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ホメオパシー
Homeopathy

(注)日本学術会議(平成22年8月24日)において、「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されている」との会長談話が出されている。

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2022年11月

要点は?

ホメオパシーの有効性についてわかっていることは?

  • ホメオパシーが特定の健康状態に有効な治療法であることを裏付けるエビデンス(科学的根拠)はほとんどありません。

ホメオパシーの安全性についてわかっていることは?

  • ホメオパシーとして表示する製品の中には、相当量の活性成分を含んでいるものがあるかもしれず、その場合、副作用や薬物相互作用を引き起こす可能性があります。

ホメオパシーとは?

ホメオパシーは、ホメオパシー医学とも呼ばれ、200年以上前にドイツで開発された医学体系です。ホメオパシーは、2つの型破りな理論を基にしています。

  • 一つは「類似物をもって類似症は治癒される」であり、健康な人に同じような症状が出る物質を使うと病気が治るという考え方です。
  • もう一つは「最小投与量の法則」であり、薬物の量が少なければ少ないほど効果が大きいという考え方です。ホメオパシー製品の多くは、元の物質の分子が残らないほど希釈されています。

ホメオパシー製品には、植物(赤タマネギ、アルニカ[山岳地帯の薬草]、ツタウルシ、ベラドンナ[有毒なナス科の植物]、イラクサ)、鉱物(ヒ素など)、動物(蜂を丸ごと砕いたものなど)を利用したものがあります。ホメオパシー製品は、舌の下に置く砂糖ペレット(小さく球形に固められたもの)として作られることが多いですが、軟膏、ゲル、ドロップ(滴下剤)、クリーム、錠剤など他の形状のものもあるかもしれません。治療は「個別化」、つまり一人ひとりに合わせて行われます。同じ症状のある人たちが、異なる治療を受けることはよくあります。ホメオパシーは、個人に治療法を割り当てるために、異なる診断システムを使用し、従来の医学とは異なる徴候や症状の臨床パターンを認識します。

米国での使用状況

2012年に行われた、米国人による補完療法の利用に関する広範囲な調査を含む米国国民健康調査(National Health Interview Survey:NHIS)によると、推定500万人の成人と100万人の子供がその前年にホメオパシーを利用していました。また、2012年の調査では、1.8%の子供がホメオパシーを利用していましたが、ホメオパシーの施術者を受診した子供はわずか0.2%に過ぎなかったことが報告されています。この調査のデータを2016年に解析したところ、ホメオパシー製品を利用したほとんどの成人が、風邪や筋骨格痛に対し自己処方していたことが示唆されました。

2016年に米国連邦取引委員会(U.S. Federal Trade Commission:FTC)は、市販のホメオパシー薬の有効性と安全性の表示について、同様の表示をする他の製品と同じ基準を設けることを発表しました。さらに、製品が特定の症状を治療できるという主張を含む健康関連の主張については、FTCが要求する十分な信頼できるエビデンスを企業が備えておかなければならないとしています。

2017年12月、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、ホメオパシー製品に対するリスク(危険)に基づく新たな施行アプローチを提案しました。提案されたアプローチでは、リスク(危険)の可能性が最も高い下記の製品に対して、より注意深く監視することが求められることになります。

  • 安全性の懸念が報告されている製品
  • 経口摂取や皮膚に塗布できない製品
  • 身体の弱い人向けの製品
  • 品質、濃度、純度などの法的基準を満たしていない製品
  • 重篤なおよび/または生命を脅かす疾患や病態の予防または治療のために使用することを意図した製品

科学的観点から見たホメオパシーの有効性

オーストラリア政府の国立保健医療研究評議会(National Health and Medical Research Council)が2015年に行ったエビデンスの総合的評価では、ホメオパシーがいかなる健康状態にも有効であるという信頼できるエビデンスはないと結論づけました。ただし、エビデンスの評価に含まれた研究は、いくつかの厳格な基準(サンプルサイズが参加者150例以上であること、方法論的品質の評価が最高であることなど)を満たす必要があったことに留意することが重要です。今回の評価では、176件の個別研究を含む合計57件のシステマティックレビューが対象となりました。現在、オーストラリア政府による新たなエビデンスレビューが進行中です。

