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セイヨウオトギリソウとうつ病

肝心なことは?

■うつ病に対するセイヨウオトギリソウについて
  • うつ病に対するセイヨウオトギリソウの短期的な効果についてはかなりわかっていますが、長期的な効果はあまりわかっていません。
■うつ病に対するセイヨウオトギリソウの効果に関してわかっていること
  • セイヨウオトギリソウは、うつ病に対して一貫性のある効果はありません。従来の治療の代替とする、あるいは医療機関での診察を先延ばしにすることのないようにしましょう。
■うつ病に対するセイヨウオトギリソウの安全性に関してわかっていること
  • セイヨウオトギリソウは、多くの処方薬の効果を制限します。
  • セイヨウオトギリソウとある種の抗うつ薬を併用した場合、神経細胞が産生する化学物質であるセロトニンの値が命を脅かすほど体内で上昇する可能性があると考えられています。
  • うつ病を自分で治療しようとしてはいけません。うつ病は、専門家による効果的な支援がなければ重症化してしまう可能性があります。うつ病によって自殺のリスクが高くなる人もいます。あなた自身、あるいは知り合いにうつ症状の人がいる場合には、医療スタッフに相談してください。

セイヨウオトギリソウについて

  • セイヨウオトギリソウ(学名Hypericum perforatum)は野生で生育する植物で、何世紀にもわたって精神疾患に使用されてきました。ヨーロッパでは、うつ病に広く処方されています。
  • セイヨウオトギリソウは、米国ではサプリメントとして販売されていますが、米国での販売基準は、処方薬あるいは市販薬(over-the-counter :OTC)の基準ほどは厳しくありません。

セイヨウオトギリソウ(英語サイト)について詳しくお知りになりたい方は、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH(旧NCCAM))のウェブサイトをご覧ください。

うつ病について

うつ病(大うつ病障害または臨床的うつ病)は一般的ですが、重篤な感情障害です。うつ病は、感情や思考の他、睡眠、食事あるいは仕事などの日常活動に影響を及ぼす重度の症状を引き起こします。2015年には、米国における成人の7%が、過去1年の間に大うつ病を少なくとも1回は経験しています。うつ症状はさまざまですが、次のようなものがあります。

  • しばしばあるいはいつも悲しい気持ちになる、不安を感じる。
  • 以前は楽しかった活動をしたいと思わない。
  • 腹が立つ、すぐにイラ立つ、あるいは落ち着かなくなる。
  • 睡眠障害や疲労感がある。
  • いつもよりよく食べる、またはあまり食べない、あるいはまったく食欲がない。
  • 治療では改善しない痛みがある。
  • 集中力、記憶力、決定力の低下を感じる。
  • 罪悪感がある、自分には価値がないと思う、無力だ。
  • 自殺を考える、あるいは自傷行為を行う。

うつ病の治療には、抗うつ薬やある種の心理療法が役立ちます。

さらなる詳細をお知りになりたい方は、アメリカ国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health :NIMH)のうつ病ウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。

うつ病に対するセイヨウオトギリソウの効果の科学的根拠

うつ病に対するセイヨウオトギリソウの有効性を報告する研究は複数ありますが、逆に有効性を認めなかった研究もあります。

  • 2011年に12週間で実施された(参加者73例)臨床試験では、セイヨウオトギリソウもシタロプラム(citalopram)と呼ばれる標準的な選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の抗うつ薬もプラセボ以上に軽度のうつ症状を軽減しませんでした。本試験はNCCIH(旧NCCAM)とNIMHから助成を受けました。
  • 26週間実施された臨床試験(参加者124例)では、セイヨウオトギリソウ、標準的な抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[Selective Serotonin Reuptake Inhibitors :SSRI])であるセルトラリン)、プラセボは、中等度の大うつ病治療に対する効果が同様でした。NCCIH(旧NCCAM)およびNIMHは、2002年に収集されたデータに関する2012年の解析に対し、助成金を提供しました。
  • 2008年に実施された29件の国際試験のレビューでは、セイヨウオトギリソウは、軽度から中等度の大うつ病に対し、プラセボより効果がある可能性および、標準的な各抗うつ処方薬と同程度の効果がある可能性が示唆されました。セイヨウオトギリソウは、標準的な抗うつ薬よりも副作用が少ないと考えられています。歴史的に医療従事者がセイヨウオトギリソウを長く使用してきたドイツ語圏での試験では、米国を含む他の国々で実施された試験よりも肯定的な結果が報告されました。
  • 2002年にNCCIH(旧NCCAM)とNIMHが助成した試験(参加者340例)では、セイヨウオトギリソウは、中等度の大うつ病治療の効果についてはプラセボと同程度であったことが報告されました。
プラセボ効果

うつ病に対するセイヨウオトギリソウの安全性と科学的根拠

  • セイヨウオトギリソウとある種の抗うつ薬を併用すると、抗うつ薬が標的としている脳の化学物質であるセロトニンの値が生命を脅かすほど上昇してしまう可能性があります。数分から数時間で興奮、下痢、心拍数の上昇、高血圧、幻覚、体温上昇等の症状が現れます。
  • セイヨウオトギリソウには、双極性障害や統合失調症の人々の精神症状を悪化させるなど、危険な副作用に関する症例報告があります。
  • セイヨウオトギリソウは、多くの処方薬の効果を減弱させる可能性があります。
    • 抗うつ剤
    • 経口避妊薬
    • シクロスポリン(移植臓器に対する身体の拒絶反応を防ぐ)
    • ジゴキシン(心臓病薬)
    • オキシコドン(鎮痛薬)
    • インジナビルおよび、可能性としてその他のHIV感染症治療薬
    • イリノテカンおよび、可能性としてその他の抗がん剤
    • ワルファリンおよび類縁の抗凝固剤
  • セイヨウオトギリソウの他の副作用は、通常、軽度であり一般的に多くありません。例えば、胃もたれ、口の渇き、頭痛、疲労、眩暈、困惑、性機能不全、陽の光への過敏などです。セイヨウオトギリソウは刺激作用があり、不安感が増大する人もいます。

NCCIH(旧NCCAM)による研究助成

NCCIH(旧NCCAM)は、セイヨウオトギリソウを含むさまざまな薬草の潜在的な薬物相互作用について研究を実施しています。

さらに考慮しなければならないこと

  • うつ病は重篤な疾患になり、自殺リスクが増大することがあります。あなた自身やあなたの知り合いにうつ症状がみられる場合には、医療スタッフに相談してください。うつ病を自分で治療しようとしてはいけません。
  • 精神衛生の問題について、セイヨウオトギリソウを従来の治療の代替療法にする、あるいは医療機関への受診を先送りにすることがないようにしましょう。
  • サプリメントは、正しい使用を怠る、大量に摂取するなどした場合には、医学的問題を引き起こすことがあります。服用している薬剤との相互作用が生じるものもあります。医療スタッフはあなたに助言を行うことができます。
  • 多くのサプリメントは、妊婦、授乳中の女性、あるいは小児での試験が行われていません。妊婦または小児へのセイヨウオトギリソウに関する安全性情報はほとんどありません。妊娠中、授乳中、あるいは小児にサプリメントを与えることを検討している人は、医療スタッフに相談してください。詳細については、NCCIH(旧NCCAM)ファクトシートUsing Dietary Supplements Wisely(英語サイト)をご確認ください。
  • あなたが行っている補完・統合療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
季節性情動障害に対する補完的健康アプローチについて知っておくべき6つのこと

季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)は、季節とともに出たり消えたりするうつ病の一種で、通常は秋の終わりまたは冬の初めに発症し、春と夏の間に消失します。SADと診断されるのは、少なくとも2年間、特定の季節(冬か夏に発現)に大うつ病の基準を完全に満たされた場合に限ります。冬型SADの症状には、気力低下、過眠症、食べ過ぎ、体重増加、炭水化物への欲求、引きこもり(「冬眠」のような感じ)などがあります。SAD患者の中には、薬物療法(通常抗うつ剤)または心理療法、あるいは両方の治療が行われる場合があります。他のSAD患者の中には、光治療やサプリメントなどの補完的健康アプローチを試みる人もいるかもしれません。SADに対する補完的健康アプローチについて、知っておくべき6つのことは次の通りです。

  • 一部のエビデンスによると、季節性情動障害の既往歴のある患者には、光治療が予防治療として有効であると考えられています。光治療の背景にある考えは、照明器具の光を毎日浴びることによって、秋冬の季節の減少した太陽の光の代わりにすることです。照明器具の、紫外線を除いた10,000 luxの白色蛍光を20~60分間浴びることが通常必要ですが、これは通常の室内照明よりも約20倍多い量です。
  • いくつかのエビデンスは、SADのための認知行動療法(Cognitive behavior Therapy;CBT)はSADの再発減少と回復に効果的であり、少なくとも最初と2番目の冬季の間は効果が継続すると示しています。従来の認知行動療法は、SADの使用に適用されてきました(CBT-SAD)。CBT-SADは、行動活性化という方法に沿って、ネガティブな考えを認識し、それをポジティブな考えに置き換えるといった、CBT の基本的なテクニックに則っています。行動活性化法により、室内外に関わらず、魅力的で楽しい活動を見つけることができ、冬にうまく対応できることを目指します。
  • ごく一部の試験は、セイヨウオトギリソウがSADの症状を多少改善するかもしれないと示唆しています。しかし、セイヨウオトギリソウの摂取には関連リスクがあります。例えば、セイヨウオトギリソウは抗うつ剤、避妊薬、シクロスポリン、ジゴキシン、インジナビル、イリノテカン、抗凝固剤など、多くの薬剤の効果を弱める可能性があります。特定の抗うつ剤やその他の薬とセイヨウオトギリソウを一緒に摂取すると、セロトニンに影響してセロトニン関連の副作用の増加につながり、重篤化する恐れがあります。
  • 一部の限られたエビデンス(参加者少数の小規模試験)は、メラトニンがSAD患者の睡眠をある程度改善すると示唆しています。メラトニンは短期で使用した場合は安全のようですが、長期的な試験がないため、長期間の使用が安全かどうかわかりません。
  • ビタミンDサプリメントの摂取は、有効なSAD の治療方法とは考えられていません。血中ビタミンD低値はSAD 患者によく見られます。しかし、ビタミンD の使用に対するエビデンスは様々です。ビタミンD補充が光療法と同程度の効果があると示唆する試験もありますが、ビタミンDは全く効果がないとした試験もあります。
  • あなたが行っている補完的健康アプローチのすべてをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

最終更新日は、2017年12月20日です。

健康を目的としたマッサージ療法について知っておくべき6つのこと

「マッサージ療法」という用語は、多くの手技を含み、通常は施術を受ける人の要望や体の状態によってその種類は異なります。一般的には、気分を和らげることを目的に筋肉や他の軟部組織に対して施術がおこなわれます。

マッサージ療法に関する科学的研究の多くは、予備的であり、矛盾していますが、多くのエビデンスは、さまざまな状態に関連する疼痛や他の症状に対して有益な効果を示しています。健康を目的としたマッサージ療法について知っておくべき6つのことを以下に示します。

