海外の情報
マルチビタミン・ミネラル
Multivitamin/mineral Supplements
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2019年11月22日
■ 目次
- マルチビタミン/ミネラルサプリメント(MVM) とは?
- どんなMVMサプリメントが市販されていますか?
- どのような人がマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを取っているのでしょうか?
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取すべきですか?
- マルチビタミン/ミネラル(MVM)サプリメントが害を及ぼす可能性はないのですか?
- 知っておくべきマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの相互作用はありますか?
- どのような種類のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを選べばよいでしょうか?
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに関する詳しい情報を得たい時は?
マルチビタミン/ミネラルサプリメント(MVM) とは?
マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、ビタミンおよびミネラルを配合したサプリメントであり、時に他の成分を含むこともあります。これらは、マルチ、マルチプル、あるいは単にビタミンなどとさまざまな名称で呼ばれています。マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメント中のビタミンとミネラルは体内で特有の役割を果たしています。それぞれの役割については「サプリメントファクトシート」というサイトを参照してください。
どんなMVMサプリメントが市販されていますか?
さまざまな種類のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが市販されています。製造者はその製品に含まれるビタミンやミネラルあるいはその他の成分について、含有量とともに種類の選択をすることができます。
最も広く利用されているマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの中の一つが、全種類、またはほとんどすべての種類のビタミンとミネラルを、推奨用量に近い量で含む1日1回摂取する基本的な製品です。それよりさらに強力なマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、毎日の摂取が2錠以上となる錠剤として市販されています。製造者は、特別な目的、例えば、より高い身体能力やエネルギーを発揮するため、体重をコントロールするため、あるいは免疫力を高めるためなどに対して、他のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを推奨しています。このような製品は、ビタミンやミネラルに加えて、エキナセアやグルコサミンなどの生薬や他の成分を含むことが多いです。
人々が取るべき栄養素の推奨量は年齢や性別により異なっており、栄養所要量(RDA)および目安量(AI)として示されています。各栄養素の取るべき量は1日の摂取量(DV)としてサプリメントと食物のラベルに記載されています。1日の摂取量は、多くは栄養所要量、あるいは目安量に近い数字です。そのラベルを見れば、その製品を1日摂取したときに1日の摂取量の何パーセントを取れるかがわかります。
どのような人がマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを取っているのでしょうか?
研究によれば、アメリカ人の3分の1以上はマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取しています。およそ4分の1の幼児がマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取していますが、思春期の子供は最も摂取していないようです。成人では年齢が上がると共に使用者も増え、71歳までには40%を超える人がマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを取っています。
女性、年配者、高い教育を受け、高収入、健康的な食生活とライフスタイル、そして体重の軽い人、アメリカの西部に住んでいる人がより多くマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取しています。喫煙者、特定の民族や人種(例えば、アフリカン・アメリカン、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン)に属する人々は、毎日、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取するようなことはないようです。
マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
人々はさまざまな理由からマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取しています。以下は研究により、ビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取すると栄養素の摂取量も増え、健康が促進され、疾患のリスクが低下することが明らかにされた例です。
- 栄養素の摂取量の増加
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂ると栄養素の摂取量も増え、必要量を食物だけから摂取することができない場合でもビタミンとミネラルの推奨量を摂取することができます。しかし、特に基本的な1日1回摂取の製品の他にもマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取している人は、鉄分やビタミンA、亜鉛、ナイアシン、葉酸などの栄養素を過剰に摂取する可能性もあります。人々の中には、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを食事の、あるいは栄養的な「保険」と して摂取する人もいます。皮肉なことに、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取する人は摂取しない人よりも、食物からより多くのビタミンとミネラルを消費する傾向があります。また、食事のみから十分な栄養素を最も摂りにくい人は、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントから恩恵を受ける可能性があるにもかかわらず、最もマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取していないようです。
- 健康の促進と慢性疾患の予防
- ある種の健康問題を抱える人にとって、特定のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは役に立つ可能性があります。例えば、ある研究によれば、特定の数種類のビタミンとミネラルを高用量処方すると、加齢性黄斑変性症患者の視力喪失を遅らせることもあります。マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが、ある特定の男性集団にとって、がんの全体的なリスクを低下させる可能性があるという研究もありますが、大半の研究では、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取している健康な人が、がん、心疾患または糖尿病にかかる可能性を低下させることはない、とされています。最近の研究では、より健康で長生きをするために、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの使用を推奨したり反対したりすることはできないとされています。我々が、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが健康上利益になるかどうかについてほとんど知らない理由の一つは、多くの研究では、異なる製品が使われており、そのため組み合わせのパターンを見つけるために研究結果を比較するのが困難であることがあげられます。数多くのマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントが入手でき、製造者も自由にその成分を変えられます。そのため、研究者がビタミンとミネラルの、どの特定の配合が健康に影響を及ぼすかを調査することが難しくなっています。また、より健康な食事とライフスタイルを持つ人は、よりサプリメントを摂取する傾向にあり、そのことがマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの効果を特定できにくくしています。
マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取すべきですか?
マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、健康的な食事に大切なさまざまな食物を食べることに取って代わることはできません。食物はビタミンやミネラル以上のものを提供します。また、健康上効果があると思われる食物繊維や他の成分も含有しています。しかし、食物からだけでは十分なビタミンやミネラルを摂取できない人、低カロリー食を実行している人、食欲があまりない人、あるいは厳格な菜食主義者や完全菜食主義者などのように、ある種の食物を避けている人はマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取することを考えた方が良いかもしれません。医療スタッフは、医学的な問題を抱えている患者に対して、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを推奨することもあるかもしれません。
中には、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに含まれる栄養素を摂取することで効果を得られる人もいます。例えば:
- 妊娠の可能性のある女性は、生まれてくる新生児の脳と脊椎に先天異常が生じるリスクを減少するために、1日に400mcgの葉酸を栄養強化食品やサプリメントから、または両方から摂取すべきでしょう。
- 妊婦は医療スタッフが推奨するように、鉄分のサプリメントを摂取するべきです。妊娠中のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの摂取は鉄分補給になると考えられています。
- 完全母乳または一部母乳で育てられる乳幼児はビタミンDサプリメントを1日400IU摂取すべきであり、母乳ではなくビタミンD強化フォーミュラやミルクを1日約1クォート(=0.946ℓ)未満しか飲まない乳幼児もまた同様に摂取すべきです。
- 閉経後の女性では、カルシウムとビタミンDサプリメントが骨の強度を増し、骨折のリスクを低下させる可能性があります。
- 50歳を超える人は、食物に本来あるビタミンB12を十分に吸収できない可能性があるため、推奨されている量のビタミンB12を栄養強化食品やサプリメントから、または両方から摂取すべきでしょう。
マルチビタミン/ミネラル(MVM)サプリメントが害を及ぼす可能性はないのですか?
必要最小限のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取することは、健康にリスクを与えることはないと思われます。しかし、ビタミンとミネラルが添加されたシリアルや飲み物のような強化食品や強化ドリンク、または、それ以外のサプリメントを摂取する場合は、摂取するマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントがどのビタミンやミネラルにおいても安全な摂取量の上限を超えないよう確認しなくてはなりません。(Online DRI tool(英語サイト)を参考にして、各栄養素の摂取してよいレベルの上限を確認しましょう。)
特に、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに含まれるビタミンAとベータカロチン(体内に入るとビタミンAに変換されます)、および、鉄分の量には注意しましょう。
- 妊娠中に過剰な量のビタミンAを取ると、新生児に先天異常が生じるリスクを高める可能性がありますが、ベータカロチンではこのようなリスクはありません。喫煙者は、過去に喫煙者だった人も含め、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを、大量のビタミンAおよびベータカロチンと一緒に摂取すべきではありません。なぜなら肺がんを発症するリスクを高める可能性があるためです。
- 成人男性および閉経後の女性は、医師から鉄欠乏症または鉄不足と言われた場合を除き、鉄含有量が18mg以上のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取すべきではありません。体が排泄できないほどの鉄分を摂取すると、鉄分は肝臓や心臓などの体内の組織や臓器にたまり、その組織や臓器を損傷させます。鉄分含有サプリメントは6歳未満の小児の中毒を起こす主要な原因であるため、鉄分含有の製品、例えば、小児用の噛み砕けるマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントや成人用の鉄分含有サプリメントは小児の手の届かない所に保管しなくてはなりません。
知っておくべきマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントの相互作用はありますか?
栄養素を推奨摂取量含有するマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、一つの重要な例外を除き、通常、薬物と相互作用を引き起こしません。血液凝固を低下させるワルファリンのような薬剤(商品名Coumadin®など)を服用していて、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントや、ビタミンKと一緒にサプリメントを摂取する場合は事前に医療スタッフに知らせましょう。ビタミンKは薬剤の効果を低下させるため、あなたが食物やサプリメントから通常消費するビタミンKの総量も考慮に入れて医師が薬剤の投与量を決めます。
どのような種類のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを選べばよいでしょうか?
医療スタッフと相談して、マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取するかどうか、また、摂取する場合はどのサプリメントがあなたに最もふさわしいかを決めると良いでしょう。必要最小限のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを摂取する場合でも、すべての、あるいは大半のビタミンおよびミネラルが、それぞれの1日の摂取量(DV)を超えないように注意すべきです。この基本的なマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、通常カルシウムとマグネシウムを低用量しか含んでないので、どちらか一方または両方を別に摂取する必要がある人もいるかもしれません。製品にはビタミンAおよび鉄分が過剰に含まれていないことを確認しましょう。
また、年齢、性別、妊娠などを考慮して自分に合ったマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントを選択しましょう。例としてあげれば、男性用のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは鉄分を全くかほとんど含有していません。高齢者用のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、通常、若年成人用より多くのカルシウムとビタミンD、B12を含む一方で、鉄分の含まれる量は少ないです。妊婦の出産前用のマルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントは、しばしばビタミンAをベータカロチンとして提供しています。
マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに関する詳しい情報を得たい時は?
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに関する一般的な情報:
- 政府の食事ガイダンスシステムに関する情報:
- サプリメント購入に関するアドバイス:
- マルチビタミン/ミネラル(MVM) サプリメントに関する一般的な情報:
【免責事項】
ダイエタリーサプリメント室が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。サプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善かについて尋ねたい場合は、医療スタッフ(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。この文書内で言及している個別の商品名は、その製品を推奨しているものではありません。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。