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慢性疼痛
Chronic Pain

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

慢性疼痛
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年9月

要点は?

慢性疼痛に対する補完療法について解明されていることは?

慢性疼痛に対する補完療法に関して、これまでに知られていることは?

  • 慢性疼痛に対する補完療法として研究されてきた療法の多くは安全性実績が良好ですが、必ずしもすべての人にとって補完療法が安全であるとは限りません。補完療法の安全性は、あなたの健康状態や特別な環境(妊娠など)に左右される場合があります。自然食品や天然物由来の製品を検討しているのであれば、「ナチュラル(天然)」は必ずしも「安全」を意味するとは限らないこと、製品によっては副作用があり、医薬品と相互作用する可能性があることを覚えておいてください。

慢性疼痛とは?慢性疼痛を看過できない理由は?

慢性疼痛とは、数カ月(3~6カ月とさまざまな定義があるものの、「通常の治癒」と比較すると明らかに長い期間)以上持続する痛みをいいます。慢性疼痛は、よくみられる問題です。2012年にアメリカで行われた国民健康調査の結果から、

  • 成人約2530万人(11.2%)が過去3カ月間にわたって日常的に痛みを抱えていることや、
  • 約4000万人(17.6%)が重度の痛みに苦しんでいること、
  • また、重度の痛みを抱える人は、健康状態が悪化し、医療サービスの利用回数が多く、痛みの程度が軽い人と比較して身体的障害を有する頻度が高いことがわかっています。

年齢が上がるにつれて変形関節症など疼痛の原因となる健康障害が一般的となることから少なくともある程度の慢性疼痛も年を重ねると同時に一般的になります。退役軍人も慢性疼痛のリスクが高いグループです。アメリカの国民健康調査データによると、一般的な痛みと重度の痛みの両方とも、非退役軍人よりも退役軍人に多く見られます。

慢性疼痛のある全ての人が医療スタッフによって健康障害と診断されてはいませんが、全国調査によると診断を受けた中で圧倒的に多い症状は腰痛と変形性関節症でした。診断結果の中で他にも一般的であったのは、関節リウマチ、偏頭痛、手根管症候群、線維筋痛症でした。慢性疼痛にかかるアメリカでの年間経済コストは、治療と生産性の損失を合わせて6350億ドルであると推定されています。

慢性疼痛の原因となり得るのは、基礎疾患や健康状態、傷害、医学的処置(手術など)、炎症または神経系の問題(この場合、「神経因性疼痛」と呼ばれる)、または 未知の原因などです。慢性疼痛は生活の質や生産性に影響を及ぼし、動作困難、睡眠障害、不安うつ病などの問題を伴うことがあります。1 慢性疼痛についてのさらなる情報は、National Institute of Neurological Disorders and Stroke(国立神経疾患・脳卒中研究所)(英語サイト)をご覧ください。

慢性疼痛に対する補完療法の科学的根拠

科学的根拠(エビデンス)に基づき、一部の補完療法は慢性疼痛の管理に役立つ可能性があると示唆されています。

このファクトシートでは、慢性疼痛に対する補完療法として研究されてきた療法すべての科学的研究を包括的に説明することは割愛します。この項では、よくみられる痛みに対して用いられる療法の一部について、研究の状況に焦点を当ててまとめています。