  • エビデンスは、マッサージ療法が腰痛や慢性的な首の痛みなどの疼痛症状に有効である可能性を示唆しています。しかし、頭痛に対するマッサージの研究は、予備的で多少有望であるにすぎません。
  • 研究は、癌患者に対するマッサージ療法が痛みを短時間なら低減する可能性を示唆しています。また、エビデンスは、マッサージ療法が癌の人に対しリラックス効果効果を促進し、気分を持ち上げる可能性を示唆しています。
  • 最近の文献レビューは、マッサージ療法がうつ状態を軽減する可能性があると結論付けました。しかし、2013年のレビューでは、うつ状態の妊娠女性に対してマッサージ療法が有効であるかどうかを判断する十分なエビデンスは得られませんでした。
  • 2010年のレビューでは、マッサージ療法が一時的に線維筋痛症に関連する疼痛、疲労、その他の症状を軽減するのに有効である可能性があると結論づけましたが、エビデンスは決定的ではありません。そのレビュー著者は、施術者が受ける人に痛みを与えないことが重要であると指摘しました。
  • 早産児に対する治療的マッサージ療法が有効であるかについて複数の研究もおこなわれました。2010年の文レビューは、中程度の圧による早産児へのマッサージ療法が体重増加を促進する可能性を示唆しました。しかし、2013年のレビューでは、発育が正常である健康な乳児に対するマッサージ療法が有効であると判断するエビデンスは十分でないと結論づけました。
  • マッサージ療法は、訓練を受けた施術者によりおこなわれれば、リスクは少ないようです。しかし、施術者は、特定の健康状態において注意が必要になる場合があることを認識すべきです。マッサージ療法があなたにとって安全であるかどかを知るために、医療スタッフに相談しましょう。
セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort)

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort)は黄色い花をつける植物で、その医学的利用については古代ギリシアに最初の記録があります。セイヨウオトギリソウの花の先端部を用いて、お茶や錠剤、濃縮抽出物を含むカプセルが製造されます。流エキス剤や外用剤としても利用されます。セイヨウオトギリソウは多数の薬剤と相互作用を有するため、薬剤の効果が弱まることがあります。

特集

一目でわかる:セイヨウオトギリソウ(英語サイト)

Information about St. John’s wort, studied for depression.

精神疾患の治療薬

概要

さまざまな精神疾患や症状の治療において、薬剤がその役割を果たすことが可能です。また、その治療には、心理療法(英語サイト)(または「会話療法」)や脳刺激療法(英語サイト)(一般的ではない)も含まれることもあります。心理療法のみが最善の治療として選択されることもあります。適切な治療計画は、精神科専門医のもと、個人のニーズや医療状況にもとづいて決定しなくてはなりません。

連邦政府の研究機関である国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health :NIMH)では、医学的な助言や照会は行っていません。お住まいの地域における治療サービスの情報は、私たちが提供している ウェブサイト、Help for Mental Illnesses(精神疾患に対する支援)(英語サイト)に掲載されています。

NIMHは、特定の薬剤、薬草あるいはサプリメントの承認や推奨も行っていません。NIMHが助成する、薬剤を含めた治療効果検討のための臨床試験の結果「What are Clinical Research Trials?(臨床試験とは?)(英語サイト)」 は、医学文献で報告されます。この医療ウェブサイトは、精神疾患の治療薬に関する基本情報を提供するものです。薬剤の全情報を掲載していないため、医学的な決定の指針として使用しないでください。

薬剤に関する情報は頻繁に変更されます。最新の警告、患者服薬ガイドあるいは新たに承認された薬剤については、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration :FDA)(英語サイト)のウェブサイトをご覧ください。本ページでは製品名は記載されていませんが、MedlinePlus Drugs, Herbs and Supplements Drugs(英語サイト)のウェブサイトで検索することができます。MedlinePlusでは、薬剤の副作用やFDAの警告を含む追加情報も提供されています。

服用する薬剤を理解しよう

薬剤を処方された場合には、

  • 既に服用している全ての薬剤およびビタミンサプリメントを主治医に伝えてください。
  • アレルギーや、過去の服薬で生じた問題についても主治医に伝えてください。
  • 服薬を開始する前に服薬方法を理解し、指示された通りに服用しましょう。
  • 他の人に処方された薬剤を服用したり、自分の薬剤を他の人に渡したりしてはいけません。
  • 薬剤の服用で何か問題が生じる、効果よりも害の方が大きいのではないかといった心配がある場合などには、すぐに主治医に連絡してください。主治医が用量調節をしてくれたり、より効果のある別の薬剤に変更してくれたりする場合があります。
  • 重篤な副作用については、以下のFDA MedWatch有害事象報告プログラムhttp://www.fda.gov/Safety/MedWatch(英語サイト)かまたは、電話[1-800-332-1088]で報告してください。報告は、あなた自身あるいは主治医が行います。

抗うつ剤

■抗うつ剤とは?

抗うつ剤は、一般的にうつ病の治療に使用されます。抗うつ剤は、不安、疼痛、不眠といった他の症状にも使用されます。抗うつ剤は、特に注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder :ADHD)の治療に対してFDAが承認している薬剤というわけではありませんが、成人のADHDの治療に使用されることがあります。

抗うつ薬でもっとも使用されているのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors :SSRI)と呼ばれる抗うつ薬です。SSRIの例として、以下があります。

他の種類の抗うつ剤としては、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(serotonin and norepinephrine reuptake inhibitor:SNRI)があります。SNRIはSSRIと類似する薬剤で、ベンラファキシン(英語サイト)デュロキセチン(英語サイト)等があります。

他の一般的に使用されている抗うつ剤としては、ブプロピオン(英語サイト)があります。ブプロピオンは、SSRIやSNRIとは違う機序をもつ第三世代の抗うつ剤です。ブプロピオンは、季節性情動障害の治療や禁煙補助にも使用されています。

SSRI、SNRI、ブプロピオンは、古い薬剤クラスの抗うつ剤よりも副作用が少なく、ボーダーラインのうつ病や不安障害にも有用であると考えられます。古い世代の抗うつ剤には、三環系、四環系の抗うつ薬や、モノアミン酸化酵素阻害剤(monoamine oxidase inhibitors :MAOI)等があります。人によっては、三環系、四環系の抗うつ薬や、MAOIが最も適した治療薬となる場合もあります。

■抗うつ薬の効果は?

米国医療研究・品質庁の研究レビュー(英語サイト)によると、全ての抗うつ剤はそれぞれほぼ同程度にうつ症状を改善し、症状がぶり返さないよう維持します。理由はまだ十分に解明されていませんが、他の抗うつ剤と比較して特定の抗うつ剤でより良い効果が得られる人もいます。

従って、最初に試した薬剤で症状が改善されないことがあるため、効果のある薬剤を見つけるまで何剤か試してみなくてはならない場合があります。また、しばらくは薬剤の効果があっても、症状がぶり返してくることがあります。抗うつ剤が作用するよう、主治医の指示に注意深く従い、十分な用量で長期間服用(しばしば4~6週間)することが重要です。

抗うつ剤の服用を開始したら、医師の助けなく服用をやめてしまわないことが重要です。抗うつ剤の服用で症状が改善し、あまりにも早い時期に服用をやめてしまうと、うつ症状が再発する場合があります。服用をやめる時期になれば、医師がゆっくりと安全に用量を減らすのを手伝ってくれます。 体が変化に慣れてゆくための時間をもつことが重要です。これらの抗うつ剤で中毒(やみつき)になることはありませんが、急にやめてしまうと離脱症状が起こる場合があります。

■抗うつ剤の副作用にはどんなものがありますか?

抗うつ剤によっては、他のものよりも副作用が多いものもあります。症状を改善し、副作用もコントロールできるような1剤を見つけるまでいくつかの抗うつ剤を試す必要がある場合もあります。

以下は、FDAが発表している最も一般的な副作用です。

  • 吐き気、嘔吐
  • 体重増加
  • 下痢
  • 眠気
  • 性的な問題

特に、下記のような副作用が新たに生じたり悪化したりしている場合、あるいは以下の心配がある場合には、直ちに医師に連絡しましょう。(米国食品医薬品局、2011)

  • 自殺や死ぬことを考えている
  • 自殺を試みようとする
  • うつ症状の新たな発症や悪化
  • 不安感の新たな発症や悪化
  • 焦燥感あるいは落ち着かなさを感じる
  • パニック発作
  • 睡眠に問題がある(不眠)
  • 怒りっぽくなった、それが悪化している
  • 攻撃的な行動をとる、怒っている、暴力的になる
  • 危険な衝動で行動する
  • 活動や会話が極端に増える(躁症状)
  • 行動や気分のその他の異常な変化

新世代のSSRIまたはSNRIといった抗うつ剤と、よく使用される薬剤の一つでかつては偏頭痛の治療に使用されていた「トリプタン」系薬剤の併用により、「セロトニン症候群」と呼ばれる命を脅かす疾患が起こることがあります。セロトニン症候群になると、焦燥感を感じたり、(実際にはないものが見えるあるいは聴こえる等の)幻覚が起こったり、体温の上昇、通常とは異なる血圧の変化が引き起こされることがあります。セロトニン症候群は、通常、MAOIと呼ばれる古い世代の抗うつ剤で発症しますが、間違った薬剤と混合して使用すると新たらしい世代の抗うつ剤でも発症することがあります。さらなる情報については、FDA抗うつ剤服薬ガイド(英語サイト)をご覧ください。

抗うつ剤は、本リストに掲載されていない副作用を引き起こす場合もあります。抗うつ剤の使用に関連する重篤な有害事象を報告する場合には、本ページの下に記載されている連絡先情報を使用し、FDA MedWatchプログラムに連絡してください。各剤のリスクと副作用についてのさらなる情報は、以下をご覧ください。Drugs@FDA(英語サイト)

抗不安薬

■抗不安薬とは?

抗不安薬は、パニック発作、つまり極端な恐れや心配等の不安症状を軽減します。最も一般的な抗不安薬は、ベンゾジアゼペンと呼ばれる薬剤です。ベンゾジアゼペンは、全般性不安障害を治療します。パニック障害や社交恐怖(社交不安障害)の場合には、ベンゾジアゼペンは通常、SSRIまたは他の抗うつ剤の後に使用される第二選択治療です。

不安障害に使用されるベンゾジアゼペン系薬剤には以下を含む薬剤があります。

短期的な不安症状の治療には、半減期が短い(あるいは短時間作用型の)ベンゾジアゼペン系薬剤(ロラゼパム(英語サイト)等)やβ遮断薬が使用されます。β遮断薬は、(何らかの物や状況、例えば人前で話す等、に対して圧倒的かつ非合理的な恐怖を感じる)恐怖症の人々が困難な状況で経験することがある、震え、動悸、発汗といった身体的な不安症状をコントロールする働きがあります。これらの薬剤の短期的服用は、身体症状をコントロールする助けとなり、急性の不安感を軽減する「頓服薬」として使用できます。

ブスピロン(英語サイト)(ベンゾジアゼペン系薬剤ではない)は、慢性不安症の長期治療に使用される事があります。ベンゾジアゼペンとは対照的に、ブスピロンは最大の効果が現れるまで数週間は毎日服用しなくてはなりません。「頓服薬」としては有用ではありません。

■抗不安薬に効果はありますか?

