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カルシウム
Calcium
- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2019年12月6日
カルシウムとは?その働きは?
カルシウムは、多くの食品中に存在するミネラルです。丈夫な骨を保ち、多くの重要な機能を果たすために、体はカルシウムを必要とします。ほぼすべてのカルシウムは骨と歯に貯蔵され、その構造と硬さを維持しています。
また、筋肉を動かしたり、神経が脳と他の体の部分との間でメッセージをやり取りしたりするのにも、体はカルシウムを必要とします。また、カルシウムは体全体において血管内を血液が流れることや、ヒトの体のほぼすべての機能に影響するホルモンや酵素を放出することを促すために用いられます。
カルシウムの必要摂取量は?
カルシウムの必要摂取量は、年齢によって異なります。下表に1日の平均摂取推奨量を、ミリグラム(mg)で示します。
ライフステージ | 摂取推奨量 |
---|---|
生後6カ月 | 200 mg |
幼児7-12カ月 | 260 mg |
小児1-3歳 | 700 mg |
小児4-8歳 | 1,000 mg |
小児9-13歳 | 1,300 mg |
10歳代14-18歳 | 1,300 mg |
成人19-50歳 | 1,000 mg |
成人男性51-70歳 | 1,000 mg |
成人女性51-70歳 | 1,200 mg |
成人71歳以上 | 1,200 mg |
10代の妊婦および授乳婦 | 1,300 mg |
成人の妊婦および授乳婦 | 1,000 mg |
どのような食品からカルシウムを摂取できますか?
カルシウムは、多くの食品中に存在します。以下のような様々な種類の食品を食べることで、推奨量のカルシウムを摂取することができます。
- 米国では、多くの人にとって、牛乳、ヨーグルト、およびチーズがカルシウムの主な供給源とされています。
- ケール、ブロッコリー、および白菜は、カルシウムを摂取するのに適した野菜です。
- いわしやサーモンの缶詰など骨の軟らかい魚は、カルシウムの優れた動物性供給源です。
- 大部分の穀物(パン、パスタ、および栄養素の強化されていないシリアルなど)にはそれほどカルシウムは含まれていませんが、それらを頻繁に食べたり、あるいは大量に食べたりすることで、かなりの量のカルシウムを摂取することになります。
- カルシウムは、朝食用シリアル、フルーツジュース、大豆/米飲料、および豆腐などに添加されます。カルシウムが食品に添加されているか確認するには、その製品の表示を確認してください。
どんなカルシウムサプリメントが市販されていますか?
カルシウムは多くのマルチビタミン/ミネラルサプリメントに含まれますが、その量は製品によって異なります。カルシウムのみ、またはカルシウムと他の栄養素(ビタミンDなど)を含むサプリメントも出回っています。カルシウムの含有量を調べるためには製品ラベルを確認してください。
カルシウムサプリメントには主に、炭酸塩とクエン酸塩の2種類があります。炭酸カルシウムは高価ではありませんが、食品とともに摂取すると最も多く吸収されます。市販薬で一部の制酸薬(Tums®、Rolaids®など)には炭酸カルシウムが含まれています。1錠または1粒のグミタイプでカルシウム200~400mgを摂取したことになります。クエン酸カルシウムは、値段がより高めのサプリメントの剤形で、空腹時でも満腹時でも十分に吸収されます。また、胃酸が少ない人(50歳以上の人によく見られます)では、炭酸カルシウムよりもクエン酸カルシウムのほうがよく吸収されます。サプリメントや強化食品に他の形で含まれるカルシウムには、グルコン酸塩、乳酸塩、リン酸塩などがあります。
カルシウムは、1回に500mgを超えない量で摂取した時に最も多く吸収されます。このため、例えば1日当たり1,000mgのカルシウムをサプリメントから摂取する場合には、サプリメントを1度に服用するのではなく何回かに分けて服用する必要があります。
人によっては、カルシウムサプリメントを摂取すると、ガスがたまり、腹部膨満感や便秘になることがあります。このような症状が現れた場合には、1日を通してカルシウムを分けて摂取するか、または食事とともにサプリメントを摂取するか、あるいは摂取しているサプリメントのメーカーブランドまたはカルシウムの剤形を変更するなどしてお試しください。
充分にカルシウムは摂取できていますか?