慢性疼痛一般

最近行われた一部の研究は、痛みを伴う特定の疾患ではなく慢性疼痛一般に対する補完療法の効果に着目しています。

  • 2017年のレビューでは、補完療法をオピオイド危機を念頭に置いて検討し、どの療法が慢性疼痛の緩和とオピオイド療法による疼痛管理の必要を減らすのに有用か調べました。鍼治療、ヨガ、リラクゼーション法 、太極拳、マッサージ療法、オステオパシーまたは脊椎マニピュレーションが慢性疼痛に多少有効であることを示唆する科学的根拠(エビデンス)は認められましたが、患者のオピオイドの必要を減らすことを示唆するエビデンスは鍼治療にしか認められませんでした。
  • 研究から、催眠療法は通常の内科的ケアと比較すると、慢性疼痛の管理に中等度の有効性があることが示されています。しかし、催眠療法の有効性は、人によって大幅に異なります。
  • 慢性疼痛に対するマインドフルネス瞑想に関する2017年の研究レビューでは、疼痛症状対して小さな改善が見られたと示されました。
  • 研究から、音楽は慢性腰痛患者の疼痛やうつ病の自覚症状を軽減すること示されています。
腰痛
  • 鍼治療の研究について2017年に行った評価によると、鍼治療は、急性腰痛に対して少しの有益な効果と、慢性腰痛疼痛に対して中程度の有益な効果があるというエビデンスが明らかになりました。この評価に基づいて、2017年の米国内科専門医会(American College of Physicians:ACP)の診療ガイドライン(医療提供者に対するガイダンス)は、急性および慢性腰痛管理のための非薬物療法の選択肢として、鍼治療を含めています。
  • マッサージ療法は、短期的には腰痛を和らげる可能性がありますが、エビデンスの質は高くありません。マッサージ療法によって、腰痛に対する長期的な効果が得られるとの結果は示されていません。2017年のACPガイドラインは、慢性ではなく急性腰痛に対する選択肢として、マッサージ療法を含めています。
  • 2017年の研究レビューでは、マインドフルネス・ストレスの軽減法は、通常のケアと比較した場合、腰痛の程度や身体機能の改善と関連しているが、その効果は小さく短期的であると結論づけました。2017年のACPガイドラインは、急性ではなく慢性腰痛に対する選択肢として、マインドフルネス・ストレス軽減法を含めています。
  • プログレッシブリラクゼーション(漸進的弛緩法)が腰痛の緩和に役立つと示唆するエビデンスが若干ありますが、このエビデンスの質は「最高ランク」ではありません。2017年のACPガイドラインは、急性ではなく慢性腰痛の選択肢として、プログレッシブリラクゼーション(漸進的弛緩法)を含めています。
  • 脊椎マニピュレーションは、理学療法や運動、標準的な医療ケアなど一般的に用いられる他の治療と同様に慢性腰痛に有効なようです。2017年のACPガイドラインは、急性および慢性腰痛両方の選択肢として、脊椎マニピュレーションを含めています。
  • 米国医療研究品質庁(Agency for Healthcare Research and Quality)による、腰痛に対するヨガの研究について2018年に行われた評価では、短期(1~6カ月)と中期(6~12カ月)ともに疼痛と機能を改善することが明らかになりました。ヨガの効果は運動の効果と似ています。2017年のACPガイドラインは、急性腰痛ではなく慢性腰痛の選択肢として、ヨガを含めています。
  • 腰痛に対するハーブ製品の研究について2016年に行われた評価では、赤唐辛子を局所投与(皮膚に塗布)した場合、腰痛を軽減する可能性があるというエビデンスが明らかになりました。他に局所使用する2種類のハーブ製品のヒレハリソウとラベンダー精油、経口使用する2種類のハーブのホワイトヤナギ樹皮とデビルズクローも、有用である可能性がありますが、これらのハーブのエビデンスは赤唐辛子のものほど強力ではありません。
  • 腰痛に対するプロロセラピー(刺激性水溶液を反復注入する治療)の研究では、矛盾する結果が示されています。
  • さらに情報を知りたい方は、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)の「腰痛(英語サイト)」をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳
変形性関節症
  • 鍼治療は、変形性関節症からくる膝の痛みの緩和に対して短期間のベネフィット(有益性)があるという科学的根拠(エビデンス)があります。鍼治療は、腰の変形性関節症に有用であるとは示されていません。
  • 少数の研究では、マッサージ療法が変形性関節症を緩和するのに有用である可能性があると示唆するものもあります。
  • AHQRによる2017年のレビューの科学的根拠(エビデンス)では、膝の変形性関節症である人に対して、太極拳が短期的に(最大で12週間)、また、中期的に(12~26週間)のベネフィット(有益性)があったと報告しています。長期的に有用であると示す十分な研究はありませんでした。気功も同様のベネフィット(有益性)の可能性がありますが、研究はわずかです。
  • 変形性関節症に対するヨガの研究はわずかであり、有益である可能性を示すエビデンスは弱いものです。
  • 2017年のAHRQ報告によると、パルス電磁波療法と呼ばれる一種の電磁療法が短期的に変形性関節症による膝の痛みに対して有益な効果がある可能性を示していますが、その効果に対するエビデンスの強さは弱いものでした。
  • 2017年のAHRQの報告では、膝の変形性膝関節症に対する全身振動(振動プラットフォームで人が運動する療法)を評価し、痛みへの効果には一貫性がないこと示していました。
  • 膝の変形性関節症の痛みに対するグルコサミン、コンドロイチンS-アデノシル-L-メチオニン(S-adenosyl-L-methionine:SAMe)の研究では、矛盾する結果が出ています。
  • 変形性関節症の痛みに対するジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)またはメチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane:MSM)についての結論に到達するのに十分な研究はありません。
  • さらに情報を知りたい方は、 NCCIHのファクトシートの「変形性関節症」(英語サイト)をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳
関節リウマチ
  • 関節リウマチの痛みに対する心身療法に関する研究の数は少なく、有効性について結論を出すことはできません。
  • オメガ3脂肪酸、γリノレン酸(gamma-linolenic acid:GLA)またはハーブのライコウトウを含むサプリメントは、関節リウマチの症状の緩和に役立つ可能性があります。
  • さらに情報を知りたい方は、「rheumatoid arthritis(関節リウマチ)」(英語サイト)をご覧ください。
頭痛
  • 鍼療法は、片頭痛の頻度を減らす中等度〜低度のエビデンスと、緊張頭痛の頻度を減らす中等度〜低度のエビデンスが認められています。
  • バイオフィードバック(行動療法)やマッサージ療法、リラクゼーション法、脊椎マニピュレーション、太極拳およびヨガについては、エビデンスが少ない、あるいは一貫していないため、頭痛に有用であるかどうかは明らかではありません。
  • 米国神経学会(American Academy of Neurology)および米国頭痛学会(American Headache Society)のガイドラインでは、片頭痛予防には植物のフキが有効、ナツシロギクやマグネシウムおよびリボフラビンがおそらく有効、コエンザイムQ10が有効な可能性ありとされています。
  • さらに情報を知りたい方は、NCCIHのファクトシート「headaches(頭痛)」(英語サイト)をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳
頸部痛
  • 頸部痛に対する鍼治療の研究は、他の疼痛での研究ほど広く行われていません。しかし、これまでに行われた研究によると、その効果は長く続かないかもしれませんが、鍼治療が頚部痛にとって有用であることを示唆しています。
  • マッサージ療法は、特に施術時間が長時間であるほど、また施術回数が多いほど、頸部痛が短期的に和らぐ可能性があることがわかりましたが、他の療法よりも効果的とも思われません。
  • 脊髄脊椎マニピュレーションは頚部痛の短期的な軽減に有用である可能性はありますが、それを支持するエビデンスの質は高くありません。
線維筋痛症
  • 鍼治療が線維筋痛症の痛みに有用であるかどうかは明らかではありません。
  • 線維筋痛症に対する太極拳やヨガ、マインドフルネス療法、バイオフィードバック(行動療法)の研究の一部では、期待できる結果が示されていますが、エビデンスは限られており、このような療法が有用であるか明確な結論を出すことはできません。
  • 自然食品や天然物由来の製品については、線維筋痛症患者のうち血中ビタミンD値が低い人でビタミンDサプリメントが有力であったことを除き、線維筋痛症の痛みを緩和することを示すエビデンスは十分ではありません。
  • ホメオパシーの研究では、線維筋痛症にホメオパシーが有益であるとは証明されていません。
  • さらに情報を知りたい方は、NCCIHのファクトシート「線維筋痛症」(英語サイト)をご覧ください。
過敏性腸症候群(IBS:Irritable bowel syndrome)
  • 催眠療法は過敏性腸症候群に有用である可能性がありますが、エビデンスの質は高くありません。
  • プロバイオティクスは過敏性腸症候群に有用である可能性がありますが、どのタイプのプロバイオティクスが最も有用で、どの症状を緩和するかはまだ不明です。
  • ペパーミントオイルについては過敏性腸症候群に有用であるかもしれないとする説を裏付ける弱いエビデンスがあるだけです。
  • 過敏性腸症候群に対する鍼治療の研究で、疑似鍼治療よりも実際の鍼治療が有用であるということは明らかにされませんでした。
  • さらに情報を知りたい方は、NCCIHのファクトシート「過敏性腸症候群」(英語サイト)をご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳]
その他の疼痛
  • 神経痛、慢性骨盤痛、子宮内膜症によって生じる疼痛、手根管症候群、痛風によって生じる疼痛およびがん性疼痛などその他の慢性疼痛に対するさまざまな補完療法について、研究が行われてきました。補完療法の中には、このような種類の痛みの一部に有用性が見込まれる療法が存在することを示す、期待できるエビデンスがありますが、その有効性を明確に証明するにはエビデンスが不足しています。
他の補完療法
  • 大麻(マリファナ)を主成分とする医薬品(すなわちカンナビノイド)が慢性神経(神経障害性疼痛)の痛みやその他の慢性疼痛に有用と示唆するエビデンスはありますが、潜在的な利点が潜在的な有害性よりも大きいかどうかは不明です。さらなる研究を実施し、疼痛管理に対してカンナビノイドの安全性と有効性を決定する米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)の要件を満たすことが必要です。
  • クラトム(Kratom)が慢性疼痛に効果があるかどうかは、人におけるこの物質の研究が不足しているため不明です。
  • レイキが痛みの緩和に役立つかどうか明確な評価を下した質の高い研究はありません。
  • 磁気治療は疼痛管理に広く用いられていますが、磁気治療の使用を支持するエビデンスはありません。

科学的観点から見た安全性および副作用

どんな治療法でもそうですが、補完療法を用いる際は安全性を考慮することが重要です。安全性は、個々の治療法や用いる人の健康状態で異なります。痛みに対して補完療法の使用を検討しているまたはすでに使用している場合は、その安全性についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。

