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海外の情報

太極拳と気功
Tai Chi and Qi Gong

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終改訂年月(翻訳時):2017年5月

はじめに

太極拳と気功は非常に古くからある心身に関連した運動です。精神を集中させ、呼吸やリラクゼーションをしながら特別な姿勢をとったりゆっくりとした動作をしたりします。気功とは違って太極拳では素早く動作をすることで戦いや護身の型になることがあります。

肝心なことは?

太極拳と気功について

さまざまな健康状態の人における太極拳と気功の効果を評価した臨床試験が数件あります。

太極拳と気功の効果について

太極拳は、高齢者やパーキンソン病患者におけるバランスや安定性の改善、背部痛や変形性膝関節症による痛みの軽減、心疾患、癌およびその他の慢性疾患患者の生活の質(QOL)の改善をもたらす可能性があります。太極拳と気功は線維筋痛症の疼痛を緩和し、全般的QOLを改善する場合があります。気功は慢性頸部痛を軽減する可能性がありますが、研究結果はさまざまです。太極拳はまた高齢者の論理的思考能力を改善する可能性があります。

太極拳と気功の安全性について

太極拳と気功は安全な運動のようですが、運動プログラムを始める前にかかりつけの医療スタッフに相談することはよいことです。

太極拳、気功とは?

太極拳と気功は非常に古くからある心身療法です。精神を集中させ、呼吸やリラクゼーションをしながら特別な姿勢をとったりゆっくりとした動作をしたりします。
その動作は歩いたり、立ったり、座ったりしている時に取り入れて、練習することができます。
気功とは違って太極拳では素早く動作をすることで戦いや護身の型になることがあります。

太極拳と気功の効果の科学的根拠

太極拳に関する研究では、高齢者やパーキンソン病患者におけるバランスや安定性の改善、変形性膝関節症の疼痛の軽減、線維筋痛症や背部痛の症状軽減、また心疾患や癌患者のQOLや気分の改善効果が示唆されています。
気功の効果に関する少数の研究からは、気功が慢性頸部痛(結果はさまざまですが)や線維筋痛症による疼痛を軽減する可能性が示唆されています。気功はまた全般的なQOLを改善するのに効果がある場合があります。

太極拳と気功はまた不安感の軽減などの心理的な有益性もある場合があります。
しかし不安感に関する研究の実施方法の相違により、明確な結論を導き出すのは困難です。

転倒とバランス

太極拳などの運動プログラムは、高齢者の転倒や転倒に対する恐怖を軽減する可能性があります。太極拳は、パーキンソン病患者のバランスや安定性の改善に他の運動より効果がある可能性があります。

  • 2012年に行われたレビューでは、太極拳は在宅で運動プログラム(多くはバランスや筋力トレーニング運動など)を行った群と同様に高齢者の転倒を減少させたこと、また転倒のリスクが太極拳を行った群で有意に減少したことが明らかになっています。
    しかし、太極拳は転倒のリスクが高い高齢者には効果が低いことも認めています。
  • 転倒に対する恐怖は高齢者の健康および生活に大きな影響を与えている場合があります。
    2014年のレビューでは、太極拳などのさまざまな運動は高齢者の転倒に対する恐怖を軽減する可能性があることを示唆しています。
  • 195例を対象とした2012年の臨床試験では、軽度から中等度のパーキンソン病の患者では、太極拳を行ったほうが筋力トレーニングやストレッチを行うよりバランスや安定性がより改善しました。
    この試験の2014年のフォローアップ解析では太極拳を行った群では筋力トレーニングやストレッチを行った群より試験後3カ月の間、より運動を継続する傾向がありました。
疼痛(変形性膝関節症、線維筋痛症、慢性頸部痛、背部痛)の方に

太極拳により変形性膝関節症(膝軟骨の減少により下肢の骨がこすれあう)、線維筋痛症(筋痛や筋疲労を起こす障害)による疼痛、および背部痛をコントロールできる場合があるというエビデンスがあります。
気功は慢性の頸部痛に何らかの有益性がある場合がありますが、その結果はまちまちです。

変形性膝関節症

  • 変形性膝関節症患者40例を対象としたNCCIH助成の小規模臨床試験の結果によると、教育指導とストレッチを行うプログラムと比較して太極拳を行うことにより痛みの軽減と機能改善が認められました。
  • 7件の小・中規模臨床試験の解析では、12週間の太極拳実施により変形性膝関節症患者の痛みが緩和し機能が改善したと、結論付けられました。

線維筋痛症

  • 2010年に行われたNCCIHが助成した小規模臨床試験の結果によると、健康に関する教育を受けてストレッチを行うより太極拳を行うほうが線維筋痛症患者の睡眠や痛み、倦怠感、抑うつ感に効果が認められました。
    太極拳を12週間実施した人はまた、歩行、家の掃除、買い物、食事の準備など日常活動能力が高いスコアを示しました。また太極拳の効果は長く続くようです。
  • 2012年NCCIHが助成した小規模試験によると、太極拳の動きとマインドフルネス瞑想を併用することで、線維筋痛症患者が運動中に起こりうる不快感を克服して、身体活動を行うことができました。
  • 2012年の100例のランダム化臨床試験では、気功により疼痛、睡眠、日常活動能力、精神機能の改善が認められ、試験6カ月後もその効果は継続していました。