ホメオパシーは、物議を醸しているテーマです。ホメオパシー理論の基礎となる重要な概念の多くは、私たちが理解している基本的な科学的概念と一致していません。例えば、ホメオパシー製剤は、「活性成分」とされる物質が測定不能になるほど希釈されていることがあり、そのような製品の厳格な調査には大きな課題があります。しかし、最近の研究では、将来的にこれらの製剤を特徴づけることができるかどうかを判断するために、これらの製剤の物理的属性の検討が始まっています。

■ ホメオパシーによる免疫付与(予防接種)を支持するエビデンスはありません。

特定のホメオパシー製品(「ノソード」または「ホメオパシー免疫付与」と呼ばれる)は、従来の予防接種の代替としてプロモーション(宣伝・販売促進)されていますが、米国疾病対策センター(U.S. Centers for Disease Control and Prevention)は、そのような主張を裏付ける信頼のおけるエビデンスはないとしています。米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、予防接種/ワクチン接種に関して、米国疾病対策予防センターの推奨事項を支持しています。ワクチンのさらなる情報については、「https://www.vaccines.gov/」(英語サイト)をご覧ください。

科学的観点から見たホメオパシーの安全性および副作用

  • 多くのホメオパシー製品は高度に希釈されていますが、ホメオパシーとして販売・表示されている製品の中には、そうでないものもあるかもしれません。これらの製品には相当量の活性成分が含まれている可能性があり、副作用や薬物相互作用を引き起こすかもしれません。この種のホメオパシー製品において健康への悪影響が報告されています。
  • 2012年の症例報告および症例集積のシステマティックレビューでは、特定のホメオパシー製品(水銀や鉄などの重金属を含み、高度に希釈していない製品など)を使用したり、有用な従来の医療の代わりに効果のないホメオパシー治療を用いたりすると、有害作用を引き起こすことがあり、中には重篤となりうると結論づけました。
  • 液体のホメオパシー製品にはアルコールが含まれているかもしれません。FDAは、従来の医薬品よりも高いレベルのアルコール含有を認めています。
  • ホメオパシーの施術者は、患者の中には「ホメオパシー・アグラベーション」(ホメオパシーの処方を受けた後、既存の症状が一時的に悪化すること)が起こることを想定しています。研究者らは、臨床研究でこのような反応に対するエビデンスをほとんど得ていません。ただし、ホメオパシー・アグラベーションそのものに関する研究自体がほとんどありません。症状の変化については、常に今かかっている医療機関に相談してください。
  • FDAは、ホメオパシーと表示されたさまざまな製品について、消費者に警告しています。例えば、2017年には、ホメオパシー製品であるteething tablets (歯の生え始めの不快感を抑える錠剤)の中には、有毒物質のベラドンナが過剰に含まれているものがあることを消費者に警告し、2015年には、ホメオパシーと表示された市販の喘息製品は、安全性と有効性についてFDAの評価を受けていないため、信頼しないようにと消費者に警告しました。
ホメオパシー製品の規制

ホメオパシー製品は、米国連邦食品 ・医薬品・化粧品法 (Food, Drug, and Cosmetic Act)により医薬品として規制されており、他の医薬品と同様に、承認、粗悪品、不当表示に関する要件が課せられています。現在、FDAにより承認されたホメオパシー製品はありません。

1988年、FDAは規制方針ガイド(Compliance Policy Guide、CPG)400.400を発行し、「ホメオパシー薬を販売できる条件」と題して、FDAの執行方針を説明しました。2019年、FDAはCPG400.400を撤回し、パブリックコメント(意見公募)のための改訂版ガイダンス案を公表しました。改訂されたガイダンス案では、FDAの承認を得ずに販売されたホメオパシー製品に対して、リスクに応じた包括的な施行アプローチを提案しています。

