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ビタミンD
Vitamin D
- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年3月24日
ビタミンDとは?その働きは?
ビタミンDは、いくつかの食品に含まれ、強い骨を維持するためや健康のために必要な栄養素です。ビタミンDは、身体が食料品やサプリメントからカルシウム(骨の主要成分のひとつ)を吸収するのを助けることによって、強い骨を維持します。ビタミンDの摂取が少なすぎる人は、骨が軟化し、細くなり、脆くなる病気を発症するおそれがあります。この病気は、小児の場合は「くる病」、成人の場合は「骨軟化症」と呼ばれています。
ビタミンDは、その他多くの意味において身体にとって重要な栄養素です。たとえば、筋肉を動かすため、神経が脳と身体のあらゆる部位との間のメッセージを伝達するため、免疫系が体内に侵入してくる細菌やウイルスを撃退するために不可欠です。カルシウムと共にビタミンDもまた高齢者を骨粗鬆症から守ります。ビタミンDは全身の細胞内に存在しています。
ビタミンDの必要摂取量は?
ビタミンDの必要摂取量は、年齢によって異なります。1日当たりのビタミンD所要量は年齢によって異なります。下記は、米国食品栄養委員会(米国の専門家グループ)による年齢別1日当たりの平均推奨摂取量です(国際単位IUで表示)。
ライフステージ | 摂取推奨量 |
---|---|
生後12カ月 | 400 IU |
小児1-13歳 | 600 IU |
10歳代14-18歳 | 600 IU |
成人19-70歳 | 600 IU |
成人71歳以上 | 800 IU |
妊婦および授乳婦 | 600 IU |
どのような食品からビタミンDを摂取できますか?
ビタミンDを天然に含む食品は非常に限られています。アメリカ人の食生活において、ビタミンDのほとんどが強化食品から摂取されています。
- サケ、マグロ、サバといった脂肪性の魚はビタミンDの最良の供給源です。
- 牛のレバー、チーズ、卵黄には少量のビタミンDが含まれています。
- キノコ類もビタミンDが含まれています。最近では、紫外線に当ててビタミンDの含有量を増加させたキノコも売られています。
- 米国で流通している牛乳のほとんどが1クォート(=0.946ℓ)当たり400 IUのビタミンDで強化されています。ただし、チーズやアイスクリームなど牛乳から作られる食品は一般に強化されていません。
- ビタミンDは、多くの朝食用シリアル、いくつかの銘柄のオレンジジュース、ヨーグルト、マーガリン、豆乳に添加されています。各製品ラベルで確認できます。
ビタミンDは太陽から摂取できますか?
皮膚が直射日光に当たると、体内にビタミンDが生成されます。ほとんどの人がこの手段でビタミンD所要量の一部を得ています。屋内で窓越しに日光に当たってもビタミンDは生成されません。曇りの日、日陰、皮膚の色が黒い人も、皮膚によるビタミンD生成量を低下させます。
日光はビタミンDの生成にとっては大切なものですが、皮膚癌のリスクを上げないためには皮膚の日光曝露は制限するのが賢明です。数分以上にわたって日差しの下に出る際には、紫外線を遮る衣類などを着用し、SPF8以上の日焼け止めを塗りましょう。日焼けマシーンの利用もビタミンDを生成しますが、日光曝露と同様に皮膚癌のリスクとなります。
日光を避けている人や、日焼け止めや衣服で身体を覆っている人は、食生活にビタミンDを多く含む食品を取り入れるか、サプリメントを摂るのがよいでしょう。ビタミンDの推奨摂取量は、日光曝露の少ない場合を仮定して設定されています。
どんなビタミンDサプリメントが市販されていますか?
サプリメント(と強化食品)に使われるビタミンDには、D2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の二種類があります。いずれも血中のビタミンDを増加させます。
充分にビタミンDは摂取できていますか?
ビタミンDは食品、サプリメント、そして日光から摂取することができるため、体内のビタミンD状態を最も正しく知るためには、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度を測ります。この血中濃度は、1リットル当たりのナノモル数(nmol/L)、もしくは、1ミリリットル当たりのナノグラム数(ng/mL)で表示されます。1nmol/Lは、0.4ng/mLに相当します。
一般に、30nmol/L(12ng/mL)を下回る血中濃度は骨や健康を保つには低すぎ、125nmol/L(50ng/mL)を超える血中濃度は恐らく高すぎます。ほとんどの人にとって、50nmol/L(20ng/mL)かそれを超える程度が十分な値です。
上記の数値に照らして判断した場合、ビタミンDが欠乏しているアメリカ人はいますが、過多のアメリカ人はほとんどいません。概して、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度は、高齢者よりも若者、女性よりも男性のほうが高い傾向にあります。人種別では、非ヒスパニック系黒人の同血中濃度が最も低く、非ヒスパニック系白人が最も高い傾向にあります。アメリカ人大多数の血中濃度は75 nmol/L(30 ng/mL)未満です。
十分なビタミンDを摂取していない集団の可能性も考えられます:
- 母乳で育てられた(ている)幼児。母乳はビタミンDを豊富に含んでいません。母乳で育てられた(ている)幼児には、毎日400 IUのビタミンDサプリメントを与えましょう。
- 高齢者。高齢者の皮膚は若い時と比べて日光からのビタミンD生成効率が悪く、また、ビタミンDを活性型に変換する腎機能も低下しています。
- 皮膚の色の濃い人。濃い色の皮膚は、日光からビタミンDを生成する能力が低下しています。
- クローン病やセリアック病など脂質処理機能に障害のある人。ビタミンDの吸収には脂肪が必要です。
- 肥満の人。体脂肪がビタミンDに結合し、ビタミンDが血中に入るのを阻害します。
充分にビタミンDを摂らなかったらどうなりますか?
