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本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
- がんの詳細
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英語版改訂年月(翻訳時):2014年7月はじめに
がん患者はがんと闘うために、症状を抑えるために、そして治療の副作用に対処するためにできることなら何でもしたいと思います。多くの患者が植物(ハーブ)やサプリメントをはじめとする天然物や、鍼治療、マッサージ、ヨガなど心身に働きかける療法をはじめとする補完療法に目を向けます。
このファクトシートは、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)と米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)が共同で作成したものです。がんの予防、治療または症状の管理を目的として研究されてきた補完療法について、その科学的根拠や、安全性にについて概要を述べています。
キーポイント
- 症状の管理。補完療法のなかにはがんの症状や治療の副作用の対処に有効であるという、十分な科学的根拠(エビデンス)を持つものがあります。それ以外の補完療法ではエビデンスが希薄です。
- がんの治療。現時点では、補完療法にがんの治癒や寛解をもたらす効果があるという有力なエビデンスはありません。
- がんの予防。2012年に行われた研究では、高齢の男性がマルチビタミン・ミネラルのサプリメントを摂取することによって、がんのリスクを若干低下できる可能性があることが示されました。がんの予防については、それ以外の補完療法が有用であることは示されていません。
注意事項
- がんに対する従来の医学的治療法の代わりとして、もしくは治療を遅らせるために、効果の証明されていない製品や療法を使用しないでください。
- 補完療法のなかにはがんの標準治療に相互作用を示したり、がんと診断された人に特にリスクを与えたりするものがあります。補完療法を使用する前に、がんと診断された人はかかりつけの医療スタッフに相談して、自分のすべての治療の連携が取れるようにしてください。
- あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
がんについて
がんとは、異常な細胞が制御なく分裂する疾患の総称です。がん細胞は周辺組織に侵入することがあり、血流とリンパ系を介して体の別の部位に広がることもあります。アメリカでは、がんは死因の第2位ですが、検診、発見、治療、治療後のケアの各方法が改善されており、がんサバイバー(がん治療後の生存者)の数が増えました。専門家らの予想では、今後数年間にがんサバイバー数はさらに増加します。がんに関する詳しい情報は、NCIのウェブサイト(英語サイト)にあります。
補完療法について
補完療法とは、多様な医学・医療システム、療法および各種製品の総称であり、その起源はいずれも主流の医学とは異なるものです。補完療法には、そのような療法や関連製品のほか、サプリメント(ハーブ系含む)、瞑想、脊椎マニピュレーションおよび鍼治療などがあります。
補完療法の評価には、従来の治療法を評価するために使用される、綿密な科学的評価法と同じ方法を使用することが望ましいとされています。補完療法のなかには、がんの治癒ではなく、がんの症状や治療の副作用を緩和して、QOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる追加治療の選択肢のひとつとして定着しつつあるものもあります。
補完療法の使用
がんと診断された人の多くが補完療法を使用しています。
- アメリカで実施された2007年全国健康問診調査(National Health Interview Survey、NHIS)には、アメリカ人による補完療法の使用に関する包括的なアンケート調査も含まれていました。その調査によれば、がんと診断されたことのある回答者の65%が補完療法を使用したことがあり、がんと診断されたことのない回答者では53%という結果でした。がんと診断されたことのある人は、全般的な健康、免疫の強化および疼痛管理のために、がんと診断されていない人よりも補完療法を使用していた確率が高いことがわかりました。
- それ以外のアンケート調査でも、がんと診断された人が補完療法を使用していることが多いことがわかりましたが、どの程度使用しているかという推定には大きなばらつきがあります。データのなかには、補完療法を使用する可能性はがんの種類や性別、年齢、民族などの要素によって異なることを示すものもあります。18カ国で実施されたアンケート調査の結果から、がんと診断された人による補完療法の使用率は、オーストラリア・ニュージーランドやヨーロッパよりも北アメリカの方が高く、1970年代以降、特に2000年以降に大きく増えたことがわかっています。
