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海外の情報

経口プロバイオティクス
Oral Probiotics

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年8月

プロバイオティクスとは?

プロバイオティクスは、摂取したり体に塗布したりすることで、健康上の利益が得られると考えられている生きた微生物です。プロバイオティクスは、ヨーグルトや発酵食品、サプリメント、美容製品に含まれています。

細菌やそのほかの微生物は、有害な「病原菌」と思われがちですが、実際のところ多くは有用です。中には、食物の消化、病気を引き起こす細胞の破壊、ビタミンの生成を助ける細菌もいます。プロバイオティクス製品中の微生物の多くは、体内に自然に住む微生物と同じ、または同様のものです。

プロバイオティクスにはどのような種類の細菌がいるのですか?

プロバイオティクスには多種に渡る微生物がいます。最もよく見られる細菌は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)やビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の仲間です。その他の細菌や、サッカロミケスブラウディ(Saccharomyces boulardii)などのイースト菌も、プロバイオティクスとして用いられることがあります。

異なる種類のプロバイオティクスは、異なる効果があります。例えばある特定の乳酸桿菌属がある病気の予防に効果があるとしても、他の乳酸桿菌属も同じ効果があるとは限りませんし、どのビフィドバクテリウム属にも同じ効果があるとも限りません。

プレバイオティクスはプロバイオティクスと同じものですか?

違います。プレバイオティクスは、プロバイオティクスと同じではありません。プレバイオティクスは、好ましい微生物の働きや増殖を選択的に促進する消化されない食品成分です。

シンバイオティクスとは何ですか?

シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを合わせたものです。

プロバイオティクスはどの程度知られていますか?

2012年の米国国民健康調査(National Health Interview Survey:NHIS)では、アメリカの成人約4百万人(1.6%)が過去30日間にプロバイオティクスまたはプレバイオティクスを用いたことが示されています。成人の間では、プロバイオティクスまたはプレバイオティクスは、ビタミンやミネラルに次いで三番目に多く用いられているサプリメントです。2007年から2012年の間で、成人によるプロバイオティクスの利用が4倍になりました。2012年のNHISでは、4~17歳の小児300,000人(0.5%)が、調査の30日前以内にプロバイオティクスまたはプレバイオティクスを利用していました。

プロバイオティクスはどのように働くのですか?

プロバイオティクスは、体内でさまざまな効果があり、異なるプロバイオティクスは異なる働きをします。

プロバイオティクスは、

  • 体内の微生物のコミュニティを健康に保つこと、または体内の微生物のコミュニティが乱れた後、健康な状態に戻すことに有用な可能性があります。
  • 有益な効果のある物質を産生している可能性があります。
  • 体内の免疫応答に影響を与えている可能性があります。

アメリカでプロバイオティクスはどのように規制されていますか?

アメリカ国内での政府によるプロバイオティクスの規制は複雑です。プロバイオティクス製品の用途に応じて、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)はサプリメント、食品成分、または薬品として規制しています。

多くのプロバイオティクスは、サプリメントとして販売されていますが、それらは市場に出る前にFDAの認証を必要としないものです。サプリメントの商品ラベルに、製品が体の構造または機能にどのように影響するかについて、FDAの承認なしに表示することがありますが、例えば、このサプリメントは病気になるリスクを減らすなど、FDAの承認なしに健康に関して表示することはできません。

プロバイオティクス製品が病気や症状を治療する薬品として市場に出る場合は、より厳しい条件を満たす必要があります。販売前に、臨床試験を経て用途に合った安全性と効果が証明され、FDAにより承認されなければなりません。

■ 微生物叢について学ぶ

私たちの皮膚や体内に住む微生物のコミュニティは「微生物叢(マイクロバイオーム)」と呼ばれ、研究の注目の話題です。2007年から2016年にかけて米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の支援を受けたヒト微生物叢プロジェクト(Human Microbiome Project)では、健常者の体内や皮膚に住む正常な細菌のマッピングを行うという、この研究で重要な役割を果たしました。ここで得られた正常な微生物叢の知識を基礎として、NIHの支援を受けた多くの研究者を含む世界中の研究者は現在、微生物叢の変化とさまざまな病気との関連を調査しています。また、病気を治療し健康をサポートするために、微生物叢を操作するようにデザインされた新しい治療法を開発しています。