ベンゾジアゼペン系薬剤のような抗不安薬は、不安症の軽減に効果があり、しばしば不安症に対して処方される抗うつ剤(あるいはブスピロン)よりも効果の発現が迅速です。しかし、ベンゾジアゼペン系薬剤を長期間服用していると耐性が生じ、同程度の効果を得るのに必要な用量が増えていってしまうことがあります。依存症になる人もいるでしょう。これらの問題を回避するために、医師は、ベンゾジアゼペン系薬剤を通常は短期で処方します。これは、特に年齢が高い人(次のNIMHの記事をご覧ください:リスクとはうらはらに、ベンゾジアゼペン系薬剤は高齢者が最も多く使用(英語サイト))、薬物乱用の問題を抱えている人、薬剤依存症になりやすい人に特に有用な方法です。ベンゾジアゼペン系薬剤の服用を急にやめてしまうと、離脱症状が現れる、あるいは不安症状が再び起こってくることがあります。そのため、ベンゾジアゼペン系薬剤は、ゆっくりと用量を減らしていかなくてはなりません。

■抗不安薬にはどんな副作用がありますか?

他の薬剤のように、抗不安薬にも副作用がある場合があります。これらの副作用やリスクの中には、重篤なものもあります。ベンゾジアゼペン系薬剤で最も多い副作用は、眠気とめまいです。以下は、起こり得るその他の副作用です。

  • 吐き気
  • 目のかすみ
  • 頭痛
  • 混乱
  • 疲労感
  • 悪夢

これらの症状がひどい、あるいは、おさまらない場合には、主治医に相談してください。

  • 眠気
  • めまい
  • 身体の不安定感
  • 協調運動の問題
  • 思考や記憶の困難
  • 唾液増加
  • 筋肉あるいは関節の痛み
  • 頻尿
  • 目がぼやける
  • 性的衝動や能力の変化(The American Society of Health-System Pharmacists社 2010)

もしも以下のような症状が現れたら、すぐに主治医に連絡してください。

  • 発疹
  • 蕁麻疹
  • 目、顔、唇、舌あるいは喉の腫れ
  • 呼吸困難あるいは、嚥下困難
  • 嗄声(しわがれ声)
  • けいれん
  • 皮膚や目が黄色っぽくなる
  • うつ病
  • 話すのが困難になる
  • 皮膚や目が黄色っぽくなる
  • 自殺や、自傷行為を考える
  • 呼吸困難

以下は、β遮断薬でよくみられる副作用です。

  • 疲労感
  • 手が冷たい
  • めまいまたはふらつき
  • 虚弱感

一般に、喘息または糖尿病の人には、症状が悪化する場合があるためβ遮断薬は奨められません。

以下は、ブスピロンで現れる可能性のある副作用です。

  • めまい
  • 頭痛
  • 吐き気
  • イライラ
  • ふらつき
  • 興奮
  • 睡眠の問題

抗不安薬は、本リストに掲載されていない他の副作用が起こることもあります。これらの薬剤の使用に関する重篤な有害作用の報告は、本ページの最後に掲載されている連絡先情報からFDA MedWatchプログラムにご連絡ください。各薬剤のリスクと副作用のさらなる情報については、Drugs@FDA(英語サイト)をご覧ください。

中枢神経刺激薬

■中枢神経刺激薬とは?

中枢神経刺激薬は、その名前からもわかるように、警戒性、注意力、活力を高めますが、同時に、血圧や心拍数の上昇、早い呼吸も引き起こします。(国立薬物乱用研究所、2014)中枢神経刺激薬は、しばしばADHDと診断された小児や思春期、高齢の人々に処方されます。

以下は、ADHDの治療に使用される中枢神経刺激です。

注意:FDAは2002年に、ADHDの治療薬として非中枢刺激薬であるアトモキセチンを承認しました。この他にも、グアンファシン(英語サイト)クロニジン(英語サイト)といった非中枢神経刺激性の降圧剤が、小児および思春期の子供のADHD治療に承認されています。これらの非中枢神経刺激薬の一つがADHDの若い人々の治療にまず試され、効果が十分でなければ刺激薬が処方されます。

中枢神経刺激薬は、ナルコレプシーや、場合によってはうつ病等の他の症状(特にその他の治療では効果が得られない高齢あるいは慢性疾患を患う人々)にも使用されます。

■中枢神経刺激薬にはどんな効果があるのですか?

処方薬としての中枢神経刺激薬は、ADHDに対し、鎮静効果や「集中力を高める」効果があります。中枢神経刺激薬は医師の管理のもとに処方されれば、安全に使用することができます。これらの薬剤を服用している小児は、いつもと違う感じがする、あるいは「気分が悪い」と感じる場合があります。

保護者の中には、中枢神経刺激薬は薬剤乱用や依存につながるのではないかと心配されるかたもいらっしゃいますが、処方された通りに適切に使用する限りはそのようなことが起こるというエビデンスはほとんどありません。さらに、中枢神経刺激薬を服用した10代のADHDの人々は、服用しなかった人々と比べ、薬物乱用につながる可能性が低いことが研究により示されています。

中枢神経刺激薬で起こり得る副作用にはどのようなものがありますか?

中枢神経刺激薬の服用により、副作用が生じることがあります。ほとんどの副作用は軽度で、服用量を減らせば消失します。以下は、最も多く見られる副作用です。

  • 入眠または、睡眠の維持が困難
  • 食欲不振
  • 胃痛
  • 頭痛

一般的でない副作用には以下のものがあります。

  • 運動または音声チック症(突然の、反復的な運動または発声)
  • 「感情表現がない」、あるいは無感情に見える等の人格の変化
■このような症状が特に初めて現れた、悪化している、あるいは心配な場合には、すぐに主治医に連絡してください。

中枢神経刺激薬の使用により、本リストに掲載されていない他の副作用が生じることがあります。中枢神経刺激薬の使用に関連する重篤な有害作用の報告は、本ページの最後に掲載されている連絡先情報から、FDA MedWatchプログラムにご連絡ください。各薬剤のリスクと副作用のさらなる情報については、Drugs@FDA(英語サイト)をご覧ください。

抗精神病薬

■抗精神病薬とは?

サイコーシス(psychosis)(英語サイト)という言葉は、心に影響をおよぼしている症状を説明する際に使用されます。精神病では、時に現実とそうでないことの区別が失われ、しばしば幻想(誤った、あるいは固定的な信念)や幻覚(現実には存在しないことが聞こえるあるいは見える)が起こります。サイコーシス(psychosis)とは、薬物乱用あるいは、統合失調症や双極性障害、あるいは(「精神病性うつ病」で知られる)非常に重篤なうつ病等の身体症状です。

抗精神薬は、精神錯乱、認知症、以下を含む精神疾患のための他の治療薬とともにしばしば使用されます。

米国医療研究・品質庁の研究レビュー2013(英語サイト)によると、定型および非定型抗精神病薬は、統合失調症と双極性障害における躁期のいずれの治療にも有効です。

いくつかの非定型抗精神病薬は、古い世代の薬剤と比較して「より幅広い作用スペクトラム」をもち、双極性障害または抗うつ剤1剤のみでは効果が得られないうつ病の治療にも使用されています。

精神病管理のためのさらなる抗精神病薬や他の薬剤、最新の警告、助言については、FDAのウェブサイト(英語サイト)をご覧ください。

■抗精神病薬はどのような効果がありますか?

焦燥感や幻覚などの症状は、抗精神病薬の服用開始後、通常は数日以内に消失します。幻想のような症状は、通常は数週間で消失しますが、薬剤の効果が最も高くなるのは最大で6週間ほど経ってからでしょう。効果は患者さんによって異なりますので、最も効果のある1剤を見つけるために数種類の抗精神病薬を試すことになるかもしれません。

また、再発(症状が再び現れたり悪化すること)する人もいます。通常は、服薬をやめたり、時々しか服薬しない場合に再発します。気分が良くなった、あるいはもう服薬の必要はないと思って服薬をやめてしまう人がいますが、主治医に相談することなくやめてはいけません。主治医がやめてもよいといった場合にも、少しずつ用量を減らし、決して急にやめてはいけません。多くの場合、よい状態を維持できるように、抗精神病薬を何カ月あるいは何年も継続しなければなりません。各患者さんに合うよう、治療は個別化して行われます。

抗精神病薬の服用により、どんな副作用が起こることがありますか?

抗精神病薬の服用には、多くの副作用(あるいは有害事象)やリスクがあります。FDAは、抗精神病薬の副作用として、以下を挙げています。

  • 眠気
  • めまい
  • 落ち着かなさ
  • 体重増加(非定型抗精神病薬によってはよりリスクが高いものもあります)
  • 口の渇き
  • 便秘
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 目のかすみ
  • 低血圧
  • チックや震戦(ふるえ)のような不随意運動(定型抗精神病薬ではよりリスクが高まります)
  • 発作
  • 感染症と戦う白血球の数の減少

抗精神病薬を服用している人は、医師が行う体重、血糖値、脂質値の検査を定期的に受けてください。

定型抗精神病薬では、身体運動に関連する以下のようなさらなる副作用が生じることがあります。

  • 硬直
  • 持続的な筋肉痙攣
  • 振戦(ふるえ)
  • 落ち着かなさ

定型抗精神病薬の長期服用により、遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia :TD)と呼ばれる症状が起こることがあります。TDにおいては、一般的に口の周囲の筋肉等、自分でコントロールできない筋肉の動きが生じます。TDの重症度は軽度から重度で、人によってはこのような問題が改善しないこともあります。また、TDの人の中には、定型抗精神病薬の服用をやめると、部分的あるいは完全に症状が回復する人もいます。自分はTDかもしれないと思う人は、服薬をやめるまえに主治医に相談してください。非定型抗精神病薬の服用中にTDが発症するのはまれです。

抗精神病薬は、本リストに記載されていない副作用が生じることがあります。これらの薬剤に関連する重篤な有害作用の報告は、FDA MedWatch program(英語サイト)にご連絡ください。抗精神病薬のリスクと副作用についてさらなる情報をお知りになりたい方は、Drugs@FDA(英語サイト)をご覧ください。

気分安定剤

■気分安定剤とは?

気分安定剤は、主に双極性障害や他の精神疾患に関連する気分変動の治療に使用されますが、うつ病治療で使用される他の薬剤の作用を増大させるために使われることもあります。リチウム(英語サイト)は効果がある気分安定剤で、躁病治療および双極性障害の維持療法に対して承認されています。多くのコホート研究において、リチウムによる長期維持療法の抗自殺効果が報告されています。気分変動は、脳内の異常な活動を抑えることで効果を発揮し、以下の治療にも使用される場合があります。

  • うつ病(通常は、抗うつ剤を服用します。)
  • 統合失調感情障害
  • 衝動制御障害
  • 小児の何らかの精神疾患

抗痙攣薬も、気分安定剤として使用されます。気分安定剤はもともとけいれんを治療するために開発されましたが、不安定な気分をコントロールするのにも役立つことが分かりました。気分安定剤として一般的に使用される抗痙攣薬として、バルプロ酸(英語サイト)(ジバルプロエクスナトリウムとも呼ばれる)という薬剤があります。特に躁症状とうつ症状が混在する人やサイクルが早い双極性障害の人は、リチウムよりもバルプロ酸の方が効果がある場合があります。以下は、気分安定剤として使用される他の抗痙攣薬です。

気分安定剤で生じる可能性のある副作用はどのようなものですか?