- また、多くのがん患者が補完療法を使用していることを、かかりつけの医療スタッフに話していないことも明らかになりました。NHISによれば、がんと診断された回答者のうちハーブを使用している回答者の15%程度、補完療法全般を使用している回答者の23%がその使用について担当の医療スタッフに話していました。その他の調査では、サプリメントや他の補完療法を使用したがん患者およびがんサバイバーの32~69%が、そのような補完療法について担当医と話し合ったと報告しています。割合の報告に差があるのは、各調査での補完療法の定義が異なっていたためと、患者群が異なれば医師とのコミュニケーションも異なるためであると考えられます。
科学的観点から見たがんに対する補完療法の安全性および副作用
- 従来のがん治療を遅らせれば、寛解や治癒の可能性が低くなることがあります。がんに対する従来の医学的治療法の代わりとして、あるいは後回しにするために、効果の証明されていない製品や療法を使用しないでください。
- 補完療法のなかには、がんの治療と相互作用を示すものや、がん患者にとって安全ではないものがあります。たとえば、ハーブのセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)はうつ病に使用されることが時にありますが、一部のがん治療薬の効果を減弱することがあります。
- その他の補完療法も適切に使用しなければ害になる可能性があります。たとえば、がん患者に対してマッサージ療法を安全に行うには、がんやその治療による影響を直接受けている体の部位(放射線療法後に敏感になっている皮膚領域など)を避けてマッサージすることが必要です。
- がんと診断された人は、どのような補完療法でもその目的にかかわらず、つまりがんに関連があろうとなかろうと、使用前にがんの治療を受けているかかりつけの医療スタッフに相談することが望ましいです。
科学的観点から見たがんに対する補完療法の有効性
補完療法に分類される製品または療法によって、がんが治癒することは証明されていません。補完療法には、症状や治療による副作用の対処および生活の質(QOL)の向上に役立つものもあります。
補完療法をがん治療に組み入れる
2009年、統合腫瘍学会は、補完療法をがん患者の治療に組み入れるときに医療従事者の参考となるように、エビデンスに基づくガイドラインを公表しました。このガイドラインは、補完療法のなかには、従来の治療法に追加して使用すると症状の管理や患者の心身の状態を向上するのに役立つものがあることを指摘しています。その一方で同ガイドラインは、従来のがん治療を遅らせれば、寛解や治癒の可能性が低くなることがあるため、従来の治療の代わりに実証されていない方法を使用すべきではないと警告しています。
このファクトシートでは、がんに対する補完療法に関する研究を包括的にまとめることは割愛します。このあとのセクションに、がんの症状と治療の副作用の対処のほか、がんの予防と治療に主眼を置いた数件のレビューおよび研究の結果を紹介しながら、よく使用される補完療法の一部に関する研究の状況をまとめてあります。
補完療法とがんについて医療スタッフに相談する
米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)には、補完療法とがんについてあなたがかかりつけの医療スタッフに相談するための役立つリソースがあります。
- NCIのがんの補完代替医療に関する事務局(Office of Cancer Complementary and Alternative Medicine)は、がん患者と医療スタッフが、患者が利用している補完療法について話し合い、状況を把握するために役立つワークブックを公表しています。ここからダウンロード(英語サイト)することができます。
- NCCIHは患者と医療スタッグが補完療法について話し合うときに役立つヒント(英語サイト)を提供しています。
がんの症状と治療の副作用に対する補完療法
補完療法の一部には、鍼治療、マッサージ療法、マインドフルネス・ストレス軽減法やヨガなど、患者が、がんの症状や治療の副作用に対処するために役立つかもしれないものがあります。一方、従来のがん治療に相互作用を示したり、その他のリスクを有する可能性のある補完療法もあります。がんと診断された人は補完療法を使用する前に、かかりつけの医療スタッフに相談することが望ましいです。
- 鍼治療はがん患者に対して治療による悪心・嘔吐の管理に役立つ可能性があるという有力なエビデンスがあります。鍼治療ががんによる痛みや治療によるのぼせ、ほてりなど他の症状を緩和するかどうかを判断するには十分なエビデンスがありません。鍼治療によって合併症が発現することは、鍼師が滅菌針を使用して適切な手順で行う限り、まれです。化学療法および放射線療法によって体の免疫系が弱くなるため、鍼灸師ががん患者を治療するときに滅菌作業を厳密に行うことは特に重要です。
- 最近の研究から、ハーブであるショウガを従来の制吐剤(吐き気止め)に加えて使用すると、悪心(吐き気)のコントロールに役立つことが示唆されています。
- 疼痛、悪心、不安やうつなど、がん患者が経験する症状の緩和にはマッサージ療法が役立つことを示唆する研究もあります。ただし、この領域では厳密な研究の数が少ないため、研究者らもマッサージ療法の効果について結論に達したわけではありません。がん患者はマッサージ療法を受ける前に、かかりつけの医療スタッフに相談して、特に注意が必要なことがないかどうかを確かめてください。マッサージ療法士は、医療スタッフの承認を得ることなく、強い、深部へのマッサージをしてはいけません。腫瘍が直下にある領域や放射線療法後の皮膚が敏感になっている領域など、一定の部位を避ける必要もあるでしょう。
