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海外の情報

マルチビタミン・ミネラル
Multivitamin/mineral Supplements

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終改訂年月(翻訳時):2013年1月7日

はじめに

マルチビタミン・ミネラルについての簡単な説明は、一般向けファクトシートを参照のこと。

一般向けファクトシートの翻訳サイトは以下を参照してください

アメリカ人は1940年代初頭に、初めてマルチビタミン・ミネラル(MVM)サプリメントが手に入るようになってからずっとサプリメントを摂っていた[1]。MVMは現在も人気のある栄養補助サプリメントであり、推定によるとアメリカ人の1/3以上がこれらのサプリメントを摂っている[1,2]。MVMはすべてのサプリメントの約1/5、ビタミンとミネラルサプリメントの全売上の40%以上を占めている。(2011年の米国でのサプリメントの売上は推定総額300億ドル。このうちビタミンまたはミネラルを含むサプリメントが124億ドル、そのうちの52億ドルがMVMであると推定されている[3])

MVMサプリメントには、どの栄養素を含まなければならないとか、どのくらいの量含まなければならないといった基準や規定はない。したがってこの用語は、幅広くさまざまな成分や特徴の製品に対して使われる可能性がある[4]。これらの製品はmulti、 multiple, MVM.などさまざまな名称で販売されています。製造業者がMVMに配合するビタミン、ミネラル、その他含有成分の種類や量を決定する。その結果、市場に出回るMVMの種類は多くなる。

MVMの分類方法のひとつに次のようなものがある。

  • MVM は1日1回摂取するタイプが多く、広く認められているすべてのまたはほとんどのビタミンとミネラルを含み、一般的には各栄養素の1日摂取量(DV)か推奨栄養所要量(RDA)、摂取目安量(AI)を含有する。用語説明1 このファクトシートは原則としてこれらの基本的な「広範囲の」MVMを対象としている。小児、成人、男性、女性、妊婦、高齢者に対する配合量はその対象集団に必要な特定の必要量に従って、同じビタミンやミネラルでも推奨量が異なることが一般的である。
  • MVMの中には1日摂取量、推奨栄養所要量、摂取目安量よりもかなり多い量の特定のビタミンやミネラルを含むものがあり、いくつかの例では設定された許容上限量(UL)用語説明2に等しいものもある。これらのMVMにはまた他の栄養素や、植物成分が含まれることもある。製造業者は1日摂取量を2箱に入れたり、2錠以上の包装にしたりして販売している場合がある。
  • 能力アップや活力増強、体重管理、免疫機能改善、更年期症状の改善などを目的とした特殊なMVMには、しばしばビタミンとミネラル以外に植物や特殊な成分であるステロール、コエンザイムQ10、プロバイオティクス、グルコサミンなどが含まれることがある。いくつかの成分では明らかに1日摂取量、 推奨栄養所要量、摂取目安量を超える量を含有することもあり許容上限量を超える場合もあるようだ。

さらにこの製品分類を複雑にしている理由として、MVMと表示している製品とよく似た種類や量のビタミンやミネラルを含んでいるにもかかわらず、MVMと表示していないサプリメントが多いことが指摘されている。[4]例えば、いくつかのビタミンやミネラルを含んでいても、ビタミンC、E、セレニウム、βカロテンを含む製品をMVMではなく抗酸化剤と表示していることがある。

市販のMVMには多様性があるために研究者は、健康に対する有益可能性評価の研究において、製品を個別に定義するか、時には全く定義しないこともある。例えば、医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality)が2006年に行った,慢性疾患の予防に対する MVMの役割に関するエビデンスに基づいた考察では、MVMを「3種類以上のビタミンとミネラルを含むあらゆるサプリメント。ただし植物、ホルモン、医薬品を含まず、各成分量が食品栄養委員会(Food and Nutrition Board)が定めた許容上限以下」と定義している。[5]他の研究ではMVMはさらにあいまいに「ストレスタブ(ストレスに効く錠剤)タイプ」「治療用またはセラグランタイプ」「1日1回タイプ」と定義している。[6]MVMの定義が多様であるため、事実上、製造業者が自由にMVMの成分を変えることができ、各試験間で使用される製品の同等性が確保できず、MVMの健康に与える影響に関する研究は複雑となる。