気分安定剤には、いくつかの副作用があります。特に、薬剤の血中濃度が過度に高くなった場合には、それらの副作用は重篤なものになる可能性があります。副作用には以下のようなものがあります。

  • 痒み、発疹
  • 過度な喉の渇き
  • 頻尿
  • 手の振戦(ふるえ)
  • 吐き気、嘔吐
  • ろれつが回らない
  • 脈が速い、遅い、不規則あるは心臓がドキドキする
  • 意識を失う
  • 視力の変化
  • 発作
  • 幻覚(実際には存在しない物や音が見えたり聞こえたりする)
  • 運動失調
  • 目、顔、唇、舌、喉、手、足、足首または下肢の腫れ

双極性障害の人がリチウムによる治療を受ける場合、主治医を受診し血中のリチウム値を定期的に確認し、また、腎臓と甲状腺の機能を正常な状態に維持しなくてはなりません。

リチウムは腎臓から体外へ排出されますので、腎機能が低下している高齢者においては服用量を減らす必要がある場合があります。また、汗をかいたり下痢等で体から水分が失われたりしてしまうとリチウム濃度が高くなり、一日の服薬量を一時的に減らすことが必要になります。リチウム治療中は腎機能を定期的にチェックしますが、血中のリチウム濃度が治療域内であれば、腎臓が実際に障害を受けることはあまりありません。

気分安定剤により、このリストにない他の副作用が起きる可能性もあります。これらの薬剤の使用に関連する重篤な有害事象の報告については、本ページの下にある連絡先情報にもとづきFDA MedWatchに連絡してください。各剤のリスクと副作用についてさらなる情報をお知りになりたい方は、Drugs@FDA(英語サイト)をご覧ください。

カルバマゼピン(英語サイト)ラモトリジン(英語サイト)オクスカルバゼピン(英語サイト)の副作用に関するさらなる情報については、MedlinePlus Drugs and Supplements(英語サイト)をご覧ください。

以下は、(バルプロ酸等の)抗痙攣薬に関連して発現しうるいくつかの副作用です。

  • 眠気
  • めまい
  • 頭痛
  • 下痢
  • 便秘
  • 食欲の変化
  • 体重の変化
  • 背部痛
  • 焦燥感
  • 気分変動
  • 異常な思考
  • 身体の一部の非自律性ふるえ
  • 運動失調
  • 目の非自律的な動き
  • 目がかすむ、物が二重に見える
  • 耳鳴りがする
  • 髪の毛が抜ける

これらの薬剤により以下が生じる場合もあります。

  • 肝臓または膵臓に障害が起こりますので、服用中の人は定期的に主治医を受診してください。
  • 10代の女性ではテストステロン(男性ホルモン)値が上昇し、多嚢胞卵巣症候群と呼ばれる症状が起こります(生殖能力に影響し、月経サイクルが不規則になります)。

糖尿病、高血圧、不安症、うつ病等の成人の一般的疾患の薬剤は、抗痙攣薬との相互作用が良くない場合があります。このような場合、医師からは他の薬剤の選択肢が出されます。

各剤のリスクと副作用のさらなる情報については、Drugs@FDA(英語サイト)をご覧ください。

特殊な集団:小児、高齢者、妊婦

精神疾患の薬剤を服用するあらゆるタイプの人々はもちろんのこと、以下の集団では特別な必要性があります。

  • 小児、思春期の子供
  • 高齢者
  • 妊婦または妊娠の可能性のある女性
■小児、思春期の子供

精神疾患を患う小児および思春期の子供の治療に使用される薬剤の多くは、安全で効果があります。しかし、小児や思春期の子供への使用については、臨床試験が行われていないものや未承認の薬剤もあります。

ですが、若年層に対しては、医師はFDA承認薬の未承認使用を行うことがあります。これは、治療中の特定の精神疾患または一定の年齢未満の患者への使用が承認されていない薬剤であっても、医師は患者を助けるためにその薬剤を処方することを意味しています。
留意点

  • これらの薬剤を「未承認使用」として服用する小児や思春期の子供を観察することは重要です。
  • 小児では、成人と異なる反応や副作用が起こる場合があります。
  • 若年者における危険な副作用の可能性に関して、FDAにより最新の警告が出されている薬剤もあります。

薬剤に加え、小児や思春期の子供に対する他の治療についても、その治療をまず試したのちに必要であれば薬剤を追加する、あるいは薬剤と併用する等の考慮が必要です。心理療法、家族療法、教育講座、行動管理テクニック等も、小児の精神衛生に影響を与えるような疾患に対処する関係者の手助けとなります。小児および思春期の精神衛生研究については以下をご覧ください。(英語サイト)

■高齢者

65歳以上の人々で特に多くの異なる薬剤を服用中の人々は、服薬に対して慎重になるべきです。高齢者の場合、薬物相互作用が強く出たり、薬の飲み忘れや過量服薬のリスクがより高くなります。

高齢者は、服薬に対してより神経質な傾向もあります。健康な高齢者であっても、高齢の方の場合は薬剤の処理や排泄が遅いため、お薬への反応が若い人と異なります。従って、高齢者の場合は、低用量にするか服薬回数を減らすことが必要でしょう。服薬を開始する前に、高齢者やその家族は、服薬により注意力、記憶力、身体調整力に影響はあるのか、処方された薬剤が転倒リスクを高めないよう手助けする方法について、医師と注意深く話し合っておかなければなりません。

精神疾患で服薬中の高齢者の場合、記憶力に影響が出ることがあります。高齢者は、定期的に服薬するのを忘れてしまったり、過量あるいは過少服薬等も起こります。服薬を維持する良い方法として、薬局で購入できる7日間分の錠剤ケースの使用があります。週初めの日に、高齢者やその介護者がケースに薬剤を入れ、どの薬剤を服用するか思い出しやすいようにしておきます。一日一回以上の服薬が必要な場合もありますので、複数の仕切りがついた錠剤ケースも多くの薬局で取り扱われています。

高齢者が安全に服薬できるよう支援するためのさらなる情報と実践的なコツについては、National Institute on Aging’ s Safe Use of Medicinesの冊子および、NHI SeniorHealth.gov.のTaking Medicines(英語サイト)をご覧ください。

■妊婦または妊娠の可能性のある女性

妊娠中の精神疾患治療薬の使用に関する研究は限定的です。薬剤の種類や、妊娠の段階によってリスクは異なります。妊娠中に生じるあらゆる状態への治療は、それぞれの女性の必要性や状況に応じて、心理療法を行うのか(または妊娠中のある期間または全期間の「経過観察」)、または薬物療法を行うのか、あるいは両方組み合わせるのか、それぞれの選択肢におけるリスクとベネフィットの可能性を慎重に検討しておよび決定すべきです。あらゆる妊娠期の全女性に絶対に安全と考えられるような薬剤は存在しない一方、重篤な精神疾患を放置しておくことによる妊婦および発育中の胎児へのリスクという事実もバランスを考慮すべきです。薬剤は、入手可能な科学研究の結果に基づき選択し、できるだけ低用量で服用しなくてはなりません。妊婦は、妊娠期間中および出産後も、注意深く見守ってくれる医療スタッフをもっておくことが必要です。

ほとんどの女性は、妊娠中はある種の薬剤を服用しないようにすべきです。
例えば、

  • 精神安定剤は、奇形児が生まれる原因となることが知られています。ベンゾジアゼペン系薬剤やリチウムは、乳児で活気がなく筋肉の緊張が低下して呼吸や授乳が上手く行えなくなる「筋緊張低下症」を引き起こすことが示されています。ベンゾジアゼペン系薬剤は、妊娠初期に服用すると、出生異常や乳幼児のその他の問題が起こる場合があります。
  • 研究によると、妊娠中、特に妊娠初期に他の薬剤と併用して向精神薬を服用すると出生異常につながることがありますが、リスクはかなり様々であり、どの抗精神病薬を服用するかによっても異なります。従来の抗精神病薬であるハロペリドールは、他の薬剤よりも研究が行われてきており、出生異常は起こらないことが分かっています。より新しい非定型抗精神病薬の研究が進められています。
  • 抗うつ剤、特にSSRIは妊娠中も安全であると考えられます。しかし、抗うつ剤は、胎盤を通過し胎児に到達する可能性があります。出生異常や他の問題が生じる可能性がありますが、非常にまれです。小児の発達に対する抗うつ剤の影響は、まだ研究中です。

    妊娠後期にSSRIに暴露された胎児は、生まれつき呼吸に問題がある、手足のぴくぴく、カタカタとした震え、授乳困難、(血中の糖濃度が下がる)低血糖等の「離脱」症状がみられることがあることが研究により分かりました。新生児のこのような症状は、一般的に軽度で短期間に消失し、死亡も報告されていないことがほとんどの研究でわかっています。抗うつ剤の服用リスクは、服薬を中止することのリスクとのバランスを考慮することが必要です。母親もうつ病がひどく、自分自身や子供の世話ができない場合には、親子とも問題が生じるリスクがあります。

    FDAは2004年に、妊娠後期の終盤におけるある種の抗うつ剤の使用について、警告を発しました。警告文には、胎児への影響が出ないよう、妊娠後期には医師が抗うつ剤を少しずつ減らす場合があります、と記載されています。出産後は、産後うつにもっとも罹りやすい時期に抗うつ剤を通常用量に戻すかどうか、主治医に相談してください。

    赤ちゃん誕生後は、母親と主治医は産後うつ病に注意すべきです。特に、妊娠中に服薬をやめていた女性は気をつけましょう。さらに、精神病薬を服用中に授乳を行う女性は、服用量が少なくても母乳に移行することに留意してください。一方で、薬剤の種類や服用のタイミングにより、影響がある場合とない場合があります。抗精神病薬を服用中でかつ母乳による育児を考えている女性は、潜在的なリスクとメリットについて主治医と話し合ってください。

うつ病の基礎

はじめに

あなたは一日のほとんどあるいは毎日、悲しい気持ちやむなしい気持ちになったり、希望が感じられなくなったりしますか?趣味に対して関心がなくなったり、友人、家族といても楽しさが感じられなくなったりしていますか?睡眠、食事、活動に問題はありますか?このようなことが2週間以上続いている場合には、重篤なうつ病である可能性があります。しかし、うつ病は治療可能な気分障害です。

うつ病とは?

人は誰でも、時には悲しくなったり落ち込んだりするものですが、これらの感情は通常はすぐになくなります。うつ病は「臨床的うつ病」または「うつ病性障害」とも呼ばれる気分障害であり、あなたの感情や思考、睡眠や食事、仕事等の日常活動への対処に影響をあたえる疾患です。一日のほとんどで症状が見られ、それがほぼ毎日2週間以上続くとうつ病と診断されます。

■どんな種類のうつ病がありますか?

