康上の有害作用を引き起こすとは考えにくい最大1日摂取量。

表1は最新のマグネシウムのRDAを示す[1]。食品栄養委員会(FNB)は、出生から12カ月までの乳児に対しては健康な母乳栄養児の、また7カ月~12カ月までの乳児に対しては離乳食を併用した母乳栄養児の平均マグネシウム摂取量に相当する量をマグネシウムのAIに設定している。

表1:マグネシウムの推奨栄養所要量(RDA) [1]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6カ月 30 mg* 30 mg*
7~12カ月 75 mg* 75 mg*
1~3歳 80 mg 80 mg
4~8歳 130 mg 130 mg
9~13歳 240 mg 240 mg
14~18歳 410 mg 360 mg 400 mg 360 mg
19~30歳 400 mg 310 mg 350 mg 310 mg
31~50歳 420 mg 320 mg 360 mg 320 mg
51歳以上 420 mg 320 mg

*適正摂取量(AI)

マグネシウムの摂取源

食品

マグネシウムは植物性食品や動物性食品、あるいは飲料に広く含まれている。ホウレンソウのような緑色の葉野菜、マメ科植物、ナッツ類、種子類、全粒粉は優れた供給源である[1,3]。一般的に食物繊維を含む食物はマグネシウムを含んでいる。マグネシウムはまた、朝食用シリアルや栄養強化食品の一部にも添加されている。穀物の栄養に富んだ胚芽や糠を取り除く精製工程のような処理を行うと、マグネシウム含有量は大きく減少する[1]。マグネシウムの供給源の例を表2に示している。

水道水、ミネラルウォーター、ボトル入り飲料水もまたマグネシウムの供給源だが、含有量は水源やブランドにより異なる(1 mg/L~120 mg/L超)[8]

摂取される食物由来のマグネシウムのおよそ30%~40%が通常は体内に吸収される[2,9]。

表2:マグネシウム源となる食品群[10]
食品 
(1オンスは約28g、1カップは240ml)
1回の食事当たりのミリグラム(mg) パーセント
DV*
ローストドライアーモンド 1オンス(約28g) 80 20
ゆでホウレンソウ、1/2カップ(120ml) 78 20
ローストドライカシューナッツ、1オンス(約28g) 74 19
オイルローストピーナッツ、¼カップ(60ml) 63 16
シュレッドウィートのシリアルビスケット、大2枚 61 15
プレーンまたはバニラ味の豆乳、1カップ(240ml) 61 15
調理済黒豆、1/2カップ(120ml) 60 15
調理済さや付枝豆、1/2カップ(120ml) 50 13
粒なしピーナッツバター、大さじ2 49 12
全粒粉パン、2枚 46 12
さいの目切りアボカド、1カップ(240ml) 44 15
皮ごと調理したじゃがいも、3.5オンス(約99g) 43 11
炊いた玄米、1/2カップ(120ml) 42 11
低脂肪プレーンヨーグルト、8オンス(約227g) 42 11
マグネシウムのDVの10%を添加した朝食用シリアル 40 10
インスタントオートミール、1パック 36 9
缶詰のいんげん豆、1/2カップ(120ml) 35 9
バナナ、中1本 32 8
調理済養殖アトランティックサーモン、3オンス(約85g) 26 7
牛乳、1カップ(240ml) 24–27 6–7
調理済オヒョウ、3オンス(約85g) 24 6
レーズン、1/2カップ(120ml) 23 6
ローストチキン(胸肉)、3オンス(約85g) 22 6
フライパンで焼いた90%赤身牛ひき肉、3オンス(約85g) 20 5
大きく切った調理済ブロッコリー、1/2カップ(120ml) 12 3
炊いた白米、1/2カップ(120ml) 10 3
リンゴ、中1個 9 2
生の人参、中1本 7 2