資格

米国では、ホメオパシーの実践を規制する法律は、州ごとに異なります。通常、ホメオパシーを合法的に実践できるのは、医学または他の医療専門職の免許を持っている人です。一部の州では、免許を持たない専門家がホメオパシーを実践することができます。

アリゾナ州、コネチカット州、ネバダ州のみが、医学博士(M.D.学位保持者)とオステオパシー医学博士(D.O.学位保持者)のホメオパシーライセンス委員会を持つ州です。15の州では、ナチュロパシー(自然療法)医学委員会の試験にホメオパシーに関する項目が設けられています。

さらに考慮しなければならないこと

従来の治療の代わりにホメオパシーを利用する、または医療機関の受診を先延ばしにするためにホメオパシーを利用することはしないでください。

  • ホメオパシー製品の使用を検討している場合は、今かかっている医療機関※を受診する際にその製品を持参しましょう。その製品の副作用や薬物相互作用のリスクをもたらしえるかどうかを判断するために医療従事者が手助けしてくれるかもしれません。
  • 子供と成人に推奨される従来の予防接種スケジュールに従いましょう。ホメオパシー製品を従来の予防接種の代わりとして使用しないでください。
  • 妊娠中あるいは授乳中の女性、または子供へのホメオパシーの利用を検討している場合は、それぞれが今かかっている医療機関に相談しましょう。

自分の健康を守るために、自分が行っている補完療法について今かかっている医療機関※に相談しましょう。そうすることで、十分な情報を得た上で意思決定をすることができます。

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト: https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ Know the Science(科学を知ろう):

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)と米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、科学研究の基礎と用語を理解し、自分の健康について十分な情報を得た上で意思決定できるようにするためのツールを提供しています。「Know the Science(科学を知ろう)(英語サイト)」(eJIM内:一般向け医療関係者向け)は、インタラクティブなモジュール、クイズ、ビデオなどのさまざまな教材や、消費者が健康情報を理解できるように設計された連邦政府のリソースから有益なコンテンツへのリンクを提供しています。

Explaining How Research Works(研究のしくみを知る)(英語サイト) (NIH)
Know the Science: How To Make Sense of a Scientific Journal Article(科学を知ろう:科学雑誌の論文を理解する方法)(英語サイト)(eJIM内:一般向け医療関係者向け
Understanding Clinical Studies(臨床試験を理解する)(英語サイト) (NIH)

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「補完・統合医療に関する情報をPubMed® で検索する方法」をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

■ 米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)

FDAは食品、医薬品、ダイエタリーサプリメント、医療機器、および化粧品などの数多くの製品の安全性を監督します。ダイエタリーサプリメントについてのウェブページはこちらをご覧ください。

米国内の無料通話:1-888-463-6332
ウェブサイト:https://www.fda.gov(英語サイト)

■ 米国連邦公正取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)

FTCとは公正な取引を監督・監視する連邦政府の機関です。その主な業務内容は、広告の規制(処方箋医薬品と医療機器を除く)です。

米国内の無料通話:1-877-382-4357
ウェブサイト:htps://www.ftc.gov(英語サイト)

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:http://www.nih.gov/health-information/nih-clinical-research-trials-you(英語サイト)

■ 研究結果と資金配分に関するオンラインレポート(RePORTER : Research Portfolio Online Reporting Tools Expenditures & Results)

RePORTERは、連邦政府の助成によって研究機関で実施されている科学・医学研究プロジェクトに関する情報のデータベースです。

ウェブサイト:reporter.nih.gov(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov(英語サイト)

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参考文献

謝辞

NCCIHは、この出版物の2021年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。 Helene M. Langevin, M.D., and David Shurtleff, Ph.D., NCCIH

このサイトの情報は著作権で保護されておらず公開されています。複製も奨励されています。

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

更新日:2024年5月28日

監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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