MVM使用量

国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES))により2003-2006年に集積されたデータを分析したところ、1歳以上の米国人のうち33%が特定の月に何らかのMVMを摂っていた。(図1参照) [2]分析を行った著者はMVMを少なくとも3種類のビタミンと1種類のミネラルを含む製品、と定義した。全体として、女性 (36%)は 男性 (31%)よりもMVMを多く摂取する傾向があった。MVMの摂取率は1-3歳で25%-27%、14-18 歳で 14%-19% でした。 18歳以上になると摂取率が高くなり、71歳以上では女性の48%、男性の43%がMVMを摂取していた。

図1:年齢別MVM摂取率:NHANES2003-2006
図1:年齢別MVM摂取率:NHANES2003-2006

MVM製品の定義が異なり、使用頻度が多様で、配合成分が複雑であるため、MVMの普及率を推測することは困難である。(例えばビタミン、ミネラル以外の成分を含み特殊な処方の製品がますます増えている)。[1]しかし、いくつかの研究から総体的にみると、MVMをより頻繁に使用しているのは、女性、サプリメントを使用している女性の子供、年配者、高学歴、高収入、健康的な生活習慣と健康的な食生活、BMI(体格指数)が低い人、また地域的にはアメリカ西部の居住者であることが分かる。喫煙者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、ネイティブアメリカ人などの特定の民族と人種ではMVMの使用率は低い。[1]

MVMと健康

MVMを摂っている人の理由はさまざまである。そこでMVMの効果を、栄養摂取の増加と、健康増進または慢性疾患の予防という2つの要素について評価した。

栄養摂取量の増加

食事からだけではビタミンとミネラルの必要量を摂取できない場合、MVMを摂れば栄養摂取量が増え、ビタミンとミネラルの摂取推奨量に近付くことができる。食品栄養委員会 (FNB)は栄養素の推奨栄養所要量と摂取目安量は、概ね食事から毎日摂るべきである量だと記している。[7]つまりFNBはサプリメントが栄養不足をどこまで補うことができるのかということについては述べていない。にもかかわらず食事や栄養の「保険」としてMVMを摂っていると考える人もいる。この概念はMiles Laboratories 社のサプリメントシリーズOne-A-Day® のマーケティングで初めて紹介された。[8]

MVMはさまざまな栄養摂取を適正化することもあるが、一方でそれ以外の栄養では許容上限量を超えて摂ってしまいかねない。個々には栄養の保険として働くこともあるが、それ以外では過剰摂取の懸念があるという両面性を示した例が複数の研究により報告されている。

例えば、ある研究ではロサンゼルスとハワイの大規模多民族コホート試験を用いその食事とマルチビタミンの使用を評価した。[9]研究者は食事回数のアンケートを用い食事からの栄養摂取量と、最も一般的に報告されている2種類のMVMを基準とした既定プロファイルを用いマルチビタミンからの栄養摂取量を計算した。参加者の約3/4が食事からだけでも適切な栄養を摂取していたが、マルチビタミンを用いた群では、男女とも栄養適正者数が平均8%上昇していた。もっとも摂取の改善が認められたのはビタミンE、Aと亜鉛であったがMVM使用者における過剰摂取率はビタミンA、鉄、亜鉛で10-15%、ナイアシンで48%-61% であった。研究者はMVMには「国民の健康に重要なものを中心に配合するべきであろう」と結論付けた。さらに理想的なMVMとは、栄養不足の隙間を埋め補助し(ビタミンE、カリウム、カルシウムなど)、かつ過剰に摂取する恐れのある栄養素(ビタミンA、鉄、ナイアシンなど)は含量が低いものと結論付けている。

2つ目の研究は4歳未満を対象とした乳幼児の米国内調査で、日常的な食事による栄養だけでほとんどの乳幼児が適切な量を摂取していることがわかった。[10]ただし年長児における少数のサブセットでは鉄と亜鉛が、またかなりの割合の若年小児でビタミンEとカリウムが不足しているという結果が認められた。サプリメントはこれら栄養不足の患者数を減らすのに役立つかもしれないが、サプリメントの使用によりいくつかの栄養素の摂取量が上昇し、特にビタミンA、葉酸、(就学前の年長児の)亜鉛は許容上限量を超えて摂取する傾向がある。研究者らは、幼児にはサプリメントやビタミンAと亜鉛を多く含む栄養強化食品を与えないように、と保護者にアドバイスしている。[11]