*DV = 1日摂取量。FDAは、消費者が食事全体における製品の栄養素含有量を比較するのに役立つようDVを設定した。マグネシウムに対するDVは成人および4歳以上の小児で400 mgである。しかしながら、FDAはマグネシウム強化食品以外には、食品の成分表示にマグネシウム含有量の記載を義務づけてはならない。DVの20%以上が摂取できる食品は栄養価の高い供給源とみなされる。

米国農務省(USDA)の栄養素データベースウェブサイト[13] では、数多くの食品の栄養素含有量を表示しており、マグネシウムを含む食品を網羅している。

サプリメント

マグネシウムサプリメントは、酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどさまざまな形で入手できます[2,3]。サプリメントラベルの栄養成分表には、マグネシウム含有化合物の総重量ではなく、製品に含まれるマグネシウム元素の量が記載されている。

マグネシウム吸収量は、マグネシウムサプリメントの種類によって異なる。液体に溶けやすい形のマグネシウムは、溶けにくい形のものより腸で高率に吸収される[2,11]。小規模研究の結果から、アスパラギン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マグネシウムといった形で含まれるマグネシウムは、酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムに含まれるマグネシウムより吸収率や生物学的利用能が高いことが明らかになった[11-15]。ある研究によれば、非常に高用量の亜鉛をサプリメントから摂取すると(142 mg/日)、マグネシウム吸収が妨げられ、体内のマグネシウムバランスが壊れることが明らかになった[16]。

医薬品

緩下剤の中にはマグネシウムが主成分のものもある[17]。たとえば、フィリップス・ミルク・マグネシア(商品名Phillips' Milk of Magnesia)は大さじ1杯中に500 mgのマグネシウム元素を水酸化マグネシウムの形で含有している。説明書には青少年と成人の摂取量は1日あたり大さじ4杯までと指示されている[18]。(このようなマグネシウム量は安全上限値をはるかに超えており、医薬品の緩下作用が原因で一部のマグネシウムは吸収されない)。また、マグネシウムは胃酸過多が原因の胸やけや胃の不調に治療薬として使われることもある[17]。例として、エクストラ・ストレングス・ロレイド(商品名Extra-strength Rolaids)は1錠につき55 mgのマグネシウム元素を(水酸化マグネシウムとして)含有している[19]が、タムス(商品名Tums)はマグネシウムを含有していない[20]。

マグネシウムの摂取状況

米国人の食事に関する調査によれば、マグネシウムの摂取量は継続的に推奨量を下回っている。2005年~2006年の全米健康・栄養調査(NHANES)のデータを分析すると、全年齢の大半の米国人はEARより少ない量のマグネシウムしか摂取していない。71歳以上の成人男性と思春期の女性は、マグネシウム摂取量が少ない可能性が最も高いと考えられる[21]。2003年~2006年のNHANESのデータを用いて成人のミネラル摂取量を評価した研究では、マグネシウムサプリメントを摂取している人では、食物由来のみのマグネシウムの平均摂取量(男性350 mg、女性267 mgでそれぞれのEARと等しいかやや上回っている)が、マグネシウムサプリメントを摂取していない人(男性268 mg 、女性234 mg)より多いという結果が得られた[22]。マグネシウムサプリメントを摂取量に含めた場合、平均総マグネシウム摂取量は男性449 mg、女性387 mgであり、EARをはるかに上回っていた。

米国での現在のマグネシウム摂取状態は入手できてい。マグネシウム摂取状況を評価するために、食事由来のマグネシウム摂取量を調査する方法が、通常用いられている。NHANESは1974年以来、参加者の血清マグネシウム濃度を測定しておらず[23]、また、病院やクリニックにおける電解質のルーチン検査ではマグネシウム濃度は測定されていない[2]。

マグネシウム欠乏症

食事由来のマグネシウム摂取量が少ないことを除いて健康な人では、腎臓がマグネシウムの尿中排泄を制限するため、症候性マグネシウム欠乏症はほとんど認められない[3]。しかし、健康上の理由から日常的にマグネシウムの摂取量が少ない場合やマグネシウムの喪失量が過剰な場合、あるいは慢性アルコール依存症やある種の薬物を服用している場合は、マグネシウム欠乏症になる可能性がある。