多くの人の場合、食品から推奨されるカルシウムが得られていません:
- 9~13歳の男児
- 9~18歳の女児
- 50歳以上の女性
- 70歳以上の男性
食品とサプリメントからの全摂取量について考えてみると、多くの人(特に思春期女児)ではカルシウム摂取量が依然として足りませんが、もう少し年齢の高い女性では安全な上限摂取量を上回る可能性があります。詳細については、「医療者向けファクトシート:カルシウム」を参照してください。
特定の集団では他と比べて充分にカルシウムを摂取できていない可能性があります:
- 閉経後の女性。骨量が著しく減少しカルシウムも吸収されません。必要であれば、十分な量のカルシウムを食品やサプリメントから摂取すると、骨量減少の速度を緩やかにすることができます。
- 妊娠可能年齢であるものの、激しい運動や過度の食事制限(あるいはその両方)によって月経が停止している無月経の女性。その結果としてのカルシウム吸収量の減少、尿中のカルシウム排泄量の増加、新しい骨の形成の遅れに対処するために、十分な量のカルシウムを摂取する必要があります。
- 乳糖不耐症の人では、牛乳に含まれる天然の糖を消化することができず、少し多めの牛乳を1度に飲むと、腹部膨満、ガス、下痢などの症状が現れます。通常、このような人は、ヨーグルトや多くのチーズなど乳糖含有量の少ない他のカルシウム豊富な乳製品を食べたり、乳糖含有量の少ない牛乳または乳糖が含まれていない牛乳を飲んだりすることことで対応ができます。
- 完全菜食主義者(動物性食品を一切食べない菜食主義者)およびオボ・ベジタリアン(卵は食べるが乳製品は食べない菜食主義者)。彼らは、他の人の食事における主要なカルシウム源である乳製品を食べません。
以下に示す様々な要因が消化管から吸収されるカルシウムの量に影響します:
- 年齢:加齢に伴ってカルシウム吸収の効率が低下します。推奨されるカルシウム摂取量は、70歳以上になるとさらに高くなります。
- ビタミンDの摂取:ビタミンDは一部の食品に含まれます。太陽に当たるとビタミンDが体内で生成され、カルシウムの吸収が促進されます。
- 食品に含まれる他の成分。シュウ酸(一部の野菜や豆に含まれます)とフィチン酸(全粒穀物に含まれます)は、カルシウムの吸収を低下させます。さまざまな食品を食べている人はこれらの要因を気にする必要はありません。これらは吸収量を考慮して推奨されるカルシウム摂取量に含まれます。
また、さまざまな要因が、尿中、便中および汗へのカルシウム排泄量に影響を及ぼします。これには、アルコール含有飲料、カフェイン含有飲料、他の栄養素(蛋白、ナトリウム、カリウム、およびリン)の摂取などが含まれます。たいていの人の場合、これらの要因はカルシウムの状態にほとんど影響を及ぼしません。
充分にカルシウムを摂らなかったらどうなりますか?
カルシウムの摂取量が十分でなくても短期的には目立った症状は現れません。その理由は、骨からカルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度が維持されるためです。しかし、長期的には、カルシムの摂取量が推奨摂取量を下回っていると、骨量低下(骨減少症)の発現、骨粗鬆症および骨折のリスク増大など、健康上の問題が生じます。
重篤なカルシウム欠乏症の症状は、手指のしびれやうずき、けいれん、適切に対処しなければ死に至ることのある心拍リズムの異常などです。これらの症状は、ほとんどの場合、重大な健康問題を抱えている人や特定の治療を受けている人に現れます。
カルシウムが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
カルシウムが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。以下は、研究成果の例です。
- 骨の健康と骨粗鬆症
- 骨は、30歳ごろまでに強度およびカルシウム量がピークとなるように、小児期および思春期を通して大量のカルシウムおよびビタミンDを必要とします。その後、骨のカルシウム量はゆっくりと減少しますが、成人期を通して推奨摂取量のカルシウムをとり、体重負荷運動(ウォーキングやランニングを含みます)など健康で活動的な生活習慣を送ることで骨量減少量が少なくなります。骨粗鬆症は、骨が穴だらけでもろくなり、骨折しやすくなる骨の病気で、高齢者(特に女性)に発現します。米国では50歳以上の1000万人以上の成人において、骨粗鬆症が深刻な公衆衛生上の問題となっています。生涯を通して骨を健康な状態に保つためには、十分なカルシウムとビタミンDを摂取し定期的に運動することが極めて重要です。
- 心血管障害
- カルシウムが心血管障害のリスクに影響を及ぼすかどうかは明らかになっていません。いくつかの研究では、十分な量のカルシウムを摂取すれば心疾患や脳卒中を予防できる可能性があることが示されています。一方、他の研究では、大量のカルシウムを特にサプリメントから摂取した場合、心疾患のリスクが増大する可能性があることが示されています。この分野については更なる研究が必要とされます。
- 高血圧
- いくつかの研究では、推奨摂取量のカルシウムをとれば高血圧を発症するリスクを低下させることができることが示されています。特に、1件の大規模試験では、無脂肪および低脂肪の乳製品、野菜、および果物を多く含む食事をとると血圧が低下することが明らかにされました。
- がん
- ある研究では、カルシウムサプリメントまたはカルシウムに富んだ食事をとると、結腸直腸癌が発現するリスクが低下するかどうか、あるいは前立腺がんのリスクが増大するかどうかについて検討されました。現時点では、研究から明確な回答は得られていません。がんが何年もかけて発現することを考慮すれば、長期試験が必要とされます。
- 腎臓結石
- たいていの場合、腎臓結石にはシュウ酸カルシウムが大量に含まれています。いくつかの研究によると、サプリメントからカルシウムを大量に摂取すると、特に高齢者では腎臓結石のリスクが高まることが示されています。しかし、食品からカルシウムを摂取する分には腎臓結石が発現することはないようです。ほとんどの場合、他の要因(不十分な水分補給など)が腎臓結石のリスクに大きな影響を与えているものと考えられます。
- 体重減少
- いくつかの研究では、大量のカルシウムを摂取すると時間の経過とともに体重が減少するか、体重増加に歯止めがかかることが示されていますが、ほとんどの研究では、食品またはサプリメントからカルシウムを摂取しても、体重および体脂肪量への影響は、たとえあったとしてもわずかであることが示されています。
カルシウムが害を及ぼす可能性はないのですか?
