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頭痛
Headches

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2016年9月

要点は?

頭痛に対する補完療法の有用性についてわかっていることは?

心身療法

  • 頭痛に対する鍼治療は有用であるとされています。その有用性のほとんどは、鍼の穿刺による特異的な効果というよりも、期待や信念、プラセボ反応など非特異的な要因による可能性があります。
  • 一部の研究では、バイオフィードバック(行動療法)をベースにしたテクニックが緊張型頭痛や片頭痛に役立つ可能性があることが示されていますが、すべての研究結果が一致しているわけではありません。
  • マッサージリラクゼーション法脊椎マニピュレーション太極拳については、科学的根拠(エビデンス)があまりにも限定的であるか、一貫性がないため、結論を出すことができません。

サプリメント

頭痛に対する補完療法の有効性についてわかっていることは?

一般的に、このファクトシートにて取り上げている補完療法は、安全性に優れています。しかし、すべての人にリスクがないということではありません。あなたの年齢、健康状態、特別な状況(妊娠など)、服用・摂取している薬やサプリメントが補完療法の安全性に影響を与える可能性があります。

頭痛についての基礎知識

頭痛は最も一般的な痛みの形態です。頭痛は、人々が仕事や学校を休んだり、医療機関を受診したりする主な理由です。このファクトシートでは、緊張型頭痛と片頭痛の2種類の頭痛に焦点を当てています。研究者は、両方の頭痛に対する補完療法を研究してきました。

緊張型頭痛と片頭痛:その違いは?

  • 最も一般的なタイプの頭痛である緊張型頭痛は、肩、首、頭皮、顎の筋肉の緊張によって引き起こされます。ストレスやうつ不安などが関連している可能性があり、働き過ぎ、寝不足、食事を欠食、お酒を飲む人に多く見られます。
  • 片頭痛は、アメリカ人の約12%が罹患し、多くの場合、頭の片側に中等度から重度のズキズキとした痛みを伴います。片頭痛の間、人は光や音に敏感になり、吐き気を感じることがあります。人によっては、片頭痛の前に、ジグザグの線や点滅する光が見えたり、一時的に視力を失ったりするような視覚障害を起こす人もいます。不安、ストレス、食事や睡眠不足、光への曝露、ホルモンの変化(女性の場合)などが片頭痛の引き金になることがあります。一部の脳細胞の活動を制御する遺伝子が片頭痛の原因となっている可能性があります。

頭痛についてのさらなる情報は、国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS; National Institute of Neurological Disorders and Stroke)のウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。

科学的観点からみた頭痛に対する補完療法

研究では、緊張型頭痛や片頭痛に対する一部の補完療法について有望な結果が得られています。その他の療法については、エビデンスの有効性は限定的であるか、相反しています。

心身療法

頭痛のために研究されてきた心身療法には、鍼治療、バイオフィードバック(行動療法)、マッサージ療法、リラクゼーション法、脊椎マニピュレーション、太極拳などがあります。

鍼治療

鍼治療とは多くの場合、施術者が身体の特定部位の皮膚に細い針を刺入しその部位を刺激する療法です。

頭痛に対する鍼灸治療の研究は数多く行われています。これらの研究結果を統合すると、鍼治療は頭痛の痛みを緩和するのに有用である可能性がありますが、その有用性のほとんどは、鍼の穿刺による特異的な効果というよりも、期待、思い込み、プラセボ反応などの非特異的な効果による可能性が示されています。

鍼治療は、経験豊富な施術者が滅菌した鍼を使用して行う場合は、一般的に安全と考えられています。鍼治療が不適切に行われると、潜在的に重篤な副作用を引き起こす可能性があります。

鍼治療についてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

バイオフィードバック(行動療法)

バイオフィードバックで体の機能を測定し、それらに関する情報を得ることで、それらの機能をより意識してコントロールできるようになります。例えば、バイオフィードバック装置は、筋肉の緊張の測定値を表示することができます。これらの測定値がどのように変化するかを見ることで、筋肉が緊張している時に意識するようになり、筋肉をほぐす方法を身につけることができます。

頭痛に対し研究されてきたいくつかのタイプのバイオフィードバックには、人々がリラックスすることを学ぶのに役立つ療法や、頭痛の間に起こる変化に焦点を当てたより具体的な療法などがあります。