心身療法の安全性
  • 鍼治療、催眠療法、マッサージ療法、マインドフルネス瞑想、リラクゼーション法、脊椎マニピュレーション、太極拳/気功、ヨガなどの心身療法は、適切に実施されれば健康な人にとっては一般的に安全です。
    • 医学的症状のある人や妊娠中の女性は、心身療法の種類を変えたり、避けたりすることが必要な場合があります。
    • 他の運動と同様に、太極拳やヨガなどのように運動を伴う心身療法は、筋肉痛を引き起こし、怪我のリスク(危険)を伴うことがあります。
    • 施術者や講師が心身療法を正しく理解し、適切な安全予防措置を取ることが重要です。
  • 特定の心身療法とその安全性などについては、NCCIHウェブサイトの「ヘルストピックスA-Z」(英語サイト)をご覧下さい。
天然物の安全性
  • 「ナチュラル(天然)」は必ずしも「安全」を意味するとは限りません。天然物(サプリメント)によっては、副作用があり、医薬品と相互作用する可能性があります。
  • 米国食品医薬品局(FDA)は、関節炎や痛みのために促進されたサプリメントのいくつかが違法な処方薬を使用していたと国民に警告しています。
  • 特定の天然物とその安全性などについては、NCCIHウェブサイトの「ヘルストピックスA-Z」(英語サイト)をご覧下さい。一般的なサプリメントについての詳細は、NCCIHのウェブページ、Dietary and Herbal Supplements(サプリメントおよびハーブ)(英語サイト)をご覧下さい。[eJIMサイト内日本語訳]

痛みに対する研究が行われている補完療法について、さらに詳しくお知りになりたい方は、以下をご覧ください。

  • 鍼治療
  • マッサージ療法
  • 瞑想
  • リラクゼーション法
  • 脊椎マニピュレーション
  • 太極拳/気功
  • ヨガ

慢性疼痛疾患の治療に関するガイドライン

国の医療専門機関では、数種類の慢性疼痛疾患の治療に関してガイドラインを公表しています。特定の補完療法を治療計画に組み入れる方法を記載しているガイドラインもありますが、特定の補完療法の使用を控えるよう促すガイドラインもあります。

米国内科学会(American College of Physicians)の診療ガイドラインでは、慢性腰痛疼痛の初期治療として非薬理学的アプローチの使用を勧めています。米国内科学会が提案する選択肢には、運動や認知行動療法などの従来の療法に加えて、鍼治療、マインドフルネスに基づくストレス軽減、太極拳、ヨガ、プログレッシブリラクゼーション(漸進的弛緩法)、バイオフィードバック(行動療法)、脊椎マニピュレーション などの補完療法が含まれます。

米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)は、学会ガイドラインで、股関節や膝の変形性関節症の管理に複数の補完療法を取り上げています。ガイドラインでは、変形性膝関節症に対して有用であると考えられる非薬物療法の一つとして、太極拳を挙げています。しかし、このガイドラインでは、サプリメントのグルコサミンとコンドロイチンを股関節や膝の変形性関節症に対して使用することを控えるよう促しています。

米国消化器病学会(American College of Gastroenterology:ACG)では、過敏性腸症候群の管理のため用いられるプロバイオティクス/プレビオティクス、ペパーミント精油、催眠療法を学会の療法評価に盛り込んでいます。ACGは、上記療法が有用である可能性を示す弱いエビデンスを見付けただけです。

さらなる情報についてはNCCIHのウェブサイト「Pain Information for Health Professionals(医療者のための疼痛情報」(英語サイト)をご覧ください。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の疼痛コンソーシアムの一員で、NIHの疼痛に関する研究の調整を担当しています。NCCIHが助成する研究は、慢性疼痛治療に用いられる補完療法の有効性と安全性に基づくエビデンスの確立に役立っています。

NCCIHはまた、NIH、国防総省、退役軍人省が共同で支援している新たな取り組み、疼痛管理共同研究(Pain Management Collaboratory)の主要機関でもあります。この共同研究の目的は、痛みと他の付随症状に対する非薬理学的アプローチに焦点を当て、軍人および退役軍人向けの医療提供機関で費用対効果が高く大規模で実用的臨床研究を実施する能力を開発することです。

NCCIHが資金提供する疼痛に対する研究

NCCIHの支援を受けて進行中の研究では、慢性疼痛に関連する以下のようなさまざまなトピックが調査されています。

  • 太極拳は高齢者の慢性腰痛疼痛に有用か
  • 間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に関連した骨盤痛緩和に対するプロバイオティクスの潜在的価値
  • 片頭痛で救急外来を受診する患者にとって、プログレッシブリラクゼーション(漸進的弛緩法)は有用か
  • 高齢者による腰痛のためのカイロプラクティック療法の利用と保健サービスの利用の関係

また、NCCIHの組織内研究部局(Division of Intramural Research)は、痛みを知覚し、修正し、コントロールする際の脳の役割に着目した研究を行っています。研究プロジェクトでは、痛みを処理し調節する際の脳の役割や、感情や注意力、環境および遺伝的特徴などの因子が痛みの知覚にどのように作用するのかを研究しています。

慢性疼痛による人的および経済コストや、慢性疼痛を抱える多くの人が痛みの緩和のため補完療法に目を向けることを考慮して、NCCIHは痛みに関連する研究に高い優先順位を置いています。慢性疼痛の性質や疼痛を起こす多数の原因の最善の研究方法、人によって異なる疼痛への反応、あるいはさまざまな治療法の価値、すなわち補完療法と従来からの治療法の価値について、まだ解明されていない点が多いため、この領域の研究者は特有の課題に直面しています。最終的な目標は、患者個人に適した疼痛管理の意思決定を行う際の指針となるエビデンスの土台の確立です。このような意思決定には、痛みをできる限り抑え、日常活動をこなし、生活の質(Quality of Life:QOL)を改善できるよう人々の役に立つ最善の治療法を、費用対効果が高くなるように組み合わせることもしばしば含まれます。

慢性疼痛を抱える人々とかかりつけの医療スタッフが疼痛管理にかかわる意思決定を行う際に有用なエビデンスの土台を確立する一方で、補完療法の研究は、疼痛メカニズムの基本的な知識不足を補うことにも役立っています。

慢性疼痛に対する補完療法をお考えの方へ

  • 慢性疼痛または他の健康問題に対する標準ケアの代わりとして、あるいは医療機関の受診を先延ばしにするために、効果が証明されていない療法や関連製品を用いてはいけません。
  • 利用を検討している療法や関連製品について、特に、安全性と効果に関するエビデンスについて、知識を身に付けてください。
  • 慢性疼痛について、受診している医療スタッフに相談しましょう。利用を検討している療法や関連製品について、かかりつけの医療スタッフに相談しましょう。質問があれば何でもお尋ねください。安全性や有用性について、医療スタッフがアドバイスしてくれます。
  • 脊椎マニピュレーションやマッサージ療法、鍼治療などの施術者による補完療法を検討している場合、信頼できる情報源(かかりつけの医療スタッフや最寄りの病院など)から施術者を紹介してもらいましょう。あなたが検討している療法の施術者のトレーニング歴や経験について調べましょう。あなたの痛みと同様の状態に対応した経験が施術者にあるかどうか尋ねてみましょう。
  • サプリメントの利用を検討している場合、使い方を誤ると健康に害を及ぼすこと、服用中の処方薬や市販薬あるいは他のサプリメントと相互作用する可能性があることを忘れないでください。かかりつけの医療スタッフがあなたにアドバイスしてくれます。妊娠中、授乳中、あるいは子供にサプリメントを与えることを検討している人は、医療スタッフに相談しましょう。さらに詳しくお知りになりたい方は、NCCIHのウェブサイトのサプリメントのページをご覧ください。