マグネシウム欠乏症の初期徴候は、食欲不振、悪心、嘔吐、疲労、脱力感などがあげられる。マグネシウム欠乏症が悪化すると、痺れ、刺痛、筋収縮、筋痙攣、てんかん発作、人格変化、不整脈、冠状動脈攣縮を発症する可能性があります[1,2]。重篤なマグネシウム欠乏症では、ミネラルの恒常性が崩れているため、低カルシウム血症または低カリウム血症(血清カルシウム値または血清カリウム値がそれぞれ低い状態)になることがある[2]。

マグネシウム欠乏のリスク群

マグネシウム不足は、マグネシウム摂取量がRDAを下回っているものの明らかな欠乏症を防ぐために必要とされる量は満たしている場合に起こる可能性がある。次の集団は、十分な量のマグネシウムを摂取していない場合が多いか、または腸管でのマグネシウム吸収を低下させたり、体外へのマグネシウム喪失量が増加したりするような病状が認められる(あるいは薬剤を服用している)ため、他の集団よりマグネシウム不足のリスクが高いと考えられる。

消化器疾患を有する人

クローン病、グルテン過敏性腸症(セリアック病)、限局性腸炎が原因の慢性下痢症や脂肪吸収不全症によって、徐々にマグネシウム欠乏が起こることがある[2]。小腸、特に回腸の切除術やバイパス術を受けると、多くの場合、マグネシウム吸収不全やマグネシウムの喪失が認められる[2]。

2型糖尿病の人

インスリン抵抗性糖尿病または2型糖尿病では、マグネシウム欠乏や尿中マグネシウム排泄量の増加が起こる可能性がある[24,25]。マグネシウムの喪失は、腎臓におけるグルコース濃度が上昇し、尿量が増加した後に起こると考えられる[2]。

アルコール依存症の人

マグネシウム欠乏症は、慢性アルコール依存症の人によく見られる疾患である[2]。慢性アルコール依存症の人では、食事摂取量が少なく栄養状態が不良であること、膵炎に起因する嘔吐、下痢、脂肪便などの消化管異常、尿中への過剰なマグネシウム排泄を伴う腎機能障害、リン酸欠乏、ビタミンD欠乏症、急性アルコール性ケトアシドーシスおよび肝臓病に伴う高アルドステロン症などが、すべてマグネシウムを減少させる原因となり得る[2,26]。

高齢者

高齢者では、若年成人より食事由来のマグネシウム摂取量が減少します[20,27]。さらに、年齢と共に腸管でのマグネシウム吸収が低下し、腎臓からのマグネシウム排泄が増加します[28]。また、高齢者は慢性疾患に罹患しやすく、マグネシウムの状態を変化させる薬剤を服用していることも多いため、マグネシウム欠乏のリスクが増加する可能性がある[1,29]。

マグネシウムと健康

日常的にマグネシウムの摂取量が少ないと、生化学的経路に徐々に変化を生じ、疾患のリスクが増加する。この節では、マグネシウムが関与していると思われる4つの疾患および障害、すなわち、高血圧症、心血管疾患、2型糖尿病、骨粗鬆症および片頭痛に焦点を当てている。

