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海外の情報

アーユルヴェーダ医学
Ayurvedic Medicine

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年1月

アーユルヴェーダ医学は安全ですか?

アーユルヴェーダ製剤の中には、有毒の可能性がある量の鉛、水銀、ヒ素が含まれている可能性があります。

アーユルヴェーダ医学は効果がありますか?

少数の研究では、アーユルヴェーダ製剤が変形性関節症の人の痛みを軽減し、機能を高め、2型糖尿病の症状の管理に有用であることを示唆していますが、これらの試験のほとんどは小規模であるか、よくデザインされていません。他の症状について、アーユルヴェーダの有用性に関する科学的根拠(エビデンス)はほとんどありません。

アーユルヴェーダ医学についてどれくらいわかっていますか?

アーユルヴェーダ医学とその構成要素が、多くの学術論文に記載されているものの、欧米の医学雑誌にはこれらの療法を用いた臨床試験はわずかしか発表されていません。およそアメリカの成人240,000人がアーユルヴェーダ医学を利用しています。

アーユルヴェーダ医学とは何ですか?

アーユルヴェーダとして知られている古代インドの医療システムは、心身の健康において「自然」でホリスティック(体系的)な方法を重要視する古代の文献を基にしています。アーユルヴェーダ医学は、世界で最も歴史のある医療体系の一つで、インドの伝統的医療システムの一つとして受け継がれています。アーユルヴェーダの治療は、自然の産生物(主に植物ですが、動物、金属、鉱物を含む場合があります)、食事療法、運動、生活習慣を組み合わせたものです。

科学的観点から見たアーユルヴェーダ医学の有効性

アーユルヴェーダによるアプローチが有用であることを示唆する良く設計された臨床試験やシステマティックレビューはごくわずかしかありません。

  • 2013年に行われた1件の臨床試験の結果では、変形性関節症の440例において、植物から抽出された2種類のアーユルヴェーダ製剤と、天然由来のグルコサミン硫酸塩と薬剤のセレコクシブとを比較しました。全4種類の対象物は、痛みを同様に軽減し、機能を改善しました。
  • 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が助成し2011年に行われた小規模のパイロット予備的研究(参加者43例)では、関節リウマチに対する通常医療とアーユルヴェーダ医学に、同様の効果が認められました。検討された従来の薬剤はメトトレキサートで、アーユルヴェーダ医学は40種類の薬草化合物でした。
  • 小規模で短期間の臨床試験結果(参加者男女89例)では、5種類の薬草から成るアーユルヴェーダの製剤が、2型糖尿病の人に有用である可能性が示唆されました。しかし、糖尿病に対するアーユルヴェーダ医学について、不適切な研究様式では、確固たる結論を導き出せない、と指摘する研究者もいました。
  • アーユルヴェーダ製剤でよく用いられるウコンは、潰瘍性大腸炎の症状に有用である可能性を示しましたが、この報告をした2件の研究は小規模で、一つは10例を対象とした2005年に発表された研究、もう一つは89例を対象とした2006年の研究でした。

科学的観点から見たアーユルヴェーダ医学の安全性

  • アーユルヴェーダ製剤の中には、金属類、鉱物類、宝石類があります。米国食品医薬品局は(U.S. Food and Drug Administration)、一部のアーユルヴェーダ製品は金属が含まれており、有害の可能性があると警告しています。
  • 2015年に発表されたアーユルヴェーダ製剤を利用する人々の調査では、40%が高い血中鉛濃度を示し、一部の人は高い血中水銀濃度が示されました。検査したサプリメントのおよそ4つに1つは高レベルの鉛が含まれており、ほぼ半数に高レベルの水銀が含まれていました。
  • 2015年に発表された米国疾病対策センター(Center for Disease Control)の罹患率および死亡率に関する週報の症例報告は、血中鉛濃度が高い64歳女性とインターネットで購入したアーユルヴェーダ製剤とを関連付けました。
  • まれであるものの、アーユルヴェーダ製品はヒ素中毒を引き起こす可能性があります。

NCCIHによる研究助成

NCCIHは下記の研究を助成しています。

  • アーユルヴェーダ医学との統合医療が、生活の質(Quality of Life:QOL)の向上にプラスの効果をもたらすことが認められた、乳がんサバイバーの初期の調査に基づき、 新しい研究は、この介入を人々の生活に取り入れやすくする方法の検討をします。提案されているアーユルヴェーダの介入には、食事、生活習慣、ヨガ、ツボ刺激が含まれます。
  • ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma:BME)の花の抽出物(エキス)が、変形性関節症の関節破壊を保護するメカニズムを研究しています(BMEはアーユルヴェーダで関節炎やその他の炎症性疾患に広く使用されています)。

さらに考慮しなければならないこと

  • 健康問題について、医療機関を受診することを後回しにするためにアーユルヴェーダ医学を用いてはいけません。
  • 健康問題がある場合は、アーユルヴェーダ製品を使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
  • アメリカにはアーユルヴェーダの施術や教育に関する重要な規制はなく、施術者が免許を持つことを義務付けている州はありません。補完療法の施術者の資格認定の詳細については、NCCIHファクトシートの資格認定、ライセンス、教育をご覧ください。
  • 妊娠中または授乳中の方は、アーユルヴェーダ製品の中に有害である製品が含まれている可能性があるため、必ずかかりつけの医療スタッフ(または子供のかかりつけの医療スタッフ)に相談しましょう。
  • あなたが行っている補完・統合医療についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

医療関係者向け情報

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト: nccih.nih.gov(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ PubMed®

国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、公表文献の情報および(ほとんどの場合)科学・医学雑誌の論文からの短い要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(PubMedで補完療法情報を探す)(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed(英語サイト)

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

国立衛生研究所(NIH)[米国]が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:www.nih.gov/health/clinicaltrials/(英語サイト)

■ Cochrane Database of Systematic Reviews(システマティックレビューのコクランデータベース)

システマティックレビューのコクランデータベースは、国際的非営利組織であるコクランライブラリー により作成された科学的根拠(エビデンス)に基づくレビューのコレクションです。これらのレビューは、医療介入に関する臨床試験の結果を要約しています。要約は無料です。レビュー全文は購読のみです。

ウェブサイト:www.cochranelibrary.com(link is external)(英語サイト)

■ Research Portfolio Online Reporting Tools Expenditures & Results (RePORTER)

RePORTERは、研究機関において、政府が助成し現在実施されている科学・医学研究プロジェクトに関する情報のデータベースです。

ウェブサイト:projectreporter.nih.gov/reporter.cfm(英語サイト)

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参考文献

その他の参考文献

  • Darvesh AS, Aggarwal BB, Bishayee A. Curcumin and liver cancer: a review. Current Pharmaceutical Biotechnology. 2012;13(1):218-228.
  • Patwardhan B. Bridging Ayurveda with evidence-based scientific approaches in medicine. EPMA Journal. 2014;5(1):19.
  • Pinto B, Goyal P, Flora SJ, et al. Chronic arsenic poisoning following Ayurvedic medication. Journal of Medical Toxicology. 2014;10(4):395-398.
  • Singh HK. Brain enhancing ingredients from Ayurvedic medicine: quintessential example of Bacopa monniera, a narrative review. Nutrients. 2013;5(2):478-497.

謝辞

NCCIHは、この出版物の2019年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。 Dr. David Shurtleff, Deputy Director of NCCIH, and Dr. Craig Hopp, Deputy Director of NCCIH’s Division of Extramural Research

このサイトの情報は著作権で保護されておらず公開されています。複製も奨励されています。

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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