1特定の慢性疾患のいくつかは、痛みを生じたり、併発したりすることがあります。このような問題を複数抱えている人もいます。これらの症状には、慢性疲労症候群、子宮内膜症、線維筋痛、間質性膀胱炎(疼痛を伴う膀胱症候群)、過敏性腸症候群、顎関節機能不全、外陰部痛(慢性の外陰の疼痛)などがあります。これらの疾患が共通の原因によるものであるかどうかは知られていません。

関連トピック

消費者向け情報

医療関係者向け情報

関連するファクトシート

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-36151-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov

■ 国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS; National Institute of Neurological Disorders and Stroke)

NINDSは、脳や神経系がどのように機能するかについての研究や神経疾患の治療に関する研究を行っています。

米国内の無料通話:1-800-352-9424
ウェブサイト:https://www.ninds.nih.gov(英語サイト)

■ 国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所 (NIAMS; National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases)

NIAMSの使命は、関節炎、骨格筋、皮膚疾患の原因、治療、および予防に関する研究の支援、この研究を行うための基礎および臨床科学者の訓練、これらの疾患の研究の進捗に関する情報の普及です。

米国内の無料通話:1-877-22-NIAMS
ウェブサイト:https://www.niams.nih.gov(英語サイト)

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(PubMedで補完療法の情報を探す)(英語サイト)、Complementary Health Approaches for Chronic Pain—Randomized Controlled Trials をご覧ください。

■ Cochrane Database of Systematic Reviews(システマティックレビューのコクランデータベース)

システマティックレビューのコクランデータベースは、国際的非営利組織であるコクラン・ライブラリー により作成されたエビデンスに基づくレビューのコレクションです。これらのレビューは、医療介入に関する臨床試験の結果を要約しています。要約は無料です。レビュー全文は購読のみです。

ウェブサイト:https://www.cochranelibrary.com(英語サイト)

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

米国国立衛生研究所(NIH)が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:https://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるリソースを提供するため、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)が国立衛生研究所および他の政府機関と健康関連団体からの信頼できる情報をまとめています。

疼痛についての情報(英語サイト)
ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

参考文献

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謝辞

NCCIHは、この出版物の2018年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。 David Shurtleff, Ph.D., NCCIH

慢性疼痛に対する心身療法:概要
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年9月

今回のダイジェスト版では、線維筋痛症、頭痛腰痛、頚部痛、変形性関節症関節リウマチなどの慢性疼痛に対する心身療法に関する現在の科学的研究をまとめたものです。

これまでの科学的研究は、一部の心身療法が、日々変化する慢性疼痛に対処するのを助けることにわずかな効果がある可能性を示唆しています。しかし、場合によっては、科学的根拠(エビデンス)が少なすぎることから、それらの療法が有用であるかを明確に示すことができません。

慢性疼痛に対する心身療法:科学的根拠
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年9月

線維筋痛症

最近のシステマティックレビューおよびランダム化臨床試験では、太極拳、気功、ヨガ、鍼治療、マインドフルネス、バイオフィードバック(行動療法)などの実践が線維筋痛症の症状緩和に有用である可能性を示す有望な科学的根拠(エビデンス)が得られています。現時点での診断基準が米国リウマチ学会より公表されています。治療は、医薬品治療(処方薬、鎮痛薬、NSAID[非ステロイド性抗炎症薬])および運動、筋肉強化トレーニング、認知行動療法、動作・身体意識プラクティス(movement/body awareness practices)、マッサージ、鍼治療、温泉療法などの非薬物介入などの個別化治療を行います。

研究でわかったことは?

  • 2017年、欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)は、補完療法などの非薬物療法を評価した改訂版線維筋痛症管理の勧告を公表しました。この勧告度は、「(患者の価値観や好みを考慮した)望ましい影響と望ましくない影響とのバランス、有効性への信頼度、文献に基づいている」ということです。強い勧告は、エビデンスが示されていれば、すべてまたはほとんどすべての人がその療法を勧告するまたは勧告しないとする一方、弱い勧告は、ほとんどの人が勧告するが、少数派における大多数は勧告しない、ということを表します。
  • 鍼治療、瞑想的な動きを伴う実践法(太極拳、気功、ヨガなど)、マインドフルネス・ストレス軽減法の評価に基づくと、それぞれの療法の評価は、弱い勧告でした。
  • バイオフィードバック、水治療法、マッサージ療法の評価に基づくと、それぞれの療法の評価は、弱い勧告でした。
  • カイロプラクティックの評価に基づくと、カイロプラクティックの評価は、強い勧告でした。
  • 線維筋痛症の成人(226例)を対象とした2018年のランダム化比較試験では、高度で頻回に行う太極拳(週に2回)は、指導付きのエアロビクスと比較して、24週間の時点で症状の程度を緩和したことが認められました。また、患者はエアロビクスよりも、太極拳教室により参加する傾向にありました。
  • 2015年のコクランレビューでは、ほとんどが女性を占める線維筋痛症の参加者(4,234例)を対象とした61件の試験を評価し、エビデンスが低いまたは非常に低いため、バイオフィードバック、マインドフルネス、動作療法、リラクゼーション法の有効性は不明であると結論付けました。
  • 2013年のコクランレビューでは、参加者(計395例)を対象とした9件の研究を評価し、鍼治療が無治療または標準療法と比較して、線維筋痛症の人の痛みやこわばりを改善する低い~中等度のエビデンスを認めました。また、痛みまたは疲労の軽減、または睡眠または全般の健康的な生活改善において、鍼治療の効果は偽鍼治療と差異がないという中等度のエビデンスも認められました。
  • 2018年の医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)のシステマティックレビューでは、慢性疼痛の非侵襲的・非薬物治療を評価し、運動、認知行動療法、筋膜リリース、太極拳、気功、鍼治療、集学的リハビリテーション(multidisciplinary rehabilitation:MDR)は、少なくとも1カ月間、機能回復や疼痛を改善すると結論付けました。

安全性

  • 鍼治療は、滅菌鍼を使用し有資格で経験のある鍼師が施術をすれば、安全だと考えられます。合併症の報告はほとんどありません。鍼治療関連の重篤な有害事象はまれですが、感染症、臓器損傷などがあります。
  • 太極拳は比較的安全ですが、急性の腰痛、膝の痛み、骨折、捻挫、いつのまにか骨折を予防するために、太極拳の特定の動きを変更したり避けたりすることが必要な人もいます。

頭痛

頭痛に対するリラクゼーション法、バイオフィードバック、鍼治療、脊椎マニピュレーションなどの心身療法の研究結果では、これらの方法が頭痛を緩和し片頭痛に有用である可能性を示唆しています。

研究でわかったことは?