高血圧症および心血管疾患

高血圧症は心臓病と脳卒中の主要なリスクファクターである。しかし、これまでの研究によれば、マグネシウム補充療法の効果は、よくてもわずかに血圧を下げる程度であるとされていた。12の臨床試験のメタアナリシスによれば、高血圧症患者545人を対象に8~26週間にわたりマグネシウム補充療法を実施した結果、拡張期血圧がわずかに低下した(2.2 mmHg)[30]。マグネシウム投与量は1日あたり約243~973 mgであった。他の22試験のメタアナリシスでは、正常血圧と高血圧の成人1,173人を対象にマグネシウム補充療法を3~24週間行ったところ、収縮期血圧が3~4 mmHg、拡張期血圧が2~3 mmHg 低下したと報告されている[31]。この効果は、9件のクロスオーバー試験において、参加者のマグネシウム摂取量が1日あたり370 mgを超えている場合にやや顕著にみられた。果物や野菜を追加したマグネシウム含有量の高い食事を摂取した場合、低脂肪や無脂肪の乳製品を摂取した場合、また、全体的に脂質の少ない食事を取った場合では収縮期血圧が平均5.5 mmHg、拡張期血圧が平均3.0 mmHg低下したことが示された[32]。しかし、この「Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事法)(DASH)」に基づいた食事でも、カリウムやカルシウムのような降圧に関与している栄養素の摂取が増えるため、マグネシウムのみが関与する効果を明らかにすることはできない。

マグネシウム摂取と心臓病の関連を検討した前向き研究も複数実施されている。「地域における動脈硬化症リスク研究」では、45歳~64歳の白人およびアフリカ系米国人の男女14,232人のコホートにおけるベースライン時の心臓病リスクファクターと血清マグネシウム値を評価した[33]。平均12年の追跡期間を通して、正常な生理的血清マグネシウム値の四分位における最上位群(0.88 mmol/L以上)では、最下位群(0.75 mmol/L以下)と比較して心臓突然死のリスクが38%低値であった。しかし、食事由来のマグネシウム摂取量と心臓突然死のリスクとの関連性は認められなかった。米国で行われた別の前向き研究では88,375人の女性看護師を追跡し、研究の初めに測定した血清マグネシウム値と、2年から4年ごとに評価した食物およびサプリメント由来のマグネシウム摂取量が心臓突然死と関連があるかどうかを、26年間の追跡期間を通して調査した[34]。マグネシウム摂取量と血漿マグネシウム濃度の四分位において最上位群の女性では、最下位群の女性より心臓突然死のリスクが前者では34%、後者では77%低値であった。オランダで実施された心血管疾患の既往歴のない20歳~75歳の成人7,664人を対象にした前向き集団研究では、追跡期間中央値10.5年を通して尿中マグネシウム排泄量(食事由来マグネシウム摂取量が少ないことの指標)が少ないことと、虚血性心疾患のリスクが高いことが関連していた。血漿マグネシウム濃度は虚血性心疾患のリスクとは関連していなかった[35]。前向き研究の系統的レビューとメタアナリシスによると、血清マグネシウム値が高いほど心血管疾患のリスクが有意に低くなり、食事由来のマグネシウム摂取量が多いほど(最大で1日あたり約250 mg)心筋への血液供給の低下が原因で起こる虚血性心疾患のリスクが有意に低くなることが示唆されたた[36]。

マグネシウム摂取量が多いと脳卒中のリスクが低下する可能性がある。総計241,378人を対象とする7件の前向き研究のメタアナリシスでは、食事にマグネシウムを1日あたり100 mg追加すると脳卒中全般のリスクが8%低下し、なかでも出血性卒中ではなく虚血性脳卒中のリスクが低下していた[37]。しかし、このような観察研究の欠点のひとつとして、脳卒中のリスクに影響を与えたかもしれない他の栄養素または食事の構成成分という交絡因子が存在する可能性がある。

食事やサプリメントから摂取したマグネシウムが、心臓の健康や心血管疾患の一次予防にどのように関与しているかをさらに理解するために、適切にデザインされた大規模臨床試験が必要である[38]。

2型糖尿病

マグネシウムの多い食事が糖尿病のリスクを顕著に低下させる理由は、おそらく糖代謝におけるマグネシウムの重要な働きによると考えられるす[39,40]。低マグネシウム血症は糖尿病の先行状態であるインスリン抵抗性を悪化させるかもしれないし、あるいはインスリン抵抗性の結果であるかもしれない[41]。糖尿病はマグネシウムの尿中への喪失を増やし、その後に続くマグネシウム不足がインスリン分泌とインスリン活性を障害するため、糖尿病の管理が難しくなる[3]。