強化食品に添加されたり、サプリメントでも入手可能な合成葉酸塩である葉酸に関する研究では、適正栄養に対するMVMの影響について、別の例を示しています。2003-2006 年のNHANESデータ分析によると, 34.5%の参加者が 葉酸を含むサプリメント(MVM他)を摂っていると報告されている。 [12]これらのサプリメントは葉酸不足の人数を低下させたが、摂取者の4% がサプリメントだけで葉酸の摂取上限 (1,000 µg/day) を超えていた。50歳以上の約5%において葉酸の合計摂取量が上限を超えていた。1-13 歳の小児のうち28%が葉酸を含むサプリメントを摂っていたが、そのうち半数以上が葉酸の上限を超えており 、一方サプリメントを摂っていない小児では5%であった。[13]当然のことながら、MVM使用者の中でも、ビタミンやミネラルの単体サプリメント併用者の方が摂取過剰となる傾向がある。[14]

いくつかの研究によると、MVM使用者は使用していない人に比べて、食事から摂る微量栄養素が多い傾向にあることがわかった。[14]皮肉なことに、MVMにより最も恩恵を受けると思われる栄養不足ハイリスク群ほど、MVMを摂っていないという傾向がみられた。[1]

健康増進と慢性疾患予防

2006年、エビデンスに基づいた包括的レビューが発行され、医療専門家が考える、サプリメントにより最も良い影響を受ける健康状態や疾患(がん、年齢的な感覚鈍麻、心血管系、内分泌系、神経系、骨格筋系、消化管系、腎、肺疾患)に対するサプリメントの有望性が強く示唆された研究の関連性について検討された。[5]発行されたランダム化コントロール臨床試験だけをみると、MVMの使用はいかなる慢性疾患のリスクも減少させないことがわかった(著者らはMVMを3種類以上のビタミンとミネラルを許容上限以下の量含みハーブを含まないものと定義した)。

専門委員会は2006年の国立衛生研究所の( National Institutes of Health )慢性疾患予防に対するMVMのカンファランス(state-of-the-science conference)に出席し、この報告を再検討した上で、「現在のところアメリカにおける慢性疾患予防のためのMVMの使用に関しては賛否とも推奨するにはエビデンスが不十分である」と結論付けた。[1] U.S. Preventive Services Task Force(米国予防特別委員会) [15]による過去の評価でも、がんや心血管系疾患の予防のためにMVMを使用することの賛否についてはエビデンスが不十分である、というほぼ同様の結論に達した。世界がん研究基金(World Cancer Research Fund) と米国がん研究協会( American Institute for Cancer Research)[16]による研究の包括的評価では、一般の人ががんを予防する目的でサプリメントを使用することは望ましくないと述べ、理由として効果とリスクが予測できないこと、予測不能な有害事象が発現する可能性があることがあげられている。

健康増進と疾患予防に対するMVMの潜在価値に関するほとんどの研究が観察的であり、その関連性については示唆されるものの、因果関係は証明されていない。考えられる有益性あるいは有害作用を示唆する研究もあるが、他方、そのいずれも認めないものもある。これらの試験の参加者は異なるMVMを用いたり、栄養素の配合や摂取量が異なる研究も含まれていた。最も大規模なプロスペクティブ観察研究のひとつに女性の健康イニシアティブ(Women's Health Initiative)による、50-79歳の閉経後女性161,808 人を対象としたがん、心臓病、骨粗鬆症に関する健康とリスク研究がある。およそ41.5%の女性がMVMを摂っており、観察期間は中央値8年以上であったがこれら製品の使用と、一般的ながんおよびすべてのがん、心疾患のリスク、全死亡率のいずれについても関連性が認められなかった。[17] 同様の結果がハワイとカリフォルニアに住む45-75歳の男女182,099人を対象とした、平均観察期間11年以上の研究からも報告されている。このコホートはほとんどがアフリカ系米国人、ハワイ原住民、日系アメリカ人、ラテン系、ノンヒスパニック系白人で、およそ男性の48%、女性の52%がミネラルを含む、含まないに関わらず何らかのマルチビタミンを摂っていた。 [18]