  • 2017年のレビューは、頭痛に対する補完統合療法を評価した5件のメタアナリシス、7件のシステマティックレビュー、34件のランダム化比較試験に基づき、鍼治療、マッサージ、ヨガ、バイオフィードバック、瞑想が片頭痛および緊張型頭痛に対し肯定的な効果が得られたと結論付けました。そのレビューではまた、脊椎マニピュレーション、カイロプラクティック、水治療法が片頭痛に利益があると結論付けています。
  • 瞑想・催眠療法・リラクゼーション法2019年のヨーロッパの研究では、の一次性頭痛の小児(9~18歳、131例)を対象とし、超越瞑想または催眠療法の有効性を調査し、漸進的筋弛緩法(アクティブ対照群)と比較しました。研究では、それぞれ3カ月の時点、9カ月の時点で臨床的に意義のある頭痛の減少(≥ 50%)が41%および47%の小児に認められましたが、両群の有意差はありませんでした。
  • バイオフィードバック(行動療法)緊張型頭痛に対するバイオフィードバックの有効性は、数多くの研究で評価され、肯定的な結果が得られています。しかし、11件のランダム化比較試験を評価した2009年のシステマティックレビューでは、プラセボ、予防薬、他の治療法と比較し、バイオフィードバックの有効性に相反するエビデンスが認められたと結論付けました。数件の研究では、バイオフィードバックが片頭痛の頻度を減少したことが示されました。2007年の55件の研究を評価したメタアナリシスでは、バイオフィードバック介入に軽微な効果が認められ、その効果は平均17カ月の追跡期間にみられました。しかし2008年のレビューでは、バイオフィードバックは片頭痛に利益的な臨床的有効性を認めたものの、その有効性は特異的または非特異的であるかは不明でした。2016年のメタアナリシスでは、小児(計137人)を対象とした5件の研究を評価し、バイオフィードバックは小児の片頭痛に効果的な介入であるようでしたが、レビューアの評価における信頼性を向上するためにさらに研究が必要です。
  • リラクゼーション法2017年のレビューでは、認知行動療法、バイオフィードバック、リラクゼーション法が慢性的片頭痛の症状を有意に改善することが認められました。緊張型頭痛に対するリラクゼーション法の有効性を支持するエビデンスは限定的です。2009年の8件の研究を評価したシステマティックレビューでは、リラクゼーション法は待機リスト群と比較して、一貫性のない結果が得られました。レビュー著者らは、現時点でのエビデンスに基づくと、リラクゼーション法が無治療またはプラセボよりも優れているとは言えないと結論付けました。53件の研究を評価した2008年のメタアナリシスでは、リラクゼーション法がバイオフィードバックよりも効果が弱いことが示唆されました。米国頭痛コンソーシアム・ガイドライン(85KB PDF)の片頭痛管理には、39件の比較試験のエビデンスに基づく行動療法および理学療法の勧告が記されています。そのガイドラインは、リラクゼーション法、リラクゼーション法を併用した温度バイオフィードバック、EMGバイオフィードバック、認知行動療法は、片頭痛予防の治療選択肢となる可能性が考えられ、片頭痛緩和の他の臨床的改善を達成するために予防薬との併用も考えられることを提言しています。
  • 太極拳。太極拳が緊張型頭痛に有効かどうかの意義ある結論を導くにはデータが非常に限られています。1件の小規模試験(47例)では、15週間の太極拳のプログラムは、待機リスト対照群と比較して、緊張型頭痛の影響を軽減する有効性を示唆しています。
  • 鍼治療。頭痛に対する鍼治療の有効性を評価した研究の結果を統合したところ、鍼治療の利益的な臨床効果が示されましたが、そのような効果は特異的または非特異的であるかは決定されず、積極的に調査を行っているところです。2012年の個別参加者のデータを用いたメタアナリシスでは、頭痛などの慢性疼痛の症状に対し、鍼治療が合理的な紹介先となる可能性があると結論付けました。
  • マッサージ療法2件の小規模試験による限定的なエビデンスにより、マッサージ療法が片頭痛に役立つ可能性があることが示唆されていますが、明確な結論を引き出すことはできていません。これら2件の試験に関する2011年のシステマティックレビューでは、片頭痛の予防的管理に対し、マッサージ療法はプロプラノロールおよびトピラマートと同等に有効であると結論づけられました。
  • 脊椎マニピュレーション頭痛に対する脊椎マニピュレーションに関する数多くのシステマティックレビューの知見には、矛盾がみられます。2011年のレビューでは、頭痛に対する脊椎マニピュレーションの利益の可能性を定義するには、複数の質の高いシステマティックレビューが必要であるとしています。

安全性

  • リラクゼーション法は、一般的に健康な人には安全であると考えられますが、特定のリラクゼーション法は、てんかんの人、特定の精神障害のある人、虐待または精神的苦痛の経験がある人には症状を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があるという報告がまれにあります。
  • 鍼治療は、滅菌鍼を使用し有資格で経験のある鍼師が施術をすれば、安全だと考えられます。いくつかの合併症が報告されています。鍼治療関連の重篤な有害事象はまれですが、感染症、臓器損傷などがあります。
  • 太極拳は比較的安全ですが、急性の腰痛、膝の痛み、骨折、捻挫、いつのまにか骨折を予防するために、太極拳の特定の動きを変更したり避けたりすることが必要な人もいます。
  • 脊椎マニピュレーションの副作用は、一時的な頭痛、倦怠感、治療部位の不快感などがあります。頸部を中心に行うある種の脊椎マニピュレーションは、頸部動脈解離(CAD)と関連があります。このような解離はまれですが、脳卒中を引き起こす可能性があります。スポーツ、むち打ち、激しい嘔吐や咳などの首の急な動きでも、解離のリスクが増加する可能性があります。現時点でのエビデンスにおいて、脊椎マニピュレーションを受けた人のCADの発生率は低いですが、患者はこのリスクについて知っておく必要があります。

腰痛

慢性腰痛のある患者に向けた、米国内科学会(American College of Physicians:ACP)の最近のエビデンスに基づいた臨床診療ガイドラインでは、中等度のエビデンスに基づき、臨床医と患者は運動、集学的リハビリテーション、鍼治療、マインドフルネス・ストレス軽減法といった非薬物療法をまず始めに選択することを強く勧告しています。そのガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づいて、太極拳、ヨガ、モーターコントロール・エクササイズ、漸進的弛緩法、バイオフィードバック、低出力レーザー療法、オペラント療法、認知行動療法、脊椎マニピュレーションを強く勧告しています。

研究でわかったことは?

