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ビタミンA
Vitamin A
- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等はアメリカ人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご覧ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終改訂年月(翻訳時):2020年2月14日
このファクトシートは一般向けの平易なビタミンAの概要です。詳細については、「医療関係者向け:ビタミンA」をご覧ください。
ビタミンAとは?その働きは?
ビタミンAは脂溶性ビタミンで、多くの食物に天然に含まれており、正常視力、免疫システムおよび生殖に欠かせないものです。また心臓、肺、腎臓やその他の臓器が適切に機能するのを助けます。
ビタミンAには、2種類のタイプがあります。食肉、鶏肉、魚や乳製品に含まれる既成ビタミンA (レチノール及びそのエステル)と、果物や野菜、その他の植物由来の製品に含まれるプロビタミンAです。食物およびサプリメントに含まれる最も一般的なプロビタミンAは、β-カロテンです。
ビタミンAの必要摂取量は?
ビタミンAの必要摂取量は、年齢や性別によって異なります。下表に1日の平均摂取推奨量を、レチノール活性当量(retinol activity equivalents:RAE)のマイクログラム(μg)で示します。
ライフステージ | 摂取推奨量 |
---|---|
生後0〜6カ月 | 400 µg RAE |
幼児7-12カ月 | 500 µg RAE |
小児1-3歳 | 300 µg RAE |
小児4-8歳 | 400 µg RAE |
小児9-13歳 | 600 µg RAE |
10歳代男子14-18歳 | 900 µg RAE |
10歳代女子14-18歳 | 700 µg RAE |
成人男性 | 900 µg RAE |
成人女性 | 700 µg RAE |
10代の妊婦 | 750 µg RAE |
妊娠中の女性 | 770 µg RAE |
10代の授乳婦 | 1,200 µg RAE |
授乳婦 | 1,300 µg RAE |
どのような食物からビタミンAを摂取できますか?
ビタミンAは多くの食物中に天然に含まれますが、牛乳やシリアルなどの食物に添加する場合もあります。以下のようなさまざまな食物を摂取することによって、ビタミンAの推奨量を摂取することができます:
- 牛レバーやその他の臓器肉(ただしコレステロール含有量が高いので摂取量を制限すること)
- 鮭などの魚類
- 青菜の野菜やその他の緑、オレンジ、黄色の野菜(ブロッコリー、ニンジン、カボチャなど)
- カンタロープメロン、アンズやマンゴーなどの果物
- アメリカ人にとって主要ビタミンA源である乳製品
- 朝食用強化シリアル
どんなビタミンAサプリメントが市販されていますか?
ビタミンAは、サプリメントから摂取することもできます。通常サプリメントには、酢酸レチニルまたはレチニルパルミテート(既成ビタミンA)、β-カロテン(プロビタミンA)または既成ビタミンAとプロビタミンAの両方が含有されています。ほとんどのマルチビタミン・ミネラルサプリメントはビタミンAを含んでいます。ビタミンAだけを含むサプリメントもあります。
十分にビタミンAは摂取できていますか?
アメリカ人の多くは十分にビタミンAを摂取しており、ビタミンA欠乏症はまれです。しかし、特定の集団では他と比べて十分にビタミンAを摂取できていない可能性があります:
- 早産児(1歳になるまではビタミンAの値が低い場合が多い)
- 発展途上国の乳幼児、小児、妊婦および授乳中の女性
- 嚢胞性線維症の患者
十分にビタミンAを摂らなかったらどうなりますか?
ビタミンA欠乏症はアメリカではまれですが、多くの発展途上国では一般的によくみられます。小児および妊婦における最も一般的なビタミンA欠乏症の症状は、眼球乾燥症と呼ばれる眼の病気です。眼球乾燥症はうす暗いところで物が見えなくなる病気で、放置しておくと失明につながりかねません。
ビタミンAが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
ビタミンAが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。以下は、研究成果の例です。
- がん
- β-カロテンを含む食物を多く摂取する人は、肺癌や前立腺癌などのある種のがんにかかるリスクは低いかもしれません。しかしこれまでの研究では、ビタミンAまたはβ-カロテンを補充することで、がんを予防したり、がんにより死亡する可能性を低くしたりできるとは証明されていません。実際、高用量のサプリメントを摂取した喫煙者では、肺癌にかかるリスクが高まったことが研究により明らかになっています。
- 加齢黄斑変性
- 加齢黄班変性症(Age-related macular degeneration:AMD)は、高齢者における失明の最も一般的な原因の一つで、加齢により視野の中心が欠ける症状がみられます。AMDの患者において、β-カロテン含有または非含有の抗酸化物質、亜鉛、銅を含むサプリメントが失明率を低下させるのに有望であったことが証明されています。
- 麻疹
- ビタミンA欠乏症(北米ではまれ)の小児が麻疹にかかった場合、重症になる傾向があります。しかし高用量のビタミンAサプリメントを摂取すると、麻疹による発熱や下痢が軽くすむ可能性があります。また、ビタミンA欠乏症の発生率が高い発展途上国の小児が麻疹で死亡するリスクを下げることもできます。
ビタミンAが害を及ぼす可能性はありますか?