国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、微生物叢の研究に資金提供する数ある機関の1つです。NCCIHが支援する研究者は、食物の成分と消化管内の微生物との相互作用を研究しています。食事と微生物叢の相互作用が健康に有益な物質の産生につながる可能性があり、その仕組みに着目しています。

科学的観点から見た健康に対するプロバイオティクスの有効性とは?

プロバイオティクスに関する多くの研究が行われていますが、プロバイオティクスがさまざまな症状に有用か、安全であるのかどうかについては、多くの研究が必要です。

プロバイオティクスは、抗菌薬関連の下痢(クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による下痢を含む)の予防、未熟児の「壊死性腸炎」や敗血症の予防、乳児のコリック治療、歯周病の治療、潰瘍性大腸炎の寛解の誘導や維持など、さまざまな症状改善に有望であることが示されています。

しかし、ほとんどの場合、どのプロバイオティクスが有用で、どのプロバイオティクスが有用でないかは、まだわかっていません。また、プロバイオティクスをどれだけ摂取すればよいのか、どのような人が利益を得る可能性が高いのかもわかっていません。最も研究されてきた症状でさえ、研究者はこれらの質問の答えを見つける研究を続けています。 次の章では、一部の症状においてなされているプロバイオティクスの研究を要約して紹介します。