  • 脊椎マニピュレーションACPが公表した2017年の臨床診療ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき、慢性腰痛の患者の治療として脊椎マニピュレーションをまず始めに選択することを強く勧告しています。2017年の臨床診療ガイドラインを支持するシステマティックレビューでは、6,000例を上回る人を対象とした32件のランダム化比較試験を評価し、痛みに対する軽微で短期の有効性を認めました。2010年の医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)のシステマティックレビューでは、脊椎マニピュレーションはプラセボよりも有効であり、腰痛を緩和する医薬品と同等の効果があると結論付けました。脊椎マニピュレーションをマッサージまたは理学療法と比較した場合、一貫した差は認められませんでした。26件の臨床試験を評価した2011年のコクランレビューでは、慢性腰痛に対する脊椎マニピュレーションなどの異なる治療法の有効性を評価しました。著者らは、痛みの軽減および機能の改善に対し、脊椎マニピュレーションが他の介入と同等の効果があると結論付けました。ヨーロッパで行われた2018年の実用的なランダム化比較試験では、再発し長引く痛みのある参加者(328例)を対象とし、脊椎調整によるメンテナンスケアは、対処療法よりも煩わしい非特異的腰痛の人の52週間にわたる痛みの総日数を減少するのに有効でしたが、より多くの治療を行ったことが示されました。
  • 鍼治療ACPが公表した2017年の臨床診療ガイドラインでは、中等度の質のエビデンスに基づき、慢性腰痛の患者の初期治療に、鍼治療を強く勧告しています。2017年の臨床診療ガイドラインを支持するシステマティックレビューでは、参加者(5,931例)を対象とした32件のランダム化比較試験を評価し、無鍼治療と比較して、鍼治療が痛みの程度の緩和および機能を改善することが認められました。医療研究・品質調査機構(AHRQ)の2018年のレビューでは、療法が及ぼす、少なくとも1カ月後の慢性腰痛の影響について調査しました。鍼治療は、偽鍼治療または標準ケアなどの対照群と比較して、疼痛と機能に対し1~6カ月の時点でわずかに優れた効果があることが認められました。1件の研究でも、12カ月を上回り優れた緩和が認められました。
  • マッサージ療法2015年のコクランレビューでは、マッサージ療法によって腰痛が短期的に緩和する可能性があるというエビデンスが認められましたが、そのエビデンスは質の高いものではありませんでした。腰痛に対するマッサージ療法の長期的な効果は確立されていません。
  • ヨガ:ACPが公表した2017年の臨床診療ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき、慢性腰痛の患者の初期治療としてヨガを強く勧告しています。2017年の臨床診療ガイドラインを支持するシステマティックレビューでは、14件のランダム化比較試験を評価し、ヨガが疼痛スコアを軽減しましたが、その効果はわずかで必ずしも統計的に有意であるとは言えませんでした。2017年のコクランレビューでは、参加者(1,080例)を対象とした12件の試験を評価し、低い~中等度の確実性のエビデンスに基づき、非運動対照群と比較して、ヨガが3および6カ月の時点において腰の機能をわずか~中等度改善することが認められました。ヨガは、3および6カ月の時点の痛みにわずかですがより有効である可能性が示されましたが、効果サイズが予め定義された臨床的重要事項において最低値を満たすものではありませんでした。
  • 2018年のAHRQのシステマティックレビューでは、慢性疼痛に対する非侵襲的・非薬物療法を評価し、運動、心理療法(主にCBT)、脊椎マニピュレーション、低出力レーザー療法、マッサージ、マインドフルネス・ストレス低減法、ヨガ、鍼治療、MDRが少なくとも1カ月間機能や痛みを改善すると結論付けられました。

安全性

  • 脊椎マニピュレーションの副作用は、一過性の頭痛、倦怠感、治療部位の不快感などがあります。頚部を中心に行うある種の脊椎マニピュレーションは、頸部動脈解離(cervical artery dissections:CAD)と関連があります。こういった解離はまれですが、脳卒中を引き起こす可能性があります。スポーツ、むち打ち、激しい嘔吐や咳などの首の急な動きでも、解離のリスクが増加する可能性があります。現在のエビデンスにおいて、脊椎マニピュレーションを受けた人のCADの発生率は低いですが、患者はこのリスクについて知っておく必要があります。
  • 椎間板ヘルニアによる痛みがある人は、腰部の施術により非常に低い確率でヘルニアの患部が悪化することがあるようです。脊椎マニピュレーションが上部(頚部)脊椎に及ぼすリスクは、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)のカイロプラクティックのファクトシートをご覧ください。
  • 鍼治療は、滅菌鍼を使用し有資格で経験のある鍼師が施術をすれば、安全だと考えられます。鍼治療関連の重篤な有害事象はまれですが、感染症、臓器損傷などがあります。
  • マッサージ療法は、熟練の施術者が行う場合、ほとんどリスクがないようです。しかし、マッサージ療法士は特定の症状には注意する必要があります。妊婦はマッサージ療法を避けたほうが良い場合もあります。出血性疾患の人、血小板減少症の人、抗凝固薬を服用している人などは強く深い圧のマッサージは避けましょう。マッサージは、傷などの皮膚が弱っている箇所は避けるべきです。
  • 全般に臨床試験データは、このような研究の中で行われているヨガが、熟練の講師の指導下で実践されており、軽度の副作用の割合が低いことを示唆しています。しかし、大衆紙でヨガによる傷害(重篤な場合もある)が報告されています。健康に問題がある人は、副作用を予防するために、ポーズを変更または回避する助言ができる経験のある講師と一緒に行うとよいでしょう。

頸部痛

入手可能なエビデンスでは、頸部痛の鍼治療は無治療よりもよい鎮痛効果がある可能性を示しています。脊椎マニピュレーションは、頸部痛を緩和することが一部のエビデンスが示されていますが、ほとんどの研究は質の低い研究です。

研究でわかったことは?

  • 手技療法慢性疼痛に対する手技療法(主にマニピュレーションまたはモビライゼーション)および鍼治療に関するレビューでは、利益の可能性についてのさまざまなエビデンスが認められ、さらに研究を行う必要性が強調されました。2015年のコクランレビューでは、参加者(計2,920例)を対象とした51件のランダム化比較試験を評価し、対照と比較して、頸部痛、機能、生活の質において胸部マニピュレーションの使用を支持するエビデンスがいくつか示されました。しかし、頸部マニピュレーションおよびモビライゼーションの結果はほとんどなく、さまざまでした。レビューアは、これらの知見が直後、短期、中期の追跡期間において、マニピュレーションおよびモビライゼーションがそれぞれのアウトカムに関して同様の結果を示したことを示唆しています。頸部マニピュレーションの複数回の施術により、直後、中期、長期の追跡期間において、痛みの緩和および機能の改善が得られました。マニピュレーションは、まれではあるものの重篤な有害事象のリスクがあるため、モビライゼーションのより厳格な研究、およびマニピュレーションとモビライゼーション対他の治療との比較を行う厳格な研究が必要です。2007年のレビューでは、臨床ガイドラインは頸部痛の手技療法の使用を勧告することが多いのですが、手技療法の立ち位置に関する全般の共通認識はありません。
  • マッサージ療法2016年の4件のランダム化比較試験のレビューでは、マッサージ療法によって頸部痛に対し短期的な効果が得られる可能性があることが認められました。しかし、2013年のコクランレビューでは、頸部痛に対するマッサージ療法を調査した15件の試験を評価し、「非常に低いエビデンス」に基づいて、特定のマッサージ療法は痛みの軽減および機能の改善に有効である可能性が示されました。レビュー著者らは、頸部痛に対するマッサージ療法の有効性が不明であるため、現時点ではマッサージ療法の推奨ができないと結論付けました。
  • 2018年のAHRQのシステマティックレビューでは、慢性疼痛に対する非侵襲的・非薬物療法を評価し、運動、低出力レーザー、アレクサンダー・テクニック、鍼治療が少なくとも1カ月間、機能改善や疼痛スコアの改善をすると結論付けました。

安全性

  • 脊椎マニピュレーションの副作用は、一時的な頭痛、倦怠感、治療部位の不快感などがあります。頸部を中心に行うある種の脊椎マニピュレーションは、頸部動脈解離(cervical artery dissections:CAD)と関連があります。こういった解離はまれですが、脳卒中を引き起こす可能性があります。スポーツ、むち打ち、激しい嘔吐や咳などの首の急な動きでも、解離のリスクが増加する可能性があります。現在のエビデンスにおいて、脊椎マニピュレーションを受けた人のCADの発生率は低いですが、患者はこのリスクについて知っておく必要があります。
  • 鍼治療は、滅菌鍼を使用し有資格で経験のある鍼師が施術をすれば、安全だと考えられます。合併症の報告はほとんどありません。鍼治療関連の重篤な有害事象はまれですが、感染症、臓器損傷などがあります。

変形性関節症

米国リウマチ学会が公表した臨床診療ガイドラインでは、膝、股関節、手の変形性関節症(osteoarthritis :OA)の治療に、エアロビクスや筋力トレーニング、(体重超過の場合)減量、さまざまな薬物療法または非薬物療法を勧告しています。そのガイドラインでは、変形性膝関節症の管理に太極拳、自己管理プログラム、歩行補助器具などの非薬物的方法を条件付きで勧告しています。鍼治療は、中等度から重度の慢性膝痛患者で人工膝関節全置換治療の候補者だが、その治療を受けることができない、または受けようとしない患者にも条件付きで勧告しています。

研究でわかったことは?