ある種のビタミンAを高用量摂取すると有害になります。
既成ビタミンA(通常サプリメントか薬剤由来)を過剰に摂取すると、めまい、悪心、頭痛、昏睡を生じ、場合によっては死に至ることもあります。また妊婦が既成ビタミンAを過剰摂取すると、出生異常を引き起こす場合があります。妊娠の可能性のある女性は、高用量ビタミンAサプリメントを摂取すべきではありません。
β-カロテンや他の種類のプロビタミンAを高用量摂取すると、皮膚が黄色っぽいオレンジ色に変わる場合がありますが、なんら害はありません。β-カロテンの過剰摂取によって、出生異常や既成ビタミンAの過剰摂取によりおきるその他の重篤な症状がおこることはありません。
ビタミンAの安全な上限値は下表の通りです。この値は、医療上の理由で医師の指導下でビタミンAを服用している人には該当しません。β-カロテンおよびその他のプロビタミンAの安全上限値は設定されていません。
年齢 | 安全な上限値 |
---|---|
生後0〜12カ月 | 600 µg |
小児1-3歳 | 600 µg |
小児4-8歳 | 900 µg |
小児9-13歳 | 1,700 µg |
10歳代14-18歳 | 2,800 µg |
成人19歳以上 | 3,000 µg |
知っておくべきビタミンAの相互作用はありますか?
ビタミンAサプリメントは、あなたが服用する薬と相互作業が認められたり、またはその働きを阻害したりする可能性があります。ここでは、例をいくつか紹介しています。
- 肥満治療薬のオルリスタット(Alli®, Xenical®)は、人によってはビタミンAの吸収が減少し、血中濃度が低下する場合があります。
- 数種の合成ビタミンAが処方薬に使われています。乾癬治療薬アシトレチン(Soriatane®)やT細胞リンパ腫の皮膚病変の治療に使われるベキサロテン(Targretin®)などです。これらの薬剤をビタミンAサプリメントと併用すると、血中のビタミンA値が高くなる場合があり危険です。
あなたが摂取・服用しているすべてのサプリメントおよび医薬品について、担当の医師、薬剤師、その他の医療スタッフに話してください。利用しているサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こす可能性はないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害する可能性がないのかについて教えてくれるでしょう。
ビタミンAと健康的な食事
米国連邦政府が公表している「アメリカ人のための食生活の指針(Dietary Guidelines for Americans)」(英語サイト)では、「栄養は主として食物から摂取すべきです。食物には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。サプリメントは、特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるのには役立つかもしれません」と述べています。健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針) (英語サイト)と米国農務省の食事の指針システム、 MyPlate(私の食事)(英語サイト)を確認しましょう。
ビタミンAに関する詳しい情報を得たい時は?
- ビタミンAに関する一般的な情報:
- 医療関係者向け:ビタミンA
- Viamin A(ビタミンA)MedilinePlus®
- ビタミンA含有食物についての詳細な情報:
- 米国農務省(U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central (フードデータセントラル)(英語サイト)
- USDAのビタミンAの食物またはビタミンA含有量別栄養成分表(英語サイト)
- USDAのベータカロテンの食物またはベータカロテン含有量別栄養成分表(英語サイト)
- サプリメント購入に関するアドバイス:
- 健康的な食事に関する情報:
【免責事項】
ダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。サプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善かについて尋ねたい場合は、医療スタッフ(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。この文書内で特定の製品やサービス、または機関や専門家団体からの推奨について言及した場合でも、その製品、サービス、専門家のアドバイスに対しダイエタリーサプリメント室(ODS)が支持を表明するものではありません。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2020年12月30日
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