慢性頸部痛

慢性頸部痛に対する気功の効果に関する研究結果はまちまちで、対象者や試験方法も大きく異なっています。

  • ドイツで2009年に行われた臨床試験では、慢性頸部痛の病歴が平均20年の高齢者(主に女性)177人を対象に気功群、運動群を無治療群と比較しましたが、有益性は認められませんでした。参加者は3カ月以上24の運動または気功のセッションを受けました。
  • 2011年に報告された試験では、慢性頸部痛の病歴が平均3年の中年成人(主に女性)123人において、気功が運動療法と同じぐらい頸部痛の緩和に有効である(と同時に、いずれも無治療より有効である)ことが同一の研究者によって明らかにされました。
    この試験での運動療法とはキャッチボール、ボート漕ぎ、登攀運動、腕降り、ストレッチなどです。参加者は18の運動や気功のセッションを6カ月以上受けました。

背部痛

  • 3カ月以上腰痛が続く患者に太極拳プログラムを実施した結果、疼痛緩和および機能改善が認められました。
メンタルヘルスと認知機能について

運動が抑うつ感や不安感の軽減に役立つことが一連の研究によって示唆されていますが、これらの精神障害や他の精神衛生に与える太極拳および気功の役割は運動ほど明らかではありません。しかし太極拳は高齢者の脳機能や論理的思考能力を強化する可能性があるというエビデンスがあります。

  • NCCIHが助成する研究では、太極拳がストレス、不安感および抑うつ感の軽減ならびに気分および自尊心の向上に役立つ可能性が示唆されています。
    しかし、参加者3,800人以上の40試験を対象とした2010年のレビューでは、試験デザインの相違から確固たる結論は得られませんでした。
  • 2010年に報告されたNCCIHが助成したレビューでは、対象者2,500人以上の29件の試験結果から、不安感、抑うつ感、ストレス、気分、自尊心などの心理的要素に対する太極拳や気功の有効性を示す明確なエビデンスは得られませんでした。
    しかし、これらの試験の多くは心理的苦痛を主要目的としておらず、精神的な問題のある参加者を意図的に募集したわけではありません。
  • 2014年に発表されたNCCIH助成の別のレビュー結果から、太極拳によって顕著な認知機能障害のない高齢者において推理力、計画力、記憶力、問題解決力が向上することが示唆されました。
    また太極拳により認知症の軽度認知機能障害の徴候が見られる高齢者の認知機能にも改善は認められましたが、認知機能障害の徴候のない高齢者ほどの改善効果は認められませんでした。
QOLについて

多くの研究で身体活動はQOLを促進することが示唆されています。
癌患者を治療する医療スタッフは、病気による倦怠感を軽減しQOLを改善するために運動することをよく推奨します。
身体活動が心疾患やその他の慢性疾患患者のQOLを改善すると示唆する研究もあります。

がん

気功は通常のケアと比較してさまざまな種類の癌患者のQOL、気分、倦怠感および炎症を改善することが研究結果から示唆されています。 しかし気功をしている患者がその際に受ける配慮そのものにより、有益な結果が得られることが示唆されました。

心臓病

  • 2011年のNCCIH助成の臨床試験によると、定期的な太極拳の実施は慢性心不全患者のQOLおよび気分を改善する可能性があります。
  • 太極拳は運動能力を改善するため、心臓発作の経験がある人の心臓リハビリテーションの選択肢の一つとなりうることが、小規模試験の結果により示唆されています。

その他

2010年に報告されたNCCIHが助成するレビューでは、健康成人、高齢者、乳癌や脳卒中のサバイバーおよび慢性疾患患者のQOLに対する太極拳および気功の効果が検討されました。
太極拳や気功の実施により健常者でも慢性疾患患者でもQOLが改善することが示唆されました。

太極拳と気功の安全性の科学的根拠

太極拳や気功は安全な運動であると思われます。NCCIHが助成した1件のレビューでは、太極拳によって重大な障害がおこることはないが軽度の痛みを起こす可能性があることが報告されています。妊婦は太極拳や気功、その他の運動プログラムを始める前にかかりつけの医療スタッフに相談するべきです。

教育訓練、免許および資格

太極拳のインストラクターは免許を必要とせず、その実施は連邦政府や各州により規制されているわけではありません。気功の免許に国家資格はありません。
さまざまな太極拳や気功の団体が、それぞれインストラクターの認定基準やレベルの異なる中で、実習や資格認定プログラムを提供しています。

さらに考慮しなければならないこと

  • 太極拳や気功をビデオや本で学ぶことは、あなたが正しくて安全な動きをしていることの保証にはなりません。
  • もしあなたに健康上問題があるなら、太極拳や気功を始める前にかかりつけの医療スタッフに相談してください。
  • 信頼できる情報源(かかりつけの医療スタッフなど)に太極拳や気功のインストラクターを推薦してもらってください。太極拳や気功を教えてもらおうと考えているインストラクターのトレーニング法や指導経験について調べましょう。
  • あなたが行っている補完・統合療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。
    健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

主な参考文献

国立補完統合衛生センター(NCCIH)[米国]は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたのプライマリーヘルスケア提供者(かかりつけ医等)の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについて意思決定をする場合は、必ずかかりつけの医療スタッフと相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

更新日:2018年3月22日

監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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