マグネシウム摂取と2型糖尿病に関する調査のほとんどは前向きコホート研究であった。糖尿病患者286,668人と糖尿病10,912例を6年~17年間追跡した7件の前向きコホート研究のメタアナリシスでは、1日あたりの総マグネシウム摂取量が100 mg増加すると、糖尿病のリスクが統計的に有意に15%低下することが判明した[39]。また、271,869人の男女を4~18年間追跡した8件の前向きコホート研究のメタアナリシスでは、食事由来のマグネシウム摂取量と2型糖尿病のリスクとの関連は有意に逆相関であることが判明した(最大摂取量と最少摂取量を比較した場合の相対リスク減少率は23%であった[42]。

マグネシウム摂取量と2型糖尿病のリスクに関する2011年の前向きコホート研究には13の研究が含まれており、総計536,318人の糖尿病患者と24,516例の糖尿病が対象となった[43]。平均追跡期間は4年~20年である。研究者は、マグネシウム摂取量と2型糖尿病のリスクとの間に用量反応性の逆相関が認められることを明らかにしたが、この逆相関は体重過多の被験者(肥満度指数BMIが25以上)でのみ統計的有意差が認められ、正常体重の被験者(BMIが25未満)では有意差が認められなかった。ここでも、マグネシウム摂取に関連する食事中の他の構成要素やライフスタイル、または環境の変化が交絡因子となる可能性がこれらの観察研究の欠点となっている。

マグネシウム補充が2型糖尿病コントロールに与える影響については少数の小規模短期臨床試験のみが実施されており、結果も一致していない[40,44]。たとえば、ブラジルの臨床試験では、コントロール不良の糖尿病患者128人がプラセボあるいは1日あたり500 mgまたは1,000 mgの酸化マグネシウム(それぞれマグネシウム元素300 mgまたは600 mgを補充)を含有するサプリメントを30日間摂取しました[45]。その後、血漿マグネシウム値、細胞マグネシウム値および尿中マグネシウム値を測定したところ、高用量群の患者では値が増加し、血糖コントロールが改善した。メキシコで実施された別の小規模臨床試験では、2型糖尿病と低マグネシウム血症を併発している患者が塩化マグネシウムの液体サプリメント(マグネシウム元素1日あたり300 mgを補充)を16週間摂取したところ、空腹時グルコース濃度と糖化ヘモグロビン濃度がプラセボ群と比較して有意に低下し、また血清マグネシウム値が正常化した[46]。対照的に、インスリン投与を受けている2型糖尿病患者50人がアスパラギン酸マグネシウムサプリメント(マグネシウム元素1日あたり369mgを補充)またはプラセボを3カ月間摂取した場合には、いずれの群でも血糖コントロールに対する効果は認められなかった[47]。

アメリカ糖尿病学会は、マグネシウムの日常的利用が糖尿病患者の血糖コントロールを改善することを裏づけるエビデンスは十分ではないと明言している[44]。さらに、ビタミンやミネラルのサプリメントが、栄養障害を基礎疾患に持たない糖尿病患者に有効であるという明白な科学的エビデンスはないとも述べている。

骨粗鬆症

マグネシウムは骨形成に関与しており、骨芽細胞および破骨細胞の活性に影響を与える[48]。またマグネシウムは、骨の恒常性を主に制御する副甲状腺ホルモンと活性型ビタミンDの濃度にも影響を与えます。地域住民を対象とした複数の研究の結果、男女ともマグネシウム摂取と骨密度との間に関連性があることが認められた[49]。別の研究によれば、骨粗鬆症の女性は、骨減少症の女性または骨粗鬆症や骨減少症に罹患していない女性より血清マグネシウム値が低いことが明らかになった[50]。これらの結果から、マグネシウム欠乏症は骨粗鬆症のリスクファクターである可能性が示唆されている[48]。