胃腸の症状

抗菌薬関連の下痢
  • プロバイオティクスは、一般的な抗菌薬関連の下痢、また特定の細菌であるクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされる抗菌薬関連の下痢について研究されています。この章では、一般的な抗菌薬関連の下痢に関する研究について説明します。クロストリジウム・ディフィシレについては、下記の別の章で説明します。
  • 2017年に行われた入院していない人を対象とした17件の研究(参加者3,631例)のレビューでは、抗菌薬と併用して患者にプロバイオティクスを投与すると、抗菌薬関連の下痢の確率が約半分に減少したことが示されました。しかし、研究の質が中程度にすぎなかったため、この結論は暫定的なものとされました。プロバイオティクスが投与された患者は、プロバイオティクスが投与されなかった患者と比較して副作用はありませんでした。
  • 30件の研究(参加者7,260例、そのうち5件は65歳以上を対象)を対象とした2016年のレビューによると、プロバイオティクスは、若年や中年の人々において抗菌薬関連の下痢に有用な可能性がありますが、高齢者に対する利益は実証されていません。プロバイオティクスが実際に高齢者には機能しないのか、または、この年齢層の人々の研究が数件しかなかったために効果が見られなかったのかは不明です。
  • 小児における抗菌薬関連の下痢を予防するためのプロバイオティクスに関する23件の研究(参加者3,938例)のレビューは、プロバイオティクスが保護効果を有するという中程度の質の科学的根拠(エビデンス)が認められました。治療中の感染症を除いて他の点では問題のない小児には、重篤な副作用は見られませんでした。
クロストリジウム・ディフィシル感染症
  • クロストリジウム・ディフィシル菌は、抗菌薬を投与された患者の結腸(大腸)に感染し、軽度から重度に及ぶ下痢を引き起こします。クロストリジウム・ディフィシル感染症は治療が難しく、治療後に再発することもあります。抗菌薬を長期間服用している人や高齢者により多く見られ、病院や介護施設で広がることがあります。アメリカではクロストリジウム・ディフィシル感染症が年間約50万人に影響を及ぼし、約15,000人の死亡に起因します。
  • 2017年に行われた31件の研究(患者計8,672例)の分析では、抗菌薬を投与した成人および小児において、プロバイオティクスがクロストリジウム・ディフィシルによる下痢のリスクを軽減する可能性が中程度に信頼できると結論付けられました。これらの研究の多くは、入院患者を対象としています。分析はまた、免疫機能が非常に弱いまたは機能が不十分な患者以外において、抗菌薬とプロバイオティクスとの併用が安全であるようだと結論付けました。
  • クロストリジウム・ディフィシルによる下痢のリスクを減らすのに最も有用なプロバイオティクスの種類、それらを摂取する期間、最適用量は明らかではありません。
便秘
  • 2014年に行われた成人の便秘に対するプロバイオティクスにおける14件の研究(参加者1,182例)のレビューでは、特にビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)の利益において、いくつかのエビデンスが示されました。
  • 2017年に行われた高齢者の便秘に対するプロバイオティクスに関する9件の研究(参加者778例)の評価では、プロバイオティクスがわずかではあるが有意義な利益をもたらしたことが示されました。最も頻繁に検査された細菌の種類は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)でした。評価を行った研究者らは、通常の治療に加えたプロバイオティクスが、高齢者の慢性便秘に対し有用である可能性を示唆しました。
  • 2017年のレビューでは、小児の便秘に対しプロバイオティクスを用いた7件の研究に着目しました(参加者515例)。研究を行った小児のグループ、使用したプロバイオティクスの種類、その他の要因が異なったため、研究を比較するのは困難でした。レビューアは、小児で検査されたプロバイオティクスのどれも有用であるというエビデンスを見いだせませんでした。2017年に行われた2つ目のレビューでは、同じ研究4件とその他2件(6件の研究、参加者計498例)を対象とし、エビデンスについてより楽観的な見方をしており、全体的にプロバイオティクスが排便回数を増加し、その効果はアジアの小児がヨーロッパの小児よりも顕著でした。
がん治療による下痢
  • 下痢は、がんに対する化学療法または放射線療法によく見られる副作用です。プロバイオティクスは、この種の下痢予防または治療に有用である可能性が示唆されています。しかし、2018年に行われた12件の研究(参加者1,554例)のレビューでは、プロバイオティクスの有益な効果のエビデンスは決定的ではないことがわかりました。
憩室症
  • 憩室症では、結腸(大腸)の壁の弱い部位に小さな袋ができます。ほとんどの場合、この状態は症状を引き起こしません。症状(腹部膨満感、便秘、下痢、痙攣など)が起こった場合、その症状は憩室症と呼ばれます。いずれかの袋が炎症を起こした場合、その状態は憩室炎と呼ばれます。憩室炎の患者には激しい腹痛があり、重篤な合併症を引き起こすことがあります。
  • 2016年に行われた憩室症に対するプロバイオティクスに関する11件の研究(参加者764例)のレビューでは、研究の質の低さからプロバイオティクスが有用であるかどうかについて結論を出すことができませんでした。
炎症性腸疾患
  • 炎症性腸疾患は、消化器系の一部が炎症を起こす疾患のグループを指す用語です。最もよく見られるのは、潰瘍性大腸炎とクローン病です。症状には、腹痛、下痢(血が混じることもある)、食欲不振、体重減少、発熱などがあります。症状は軽度から重度の範囲に及ぶことがあり、症状は出たり治まったりする場合があります。治療には薬剤を使用し、場合によっては手術を行います。
  • 2014年に行われた潰瘍性大腸炎の患者(参加者1,700例)を対象とした21件の研究のレビューでは、プロバイオティクス、プレバイオティクス、またはシンバイオティクスを従来の治療に追加することで、潰瘍性大腸炎の寛解の誘導または寛解の維持に有用であることが示されました。同じレビューでは、クローン病に対してプロバイオティクス、プレバイオティクス、またはシンバイオティクスを用いた14件の研究(参加者746例)に着目しましたが、それらが有益であるというエビデンスは認められませんでした。
過敏性腸症候群
  • 2018年に行われた過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)のプロバイオティクスに関する53件の研究(参加者計5,545例)のレビューでは、プロバイオティクスがIBSの全般的な症状と腹痛に有益な効果をもたらす可能性があると結論付けましたが、その有効性について明確な結論を導き出すこと、またどの種、株、プロバイオティクスの組み合わせが最も有用である可能性が高いかを特定することは不可能でした。
  • もっと詳しくお知りになりたい方は、NCCIH fact sheet on irritable bowel syndrome(過敏性腸症候群のNCCIHファクトシート)(英文サイト)をご覧ください。
旅行者下痢症
  • 2018年のレビューでは、旅行者下痢症の予防に関するプロバイオティクスまたはプレバイオティクスの11件の研究(参加者5,143例)を評価し、それらが有用である可能性があるというエビデンスが認められました。しかし、レビューでは研究の質を評価せず、副作用に関するデータは含まれていませんでした。
  • 2017年の国際旅行医学協会(International Society of Travel Medicine)による臨床診療ガイドラインでは、旅行者下痢症を予防または治療するために、プロバイオティクスまたはプレバイオティクスを推奨するエビデンスは不十分であると述べています。そのガイドラインでは、小さな利益を示唆するエビデンスがあることを認めましたが、使用されたプロバイオティクス株、下痢の原因、地理的な場所などの要因に関して研究が大きく異なることを指摘しました。また、研究の中には、デザインに弱点がありました。