以下は、最も一般的なうつ病の2つです。

  • 大うつ病性障害:うつ症状が一日のほとんどで現れ、それがほぼ毎日2週間以上続き、仕事、睡眠、勉学、食事、そして人生を楽しむ等の能力を妨げます。一生に一度しか症状が現れないこともありますが、数回現れる人の方が多いです。
  • 持続性抑うつ障害 (気分変調):2週間以上うつ症状が続いている状態です。このタイプのうつ病と診断された人は、さほど重度ではない症状が見られる期間とともに、大うつ病性障害の症状が起きる場合があります。

うつ病の中にはややタイプが異なるものがあり、以下のような特定の状況で発症するものがあります。

  • 周産期うつ病:周産期うつ病の女性は、妊娠中あるいは出産後に本格的な大うつ病(産後うつ病)を経験します。
  • 季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder :SAD):SADとは、典型的には晩秋から初冬にかけて発症し、春および夏におさまる季節性のうつ病です。
  • 精神病性うつ病:このタイプのうつ病は、重度のうつ病に加え、他の人には認識できない、動揺するようなものが聞こえたり見えたりする(幻覚)等の何らかの精神病がある人に発症します。

うつ病性障害の他の例として、重篤な気分調節症(小児や思春期の人々で診断される)や月経前不快気分障害があります。うつ病は、双極性障害(正式には躁うつ病と呼ばれる)の一つの相でもあります。しかし、双極性障害の人は、「躁病」または重症度がより低い「軽躁病」と呼ばれる極端に大きな多幸感や苛立ち感も経験します。

これらの障害については、米国国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health :NIMH)のウェブサイト(www.nimh.nih.gov(英語サイト))でさらに学ぶことができます。

うつ病の原因は何ですか?

NIMHおよびアメリカ全土の科学者は、うつ病の原因を研究しています。遺伝的、生物学的、環境的、心理的要因は、うつ病に何らかの役割を果たすことが研究により示唆されています。

うつ病は、糖尿病、がん、心疾患、パーキンソン病等のその他の重篤な疾患と同時に生じることがあります。うつ病は、これらの病気を悪化させたり、あるいはこれらの病気がうつ病を悪化させたりすることもあります。これらの病気の治療で服用した薬剤が、うつ原因になる副作用を引き起こすこともあります。うつ病の進行中の研究に関するさらなる情報は、www.nimh.nih.gov(英語サイト)をご覧ください。

うつ病の兆候と症状はどのようなものですか?

悲しさがうつ病の唯一小さな兆候ですが、全く悲しさを感じない人もいます。症状は人によって異なります。以下は、うつ症状のいくつかの例です。

  • 持続的に悲しい気分、不安、あるいは「虚しい」気持ちになる。
  • 希望がもてないあるいは悲観的な気持ちになる。
  • 罪悪感がある、自分は価値がない、あるいは役に立たないと感じる。
  • 趣味や活動への関心がなくなった、楽しさが感じられない。
  • 活力低下、疲労感または、「動きが遅く」なる。
  • 集中したり、記憶あるいは決定をくだしたりすることが困難。
  • 睡眠が困難である、早朝覚醒する、睡眠が意図する以上に長時間になる。
  • 食欲および/または体重の変化
  • 死あるいは自殺を考える、または自殺を試みる。
  • 落ち着かないまたは苛立つ
  • 明確な身体的原因がないのに、痛み、頭痛、ひきつけ、あるいは消化器系の問題があり、および/または治療してもそれらが緩和されない。

うつ病のときは、みんな同じ症状ですか?

いいえ。うつ病は人によってその影響が異なります。
例えば、

  • 女性は、男性よりうつ病になることが多いです。うつ病の発病率は、女性特有の生物学的要因や、ライフサイクル、ホルモン等の要因が女性においてより大きいことと関連しているかもしれません。うつ病の女性は、一般的に、悲しい、価値がないと感じる、罪の意識がある等の症状がみられます。
  • 男性のうつ病では、とても疲れてしまったり、イライラしたり、時には怒ることが多くなるでしょう。また、かつては楽しんでいた仕事や活動に関心がなくなり、睡眠の問題や薬物、アルコールの誤用等、向こう見ずな行動をとることもあります。多くの男性はうつ病を認識しておらず、支援をもとめないでいます。
  • 高齢者のうつ病では明確な症状があまりなかったり、深い悲しみを認めなかったりすることもあります。このような高齢者は、心疾患等の医学的症状がある場合も多く、それがうつ病の原因やきっかけになることがあります。
  • 幼い小児うつ病では、病気のふりや登校拒否をしたり、親から離れようとしない、親が死んでしまうのではないかと心配したりする等の傾向があります。
  • もう少し年長の小児や10代のうつ病の小児になると、学校で問題を起こしたり、不機嫌になったり、イライラしたりすることがあります。10代のうつ病の小児は、不安症、摂食障害あるいは薬物乱用等、他の症状がある場合もあります。

うつ病に対してはどんな治療が行われるのですか?

適切な治療への第一歩は、医療機関や、精神科医、心理学者等の精神疾患専門家を受診することです。医療スタッフが、うつ病と同じ症状の他の疾患を除外するために診察、問診、臨床検査を行います。診断がなされると、薬剤の服用、心理療法、あるいは、それらの併用によりうつ病を治療します。これらの治療で症状が軽減されない場合は、脳刺激療法が選択肢として検討されることもあります。

■薬物療法

抗うつ剤と呼ばれる薬剤は、うつ病治療に優れた効果があります。抗うつ剤は、効果が出るまでに2~4週間かかります。抗うつ剤には副作用がありますが、多くは時間の経過と共に軽減されます。副作用が生じたら、医療スタッフに相談してください。医療スタッフに相談なく抗うつ剤の服用をやめてはいけません。

以下に注意してください。
抗うつ剤は多くの人に効果がありますが、特に小児や10代の人々、若年成人には重大なリスクがある場合があります。抗うつ剤は、特に、初めて薬剤を服用したときから効果が出始める前までに焦燥感が起こった人々において、自殺念慮や自殺企図が生じることがあります。抗うつ剤を服用している人に対しては、特に服用開始時は注意深く経過観察しなければなりません。しかし、ほとんどの人は、うつ病を治療しないリスクの方が医師の注意深い監督のもとで抗うつ剤を服用することよりもはるかに上回ります。

薬剤情報はしばしば変更されます。最新の警告、患者服用ガイド、または新たに承認された薬剤については、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration :FDA)(英語サイト)のウェブサイトをご覧ください。

■心理療法

新たな考え方や行動方法を指導し、うつ病の要因となっているかもしれない習慣を変えてゆく心理療法もまた有用です。心理療法は、うつ病を引き起こしたり悪化させたりしている可能性のある困難な関係や状況をあなたが理解し、対処する手助けとなります。

■脳刺激療法

電気痙攣療法(Electroconvulsive therapy :ECT)や他の脳刺激療法は、抗うつ剤で効果が得られない重度のうつ病を患う患者にとって一つの選択肢となるかもしれません。ECTは、最も研究されている脳刺激療法であり、最も使用歴の長い治療法です。ここで検討されている他の刺激療法は、より新しく、まだ実験段階のものもあります。これらの治療選択肢のさらなる情報については、精神衛生についての情報(英語サイト)をご覧ください。臨床試験情報はこちらをご覧ください。www.clinicaltrials.gov(英語サイト)

■うつになったらどう対処すればいいですか?

治療を継続すれば、少しずつ気分がよくなるでしょう。抗うつ剤を服用している場合は、効果が出始めるのに2~4週間かかることがあります。以前に楽しんでいたことをしてみてください。あまり考え過ぎないようにしましょう。
以下は、その他の役立つことがらです。

  • 活動的にし、運動をしましょう。
  • 大きな仕事は小さく切り分け、優先順位をつけて、あなたができることをできるように行いましょう。
  • 他の人たちと一緒に過ごし、信頼する友人や親戚と打ち明け話をしましょう。
  • 気分がよくなるまで、人生の重要な決定は延期しましょう。あなたのことをよく知っている人と物事を話し合いましょう。
  • アルコールや他の人に処方された薬剤を自分で勝手に併用しないようにしましょう。

うつ病を患っている大切な人に何をしてあげられるでしょうか?

うつ病の知り合いがいる場合は、医療スタッフまたは精神疾患の専門家を受診するよう勧めましょう。
以下も重要です。

  • 支援、理解、辛抱強い対処、励まし
  • 自殺についての発言を決して無視せず、大切な人が通院している医療スタッフまたは施術者に報告しましょう。
  • 散歩、外出、他の活動に誘いましょう。
  • 処方されている薬剤のリマインダーを設定する等、治療順守の手助けをしましょう。
  • 受診のための交通手段を確保し支援しましょう。
  • 時間の経過と治療によりうつは軽減することを再度伝えましょう。
うつ病

概要

うつ病(大うつ病性障害または臨床性うつ病)は一般的であるとともに、重篤な気分障害です。うつ病になると、感情や思考、そして睡眠、食事、仕事等の日々の活動への対処に影響する重い症状が現れます。症状が2週間以上続くとうつ病と診断されます。

うつ病にはタイプがやや異なるものがあり、以下のような特定の環境で発症することがあります。

  • 持続性抑うつ障害(気分偏重症)は、2年以上続く抑うつ気分です。持続性抑うつ障害と診断された人は、さほど重度でない症状が見られる期間とともに、大うつ病性障害の症状が起こることがありますが、2年間症状が続けば持続性抑うつ障害と見なされます。
  • 産後うつ病は、出産後に多くの女性が経験する「ベイビーブルー」(一般に出産後2週間以内に消失する比較的軽度の抑うつ不安症状)よりもはるかにもっと重篤です。産後うつ病の女性は、妊娠中または出産後に本格的な大うつ病(産後うつ病)が発症します。産後うつ病に伴う極端な悲しさ、不安、疲労感により、新たに母親となった女性が自分自身および/または赤ちゃんの日々の世話をするのが困難になる場合があります。
  • 精神病性うつ病は、重度のうつ病に加え、思い込み(妄想)があったり、他の人には認識できない、動揺するようなものが聞こえたり見えたりする(幻覚)何らかの精神病がある人に発症します。一般に、精神病性の症状においては、罪の意識、貧困、あるいは病気の幻想等、うつの「テーマ」が存在します。
  • 季節性情動障害は、自然の太陽光が少ない冬の時期にうつが発症するのが特徴です。一般に、春と夏の期間にはうつが治まります。社会的引きこもりを典型とする冬期うつ病では、睡眠時間が長くなったり体重増加が起こり、季節性情動障害として毎年発症することが予測されます。
  • 双極性障害(英語サイト)はうつ病とは異なりますが、双極性障害の人々は大うつ病性障害の基準に該当する極端な気分低調(双極性うつ障害)が見られることがあるため、本リストに含まれます。しかし、双極性障害の人は、「躁病」あるいは重症度がより低い「軽躁病」と呼ばれる極端な気分高揚(多幸感あるいはイライラ感)も経験します。

DSM-5(英語サイト)診断分類に新たに追加された他のうつ病性障害の例として、重篤な気分調節症(小児や思春期の子供が診断されます)や月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)があります。

兆候および症状

以下のような兆候や症状が一日中、そしてほとんど毎日、2週間以上続く場合には、うつ病かもしれません。

  • 悲しい、不安、あるいは「虚しい」気分が続く
  • 希望がもてないあるいは悲観的な気持ちだ
  • イライラする
  • 罪悪感がある、自分は価値がない、あるいは、無力であると感じる
  • 趣味や活動に対して興味がなくなる、あるいは楽しめない
  • 活力が低下している、あるいは疲労感がある
  • 動きや話し方がよりゆっくりである
  • 落ち着かなく感じる、あるいは、じっと座っているのが困難
  • 集中、記憶、決定が困難
  • 睡眠困難、早朝覚醒あるいは、意図した以上に長時間寝てしまう
  • 食欲および/または体重の変化
  • 死や自殺を考える、あるいは自殺を試みる
  • 明確な身体的原因がなくおよび/または、治療しても消えない痛み、頭痛、激しい腹痛、あるいは消化の問題がある。