- 一種の瞑想であるマインドフルネス・ストレス軽減法が、がん患者の不安、ストレス、倦怠感や一般的な気分障害や睡眠障害の緩和に役立ち、それによってQOLを向上させることができるというエビデンスがあります。マインドフルネスに関する研究の参加者のほとんどが、主に乳がんの早期がん患者であったことから、マインドフルネス瞑想の肯定的なエビデンスはこの患者集団に対して最も有力です。
- 予備的なエビデンスでは、ヨガががん患者の不安、うつ、苦痛やストレスを緩和するのに役立つことが示されています。乳がん患者やがんサバイバーの倦怠感の軽減にも役立ちます。一方、がん患者を対象にしたヨガに関する研究で完遂したものは数少なく、中には研究の質があまり高くないものもあります。ヨガでは体を動かす必要があるため、がん患者は事前に担当の医療スタッフと話し合って、ヨガの中でも自分にとって安全ではない側面があるかどうかを確認することが大切です。
- 催眠療法、リラクゼーション法およびバイオフィードバック(行動療法)が、がんの症状や治療の副作用に対処するのに有益となる可能性があることを示唆するさまざまな研究があります。
- ハーブのサプリメントとがんに関する研究を対象にした2008年のレビューでは、ハーブのなかには悪心・嘔吐、疼痛、倦怠感や不眠症などの副作用および症状の管理に有望であることを示したものもある一方、科学的根拠(エビデンス)は乏しく、試験デザインがあまりよくない臨床試験が多かったという結論でした。症状の管理にハーブを使用することにも、従来のがん治療とよくない相互作用を起こすのではないかという懸念があります。
がんに立ち向かう
がんがある人やがんの治療を受けた人は、がんやその治療のせいで、からだや心にさまざまな困難を抱える人もいます。そのような問題の対処に、多くの従来の方法が役立ちます。たとえば、がんと診断されて大きな心配を抱える人にはカウンセリングが役に立つでしょう。化学療法による悪心(吐き気)は薬で抑えることができますし、治療による倦怠感なら運動によってある程度は軽くなるでしょう。補完療法もがんの対処やQOLの向上に役立つという人もいます。また、補完療法を利用することによって、自分自身の治療に積極的にかかわっていることを実感することができます。あなたにがんがある、またはがんの治療を受けたことがあるとしたら、そのためにあなたが使っている方法すべてを、従来の治療であろうと補完療法であろうと、かかりつけの医療スタッフに必ず相談しましょう。自分が受ける医療のすべてがきちんと連携するためには、かかりつけの医療スタッフがその情報を知っておく必要があります。がんの対処方法に関する詳細な情報がNCIのウェブサイト (英語サイト)にあります。
補完療法の使用
このセクションでは、がんを直接治療するため(つまりがんを治すため、または寛解した状態にするため)の補完療法について説明しています。
これまでに、どの補完療法によってもがんが治癒したことも、寛解状態になったこともありません。がんの治療になると言われてきた製品や療法のなかには従来のがん治療薬の妨げとなるなど、その他のリスクになるものもあります。がんと診断された人は補完療法を使用する前に、かかりつけの医療スタッフに相談することが望ましいです。
- ハーブのサプリメントやハーブ由来の物質をがん治療に利用する価値があるかどうかに関するいくつかの研究は初期の段階であり、エビデンスがあまりありません。ハーブのサプリメントには副作用があり、がん治療に使われる医薬品をはじめ、医薬品と相互作用を起こして害になるものもあります。
- がん治療中に抗酸化サプリメントを含むビタミン類やミネラルのサプリメントを摂取することによって、どのような作用があるのかは明らかになっていません。NCIでは、サプリメントを摂取する前にかかりつけの医療スタッフに相談するようにがん患者に助言しています。
- NCCIHの助成により2010年に実施された試験では、化学療法と放射線療法に加えてサメ軟骨抽出物(エキス)を摂取しても、進行肺がん患者に対する有益性は示されませんでした。それ以前に実施された、進行乳がんまたは大腸がんの患者を対象としたさらに小規模な研究でも、従来の治療に追加したサメ軟骨による有益性は明らかではありませんでした。
- レアトリル(天然の制がん剤)に関する2011年のシステマティックレビューによれば、同剤ががんの治療薬として効果があるというエビデンスは見つかりませんでした。レアトリルにはシアン化物が含まれているため、特に経口摂取した場合、有毒になることがあります。
がん治療薬の詐欺に注意
米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)および連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)は、一般市民に対してがん治療薬の不正品に注意するように警告を出しました。がん治療薬の詐欺は以前からありますが、近年では、インターネットの普及によって以前よりも簡単に不正品が売られやすくなっています。