乳児の症状

乳児コリック
  • コリックは、幼い乳児が訳もなく過度に泣く症状のことです。コリックのある赤ちゃんは、1日3時間以上泣くことがありますが、よく食べ正常に成長します。コリックの原因はよくわかっていませんが、研究では、コリックのある乳児とそうでない乳児との間に消化管内の微生物群集の差が示されており、微生物が関与している可能性が示唆されています。
  • 2018年に行われたコリックに対しプロバイオティクスを用いた7件の研究(参加者471例)のレビューでは、そのうち5件がプロバイオティクスのラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri )DSM 17938株について研究しており、このプロバイオティクスが治療の成功(1日の泣いている時間が半分を超えて減少したと定義)に関連していることがわかりました。しかし、その効果は主に母乳で育てられた乳児のみに認められました。
  • コリックに対し、L. reuteri DSM 17938株を用いた4件の研究(参加者345例)のレビュー、またはこのプロバイオティクスを投与したコリックのある乳児において、身体検査と血液検査を複数回行った小規模なNCCIHの助成による研究、また両親からの症状の報告によると、有害な影響は見られませんでした。
壊死性腸炎
  • 壊死性腸炎は、未熟児に起こる重篤な、時には致命的な疾患です。それは、腸管が損傷し、腸組織の壊死を引き起こします。正確な原因は不明ですが、食物成分や未熟児の消化管に住む微生物に対する異常な反応が一因である可能性があります。
  • 2017年に行われた23件の研究(乳児7,325例)のレビューでは、プロバイオティクスが超低出生体重児の壊死性腸炎の予防に有用であることが示されました。しかし、それぞれの研究結果はさまざまで、すべてが利益を示したわけではありませんでした。乳酸桿菌属とビフィドバクテリウム属の両方を含むプロバイオティクスが最良の結果をもたらすようでしたが、この大きな細菌群の中で最も有益な株を特定することはできませんでした。
  • 上記の研究で、プロバイオティクスによる有害で短期的な副作用を起こした乳児はいませんでした。しかし、そのような若い年齢でプロバイオティクスを投与することによる長期的な影響は明らかでありません。これらの研究以外では、プロバイオティクスが新生児に有害な影響を与えた事例がいくつかありました。いくつかの例では、乳児が微生物を意図的に含んだプロバイオティクス製品から血流感染症を発症し、ある症例では、プロバイオティクスを汚染していたカビに感染したことで未熟児が死亡しました。
乳児の敗血症
  • 敗血症は、身体が感染に対して有害で重篤な反応を示す深刻な疾患です。重要な臓器や身体が機能不全に陥り、生命を脅かすことがあります。敗血症のリスクは、乳児、小児、高齢者、深刻な病気のある人において最も高くなります。特に敗血症の危険にあるグループの一つは未熟児です。
  • 37件の研究(参加者9,416例)のレビューでは、プロバイオティクスが未熟児の敗血症のリスク減少に有用であることがわかりました。