少数ではありますが、食物やサプリメント由来のマグネシウム摂取量を増加させれば閉経後の女性や高齢女性の骨密度が増加するという研究結果も示されている[1]。たとえば、ある短期試験によれば、20人の閉経後の骨粗鬆症女性に1日あたり290 mgのマグネシウム元素をクエン酸マグネシウムとして30日間投与したところ、プラセボと比較して骨代謝が抑制され、骨量減少が低下した[51]。

推奨量のマグネシウムを含有する食事は骨の健康を促進したが、骨粗鬆症の予防と治療におけるマグネシウムの役割を解明するためにはさらなる研究が必要である

片頭痛

マグネシウム欠乏症は、神経伝達物質放出や血管収縮などの頭痛を助長する因子と関連している[52]。片頭痛を有する人では、片頭痛が認められない人よりも血清マグネシウム値と組織マグネシウム値が低くなる。

しかし、片頭痛を予防、あるいはその症状を軽減する目的でマグネシウムサプリメントを使用することに関する研究はあまり実施されていない。小規模短期プラセボ対照試験4試験のうち3試験では、片頭痛患者に1日あたり最大600 mgのマグネシウムを投与した結果、片頭痛の頻度がわずかに減少することが明らかになった[52]。片頭痛予防法に関するレビューの著者は、マグネシウム300 mgを1日2回、単独摂取または他の治療薬と併用することで片頭痛を予防できると提案している[53]。

米国神経学会および米国頭痛学会は、エビデンスに基づいた最新ガイドラインにおいて、マグネシウム療法は片頭痛予防に対して「おそらく効果あり(probably effective)」と結論づけている[54]。片頭痛予防に使用されるマグネシウムの一般的な用量はULを超えているため、マグネシウム療法は医療スタッフの指導や監督の下でのみ行われるべきである。

マグネシウム過剰摂取による健康上のリスク

健常者であれば、食物から過剰量のマグネシウムを摂取しても余剰分が腎臓から尿中に排泄されるため、健康上のリスクはない [28]。しかし、サプリメントや治療薬から高用量のマグネシウムを摂取すると、しばしば悪心や腹部疝痛を伴った下痢が認められる[1]。最も下痢を引き起こしやすいマグネシウムの形は、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウムおよび酸化マグネシウムである[11]。マグネシウム塩による下痢や緩下作用は、小腸や大腸で吸収されなかった塩類の浸透圧活性と胃運動の促進によって生じる[55]。

非常に高用量のマグネシウムを含有する緩下剤や制酸剤(通常1日あたりマグネシウム5,000 mg超を補充)はマグネシウム中毒を引き起こす可能性があり、生後28カ月の男子乳児[57]および高齢男性[58]において致死的な高マグネシウム血症が認められている[56]。マグネシウム中毒の症状は、通常、血清マグネシウム濃度が1.74~2.61 mmol/Lを超えた場合に発現し、血圧低下、悪心、嘔吐、顔面紅潮、尿閉、イレウス、抑うつ、筋力低下につながる倦怠感、呼吸困難、極度の低血圧、不整脈、心不全などが認められる[28]。腎機能障害や腎不全が認められる場合は、過剰なマグネシウムを排泄する能力が低下または失われるため、マグネシウム中毒のリスクが高まる[1,28]。

FNBが設定したマグネシウムサプリメントのULは、健康な乳児、小児および成人のみを対象としている(表3参照)[1]。

表3:マグネシウムサプリメント許容上限摂取量(UL)[1]
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~12カ月 設定なし 設定なし  
1歳~3歳 65 mg 65 mg  
4歳~8歳 110 mg 110 mg  
9歳~18歳 350 mg 350 mg 350 mg 350 mg
19歳以上 350 mg 350 mg 350 mg 350 mg