がん治療薬の不正品にはそれ自体が害になるものもありますが、不正品を使用する間に医療を受けるのが遅れたり、がん治療薬の効果に相互作用したりすることによって、間接的に害になることもあります。
がん治療薬の不正品を売る人は、「科学の飛躍的進歩」、「奇跡的に治る」、「秘密の成分」、「古来の治療法」、「あらゆる種類のがんを治療できる」、または「悪性腫瘍が小さくなる」などの能書きをつけて販売していることが多いです。広告には製品を使った人の個人的な経験談が書かれていることがあります。そのような話は、事実かどうかに関係なく、製品が有効であるという信頼できるエビデンスとは言えません。また、代金払い戻しの保証があっても、製品が効くというエビデンスにはなりません。
あなたが広告で見た制がん剤の使用を検討している場合は、まずかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。がんに関連する健康製品の詐欺に関する詳細な情報がFDA(英語サイト)およびFTC(英語サイト)から入手できます。
がん予防のための補完療法
2012年に行われた大規模な臨床試験では、高齢の男性がマルチビタミンやミネラルのサプリメントを摂取することによって、がんのリスクを若干低下できる可能性があることが示されました。がんの予防において、それ以外の補完療法が有用であることは示されておらず、なかには健康リスクの増大と関連していることがわかったものもあります。
ビタミン・ミネラルのサプリメント。2012年に終了した研究の結果から、高齢の男性がマルチビタミン・ミネラルのサプリメントを摂取することによって、がんのリスクが若干低下することが明らかになっています。Physicians’ Health Study II (数種類のサプリメントを検証した複合研究)の一部として実施されたこの研究では、アメリカの男性医師14000人以上がマルチビタミンとミネラルのサプリメントまたはプラセボ(ビタミンやミネラルを一切含んでいないが、外観が全く同じ製品)を11年間摂取するように無作為に割り付けられました。サプリメントを摂取した医師では、プラセボを摂取した医師よりも発がん率が計8%少ないという結果になりました。
このほかのビタミンとミネラルに関する研究では、ほとんどが栄養成分として1種類のみか数種を含むサプリメントを評価していましたが、がんに対する予防効果はありませんでした。一部の研究では、特定のビタミンまたはビタミン関連物質の高用量を補充することによりリスクが生じることが明らかになりました。研究結果には次のようなものがあります。
- Physicians’ Health Study II の別のパート(上記のパートではない)では、ビタミンEまたはビタミンCのどちらかを比較的高用量摂取することによって、50歳以上の男性の前立腺がんを含むがん全体のリスクが低下することはありませんでした。ビタミンEを摂取している男性では出血性脳卒中(脳内出血によって起こる脳卒中の一種)のリスクが上昇しました。
- 2010年に臨床試験22件のメタアナリシスを実施したところ、抗酸化サプリメント(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチンおよびセレニウム)ががん予防に役立つというエビデンスはありませんでした。
- 大規模研究2件から、ベータカロチンを含むサプリメントによって喫煙者の肺がんリスクが上昇するというエビデンスが明らかになりました。
- NCI、NCCIHおよびNIHのその他部門が資金提供した、セレニウムとビタミンEのがん予防効果試験(Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial、SELECT)では、セレニウムとビタミンEのサプリメントをそれぞれ単独または一緒に摂取しても、前立腺がんを予防できなかったことが示されました。同試験ではまた、ビタミンEサプリメントを単独で摂取したところ、男性健常者の前立腺がんのリスクが上昇したことが明らかになりました。ビタミンEとセレニウムを同時に摂取した場合は前立腺がんのリスクは上昇しませんでした。同研究で使用されたセレニウムとビタミンEは、通常のマルチビタミン・ミネラルのサプリメントに含まれている用量よりもはるかに高用量でした。
- カルシウムが大腸がんの予防に役立つことを示唆する有力なエビデンスがありますが、サプリメントとしてカルシウムを摂取することによる有益性のエビデンスは不十分で、一貫性がありません。このため、NCIでは、大腸がんのリスクを低下するためにカルシウムのサプリメントを摂取することを推奨していません。
- その他の天然物。2009年に報告された51研究(参加者1600万例)のシステマティックレビューによれば、緑茶を飲むこととがん予防の間の関連性には「不十分で対立する」エビデンスがありました。イチョウ、イソフラボン、ノニ、ザクロ、ブドウ種子抽出物(エキス)をはじめとする、他のいくつかの天然物について、がん予防効果の可能性について検討されましたが、いずれもエビデンスは乏しく、結論には至っていません。
がんの予防についてもっと知りたいですか?