スウェーデン人女性によるプロスペクティブ研究ではMVMの使用と乳癌リスクの増加に関連性が認められた。[19]一方、米国の別の研究ではそのような関連性は認められなかったが、MVMの使用がアルコール摂取女性におけるエストロゲン・プロゲステロン レセプターネガティブ乳癌とすべての乳癌のリスクを減少させるかもしれないという結果が示された。[20]ある大規模プロスペクティブ研究では進行性かつ致死性の前立腺癌のリスクはMVMを1週間に7回以上摂取している男性の方が全く摂取していない男性よりも高いという結果が報告された。[6]男性医師におけるプロスペクティブ研究ではMVMの使用と心血管障害の間に何ら関連性は認められなかった。[21]しかしながら、スウェーデン人成人女性において、特にMVMを少なくとも5年間使用した場合には、心筋梗塞のリスク減少と関連性が認められた。[22]アイオワ州での閉経後女性の研究では18年間追跡調査を行い、MVM(または鉄など特定の栄養素)を摂取した群では使用していない群に比べてわずかながらしかし有意な全死亡率の増加を示した。[23]

ランダム化コントロール試験はMVMが疾患リスクに影響を与えるかどうかを調査するための優れた試験デザインであるが、ほとんど実施に至らなかった。Physicians Health Study IIはMVMが慢性疾患を予防するかどうかを調査する最も長い長期臨床試験であった。本研究は米国の50歳以上の男性医師14,641 人がランダムに割り付けられMVM (Centrum Silver®)かプラセボを連日摂取し11.2 年間(中央値)追跡調査を行った。MVMを摂取した群では少なくとも重大な心血管イベント、心筋梗塞、脳卒中、心血管関連死は認められなかった。[24] MVMの摂取はがん発生リスクを8%有意に減少させたが、前立腺癌とすべてのがん死亡率は減少させなかった。[25]

疾患リスクと進行に対するMVMの影響について別の有名な2つの試験では、抗酸化栄養素の配合が用いられた。ひとつ目はFrench Supplémentation en Vitamines et Minéraux Antioxydants (SU.VI.MAX) studyという試験で研究者らは13,017人の成人をランダムにプラセボ群とビタミン C(120 mg), ビタミン E(30 mg), βカロテン(6 mg),セレニウム(100 µg), 亜鉛(20 mg)を 適量含むサプリメント連日使用群に割り付けた。[26]7.5年間使用した後、サプリメントの使用により男性における全がん発生率と全死因死亡率は低下したが、女性では低下しなかった。このサプリメントの心血管障害に対する予防効果は認められなかった。

加齢性眼疾患研究では、さまざまな進行度の加齢性黄斑変性患者をプラセボ摂取群か高用量ビタミン C (500 mg)、ビタミンE(400 国際単位 [IU]), βカロテン(15 mg), 亜鉛(80 mg), 銅 (2 mg) を含むサプリメント連日摂取群にランダムに割り付けた。[27](これらの栄養素は最も標準的なMVMに含まれているが通常はこれよりかなり少ない量である)。平均経過観察期間6.3年の後、サプリメントは有意に進行性加齢性黄斑変性の発生リスクと視力障害を減少させた。

スリランカで実施された糖尿病成人を対象としたある小規模ランダムコントロール試験では、特別に調整された亜鉛を含むMVMを4か月間摂取した群において、プラセボあるいは亜鉛を含まないMVMを摂取した群よりも有意な空腹時血糖値と糖化ヘモグロビンの低下が認められた。[28]このMVMには通常量の種々のビタミンやミネラルと亜鉛22mgが含まれていた。しかし自然観察を行ったある大規模プロスペクティブ研究では、MVMを摂取していた50-71歳の成人と糖尿病発生リスクとの間に何ら関連性は認められなかった。[29]

健康的な食事と生活習慣の人ほどサプリメントを用いる傾向があるため、既に証明され予測可能な健康促進行為による効果とは違う健康上の効果が、サプリメントの摂取によるものだとすることは困難である。[8]しかも研究が何らかの有益性(またはリスク)を示すかどうかは用いたMVMに含まれる栄養素の配合と量だけでなく、対象となった母集団と経過観察期間にも依存するため、これらの結果を市販されている非常に多種多様なMVMに一般化することはできない。