医薬品との相互作用

医薬品の種類によっては、マグネシウムサプリメントとの相互作用を有するか、マグネシウムの状態に影響を与える可能性がある。次にいくつかの例をあげます。このような医薬品やそれ以外の医薬品を定期的に服用している人は、マグネシウム摂取に関して医療スタッフと相談すべきである。

ビスホスホネート製剤

マグネシウム含有量の多いサプリメントや薬剤は、アレンドロン酸(Fosamax®)など骨粗鬆症の治療に使われる経口ビスホスホネート製剤の吸収を低下させる可能性がある[59]。マグネシウム含有量の多いサプリメントや医薬品と経口ビスホスホネート製剤の服用間隔は2時間以上空けなければならない[55]。

抗生物質

マグネシウムは、デメクロサイクリン(Declomycin®)やドキシサイクリン(Vibramycin®)などのテトラサイクリン系抗生物質ならびにシプロフロキサシン(Cipro®)やレボフロキサシン(Levaquin®)などのキノロン系抗生物質と不溶性複合体を形成する場合ができる。これらの抗生物質はマグネシウム含有サプリメントを摂取する2時間以上前か、または4~6時間後に摂取しなければならない [55,60]。

利尿剤

フロセミド(Lasix®)やブメタニド(Bumex®)などのループ利尿剤、あるいはヒドロクロロチアジド(Aquazide H®)やエタクリン酸(Edecrin®)などのサイアザイド系利尿剤は、長期間投与すると尿中へのマグネシウム喪失量が増加し、マグネシウム欠乏症を起こす可能性がある[61]。対照的に、アミロライド(Midamor®)やスピロノラクトン(Aldactone®)などのカリウム保持性利尿剤はマグネシウム排泄を減少させる[61]。

プロトンポンプ阻害剤

エソメプラゾールマグネシウム(Nexium®)やランソプラゾール(Prevacid®)などのプロトンポンプ阻害(PPI)剤は、長期間にわたり(通常1年以上)服用を続けると低マグネシウム血症を引き起こす可能性がある[62]。FDAのレビューによれば、マグネシウムサプリメントの摂取によって、プロトンポンプ阻害剤が原因で低下した血清マグネシウム値が上昇した例がいくつかある。しかし、症例の25%ではサプリメントを摂取しても血清マグネシウム値は上昇せず、患者はプロトンポンプ阻害剤を中止せざるを得なかった。FDAは医療従事者に対して、長期PPI投与を開始する前に患者の血清マグネシウム値を測定し、その後も定期的に値を確認するよう注意を促している[62]。

マグネシウムと健康的な食事

米連邦政府が発行する「アメリカ人のための食生活の指針2010」では、「栄養は主として食事から摂取すべきである。栄養分を豊富に含む食品(多くは未加工品)には、サプリメントに含まれることの多い必須ビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維や体によい天然成分も含有している。・・サプリメントは・・特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるには有益と考えられる」と述べている。

「アメリカ人のための食生活指針」では健康的な食事を次のように述べている。

  • さまざまな果物、野菜、全粒穀物、無脂肪もしくは低脂肪ミルクおよび乳製品の積極的な摂取が重要。
    全粒粉と濃緑色葉野菜はマグネシウムの優良な供給源です。また、低脂肪乳やヨーグルトにもマグネシウムが含有されている。インスタントの朝食用シリアルの中にはマグネシウムが強化されたものもある。
  • 赤身の肉、鶏肉、魚介類、豆類、卵、ナッツ類も摂取すること。
    乾燥マメやマメ科植物(ダイス、ベークドビーンズ、レンズマメ、ピーナッツなど)、ナッツ類(アーモンド、カシュ―ナッツなど)はマグネシウム供給源である。
  • 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、塩分(ナトリウム)および添加糖質の摂取を少なくする。
  • 1日に必要なカロリー摂取量を超えないこと。

健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)と米国農務省の食事の指針システム、MyPlate(私の食事)を確認すること。

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監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

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