  • 緊張型頭痛。多くの研究で緊張型頭痛に対するバイオフィードバックが検証されており、一部の研究の評価では、バイオフィードバックが有用である可能性があると結論づけられています。しかし、最も質の高い研究のみを対象とした評価では、バイオフィードバックが緊張型頭痛に有用かどうかについては、エビデンスが相反していると結論しています。
  • 片頭痛。バイオフィードバックにより片頭痛の頻度が減少することを示す研究もあります。しかし、バイオフィードバックがプラセボより効果があるかは不明です。

バイオフィードバックは、一般的に有害な副作用はありません。

マッサージ療法

マッサージ療法には、施術者が身体の軟部組織を操作するさまざまな方法があります。

2件の小規模な研究から得られた限定的なエビデンスは、マッサージ療法が片頭痛に有用である可能性を示していますが、明確な結論を出すことはできません。

マッサージ療法は、熟練の施術者が行う場合、ほとんどリスクがないようです。しかし、疾患がある人や妊婦は、マッサージの種類によっては避けた方が良い場合もあるので、マッサージ療法を受ける前にかかりつけの医療スタッフに相談してください。

マッサージ療法についてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

リラクゼーション法

漸進的筋弛緩法、誘導イメージ法、呼吸運動などのリラクゼーション法は、身体の自然な弛緩反応を作り出すことができる療法です。(一部のバイオフィードバックは、人々がリラクゼーション法を学ぶのに役立つように設計されています。バイオフィードバックについては、上記の別のセクションで説明しています)。

専門家の中には、緊張型頭痛にはリラクゼーション法が有望であると考える人もいますが、その効果を裏付けるエビデンスはほとんどありません。リラクゼーション法に関する質の高い研究の評価では、リラクゼーション法が無治療やプラセボよりも優れているかどうかについて、相反するエビデンスが見つかっています。一部の研究では、リラクゼーション法はバイオフィードバックよりも有用性が低いことが示唆されています。

リラクゼーション法は、一般的に副作用はありません。しかし、重篤な身体的または精神的疾患がある人に、まれに有害な影響が報告されています。

リラクゼーション法についてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

脊椎マニピュレーション

脊椎マニピュレーションとは、施術者が手や装置を使って脊椎の関節に制御した力を加える療法です。カイロプラクターや他の医療専門家がこの療法を使用することがあります。

脊椎マニピュレーションは、よく頭痛のために使われています。しかし、研究で矛盾する結果が出ているため、マニピュレーションが有用であるかは明らかにされていません。

脊椎マニピュレーションによる副作用としては、一時的な頭痛、疲労感、マニピュレーションを施術した部位の不快感などがあります。上部頸椎のマニピュレーション後に脳卒中が発生したという報告はまれにありますが、実際にマニピュレーションが脳卒中の原因となったのかどうかは明らかになっていません。

脊椎マニピュレーションについてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

太極拳

中国で発祥した太極拳は、瞑想とゆっくりとした優雅な動き、深呼吸、リラクゼーションを組み合わせたものです。

小規模な無作為化研究では、緊張型頭痛に対する太極拳の評価が行われています。頭痛の状態と健康に関連した生活の質の改善を示すエビデンスは、待機者リストに載っている患者と比較して、太極拳プログラムを受けている患者の間で見られました。これらのデータはあまりにも限定的なため、緊張型頭痛に対する太極拳の有用性ついて意味のある結論を出すことはできません。

太極拳は一般的に安全な療法と考えられています。

太極拳についてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

サプリメント

頭痛、特に片頭痛予防のために、いくつかのサプリメントが研究されてきました。2012年には、米国神経学会と米国頭痛学会がエビデンスに基づいたガイドラインを発表し、特定のサプリメントを片頭痛の予防に「有効」、「おそらく有効」、「有効な可能性がある」に分類しました。特定のサプリメントの有効性に関する結果は、次のセクションに要約されています。また、各サプリメントの安全性と副作用に関するエビデンスの簡単な要約も掲載しています。

バターバー

片頭痛予防のためのガイドラインでは、米国神経学会と米国頭痛学会は、バターバーは有効であり、片頭痛発作の頻度と重症度を軽減するために片頭痛患者に提供すべきであると結論しています。