特定の集団に対する特別な見解

MVMにより総体的慢性疾患リスクは減少しないようだが、MVMに含まれるいくつかの栄養素は特定の集団に対して有益となり得る。例えば、

  • カルシウムとビタミンDの補充は閉経後女性の骨塩密度の増加、骨折率の減少をもたらすと思われる。[1,30].
  • 妊娠予定の出産可能年齢の女性は400 µg/dayの合成葉酸を強化食品またはサプリメントから摂取すべきである。妊娠1ヵ月(ほとんどの場合妊娠にまだ気づかない時期)に十分量の葉酸を摂取することにより新生児の神経管欠損リスクを減少させる。[7,31,32].
  • 50歳以上の人は推奨量のビタミンB12を主に栄養強化食品かサプリメントから摂取すべきである。なぜなら、ビタミンB12は通常、食物中でタンパク質と結合しており、その吸収能が若年層よりも低下しているためである。[7,32]また完全菜食主義者は強化食品かサプリメントからビタミンB12を摂取するのが良い。[32].
  • 妊娠女性は産科医かもしくは他の医療スタッフの指示に従って鉄分を補給すべきである。[32].
  • 米国小児科学会は完全母乳または混合母乳による乳児には、ビタミン Dサプリメント 400 IU/day を出産直後から与え、離乳するまで継続したのち、最低1,000 mL/day のビタミン D強化調整ミルクか完全ミルクを与えることを推奨している。 [33]同様に、すべての母乳栄養でない乳児でもビタミンD強化調整ミルクか粉ミルクの摂取量が1,000 mL/day未満の場合は、ビタミンDサプリメントを400 IU/day摂取すべきとしている。[33]学会によると、拒食症や食欲不振の者、偏った減量法を行った者、慢性疾患のある者、貧困家庭に生まれたか親のネグレクトや虐待を受けた者、肥満のための食事管理療法を受けた者、適度な乳製品を摂らない菜食主義者、発育障害児など、栄養上リスクがある小児に関してはサプリメントの摂取が有益であろうとしている。[34].

個人の食事内容を優先的に考慮することなく、各栄養素やMVMの常用を推奨するような米国の公的健康機関や私的な健康グループ、専門家団体はない。しかし、低カロリーダイエット食や特定の食品を避けているなど(厳格なベジタリアンや完全菜食主義者)、食事からだけでは栄養が十分摂れない人ではMVMの摂取が有益であると考えられる。[35]医療スタッフは消化吸収障害のある病状や疾患の人にMVMを処方し、栄養製剤を用いることがある。一般的に、幅広い食品から必要な栄養を十分摂れない人にとってサプリメントは時として有効かもしれない。しかしながらサプリメントは幅広い食品の変わりにはならないので、やはり健康的な食事が重要である。

安全性の問題

標準的なMVMは摂取推奨量に近い栄養を含むため健康人には安全性リスクはない。しかしMVMや他のサプリメントを摂取していたり、栄養強化食品、飲料を摂っている人は、特定の栄養素が許容上限量を超える恐れがあり、副作用の可能性が高くなる。[36]また、上限に近いあるいは上限を超えるビタミンやミネラルを含むMVMを摂っている人にとっても同様の心配がある。

喫煙者、恐らく喫煙歴のある人も高用量のβカロテン、ビタミンAを含むMVMの使用は避けるべきである。その理由として、これらの栄養素による喫煙者における肺癌リスクの増加を示した2つの研究があるからである。[37]ひとつ目はフィンランド人男性喫煙者における観察期間5-8年以上のランダム化コントロール臨床試験で、βカロテン (20 mg/day) 摂取群はプラセボ群よりも、肺癌罹患率が18%高いという結果が得られた。[38]別の研究では、喫煙者、喫煙経験者、アスベスト暴露者における平均観察期間4年の試験において、βカロテン(30 mg/day)とビタミンA(25,000 IU/day)配合剤(レチノールとして) 摂取群はプラセボ摂取群よりも肺癌リスクが28%増加した。[39]

ビタミンA(レチノールの前駆体でβカロテンではない)を妊娠期間中に過剰摂取すると、新生児の出生異常のリスクを増加させる可能性がある。妊娠期間中のビタミンA摂取上限は若い女性で9,240 IU/day 、成人女性で10,000 IU/day である。 [40]

鉄分不足もしくは鉄欠乏と医師が診断しない限り、成人男性は1日摂取量の鉄分を含むMVMを摂ることは避けるべきである。18 mgは推奨栄養所要量 8 mg/dayの2倍以上である。閉経後女性でも鉄の推奨栄養所要量が8 mg/dayだが、やはり医師が特段に推奨しない限りは1日摂取量の鉄を含むMVMは避けるべきである。鉄分サプリメントは6歳までの中毒の主な原因であるため、両親や保護者は鉄含有サプリメントを小児の手の届かないところに保管しなければならない。[41].