うつ病の人すべてにこれら全ての症状が現れるわけではありません。数個の症状のみの人もいれば多くの症状がある人もいます。大うつ病性障害の診断には、気分低調に加えいくつかの持続的な症状がなくてはなりませんが、数個のみのつらい症状の人は、「亜症候群性」うつ病の治療により効果が得られる場合があります。症状の重症度と頻度および、継続期間は個々人で、そして各人の疾患ごとに異なります。症状も疾患のステージにより異なる場合があります。

リスク因子

うつ病はアメリカで最も一般的な精神疾患の一つです。最新の研究では、うつ病は、遺伝的、生物学的、環境的、心理的要因により発症することが示唆されています。

うつ病は年齢とは関係なく発症しますが、成人になってから発症することが多い病気です。近年では小児や思春期の子供がうつ病を発症することも認められていますが、気分低調というよりは顕著なイライラ感を呈することがあります。成人の多くの慢性気分障害や不安障害は、小児期の不安感の高さがきっかけとなって始まります。

特に中高年のうつ病は、糖尿病、がん、心疾患、パーキンソン病等の他の重篤な医学的疾患と同時に発症することがあります。これらの疾患は、うつ病が現れている時には悪化していることがしばしばです。また、これらの身体疾患のための薬剤は、うつ病の原因となる副作用を引き起こすことがあります。このような合併疾患を治療した経験がある医師が、最適な治療方針の選択を手助けしてくれるでしょう。

うつ病には、以下のようなリスク因子があります。

  • うつ病の病歴あるいは家族歴がある
  • 人生の大きな変化、トラウマ、ストレス
  • 何らかの身体疾患および服用

治療および療法

重篤な症状であっても、うつ病は治療が可能です。治療を早く開始すればするほど、効果も高くなります。うつ病は、通常、薬物療法(英語サイト)心理療法(英語サイト)あるいはそれらを併用して治療します。これらの治療で症状が緩和されない場合には、電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)や他の脳刺激療法が治療選択肢として検討されることもあります。

クイックヒント:全く同じうつ病というものはなく、万人に有効な治療法も存在しません。最善の治療薬を見つけるための試行錯誤もいくらか必要になるでしょう。
■薬物療法

抗うつ剤は、うつ病を治療するための薬剤です。抗うつ剤は、気分やストレスをコントロールするある種の化学物質を脳が利用する手助けをします。症状を改善し、副作用の管理が可能な薬剤を見つけるために、いくつかの抗うつ剤を試してみなくてはならないこともあります。過去に、あなた自身や家族に効果があった薬剤がしばしば検討されます。

抗うつ剤は効果が現れるまでに通常は2~4週間かかり、睡眠、食欲、集中力の問題といった症状はしばしば気分の高揚以前に改善されますので、効果について結論を出すのを少し待ってみることも大切です。抗うつ剤の服用を開始したら、医師の支援なく服用をやめてはいけません。抗うつ剤を服用している人の中には、気分が改善し自分の判断で服用をやめ、うつ症状がぶり返す人もいます。通常は6~12カ月後になりますが、あなたと主治医が服用をやめる時だと決定した場合には、主治医がゆっくりそして安全に用量を減らすのを手伝ってくれます。急に服用をやめると、離脱症状が起こります。

留意点:小児、10代の子供、25歳以下の若年成人では、特に抗うつ剤の服用を開始して最初の数週間、あるいは、用量変更時に、希死念慮や自殺行動が増えることがあります。米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)の本警告では、抗うつ剤を服用している全年齢の患者について、特に治療の最初の数週間は注意深く経過観察すべきとされています。

抗うつ剤の服用を検討している、妊娠中である、妊娠を計画している、あるいは授乳中の人は、あなた自身やおなかの赤ちゃん、または、授乳中の子供への健康リスクの増大について医師と相談してください。

抗うつ剤の最新情報については、医師に相談し以下をご覧ください。www.fda.gov(英語サイト)

セイヨウオトギリソウという薬草を聞いたことがあるかもしれません。セイヨウオトギリソウは最も売れている植物製品ですが、FDAはうつ病のための一般用医薬品あるいは処方薬としては使用を承認しておらず、安全性と効果には深刻な懸念があります(処方薬の抗うつ剤と決して併用してはいけません)。医療スタッフに相談する前にセイヨウオトギリソウを使用してはなりません。オメガ3脂肪酸やS-アデノシル-L-メチオニン(S-adenosylmethionine :SAMe)等のサプリメントとして販売されている他の自然製品はまだ研究段階であり、定期的な使用に関する安全性と有効性は証明されていません。薬草、他の補完アプローチ、および最新研究のさらなる情報については、米国国立補完統合センター(National Center for Complementary and Integrative Health :NCCIH、旧NCCAM(英語サイト))のウェブサイトをご覧ください。

■心理療法

いくつかのタイプの心理療法(「会話療法」あるいはより広くはカウンセリングとも呼ばれます)は、うつ病の人々の助けとなります。うつ病治療に特定の認知行動療法(cognitive-behavioral therapy:CBT)、対人関係療法(interpersonal therapy:IPT)、問題解決療法といった、エビデンスに基づくアプローチもあります。心理療法についてのさらなる情報は、NIMHのウェブサイト(英語サイト)およびNIMHの出版物であるDepression(うつ病):知っておくべきこと(英語サイト)で入手できます。

■脳刺激療法

服用してもうつ病の症状が軽減されない場合には、電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)が治療選択肢として検討されることがあります。
最新の研究

  • ECTは、他の治療では気分が改善されない重度のうつ病症状を緩和します。
  • 電気痙攣療法は、効果のあるうつ病治療法です。迅速な効果が求められる、あるいは、服用を安全に行えないような重度のうつ病においては、ECTは第一選択治療にさえなります。
  • ECTは、かつては厳格な入院処置がとられましたが、現在はしばしば外来で行われます。治療は一連のセッションで構成され、一般に、週3回、2~4週間行われます。
  • ECTは、混乱、見当識障害、記憶喪失といった副作用が生じる場合があります。通常、これらの副作用は短期的なものですが、特に治療期間中の何カ月間かは、記憶の問題が長引くことがあります。現代のECTは、その先端装置と手法により、非常に大多数の患者さんにおいて安全で有効なものとなっています。ECTのインフォームド・コンセントを提出する前に主治医と話し、治療の潜在的な利点とリスクについて理解しておくようにしましょう。
  • ECTは痛みがなく、電気刺激も感じません。ECTを開始する前に短時間の麻酔がかけられ、筋弛緩剤が投与されます。治療はほんの数分で終了し、一時間以内に麻酔が覚めます。

薬剤抵抗性うつ病の治療で使用される、より近年に導入された他の脳刺激療法として、反復経頭蓋刺激療法(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)や迷走神経刺激療法(vagus nerve stimulation:VNS)等があります。その他の種類の脳刺激治療も研究が行われています。これらの治療法については、NIMH Brain Stimulation Therapiesのウェブサイト(英語サイト)でさらに学ぶことができます。

うつ病ではないかと思ったら、主治医あるいは医療スタッフに相談することから始めてください。かかりつけ医または、精神疾患の診断や治療を専門とする医療提供者を受診するのがよいでしょう。何から始めればよいか分からない場合には、NIMH Find Help for Mental Illnesses(英語サイト)をご覧ください。

■治療以外のこと:あなたができること

以下は、うつ病治療中に、あなた自身やあなたの大切な人を手助けするにあたっての秘訣です。

  • 活動的であることや運動を心がける
  • 現実的な目標を設定する
  • 他の人と過ごす時間をもち、信頼できる友人や親戚に相談するようにする
  • 孤立しないようにし、周囲の人に手助けしてもらうようにする
  • すぐにではなく、少しずつ気分が改善していくと考える
  • 気分が改善するまでは、結婚、離婚、転職等の重要な決定は延期する。あなたをよく知り、あなたの状況をより客観視できる人たちと話し合う
  • うつ病について学び続ける
音楽と脳:米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)/ケネディセンター・ワークショップについてのレポート

「音楽と脳:一生を通じた研究」は、米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health:NIH)と舞台芸術のためのジョン・F・ケネディ・センターが連携して開催したワークショップのトピックです。ワークショップの要約は、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health :NCCIH(旧NCCAM))の外部研究部門長Dr. Emmeline Edwards、 米国国立衛生研究所長Dr. Francis Collinsを含む15 名の専門家により共同で執筆され、最近雑誌「ニューロン」に出版されました。

連携ワークショップは、「Sound Health」という新たな取り組みの初期段階であり、3つのライフステージ(小児期、成人期、高齢期)にわたる音楽の効果の研究結果に焦点をあてています。例えば:

  • 音楽のトレーニングにより、小児において音楽以外のさまざまなスキルの発達を促すことができるというエビデンス
  • 音楽療法が小児癌患者の治療のストレス対処に役立つという潜在的有効性
  • 感情を伝える脳のネットワークやストレス軽減、うつ病治療に対する音楽活動の効果
  • 脳内回路への影響など、音楽が疼痛を軽減するメカニズム
  • 加齢性脳に対する音楽活動の潜在的有効性(パーキンソン病、脳卒中、認知症患者での潜在的適用を含む)

ワークショップパネルの専門家25名は、4領域、すなわち基礎研究、橋渡し臨床研究、手法や転帰、能力開発とインフラにおける提案を行いました。
提案には以下が含まれます:

  • 音楽のトレーニングにより、どの神経経路が活性化されるのか調査する
  • 音楽と言語処理がどの程度重なるのか調査する
  • メカニズムの理解と音楽療法を融合する
  • 音楽活動と脳測定項目を融合させる方法を発展させる
  • 音楽と脳に関した基礎的、臨床研究に興味を持つ神経科学者や音楽療法士のトレーニングを支援する
  • 健康促進、または特定の健康状態の治療・軽減を目的とした、音楽の治療方法のためのエビデンスに基づく最善の方法を確立する。

このワークショップからの提案と他の意見に基づき、NIHは治療現場での音楽の使用について、総合的な研究課題を策定中です。NIHはまた、アメリカ合衆国退役軍人省(U.S. Departments of Defense and Veterans Affairs)、国立芸術基金(the National Endowment for the Arts)、全米科学財団(the National Science Foundation)等、他機関との連携を促進しています。

うつ病治療に潜在的な効果がある植物由来の2つの物質が研究により特定

ニューヨークにあるマウント・サイナイ・アイカーン医科大学および協力機関が実施したある研究によると、植物由来の自然製品は、新しい種類の抗うつ薬に不可欠な要素となる可能性があります。本研究は、Centers for Advancing Research on Botanical and Other Natural Products(CARBON)プログラムを通して米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health :NCCIH(旧NCCAM))が一部助成し、最近、Nature Communications誌で発表されました。

うつ病治療で現在使用されている薬剤は、セロトニン等の神経伝達物質が関与する脳内のシステムをターゲットとして設計されています。しかし、うつ病は、炎症や他の脳の異常にも関連しています。これらをターゲットとする新しい治療法は、特に既存の薬剤では効果が得られない、あるいは、副作用の問題を抱える多くの患者さんのうつ病治療を改善する可能性があります。