ビタミンDを十分に食品から摂取または吸収していない、日光曝露が限られている、あるいは、腎臓がビタミンDを活性型に変換することができない人は、ビタミンDが欠乏するおそれがあります。小児期におけるビタミンD欠乏は、骨が軟化し変形する「くる病」の要因になります。くる病は稀な疾患ですが、現在も発生しており、アフリカ系アメリカ人の乳幼児と小児によくみられます。成人期におけるビタミンD欠乏は、骨軟化症をもたらし、骨の痛みや筋力の低下を起こします。
ビタミンDが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
糖尿病や高血圧、そして多発性硬化症といった自己免疫疾患などの病気や健康状態と、ビタミンDとの関連について研究が行われています。ここでは骨障害やいくつかの種類の癌とビタミンDとの関連性について紹介します。
- 骨障害
- 年齢を重ねるにつれ、何百万もの人(そのうち多くは女性ですが男性も該当)が骨粗鬆症を発症するか、発症リスクをかかえています。発症すると、骨は脆弱化し、転倒によって骨折する場合もあります。骨粗鬆症は、長期にわたるカルシウムとビタミンDの摂取不足により発生します。ビタミンD3(1日当たり700~800 IU)とカルシウム(1日当たり500~1,200 mg)のサプリメントを併せて摂ることで、62~85歳の高齢者の骨量減少と骨折リスクが低減することが示されています。男性も女性も、骨粗鬆症の予防や治療計画の一部として摂取すべきビタミンD(とカルシウム)の量について医療スタッフに相談してみましょう。
- がん
- いくつかの研究で、ビタミンDが結腸直腸癌や、もしかすると前立腺癌や乳癌をも予防する可能性があることが示唆されています。しかし、血中のビタミンD濃度が高いほど膵臓癌の発生率が高まるという関連性も指摘されています。低ビタミンD状態は、がんのリスクを増大させるのか、高ビタミンD状態は、がんを予防するのか、それとも人によっては逆にがんのリスクを増大させるのか、について語るには時期尚早というのが現状です。
ビタミンDが害を及ぼす可能性はないのですか?
血中ビタミンDの量が多くなりすぎた場合、有害となり得ます。毒性の兆候には吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少などが挙げられます。そしてカルシウムの血中濃度を上昇させることにより、過剰のビタミンDは、錯乱、見当識障害、心拍リズム異常を発生させることがあります。また、過剰なビタミンDは腎臓を損傷するおそれがあります。
ビタミンDの安全な上限は、幼児であれば1日当たり1,000~1,500 IU、1~8歳の小児であれば1日当たり2,500~3,000 IU、9歳以上の小児、成人、妊娠中あるいは授乳中の女性(十代女性を含む)であれば1日当たり4,000 IUです。ビタミンD毒性の原因は、ほぼ例外なくサプリメントの過剰摂取です。身体は自身が生成するビタミンD量を制限することができるため、日光への過剰曝露がもとでビタミンD中毒が発生することはありません。
知っておくべきビタミンDの相互作用はありますか?
ほとんどのサプリメントと同様、ビタミンDのサプリメントも服用中の医薬品や摂取中の他のサプリメントと相互に作用したり干渉したりする場合があります。その例は以下の通りです:
- プレドニゾンや、その他炎症抑制効果のある副腎皮質ステロイド剤は、身体によるビタミンDの処理作用を弱め、カルシウムの吸収低下と骨量減少を引き起こします。
- 肥満治療薬オルリスタット(orlistat、商標名Xenical® 、Alli®)とコレステロール低下薬コレスチラミン(cholestyramine、商標名Questran®、LoCholest®、Prevalite®)は、ビタミンDおよびビタミンD以外の脂溶性ビタミン(A、E、K)の吸収を低下させます。
- 癲癇発作の予防や抑制に使用されるフェノバルビタールとフェニトイン(商標名Dilantin®)はビタミンDの分解量を増やし、カルシウムの吸収を低下させます。
あなたが服用しているすべてのサプリメントおよび医薬品について、担当の医師、薬剤師、その他の医療スタッフに話してください。利用しているサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こす可能性はないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害する可能性がないのかについて教えてくれるでしょう。
ビタミンDに関する詳しい情報を得たい時は?
- ビタミンDに関する一般的な情報:
- ビタミンD含有食品についての詳細な情報:
- サプリメント購入に関するアドバイス:
- 政府の食事ガイダンスシステムに関する情報:
【免責事項】
ダイエタリーサプリメント室が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。サプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善かについて尋ねたい場合は、医療スタッフ(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。この文書内で言及している個別の商品名は、その製品を推奨しているものではありません。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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