カルシウムを過剰に摂取すると便秘になります。また、鉄や亜鉛を吸収する身体の能力が妨げられることもありますが、この影響は十分に確立されていません。成人では、食品ではなくサプリメントからカルシウムを過剰に摂取すると、腎臓結石のリスクが増大することがあります。いくつかの研究では、カルシウム摂取量が多いと前立腺がんおよび心疾患のリスクが増大する可能性があると示されていますが、このような関連性を理解するには更なる研究が必要とされます。
カルシウムの安全な上限値は下表の通りです。ほとんどの場合、上限を超えるカルシウムは食品のみからの摂取ではありません。過剰な摂取は通常、カルシウムサプリメントの摂取によります。調査によると、米国では一部の高齢女性において、上限摂取量よりもやや多いカルシウムを摂取していていることがわかりました。その理由は、この年代の女性ではカルシウムサプリメントが一般的に用いられているからです。
ライフステージ | 安全な上限値 |
---|---|
生後6カ月 | 1,000 mg |
幼児7-12カ月 | 1,500 mg |
小児1-8歳 | 2,500 mg |
小児9-18歳 | 3,000 mg |
成人19-50歳 | 2,500 mg |
成人51歳以上 | 2,000 mg |
10代の妊婦および授乳婦 | 3,000 mg |
成人の妊婦および授乳婦 | 2,500 mg |
知っておくべきカルシウムの相互作用はありますか?
カルシウムサプリメントは、服用している特定の医薬品と相互に作用したり、効果を妨げたりすることがあります。また医薬品によっては体内のカルシウムレベルを増減するものもあります。その例は以下の通りです:
- カルシウムは以下の医薬品と一緒に摂取するとその吸収を低下させることがあります:
- ビスフォスフォネート(骨粗鬆症の治療薬)
- フルオロキノロン系およびテトラサイクリン系の抗生物質
- レボチロキシン(甲状腺機能低下の治療薬)
- フェニトイン(抗けいれん薬)
- チルドロン酸二ナトリウム(パジェット病の治療薬)
- 利尿剤はその作用において異なります。チアジド系利尿剤(Diuril®、Lozol®など)は腎臓によるカルシウム排泄量を低下させ、その結果、血中カルシウム濃度を極めて高値まで上昇させます。しかし、ループ利尿剤(Lasix®、Bumex®など)は、カルシウム排泄量を増加させ、それによって血中カルシウム濃度を低下させます。
- アルミニウムまたはマグネシウムを含む制酸薬は、尿中カルシウム排泄量を増加させます。
- 鉱油や刺激性下剤はカルシウムの吸収を低下させます。
- グルココルチコイド(プレドニゾンなど)は、連続して数ヶ月間使用すると、カルシウム枯渇を引き起こし、結果として骨粗鬆症になります。
あなたが服用しているすべてのサプリメントおよび医薬品について、担当の医師、薬剤師、その他の医療スタッフに話してください。利用しているサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こす可能性はないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害する可能性がないのかについて教えてくれるでしょう。
カルシウムに関する詳しい情報を得たい時は?
- カルシウムに関する一般的な情報:
- カルシウム含有食品についての詳細な情報:
- サプリメント購入に関するアドバイス:
- 政府の食事ガイダンスシステムに関する情報:
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ダイエタリーサプリメント室が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。サプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善かについて尋ねたい場合は、医療スタッフ(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。この文書内で言及している個別の商品名は、その製品を推奨しているものではありません。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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