  • 鍼治療10件のランダム化比較試験を評価した2016年のメタアナリシスでは、鍼治療が短期および長期の身体機能を改善する可能性を示しましたが、関節炎による慢性膝痛の人の痛みの軽減は短期間のみのようでした。2012年のメタアナリシスでは、鍼治療がOA関連痛に対し有用で、合理的な紹介先となる可能性があると結論付けました。メタアナリシスの著者は、真(実際)の鍼治療と偽鍼治療との有意差により、鍼治療はプラセボよりも優れていることが示されましたが、この有意差は比較的軽微でした。知見は、鍼治療による特定の効果以外の要因が、治療効果によるものであることを示唆しています。2008年のシステマティックレビューでは、変形性膝関節症の参加者(1,456例)の鍼治療の効果を調査した10件のランダム化比較試験を評価し、これらの研究が変形性膝関節症関連の痛みおよび身体機能の治療に鍼治療が有効であるエビデンスが得られたと結論付けました。2010年のシステマティックレビューでは、参加者(3,498例)を対象とした末梢のOAに対する鍼治療の効果を調査し、偽鍼治療と比較して、鍼治療はOA痛を短期間統計的有意に改善したことが認められたものの、利益はわずかで臨床的な意義はありませんでした。一方、鍼治療は、待機リスト対照と比較して、末梢のOAの人に対し、統計学的有意で臨床的に意義のある利益を示しました。
  • マッサージ療法関節炎患者を対象とした7件のランダム化比較試験(参加者352例)に関する2017年のシステマティックレビューでは、マッサージ療法は疼痛の緩和および機能的アウトカムの改善に対し、非アクティブな治療よりも優れているという質の低い~中等度のエビデンスが認められました。2件のランダム化比較試験に関する2013年のレビューでは、疼痛の緩和および自己報告による身体機能の改善などの、前向きな短期的(6カ月未満)効果が認められました。8週間にわたって標準的なスウェーデン式マッサージ療法を受けた成人の変形性関節炎症患者を対象とした2006年のランダム化比較試験(参加者68例)の結果によって、疼痛と身体機能に対する統計的に有意な改善が示されました。
  • 太極拳2016年の52週ランダム化単盲検比較有効性研究では、参加者(204例)を登録し、太極拳は変形性膝関節症に対し、理学療法の標準コースと同様の有益な効果が認められました。2013年のメタアナリシスでは、参加者(348例)を対象とした7件のランダム化比較試験を評価し、12週間の太極拳はOA参加者の症状改善および身体機能改善に利益があることが得られましたが、OA症状に対する太極拳のいかなる長期的な利益に対しても調査されていません。2013年のシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、参加者(252例)を対象とした5件のランダム化比較試験を評価し、太極拳は変形性膝関節症の参加者の疼痛、身体機能、こわばりを短期間改善する中等度のエビデンスが認められました。2009年の前向き単盲検ランダム化比較試験では、参加者(40例)を登録し、太極拳が疼痛、身体機能、うつ、自己効力感、生活の質の有意な改善が認められました。
  • 2018年のAHRQのシステマティックレビューでは、慢性疼痛に対する非侵襲的・非薬物療法を評価し、変形性膝関節症に対し運動および超音波を推奨しています。変形性股関節症に対する運動、手技療法は機能や疼痛のスコアを少なくとも1カ月間改善しました。

安全性

  • 鍼治療に関連する合併症はほとんどありませんが、軽度のアザまたは出血などの有害作用が起こる可能性があり、滅菌されていない鍼、または経験のない施術者の未熟な手技により感染症が起こる可能性があります。
  • マッサージ療法は、訓練を受けたマッサージ療法士が適切に行えば、リスクはほとんどないようです。
  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。

関節リウマチ

臨床試験結果では、心身療法(リラクゼーション法、マインドフルネス瞑想、太極拳、ヨガなど)は従来の治療計画に加えて利益的な可能性がありますが、これらの実践法は痛みの緩和よりも他の側面を改善する可能性が示されています。

研究でわかったことは?

  • 鍼治療鍼治療はさまざまな痛みに対し研究がされていますが、関節リウマチに関する鍼治療の研究はほとんどありません。数件の研究を調査した2017年のレビューでは、関節リウマチの治療に鍼治療の肯定的な役割が示されましたが、他の研究では肯定的なアウトカムは認められませんでした。2010年のコクランレビューでは、2件の研究(1件はRAに対する鍼治療、もう1件はRAに対する電気鍼治療)を評価し、ESR、CRP、疼痛、患者の全般的な評価、炎症のある関節数、疼痛のある関節数、全体的な健康、疾患活動性、鎮痛薬使用の低下に対する鍼治療の効果は認められませんでした。電気鍼治療の研究の知見は、電気鍼治療が症状のある膝痛を軽減する可能性を示したものの、少数のサンプル・サイズなど試験の質が低く、勧告から除外されました。
  • マインドフルネス、バイオフィードバック、リラクゼーション法2017年のレビューでは、3件のランダム化比較試験を評価し、免疫機能改善に対するマインドフルネスの実践に関するエビデンスは増えてきているものの、関節リウマチに対する長期間の効果を決定する大規模で質の高い研究が十分に行われていないことが示されました。2010年のシステマティックレビューでは、参加者(2,021例)を対象とした31件の研究を調査し、RA関連の心身の症状に対するマインドフルネス瞑想、バイオフィードバック、リラクゼーション法などの心身療法の利益を評価しました。これらの手技が有用である可能性のエビデンスがいくつかありましたが、総じて研究結果はさまざまでした。
  • 太極拳小規模研究数件が、RAに対する太極拳を調査しています。2007年のシステマティックレビューでは、太極拳が関節痛、炎症、疼痛に有効であることは示されていませんが、気分、生活の質、全般の身体機能を改善することが報告されています。15例を対象とした2010年の小規模研究では、太極拳が治療後および12週間後の追跡調査の時点で、下肢筋肉の機能を改善したことが認められましたが、疾患活動性または疼痛を軽減したエビデンスはありませんでした。
  • ヨガ:2018年のメタアナリシスでは、変形性膝関節症および関節リウマチの人参加者(計1,557例)を対象とした13件の試験を評価し、定期的なヨガの実践は、関節炎の患者の膝関節炎の症状を緩和し、身体機能および健康的な生活を改善したことが認められました。2件の研究を評価した2017年のレビューでは、痛みに対するいくつかの利益的な効果が示されましたが、両研究に高いバイアスのリスクが認められたため、レビューアは関節リウマチに対するヨガの推奨は弱いと評価しました。ヨガは、関節炎に有益な運動の要素がいくつか入っており、その中には筋力と柔軟性の向上に役立つかつどう動作も含まれています。2013年のシステマティックレビューでは、参加者(計559例)を対象とした8件のランダム化比較試験を評価し、RA関連の痛みに対するヨガに非常に低いエビデンスを認めました。