過去の研究では、コンコードグレープジュース、ブドウ種子抽出物、トランス型リスベラトールを配合した生物活性を有する食用ポリフェノール製剤(bioactive dietary polyphenol preparation:BDPP)が様々な神経障害から保護する可能性があることが示されていました。本研究では、BDPPにより体内でジヒドロカフェ酸(dihydrocaffeic acid:DHCA)およびマルビジン-3-グルコシド(malvidin-3′-O-glucoside:Mal-gluc)という2つの物質が産生され、異なる機序でマウスのストレス抵抗力が増強されました。DHCAは、炎症を促進するインターロイキン6(IL-6)という物質の産生を抑制しました。Mal-glucはRac 1遺伝子の発現を調節しました。Rac 1遺伝子は、脳に構造的、機能的影響を及ぼし、精神疾患に関与している可能性があります。これら2つの物質の影響を受ける本プロセスが、うつ病に関与していると考えられています。DHCAとMal-glucを併用投与すると、マウスモデルのうつ病様行動が有意に軽減されました。

DHCAとMal-glucの安全性テストでは、肝臓や腎臓への標準的評価においてマイナスの影響は示されませんでした。両物質とも既存の抗うつ剤がターゲットとするシステムに影響を与えないことから、うつ病に関与する複数の要因を同時にターゲットとすべく既存の薬剤と安全に組み合わせ、治療成功の確率を高めることができる可能性があります。

研究者らは、自然製品は、薬剤の多くの有効成分の原材料となった歴史があると報告しています。植物由来の物質は潜在的に多くの有効な生物活性を有していることから、近年では治療薬としての関心を集めています。本研究の結果は、既存治療に抵抗性のうつ病患者に対する新規治療薬の候補として、DHCA/Mal-glucがさらなる研究の対象になることを支持しています。

瞑想実践者と非実践者では、統計学的要素、健康にかかわる行動、健康状態、ヘルスケアの利用に違いがあると新しい分析結果が示す

新たな分析によると、瞑想実践者と瞑想非実践者では統計学的要素、健康に関わる行動、健康状態、ヘルスケアの利用などにおいて違いがあります。これらの結果は、瞑想実践者の特徴に関する、比較的限られた既知情報について詳しく説明しています。雑誌「BMC補完代替医療」に発表されたこの分析結果は、2012年の国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey :NHIS)からのデータに基づいており、これは疾病対策予防センター内の国立衛生統計センターが毎年実施する大規模な調査です。

伝統と実践の多様性がますます認知される中、2012年の国民健康聞き取り調査(NHIS)は、3つの一般的な瞑想スタイル(マントラ、マインドフルネス、精神的瞑想)について情報を収集し、これらの実践についてより深い知見を提供することを目的としています。この分析では、調査前の12カ月における成人34,525例での瞑想の普及と利用パターンを調査しました。*

瞑想実践者と非実践者を比較した場合、次のような結果が得られました。瞑想実践者のほうが:

  • 中年層、白人、女性、大学卒業者が多く、米国西部に住んでいる傾向にあります。
  • 運動や禁煙、コレステロールのチェックなど予防的な健康習慣により取り組む傾向があります。
  • より低体重/健康的体重(瞑想実践者41% 、非実践者31%)である傾向があります。
  • 何かしらの身体機能制約(瞑想実践者45% 、非実践者34%)、慢性背部痛(瞑想実践者39% 、非実践者27%)、うつ病(瞑想実践者22% 、非実践者9%)など、より多くの健康に関する懸念を抱えています。
  • 過去12カ月において、従来の医療機関への受診が10倍以上高い傾向にあります(瞑想実践者26% 、非実践者13%)。

瞑想の3種類のいずれかを利用している場合を調査すると、以下の事が判明しました。

  • 3種類のすべての瞑想グループにおいて、ヨガのようなセルフケア療法や健康志向活動である他の補完的療法利用者と共通する特徴がありました。
  • 調査回答者において、瞑想が特に高い率で普及していたのは、女性で非ヒスパニック系白人、かつ大学教育を受け、よく運動する人、鍼治療、ヨガ、ベジタリアンダイエットを利用する人、およびうつ病を持ち、従来の医療サービスをよく利用する人でした。
  • 健康問題を抱え、従来の医療サービスをより利用しており、また過去飲酒や喫煙歴のある人々は、より精神的瞑想を利用していました。精神的瞑想を行っている人が一番多数を占めていました。

マインドフルネス瞑想に特化して調査した場合、結果は次の通りです。

  • より多くの回答者が特定の健康状態を治療するよりも、健康のためにマインドフルネス瞑想を実践していました(瞑想実践者73% 、非実践者30%)。
  • 健康のためにマインドフル瞑想を実践する最大の理由は、ストレス管理、精神的安らぎ、健康問題をコントロールしているという感覚の増加、および睡眠の改善であるということです。
  • 瞑想実践者は、非実践者よりも、カイロプラクティクなどの施術者による治療やヨガなどのセルフケア療法を含む、他の補完療法を利用する傾向にあります。

研究者らは、瞑想の利用で重要なのは、瞑想の種類ではなく、瞑想を利用する人々の特徴(健康と幸福感を維持しようとさまざまな療法を利用する人々)であると結論づけました。一見全く異なるようにみえる瞑想の種類において、利用者の好みの性質を考慮しつつ、根底にある心理過程、有益性、そしてどの療法を選択するかを理解することは重要です。

主な参考文献

Burke A, Lam CN, Stussman B, et al.
Prevalence and patterns of use of mantra, mindfulness and spiritual meditation among adults in the United States(英語サイト)
BMC Complementary and Alternative Medicine. 2017;17(1):316.

*A previous analysis(英語サイト) showed that the total number of U.S. adults who practiced mantra, mindfulness, or spiritual meditation or used meditation as part of other practices (yoga, tai chi, and qi gong) was almost 18 million.

大うつ病に対するセントジョーンズワートのレビュー

大うつ病は、落ち込んだ気分になる、ほぼあらゆる活動に対して持続的に無関心になる等の状態が2週間以上持続することが特徴です。大うつ病の人々は、食欲不振、疲労、睡眠障害、イライラ、集中力低下、希死念慮等の他のさまざまな症状がある場合もあります。うつ病の治療には、特にドイツなど多くの国において、セントジョーンズワートというハーブの抽出物(学名 Hypericum perforatum L.)が使用されています。しかし、世界中で実施されている臨床試験の結果は矛盾しており、うつ病に対するセントジョーンズワートの効果はまだ疑問視されています。さらに、大うつ病ではしばしば抗うつ薬を使用した治療が行われますが、プラセボと比較した臨床試験では、抗うつ薬は軽度の効果しか示していません。

ドイツの大学に所属し、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH(旧NCCAM))から資金提供を受けている研究者らは、セントジョーンズワートに関する科学文献をレビューし、セントジョーンズワート抽出物とプラセボ及び標準の抗うつ薬とを比較したランダム化二重盲検試験の結果を分析しました。研究者らは、5,489名を対象とした合計29件の試験についてレビューを実施しました。 これらの試験は、主に軽度から中程度に重症なうつ症状を有する人々を対象にさまざまな国で実施されたものであり、使われたセントジョーンズワート抽出物も種類の異なるものでした。

文献レビューによると、セントジョーンズワート抽出物はプラセボより優れていると考えられ、標準の抗うつ薬と同程度の効果があり、抗うつ薬よりも副作用が少ないことが分かりました。しかし、ドイツ語圏で実施された試験の結果は不相応に良好なものであり、これは異なるタイプのうつ病患者を含んでいたことによるものか、あるいは小規模試験のいくつかに欠陥があり試験報告において過度に楽観的であったことによる可能性が考えられます。著者らは、ドイツ語圏と他の国々の試験結果の違いについて、その理由を調べる必要があると報告しています。

セイヨウオトギリソウ(St. John`s wort)は、中等度の大うつ病には効果がないことが試験により示されました。

米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association)に発表された研究によると、中等度の大うつ病治療において、薬草であるセイヨウオトギリソウの抽出物(学名Hypericum perforatum)の効果はプラセボと同程度でした。セイヨウオトギリソウはうつ病に広く使用されていますが、その効果の科学的エビデンスには一貫性がありませんでした。本試験は、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH(旧NCCAM))および国立衛生研究所サプリメント室(NIH Office of Dietary Supplements : ODS)の共同資金援助を受け、標準的なセイヨウオトギリソウ抽出物とプラセボの比較を行いました。本臨床試験の抗うつ効果検出能力の一つの評価方法として、研究者らは、抗うつ薬であるセルトラリンとプラセボの比較も実施しました。

中等度以上の大うつ病と診断された患者340例が登録されました。試験は2相にわけて実施されました。第1相は8週間継続され、セイヨウオトギリソウ(900 mg ~ 1,500 mg/日)、セルトラリン(50 mg ~ 100 mg/日)またはプラセボのうち、抗うつ効果を示した患者数を測定しました。今回の試験の主要評価項目はこのフェーズに設定されました。第2相では、初期治療に反応した患者を対象に、さらに18週間の治療を行いました。

主要転帰は、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Scale :HAM-D)スコアの平均変化量および、HAM-Dと臨床全般印象 - 改善尺度(Clinical Global Impressions-Improvement Scale :CGI-I)スコアに基づき治療に完全奏効を示した患者の割合でした。研究者らは、セイヨウオトギリソウを摂取した患者のHAM-Dスコアは平均約8.7ポイント低下したのに対し、プラセボおよびセルトラリンを服用した参加者では同スコアはそれぞれ約9.2ポイントと約10.5ポイントの低下であったことが分かりました。研究者らは、セイヨウオトギリソウを摂取していた患者の約24%が治療に完全奏効したのに対し、プラセボは32%、セルトラリンは25%であることも分かりました。主要転帰の解析では、セイヨウオトギリソウもセルトラリンも、プラセボとの有意差は認められませんでした。副次転帰であるCGI-Iスコア(単独)に関しては、セルトラリンはプラセボより良い結果でした。

研究者らは、今回の試験にプラセボ群と従来の抗うつ薬群を含めたことは重要であると報告しています。また、今回の所見は中等度の大うつ病に対してセイヨウオトギリソウの使用を支持するものではなく、明確なエビデンスがないため、セイヨウオトギリソウを本疾患の標準的な臨床治療の代替として使用すべきではないと結論づけました。

うつ病に対する多価不飽和脂肪酸

オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸、または多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids:PUFA)は、うつ症状を緩和する目的で使用される補完代替医療(Complementary & Alternative Medicine:CAM)の一つです。イェール・グリフィン予防研究センターのAnna-leila Williams, 医学博士が筆頭となり、本トピックのレビューを行いました。著者らは、小規模で短期間の研究ではあるものの、5件のランダム化比較試験がレビューの対象として十分な質を備えていることを確認しました。これらの試験のうち1件を除く全ての試験において、PUFA(特にオメガ3脂肪酸)の使用によりうつ症状がいくらか改善したことが分かりました。著者らは、うつ病治療としてPUFAの補充を支持するエビデンスは強くないものの、さらなる研究を実施するにあたり十分な潜在的可能性があると結論づけました。雑誌「情動障害(Journal of Affective Disorders)」2006年5月号(英語サイト)