がんのリスクを低下できる多くの方法があります。がんの原因となるもの(たばこの煙など)を避けるようにすること、前がん状態を早期に発見できる検査(大腸内視鏡検査など)を受けること、そしてリスクが高い人は医薬品を服用してがんのリスクを低下させること(化学予防)です。がんの予防に関する詳しい情報は、NCI(英語サイト)から入手できます。
がんに対する補完療法のNIH研究
NCIおよびNCCIHのいずれも、がんに関連する実験研究および臨床研究の多くに資金助成をしています。現在実施されている研究の一部では次のものが検証の対象とされています。
- 遺伝的要因およびカルシウムとマグネシウムの摂取による前がん状態の大腸ポリープ発症リスクに対する影響
- 竹抽出物(エキス)、ブドウ種子抽出物(エキス)、白茶、紅参およびS-アデノシルメチオニン(SAMe)など、がんの予防または治療に価値がある可能性のある天然物の作用機序
- 頭頸部がん治療後の嚥下障害に対する鍼治療の利用
- がん患者の睡眠改善のための心身鍛錬
詳しい情報はNCI(英語サイト)およびNCCIH(英語サイト)から入手できます。
がんと診断され、補完療法を検討していますか?
- あなたが興味を引かれた補完療法および関連製品について情報を集めましょう。そのあと、かかりつけの医療スタッフとそれについて相談しましょう。がんと診断された場合、補完療法を使用する前に、かかりつけの医療スタッフに相談しましょう。補完療法をすでに使用している場合、使っている理由ががんとは関係ないことであるとしても、それをかかりつけの医療スタッフに伝えてください。補完療法のなかには、標準的ながん治療と相互作用を示すものがあり、標準治療と一緒に使うと有害になるものもあります。医療スタッフに聞く質問の例をあげておきます。
- この製品または療法について、どのような利点やリスクがあることがわかっていますか?リスクより利点の方が大きいですか?
- どのような副作用が考えられますか?
- この方法は従来の治療の妨げになりますか?
- 施術をしている人を紹介していただけますか?
- 従来のがん治療の代わりに、あるいは健康問題についてかかりつけの医師の診察を受けるのを後回しにするために、安全性と効果が証明されていない健康製品や療法を使用してはいけません。
- あなたが行っている補完療法についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
消費者向け情報
医療関係者向け情報
さらなる情報
■ NCCIH 情報センター
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-36151-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
Email:info@nccih.nih.gov■ 米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)
NCIは連邦政府下のがん研究における主導機関です。NCIのがん補完・代替医療部門は補完療法に関する研究におけるNCIの活動の調整及び強化を行っています。
米国内の無料通話:1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)
ウェブサイト:https://www.cancer.gov/(英語サイト)
Email:cancergovstaff@mail.nih.gov■ NCI’s Office of Cancer Complementary and Alternative Medicine(OCCAM)
NCIのがん補完代替医療部門(OCCAM)は、補完療法に関する研究におけるNCIの活動を調整し、強化しています。
がん治療における補完療法の情報:www.cancer.gov/publications/pdq/information-summaries/cam(英語サイト)
ウェブサイト:https://cam.cancer.gov/(英語サイト)■ PubMed®
米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(PubMedで補完療法の情報を探す)(英語サイト)をご覧ください。
■ NIH Clinical Research Trials and You(ウェブサイト)
米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、人々が臨床試験について知り、なぜ臨床試験が重要なのか、どのように臨床試験に参加するかを学べるよう、ウェブサイトNIH Clinical Research Trials and Youを開設しました。このサイトには、臨床試験に関する質問と回答、ClinicalTrials.gov(ウェブサイト)(英語サイト)から臨床試験を見つける方法に関するガイダンス、その他のリソース、臨床試験参加者の個人的な経験談などが含まれています。臨床試験は、病気の予防、診断、治療のよりよい方法を見つけるために必要です。