安全性

  • 鍼治療は、滅菌鍼を使用し有資格で経験のある鍼師が施術をすれば、安全だと考えられます。合併症の報告はほとんどありません。鍼治療関連の重篤な有害事象はまれですが、感染症、臓器損傷などがあります。
  • ほとんどの研究は、太極拳がRAの人に対し比較的安全であるとしていますが、中には筋肉痛を訴える人もいます。
  • 可動域が狭いまたは脊椎に問題のあるRAの人は、ヨガを行う際に注意が必要です。RAの人は、関節への負担を最小限にし、バランスを保つために柱を使うなど、特定のヨガの姿勢を修正する手助けが必要です。

参考文献

線維筋痛症

頭痛

腰痛

頸部痛

変形性関節症

関節リウマチ

NCCIHクリニカルダイジェストは、国立補完統合衛生センター、NIH、DHHSのサービスです。NCCIHクリニカルダイジェストは、月刊の電子ニュースレターで、科学文献検索、NCCIHが出資する試験の要約、患者のためのファクトシートなど、補完療法に関するエビデンスに基づいた情報を提供します。

国立補完統合衛生センターは、厳密な科学に照らし補完療法および関連製品について調査すること、補完療法の研究者をトレーニングすること、一般市民や専門家に信頼できる情報を発信することに力を注いでいます。詳細については、NCCIH情報センター(1-888-644-6226)に無料でお電話いただくか、NCCIHのWebサイト(nccih.nih.gov)をご覧ください。米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、米国の医学研究に関する連邦政府の中心である米国国立衛生研究所の27の研究所および研究センターのうちの1つです。

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コンテンツはパブリックドメインであり、著作権(©)で保護されていることが表示されている場合を除き、転載可能です。情報源として、国立補完統合衛生センターを表示してください。すべての著作物は、それぞれの所有者の財産であり、許可なしに転載することはできません。

慢性疼痛に対する補完療法:概要
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2016年9月

このダイジェスト記事では、線維筋痛症頭痛過敏性腸症候群腰痛、頸部痛、変形性関節症関節リウマチなどの慢性疼痛に対して人々に最もよく使用されている補完療法についての、現在の科学的根拠(エビデンス)をまとめています。

現時点までのエビデンスでは、一部の補完療法は、患者が慢性疼痛の症状の日々変動に対処するのに、わずかに有益な効果をもたらす可能性が示唆されています。補完療法のなかには、その施術・療法と疼痛の状態次第ではわずかにベネフィット(有益性)を示すものもありますが、ほとんどの場合、補完療法が有用かどうかをはっきりと示すエビデンスは非常にわずかしかありません。

科学的根拠:
慢性疼痛に対する補完療法(英語サイト)[eJIMサイト内日本語訳]

疼痛の状態および補完療法についての現時点でのエビデンス

線維筋痛症

一般的に、線維筋痛症に対する補完療法についての研究は、予備的な段階にあると考えなくてはなりません。しかし、近年のシステマティックレビューとランダム化比較試験では、太極拳、気功ヨガマッサージ療法鍼治療、温泉療法などの治療法は、線維筋痛症の一部の症状を緩和するのに有用な可能性があるという有望なエビデンスが得られています。

頭痛

リボフラビン、コエンザイムQ10ハーブであるフキやナツシロギクなどのいくつかのサプリメントは、片頭痛について研究されており、予備的な研究ではいくつかの有望な結果が得られています。

頭痛に対する、リラクゼーション訓練、バイオフィードバック(行動療法)、鍼治療、脊椎マニピュレーションなどの心身療法についての研究結果では、これらの施術が頭痛を緩和するのに有用な可能性があり、片頭痛にも有用である可能性があることが示唆されています。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群に有用であると決定的に示された補完療法はありませんが、催眠療法とプロバイオティクスについての一部の研究は有望なものでした。

腰痛

米国医師会と米国疼痛学会(American College of Physicians and the American Pain Society:ACP/APS)によるエビデンスに基づく診療ガイドラインでは、認知行動療法、運動、脊椎マニピュレーション、学際的リハビリテーションはすべて、慢性または亜急性(4週間未満の期間)の腰痛に中程度の有効であるという良好なエビデンスが見出されました。

ガイドラインでは、鍼治療、マッサージ、ヨガ(ヴィニヨガ)、機能回復も、慢性腰痛に有効であることを公正なエビデンスとして示している。

*ガイドラインでは、より保存的なセルフケアでは腰痛が改善されない患者を治療する場合、これらの非薬物療法を適切な選択肢として検討することを施術者に勧告しています。

頸部痛

入手可能なエビデンスでは、頚部痛の鍼治療は無治療よりもよい鎮痛効果がある可能性を示しています。脊椎マニピュレーションが頸部痛を緩和するのに有用な可能性があるという一部のエビデンスがありますが、研究のほとんどは質の低いものでした。

変形性関節症(Osteoarthritis:OA)

グルコサミンとコンドロイチン硫酸を単独または併用して摂取することについてのエビデンスの大部分は、疼痛や機能に対する意味のある効果がほとんどないか全くないことを示しています。2012年に米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)から、および2010年に米国整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons:AAOS)から出版されたそれぞれの診療ガイドラインでは、OAに対してグルコサミンやコンドロイチンを使用しないように勧告しています。2014年に公開された世界変形性関節症研究会議(Osteoarthritis Research Society International:OARSI)からの勧告では、現在のエビデンスでは、膝のOAの疾患そのものを改善する効果を得るためにグルコサミンやコンドロイチンを使用することは支持されていないが、グルコサミンまたはコンドロイチンがOAの症状を緩和する可能性があるかどうかについては疑問が残されていると結論づけています。

2012年に、米国リウマチ学会は、手・股・膝関節のOAに対する薬物および非薬物療法の使用についての勧告を出しました。ガイドラインでは、膝のOAを管理するために、自己管理プログラムや歩行補助器具のような他の非薬物療法とともに太極拳を行うことを、条件付きで勧告しています。鍼治療も、慢性の中等度~重度の膝痛があり、人工膝関節全置換が検討されるが手術を受けられないか受けたくない患者に対して、条件付きで勧告されています。

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)

魚油に存在するオメガ-3脂肪酸は、RAの症状を緩和するのにわずかに有益な可能性があります。しかし、オメガ-3は、進行中の関節の損傷を予防せず、疾患の経過も改善しません。RAに対して明らかに有益であると示されたサプリメントは他にはありませんが、特に魚油やガンマ-リノレン酸、ハーブであるライコウトウについて、予備的なエビデンスが存在します。ライコウトウについては、深刻な安全性の懸念が指摘されています。

臨床試験の結果では、リラクゼーション、マインドフルネス瞑想、太極拳、ヨガなどの心身療法を従来の治療計画に加えることが有益である可能性が示唆されています。しかし一部の研究では、これらの補完療法は、痛みの緩和よりも、患者の健康を他の面から改善することに役立つことが多い可能性があることが指摘されています。

科学文献

患者のための情報

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。
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監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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