発行日:2006年5月1日

季節性情動障害と補完的健康アプローチ

季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder :SAD)は、季節によって発症したり消失したりするうつ症状の一種で、通常、晩秋や初冬に発症し、春や夏の間消失します。夏に関連するうつ症状が起こる場合もありますが、SADの冬季発症型よりも非常に稀です。SADの冬季型の症状としては、気力低下、過食、炭水化物への欲求、引きこもりなどが挙げられます。光療法がSADの標準的治療となっており、抗うつ剤もSAD症状を改善すると示されています。

SADを予防するために、光療法、認知行動療法(SAD)、セイヨウオトギリソウ、メラトニンやビタミンDなどの補完的健康アプローチに頼る人もいます。今回のダイジェスト版では、これらの治療法に関する最新研究の要約を提示します。

科学的根拠
季節性情動障害と補完的健康アプローチ(英語サイト)

最新研究の方法と要約

光療法

光療法が季節性情動障害の既往歴のある患者に対する予防的治療法として有用である可能性を示すエビデンスがいくつかあります。

認知行動療法(CBT-SAD)

認知行動療法(SAD)が、SADの再発減少や寛解に有効であり、少なくとも1回目と2回目の冬季の間維持されることを示すエビデンスがいくつかあります。

セイヨウオトギリソウ

セイヨウオトギリソウがSADのいくつかの症状を改善することを示す限定的なエビデンスがありますが、試験は小規模なものです。

メラトニン

メラトニンがSAD患者の睡眠を改善することを示す限定的なエビデンス(少数の患者を対象とした小規模試験)がありますが、その有効性について確信的な結論は導き出されていません。

ビタミンD

現在、ビタミンD補充自体は、有効なSAD治療として考えられていません。

うつ病と補完医療アプローチ

2015年10月

うつ病の人の多くは、従来の治療に対する追加あるいは代わりとして補完医療も検討します。補完医療のアプローチは、一般的に使用されており、市販されていますがこれらの治療の多くは、うつ病を対象とした厳格な研究は行われていません。そのため、患者にアドバイスできるよう、これらの補完アプローチのリスクと有効性を理解していることが重要です。

Task Force on Complementary and Alternative Medicine of the American Psychiatric Associationが2010年に行った入手可能なエビデンスの質に基づく精神科領域の補完的アプローチに関するレビューでは、成人の現行のうつ病治療を補強するためのオメガ3脂肪酸、セイヨウオトギリソウ(学名:Hypericum perforatum)、葉酸、S-アデノシル Lメチオニン (S-adenosyl-l-methionine :SAMe)、光療法、運動、マインドフルネス療法を含めたいくつかの補完的アプローチの実行は、さらなる研究が支持される十分なエビデンスが存在することが分かりました。しかし、本タスクフォースは、これらの補完アプローチを用いる前により頑健で大規模な試験を実施する必要があると報告しています。

本ダイジェスト版は、これらの補完医療アプローチのいくつかに関する最新の科学を提供しています。

科学的根拠
うつ病と補完医療アプローチ(英語サイト)

治療法と既存エビデンスのまとめ

オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸(英語サイト)

天然物

オメガ3脂肪酸の補充は、大うつ病障害(major depressive disorder MDD)およびMDDと診断されていないうつ状態の患者への追加療法として、わずかに効果があることを示唆するエビデンスが存在します。ほとんどの臨床試験は併用試験です。データは期待が持てるものですが、標準的な抗うつ剤を比較した試験と比べ、オメガ3のみでは結論が出ておらず、薬理学的または生物学的な抗うつ効果を示唆する機序があるかどうかは不明です。

セイヨウオトギリソウとうつ病
セイヨウオトギリソウとうつ病(英語サイト)

天然物

セイヨウオトギリソウ(学名:Hypericum perforatum)は、標準的な抗うつ剤と同様に、一定数の患者の軽度から中等度の大うつ病(MDD)に効果があるかもしれないとのエビデンスがいくつか存在しますが、それらは絶対的なエビデンスとはほど遠いものです。プラセボよりも若干有効性が認められた試験もありますが、その他の試験の結果は、これらと一致するものではありません。セイヨウオトギリソウの重大な薬草薬物間相互作用は、安全性への考慮が重要です。

S-アデノシル-L-メチオニン(S-Adenosyl-L-Methionine :SAMe)
S-アデノシル-L-メチオニン(S-Adenosyl-L-Methionine :SAMe)(英語サイト)

天然物

最新の科学エビデンスでは、うつ病治療に対するSAMeの使用は支持されていません。

イノシトール
イノシトール(英語サイト)

天然物

最新の科学エビデンスでは、うつ病治療に対するイノシトールの使用は支持されていません。

鍼灸
鍼灸(英語サイト)

心身療法

最新の科学エビデンスでは、うつ病治療に対する鍼灸の使用は支持されていません。

音楽療法
音楽療法(英語サイト)

心身療法

音楽療法は、気分を改善するかもしれないという限定的なエビデンスがいくつかあります。

リラクゼーショントレーニング
リラクゼーショントレーニング(英語サイト)

心身療法

リラクゼーショントレーニングは、無治療よりもうつ症状を軽減することを示唆するエビデンスはありますが、心理療法ほどは効果がありません(認知行動療法等)。

ハーブと医薬品の相互作用

健康補助食品やハーブ系サプリメントには、安全上の問題として、薬物相互作用、直接的な毒性作用、医薬品有効成分の混入などがあります。世間では、サプリメントに含まれるハーブや植物由来の成分は安全であるという認識が広まっていますが、これらの成分は医薬品の有効成分と同様の危険があることが研究によって示されています。処方箋薬、一般用医薬品、サプリメント、さらには食品中の成分との相互作用を生じる可能性があるため、医学的に重要な相互作用をすべて把握することは非常に難しい問題です。

ハーブと医薬品の相互作用に関する問題には、多くの場合、厳格な研究による裏付けが存在しません。これまでの研究で明らかにされているハーブと医薬品の相互作用はほとんどが仮説であり、動物実験や細胞実験、その他の間接的試験の結果から推測されたものです。しかし、癌の化学療法薬、ワルファリン、ジゴキシンなど治療域が狭い(毒性を生じやすい)薬剤に関しては、相互作用に注意する必要があります。

現時点では、適切にデザインされた臨床試験によってハーブ系サプリメントと医薬品の相互作用を評価した例は少なく、結果が矛盾していることもあります。「クリニカル・ダイジェスト」のこの記事では、一部のハーブについて、その説明や他の医薬品との相互作用に関する情報が掲載されています。

科学的根拠
ハーブと医薬品の相互作用(英語サイト)

ブラックコホシュ
ブラックコホシュ(英語サイト)

Cimicifuga racemosa

これまでに得られた臨床データによると、ブラックコホシュは複数の医薬品との相互作用を有する可能性がありますが、そのリスクは低いと考えられます。

ブラックコホシュの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
ブラックコホシュと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

エキナセア
エキナセア(英語サイト)

Echinacea purpurea, Echinacea angustifolia, Echinacea pallida

基準を満たしたエキナセア抽出物から製造したサプリメントが、現在使用されている多くの医薬品に対して相互作用を生じるリスクはごくわずかであると考えられます。

エキナセアの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
エキナセアと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

ニンニク
ニンニク(英語サイト)

Allium sativum

これまでに得られた科学的根拠によると、ニンニクサプリメントを短期間使用した場合、医薬品との間に臨床的に重要な相互作用が生じるリスクは低いです。しかし、濃縮ニンニク抽出物を長期間使用した場合、医薬品の体内分布にヒトの排出トランスポーターであるABCB1が関与しているときは、その医薬品の効果が弱まる可能性があります。ニンニクは抗HIV薬であるサキナビルの代謝に影響するという科学的根拠が得られていますが、2012年のレビュー(英語サイト)では、総合的に判断すると、ニンニクとサキナビルの相互作用が生じるリスクは低いという結論に達しています。

ニンニクの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
ニンニクと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

イチョウ
イチョウ(英語サイト)

Ginkgo Biloba

イチョウが複数の医薬品の薬物動態に影響することを示唆する動物実験データがあります。しかし、現時点で臨床試験から得られている科学的根拠によると、摂取量が少なければ、臨床的に重要な相互作用を生じるリスクはありません。

イチョウの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
イチョウと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

朝鮮ニンジン
朝鮮ニンジン(英語サイト)

Panax ginseng

最新の科学的根拠によると、朝鮮ニンジンは肝臓で、場合によっては消化管でも、薬物代謝酵素CYP3Aを活性化させることが示唆されています。朝鮮ニンジンを治療域の狭いCYP3Aの基質となる医薬品と併用している場合、医薬品の十分な効果が得られているかどうか、慎重な経過観察をおこなう必要があります。

朝鮮ニンジンの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
朝鮮ニンジンと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

ゴールデンシール
ゴールデンシール(英語サイト)

Hydrastis canadensis

ゴールデンシールはCYP3A4酵素とCYP2D6酵素の活性を強力に阻害するため、医薬品との相互作用を有する可能性が高いです。

ゴールデンシールの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
ゴールデンシールと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

カバ
カバ(英語サイト)

Piper methysticum

カバと医薬品の相互作用に関する臨床試験は少数しか実施されておらず、一貫した結果は得られていません。カバを中枢神経抑制薬と併用した場合、眠気や運動反射抑制が強まるリスクがあるという科学的根拠が示されています。しかし、2012年のレビューでは、カバサプリメントを製品の添付文書に記載された量で摂取した場合、医薬品の有効性や毒性に影響を与える可能性は低いという結論に達しています。

カバの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
カバと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort)
セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort)(英語サイト)

Hypericum perforatum

セイヨウオトギリソウは、チトクロムP-450酵素と腸管に存在するP糖タンパク質を強力に誘導します。セイヨウオトギリソウは免疫抑制薬シクロスポリン、抗レトロウイルス薬インジナビル、経口避妊薬、クマディン(ワルファリン)、ジゴキシン、ベンゾジアゼピンなどの医薬品との間に臨床的に重要な相互作用を有することが報告されています。

セイヨウオトギリソウの科学的根拠および安全性に関する詳細の参照先:(英語サイト)
セイヨウオトギリソウと医薬品の相互作用について、PubMedで検索できます。(英語サイト)

健康目的でのマッサージ療法

2014年2月

「マッサージ療法」という用語は、多くの異なる様式や手技を含み、マッサージ師は異なる程度の圧やマニピュレーションを用いて筋肉や他の軟部組織に働きかけます。マッサージ療法の臨床効果に関する多くの科学的研究が行われています。予備的で結論は一貫してはいないものの、多くのエビデンスは、さまざまな状態に関連する疼痛や他の症状に対して有益な効果を示しています。例えば、マッサージ療法が背部痛に有効で、うつ、癌、HIV/AIDSの人の生活の質を改善するエビデンスがあります。しかし、多くのエビデンスが、これらの効果は短期的で、利益を継続させるために人々はマッサージ療法を受け続ける必要があることを示唆しています。

今回のダイジェストは、疼痛、癌、うつなどの健康問題に対するマッサージ療法の臨床効果について、現在の科学が示している情報を提供しています。

国立補完統合衛生センター(NCCIH)[米国]は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたのプライマリーヘルスケア提供者(かかりつけ医等)の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについて意思決定をする場合は、必ずかかりつけの医療スタッフと相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

翻訳公開日:2019年3月29日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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