ウェブサイト:https://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)
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謝辞
NCCIHは、この出版物の2013年の更新に貢献した以下の方に感謝しています:Cornelia Ulrich, Ph.D., German Cancer Research Center; Susan Folkman, Ph.D., University of California, San Francisco; Jun James Mao, M.D., University of Pennsylvania; Elizabeth Austin, M.S., Robin Baldwin, B.S.N., Barbara McMakin, M.S., and Jeffrey White, M.D., National Cancer Institute; and Carol Pontzer, Ph.D., and John (Jack) Killen, Jr., M.D., NCCAM
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。
- がんの症状と治療の副作用に対する心身療法:概要
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英語版改訂年月(翻訳時):2018年10月がんと診断された人の多くが補完療法を使用しています。アメリカ人による補完療法の使用に関する包括的なアンケート調査を含む2007年に実施された全国健康問診調査(National Health Interview Survey、NHIS)によると、がんと診断されたことのある回答者の65%が補完療法を使用したことがあるという結果でした。がんと診断されたことのある人は、全般的な健康、免疫の強化および疼痛管理のために、がんと診断されていない人よりも補完療法を使用している可能性が高いことがわかりました。
多くの研究からの知見は、鍼治療、マッサージ療法、マインドフルネス・ストレス軽減法、ヨガなどの一部の心身療法が、一部のがんの症状と治療の副作用に対処するために役立つ可能性があることを示唆しています。今回のダイジェスト版では、がん関連の症状と治療の副作用に対する心身療法に関する利用可能な研究の要約を提供します。
- がんの症状と治療の副作用に対する心身療法:科学的根拠
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英語版改訂年月(翻訳時):2018年10月鍼治療、マッサージ療法、音楽療法、瞑想、マインドフルネス・ストレス軽減法、ヨガなどの心身療法の中には、がんの症状と治療の副作用の管理に役立つ可能性を示唆する科学的根拠(エビデンス)があります。米国統合腫瘍学会(Society for Integrative Oncology)の2009年の統合腫瘍学における補完療法および植物療法に関する診療ガイドラインでは、不安、気分障害、慢性疼痛の軽減、がん患者の生活の質改善に対して、集学的治療アプローチの一環として心身療法を勧告しています。統合腫瘍学会は、2017年に乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づく統合医療の使用に関するガイドラインを公表しました。そこでは、不安・ストレス軽減に対して音楽療法、瞑想、ストレス解消法、ヨガ、うつ・気分障害に対して瞑想、リラクゼーション法、ヨガ、マッサージ、音楽療法の利用、生活の質の改善に対して瞑想、ヨガの利用、化学療法による悪心・嘔吐の軽減に指圧療法と鍼治療をそれぞれ勧告しています。そのガイドラインでは、乳がん治療に関連した副作用の管理について、経口サプリメントの使用を支持する有力なエビデンスはないと述べています。米国胸部学会が2013年に肺がんに関する補完療法・統合医療に関するガイドラインを公表しています。これらのガイドラインより科学的なエビデンスに基づく勧告を以下に紹介します。
鍼治療
入手可能なデータによると、鍼治療は、がん治療の化学療法による悪心・嘔吐の管理に役立つ可能性が示唆されています。鍼治療が、痛み、治療関連のホットフラッシュ(ほてり)、口腔乾燥症などの症状を緩和するかどうかを判断する十分なエビデンスはありません。
研究でわかったことは?
多くのランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビューを基にした統合腫瘍学会のいくつかの診療ガイドラインや、米国胸部学会のガイドラインでは、鍼治療が、がんの関連症状および治療の副作用に対し、いくつかの効果が証明されていると報告しています。
- 2009年に公表された統合腫瘍学会の診療ガイドライン(英語サイト)では、痛みが十分に管理されていない場合、ほかの治療に関連する副作用が顕著な場合、化学療法関連または外科麻酔による悪心・嘔吐が十分に管理されていない場合、鎮痛剤の減薬を臨床的な目標としている場合などに、補完療法として鍼治療を勧告しています。倦怠感またはホットフラッシュなど、ほかの症状に関する鍼治療の利益は確立されていません。
- 2017年に統合腫瘍学会が乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づく統合医療に関するガイドライン(英語サイト)を公表し、化学療法による悪心・嘔吐に対し、指圧療法および鍼治療を勧告しています。
- 2017年に米国がん研究所が公表した学術誌のモノグラフ(英語サイト)では、鍼治療が化学療法による悪心・嘔吐に有用であるという一般的な共通認識があるものの、これらは主に現在の制吐薬ガイドラインよりも以前の研究に基づくものであると述べています。鍼治療が、現在の標準的な制吐薬治療以上の効果があるかどうかについては、わかっていません。しかし、2015年に報告された70人を対象としたランダム化比較試験では、化学療法による遅発性の悪心・嘔吐の予防に、鍼治療がオンダンセトロンと同等の効果があることが示されました。鍼治療群の参加者のほうが、有害事象が少なく生活の質(QOL)が改善したようにも思われました。
- 2013年に米国胸部学会(American College of Chest Physicians)が公表した肺がん患者のための補完療法・統合医療のガイドライン(英語サイト)では、鍼治療が化学療法または放射線治療による悪心・嘔吐の補助的治療の選択肢となることを提言しています。そのガイドラインでは、鍼治療は、がん関連の痛みおよび末梢神経障害がうまく制御されていない場合にも、補助的治療の選択肢となることを提言しています。
- 2017年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)では、844人の乳がん患者を対象とした13件のランダム化比較試験を評価し、鍼治療は更年期障害の症状を有意に緩和したが、ホットフラッシュに効果がなかったことが明らかになりました。
- 2015年のコクランレビュー(英語サイト)では、285人を対象とした5件の研究を評価し、鍼治療が成人におけるがんの痛みの軽減に効果があるかどうかを決定するエビデンスは十分ではないと結論付けました。
- 2013年のコクランレビュー(英語サイト)では、口腔がんの放射線治療の研究4件を含む、口腔乾燥症の人を登録した9件の研究を評価し、鍼治療が放射線治療後のドライマウスの患者の唾液分泌量をわずかに増加した質の低いエビデンスがいくつか認められたと結論付けました。2018年のシステマティックレビューでは、鍼治療が口腔乾燥症・唾液分泌不全のエビデンスに基づいた治療の選択肢となるかどうかを決定するエビデンスは、十分ではないことが示されました。
安全性
鍼師が滅菌鍼を使用して適切な手順で行う限り、鍼治療によって合併症が起こることはまれです。化学療法および放射線療法は免疫抑制を起こしうるため、鍼師はこれらの患者を治療する際には衛生的な刺鍼操作を順守する必要があります。
マッサージ療法
一部の研究では、マッサージ療法が、がん患者の痛みや不安に有用である可能性を示唆するものがあります。しかし、研究の知見には一貫性がありません。
研究でわかったことは?
- 統合腫瘍学会が公表した2009年の診療ガイドライン(英語サイト)では、不安や痛みを経験する患者に対して、集学的治療の一環として、がん医療の訓練を受けたマッサージ療法士が行うマッサージ療法の考慮を勧告しています。
- 2017年、統合腫瘍学会は乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づいた統合医療の使用に関するガイドライン(英語サイト)を公表し、積極的治療後の乳がんサバイバーの気分障害を改善するためのマッサージ療法の使用を勧告しています(グレードB)。この勧告は、6件の試験の結果に基づいています。
- 2013年に米国内科学会が公表した診療ガイドライン(英語サイト)では、マッサージ療法は、不安や痛みが通常診療で適切に管理されていない肺がん患者に対する集学的がん支持療法プログラムの一環として提案されています。
- 19件の小規模試験(参加者1,274人)に関する2016年のコクランレビュー(英語サイト)により、アロマセラピーを用いた、または用いないマッサージ療法によって、がん患者の痛みと不安が緩和する可能性があることを示唆するいくつかの試験が認められました。しかし、エビデンスの質は非常に低く、結果は一貫していませんでした。
- 16件の試験に関する別の2016年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)では、痛み、倦怠感、不安の治療のための積極的な介入対照と比較して、利用可能なエビデンスに基づきマッサージ療法に対する弱い推奨が示唆されていると結論づけられました。
安全性
- 潜在的な有害作用を避けるために、マッサージ療法士は、医療スタッフの許可なしに深く強い圧をかけるべきではありません。また、腫瘍のある部位または血栓があるとわかっている部位、または放射線治療後に敏感になっている皮膚の場所など特定の部位は避ける必要があります。
マインドフルネス・ストレス軽減法
マインドフルネス・ストレス軽減法(瞑想訓練の一種)が、がん患者のストレス対処に有用である可能性を示唆するエビデンスがあります。
研究でわかったことは?