歯の疾患

歯の手入れ(虫歯)
  • 乳児と幼児を対象とした少数の研究では、プロバイオティクスが虫歯の予防に有用である可能性があるか検討されています。7件の研究(参加者計1,715例)のレビューでは、7件の研究のうち4件でプロバイオティクスの使用は虫歯が少ないことに関連していたことがわかりましたが、エビデンスの質は低く、プロバイオティクスの有効性に関する明確な結論に達することができませんでした。
歯周病
  • 歯周病は、歯を取り囲んで支えている歯茎と骨の感染症と炎症から生じます。重症の場合、歯茎が下がり、骨が溶け、歯が動いたり、抜けたりすることがあります。
  • 2016年に行われた歯周病に対するプロバイオティクスを評価した12件の研究(参加者452例)のレビューでは、治療に加えることで、歯周病の原因となる細菌を減らし、症状を改善することに有用な可能性があるというエビデンスが認められました。しかし、プロバイオティクスによって効果が異なる可能性があります。

アレルギー関連の症状

アレルギー性鼻炎(花粉症)
  • アレルギー性鼻炎の治療においてプロバイオティクスを検査した23件の研究(参加者1,919例)のレビューでは、症状の改善と生活の質(Quality of Life:QOL)改善に有用の可能性を示したいくつかのエビデンスが認められました。しかし、研究ではさまざまなプロバイオティクスを検討し、さまざまな効果が評価されたため、プロバイオティクスの使用に関して推奨はできませんでした。これらの研究では、プロバイオティクスの副作用はほとんど報告されませんでした。
喘息
  • 小児喘息のプロバイオティクスに関する11件の研究(参加者910例)のレビューでは、決定的な結果は得られませんでした。
アトピー性皮膚炎
  • アトピー性皮膚炎は、アレルギーに関連するもののアレルギー自体が原因ではない、かゆみを伴う慢性皮膚疾患です。それは乳児に最もよく見られ、生後2〜6カ月で始まる場合もあります。多くの人は、成人早期までに症状が治まります。アトピー性皮膚炎は、数種ある湿疹の1つです。
  • 2017年に行われた乳幼児および小児におけるアトピー性皮膚炎の治療にプロバイオティクスを用いた13件の研究(参加者1,271例)のレビューでは、有益な効果に関する一貫したエビデンスは認められませんでした。成人を対象とした9件の研究(参加者269例)のレビューでは、プロバイオティクスの一部の株がアトピー性皮膚炎の症状に有益な可能性がある予備的エビデンスが認められました。
アレルギーの予防
  • 人々の生活習慣と環境の変化により、人生の早い段階で微生物との接触が減少し、この減少がアレルギーの増加に影響している可能性があることが示唆されています。これは「衛生仮説」と呼ばれることもありますが、世帯規模の縮小や抗菌薬の使用など、衛生に関係がない要因も影響している可能性があります。アレルギーの発症を防ぐことを期待して、プロバイオティクスを妊婦や幼い乳児に投与する数々の研究が行われました。
  • 2015年に行われた妊娠中または乳児期初期におけるプロバイオティクスの使用を評価した17件の研究(参加者4,755例)のレビューでは、プロバイオティクスを投与した乳児は、特にプロバイオティクスを混合した場合、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが低いことがわかりました。しかし、プロバイオティクスの喘息、喘鳴、花粉症(アレルギー性鼻炎)におけるリスクに効果は認められませんでした。