バターバーの最も一般的な副作用は、腹痛などの軽度の消化管症状です。生のバターバーの抽出物(エキス)には、肝障害やがんの原因となるピロリジジンアルカロイドが含まれています。これらのアルカロイドをほとんど含まないバターバーの抽出物(エキス)が販売されています。低減したアルカロイド製品を含むバターバー製品が、長期的な使用に安全かどうかは明らかにされていません。

バターバーについてのさらなる情報(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

コエンザイムQ10

コエンザイムQ10は、細胞が正常に機能するために必要な抗酸化物質です。サプリメントとして販売されており、さまざまな目的で研究されています。米国神経学会および米国頭痛学会のガイドラインでは、コエンザイムQ10はおそらく有効であり、片頭痛予防のために検討される可能性があるとされています。

コエンザイムQ10の重篤な副作用は報告されていません。抗凝固剤(血液希釈剤)のワルファリン(クーマジン:Coumadin)を含む一部の医薬品と相互作用する場合があります。

コエンザイムQ10についてのさらなる情報(英語サイト)

ナツシロギク

米国神経学会および米国頭痛学会のガイドラインでは、MIG-99と呼ばれる特定のナツシロギクの抽出物(エキス)がおそらく有効であり、片頭痛の予防に検討すべきであるとしています。

ナツシロギクの副作用として、関節痛、消化器症状、口内炎などがあります。抗凝固剤(血液希釈剤)や他の薬と相互作用する場合があります。ナツシロギクは妊娠中の使用には安全ではありません。長期的な安全性は確立されていません。

ナツシロギクについてのさらなる情報(英語サイト)

マグネシウム

マグネシウム欠乏は頭痛を助長する要因と関連しており、片頭痛になる人はそうでない人に比べて体内のマグネシウム濃度が低い可能性があります。米国神経学会および米国頭痛学会のガイドラインでは、マグネシウムはおそらく有効であり、片頭痛予防ために検討されるべきであるとしています。

マグネシウムのサプリメントは、下痢を引き起こす可能性があり、一部の薬と相互作用する場合があります。片頭痛のために摂取するマグネシウムの量は、このミネラルの許容上限摂取量(ほとんどの人に対し安全であると考えられる最大の量)を超えているため、片頭痛のためのマグネシウムのサプリメントは、医療スタッフの監視の下でのみ使用するべきです。

マグネシウムについてのさらなる情報(英語サイト)

リボフラビン

米国神経学会および米国頭痛学会のガイドラインでは、リボフラビンはおそらく有効であり、片頭痛予防ために検討されるべきであるとしています。

リボフラビンの副作用はほとんどありませんが、尿が濃い黄色に変色することがあります。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは、頭痛に対する補完療法の研究をいくつか支援しています。

さらなる情報

現時点でNCCIHが助成している研究には以下のようなものがあります。

  • 磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)で脳の変化の測定などを行う、頭痛に対するマインドフルネス瞑想の研究
  • 頭痛などさまざまなタイプの痛みに対する多数の鍼治療研究の複合解析

さらに考慮しなければならないこと

  • 多くのサプリメントは、妊婦、授乳中の母親、あるいは子供を対象に検証が行われていません。妊娠中や授乳中の場合、または子供にサプリメントを与えようと考えているなら、かかりつけの医療スタッフに相談してください。
  • サプリメントの中には、従来の内科治療と相互作用するものがあることに注意してください。
  • バイオフィードバックや鍼治療など、施術者が提供する補完療法を検討している場合は、信頼できる情報源(かかりつけの医療スタッフや近くの病院など)に施術者を推薦してもらうようにしましょう。検討している補完療法の施術者のトレーニングと経験について調べてみましょう。さらなる情報は、「how to find a complementary health practitioner(補完療法の施術者の見つけ方)」(英語サイト)に関するNCCIHのリソースを参照してください。
  • あなたが行っている補完療法・統合医療についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov

■ 国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS; National Institute of Neurological Disorders and Stroke)

NINDSは、脳や神経系がどのように機能するかについての研究や神経疾患の治療に関する研究を行っています。

米国内の無料通話:1-800-352-9424
ウェブサイト:https://www.ninds.nih.gov(英語サイト)

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

ウェブサイト: https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

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参考文献

その他の参考文献
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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