- 2009年に統合腫瘍学会が公表した診療ガイドライン(英語サイト)では、不安、気分障害、慢性疼痛の軽減、生活の質(QOL)改善のための集学的治療アプローチの一環として、マインドフルネス・ストレス軽減法などの心身療法を勧告しています。
- 2017年に統合腫瘍学会は、乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づいた統合療法の使用に関する診療ガイドライン(英語サイト)を公表し、瞑想を不安・ストレスの軽減に勧告(グレードA)、うつ・気分障害の軽減に勧告(グレードA)、生活の質の改善に勧告(グレードA)しています。
安全性
- 瞑想は一般的に、健康的な人には安全であるとされています。しかし、身体的制約のある人は、動きを伴う特定の瞑想に参加できない可能性があります。
- まれに、瞑想が不安障害およびうつなどの精神的な症状がある人に対し、症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性を示した報告があります。
ヨガ
乳がんの女性に関する複数の研究では、ヨガは、倦怠感や睡眠障害を軽減、うつや不安を軽減、生活の質(Quality of Life:QOL)を改善する可能性が示されています。ほとんどのヨガに関する研究は、乳がんの女性に焦点をあてたもので、ほかのがん種に対するヨガの研究はあまり知られていません。
研究でわかったことは?
- 2013年の米国胸部学会のガイドライン(英語サイト)では、肺がん患者の倦怠感や睡眠障害を軽減し、気分や生活の質(QOL)を改善する集学的治療アプローチの一環として、ヨガを提示しています。
- 2009年の統合腫瘍学会の診療ガイドライン(英語サイト)では、不安、気分障害、慢性的な痛みを軽減し、生活の質(QOL)を改善する集学的治療アプローチの一環として、ヨガなどの心身療法を勧告しています。
- 2017年に、統合腫瘍学会は、乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づいた統合療法の使用に関するガイドライン(英語サイト)を公表し、乳がん患者の不安軽減(グレードB)、乳がんの女性の気分障害およびうつ症状の改善(グレードB)、乳がん患者の生活の質(QOL)改善(グレードB)のためにヨガを勧告しています。
- 2017年のコクランレビュー(英語サイト)では、2166人の乳がん女性を対象とした24件の研究を評価し、無治療と比較した場合、健康に関連した生活の質(QOL)を改善し、倦怠感および睡眠障害を軽減する支持的介入として、また、心理社会的・教育的介入と比較した場合、うつ、不安、倦怠感を軽減する支持的介入として、ヨガの推奨を支持する中等度の質のエビデンスがあると結論付けました。
- 2015年に報告されたランダム化比較試験(英語サイト)の二次解析のデータは、60歳以上のがんサバイバー97人のがん関連の全般的な倦怠感に対する4週間のヨガ介入を評価しました。ヨガ介入の参加者では、標準ケア群の参加者と比較して、がん関連倦怠感、身体的倦怠感、精神的倦怠感、全般的な副作用の負担に有意な軽減を報告しました。
安全性
- ヨガは身体活動であるため、がん患者はヨガを始める前に医療スタッフと話し合い、ヨガの安全ではない側面についても知っておくことが重要です。
催眠療法
研究結果の中には、催眠療法が、生検または手術などのがん治療関連の疼痛、不安、苦痛の管理に役立つ可能性があるとするものがあります。
研究でわかったことは?
- 統合腫瘍学会は、乳がんの治療中および治療後のエビデンスに基づいた統合医療の使用に関するガイドライン(英語サイト)を公表し、(ひとつの研究グループによる2件の試験によると)治療中の倦怠感に催眠療法の使用を考慮できる可能性を提示しています(グレードC)。これらのガイドラインは、催眠療法が、痛みの治療にも勧告できる可能性も提示しています(グレードC)。
安全性
- 催眠療法は、催眠療法の訓練を受けた医療専門家が行う際には、安全だと考えられます。
- 自己催眠は、ほとんどの人に安全だと考えられます。自己催眠による傷害の症例報告はありません。
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監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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