医薬品との相互作用

推奨摂取量の栄養素を含むMVMであれば、通常は医薬品との相互作用はないが、ひとつ重要な例外がある。ワルファリン(Coumadin®)などの抗血液凝固製剤を服用している人は、ビタミンKを含むMVMまたはサプリメントを摂取する前には医療スタッフにそのことを必ず告げていること。[42,43]ビタミンKは血液凝固に関与しワルファリンや同種薬剤の効果を減弱させる。薬剤投与量は日々のビタミンKの摂取量も考慮して決定される。

MVMの選択

標準的なMVMとはビタミンとミネラルの両方を含みほとんどの場合その栄養素の1日摂取量を超えることはない。MVMは通常、カルシウムやマグネシウムなど必要摂取量が比較的多い栄養素の含有量は少ないため、MVMとは別にこれらの栄養素を含むサプリメントを摂る必要があるかもしれない。逆に先に述べたように、ビタミンAと鉄を含むいかなるMVMに対しても特別な注意を必要とする人があり、これらの栄養素を摂りすぎないように注意しなければならない。

MVMを選ぶときには、年齢、性別、その他体質(妊娠など)に合ったものを見つけるようにしなければならない。例えば、男性用にはほとんどあるいはまったく鉄を含まないMVMが多く、また年配者用にはカルシウム、ビタミンD、ビタミンB12が若い世代用よりも多く入っている。妊婦用サプリメントは通常、レチノールとしてのビタミンAを含まず、ほとんどの小児用MVMには年齢別の適量な栄養素が含まれている。米国食品医薬品局(FDA)はサプリメントに対し同等性、純度、強度、組成を確立するため医薬品の製造実践に力を入れてきた。[44]また、FDAは定期的にサプリメントの製造設備を検査している。

MVMと健康的な食事

米連邦政府が発行する「アメリカ人のための食生活の指針2010」では、「栄養は主として食事から摂取すべきである。栄養分を豊富に含む食品(多くは未加工品)には、サプリメントに含まれることの多い必須ビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維や体によい天然成分も含有している。・・サプリメントは・・特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるには有益と考えられる」と述べている。 [32]MVMについて、著者は次のように記している。「健康なアメリカ人が慢性疾患を初期段階で予防するためにマルチビタミン・ミネラルサプリメントを使用することの賛否を裏付けるエビデンスは十分ではない」。しかしながら、著者らは、アメリカ人が飲食物から十分な栄養を摂っていないことを認識している。アメリカ人の食事で特に公衆衛生上問題となる栄養素は成人も小児も、カリウム、食物繊維、カルシウム、ビタミンDである。

健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)と米国農務省の食事の指針システム、MyPlate(私の食事)を確認すること。

1 米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)は推奨栄養所要量と 摂取目安量を設定している。 推奨栄養所要量は必須栄養素の平均1日摂取量でほとんどすべての健康人(97%-98%)に必要とされる栄養量に相当する。この値は年齢、性別、と栄養素によって異なる。FNBは推奨栄養所要量を設定するにあたりエビデンスが不十分な栄養素については、摂取目安量を設定している。FNBが設定する 摂取目安量は委員会の専門家が考える、栄養的に妥当であると保証される量であり、ほとんどの「外見上健康」な人にとって必要な量に十分合ったもしくはそれを超える量である。 [7] 米国食品医薬品局(FDA)は、消費者がすべての食事に含まれる製品の含有成分を比較しやすいように1日摂取量を考案している。FDA が設定した各栄養素の、成人と4歳以上の小児に対する1日摂取量は、大抵その栄養素の推奨栄養所要量か摂取目安量 とほぼ同値である。

2 許容上限量はFNBが多数の栄養素に対して設定したもので、健康に悪影響を与えないと思われる最大1日摂取量であり。摂取量が増え許容上限量を超えると、有害事象のリスクが高くなる可能性がある。

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監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

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