他の症状

にきび
  • 研究では、経口摂取または局所使用(皮膚に塗布)したプロバイオティクスが、にきびに影響するであろうメカニズムを特定しています。しかし、にきびのプロバイオティクスに関する研究はほとんど行われていません。また、2016年の米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)の対処に関するガイドラインでは、既存のエビデンスはプロバイオティクスの使用に関する推奨を正当化するほど強固ではないと述べています。
肝性脳症
  • 肝臓が損傷し、血液から毒性物質を除去できない場合、毒素が血流に乗って神経系に影響を与えることがあります。これは、肝性脳症と呼ばれる脳機能の障害につながる可能性があります。
  • 2017年のレビューでは、肝性脳症のプロバイオティクスに関する21件の研究(参加者1,420例)に着目し、概して質が低いと結論付けました。プロバイオティクスは、プラセボ(不活性物質)または無治療と比較して、肝性脳症におそらく有益な効果があるというエビデンスがありましたが、プロバイオティクスが肝臓病の通常治療であるラクツロースよりも優れているかどうかは明らかではありませんでした。
上部呼吸器感染症
  • プロバイオティクスは、上気道感染症(風邪、中耳感染症、副鼻腔炎、さまざまな咽喉感染症などの総称)に対する効果について検査されています。2015年に行われた12件の研究(参加者計3,720例)の評価では、プロバイオティクスを摂取している人は上気道感染がより少なく、感染しても罹病期間がより短くなることが示されました。しかし、中には研究内容が不十分なものもあったため、質の低いエビデンスでした。
尿路感染症
  • 2015年に行われた尿路感染症予防のためのプロバイオティクスに関する9件の研究(参加者735例)のレビューでは、有益な効果のエビデンスは認められませんでした。

プロバイオティクスは有害の可能性がありますか?

  • プロバイオティクスには、特に健常者の間で、明らかに安全に使われてきた多様な歴史があります。しかし、プロバイオティクスの安全性を詳細に検討した研究はほとんどないため、副作用の頻度と重症度に関する確かな情報が不足しています。
  • プロバイオティクスによる有害な影響のリスクは、重病や免疫機能障害がある人ほど大きくなります。早産児や重病の入院患者などのリスクの高い人のためにプロバイオティクスを検討する場合、プロバイオティクスのリスクの可能性をその利益と比較し慎重に検討する必要があります。
  • プロバイオティクスに考えられる有害な影響は、感染、プロバイオティクス微生物による有害物質の産生、プロバイオティクス微生物から消化管内の他の微生物へ抗菌薬耐性遺伝子が伝達されること、などがあります。
  • プロバイオティクス製品の中には、表示されている微生物以外の微生物が含まれていることが報告されています。場合によっては、これらの混入が深刻な健康リスクを引き起こすことがあります。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは、プロバイオティクスまたは微生物叢に関連するさまざまな研究プロジェクトを支援しています。消化管内の食事と微生物叢の相互作用に関する前述の研究に加えて行った、最近の研究テーマは以下の通りです。

  • プロバイオティクスが閉経後の骨量減少の軽減を助ける可能性のあるメカニズム
  • 微生物叢と脳の研究に用いる天然物質を合成するためのプロバイオティクスとエンジニアリングの融合
  • 慢性骨盤痛を緩和する可能性のある特定のプロバイオティクスのメカニズム
  • 抗菌薬関連の下痢に関与する可能性のある腸内の短鎖脂肪酸産生の変化におけるビフィドバクテリウム属の特定の菌株の効果

さらに考慮しなければならないこと

  • 医療機関の受診を後回しにするためにプロバイオティクスを用いてはいけません。
  • もしプロバイオティクスのサプリメントの摂取を検討している場合には、まず医療スタッフに相談しましょう。あなたに健康上の問題がある場合は特に気をつけなければなりません。重篤な健康状態にある人はプロバイオティクスの摂取期間中、注意深く観察されるべきです。
  • 自分の健康に責任を持ちましょう。あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

消費者向け情報

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関連するファクトシート

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト: nccih.nih.gov(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ PubMed®

国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、公表文献の情報および(ほとんどの場合)科学・医学雑誌の論文からの短い要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(PubMedで補完療法情報を探す)(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるリソースを提供するため、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)が国立衛生研究所および他の政府機関と健康関連団体からの信頼できる情報をまとめています。

ウェブサイト: www.medlineplus.gov(英語サイト)

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参考文献

その他の参考文献
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謝辞

NCCIHは、この出版物の2019年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。
Yisong Wang, Ph.D., and David Shurtleff, Ph.D.

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監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

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