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海外の情報

太極拳
Tai Chi

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終改訂年月(翻訳時):2010年8月

はじめに

太極拳は中国で生まれた武道の一つで、補完医療(CAM)における心身療法です。太極拳は「動く瞑想」とも呼ばれ、深く呼吸しながら身体をゆっくり、優しく、意識して動かします。本サイトでは、太極拳に関する概要説明と、その詳細情報を提供する専門機関を紹介します。

キーポイント

  • 多くの人々が健康増進のために太極拳を実践しています。
  • 太極拳の健康への影響の可能性、または太極拳が有用かもしれない慢性疾患や身体状況に、どのように作用するのか、より詳しく知るための研究が現在進行中である。
  • あなたが行っている補完療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

概要

太極拳は古代中国で生まれ、武道や護身術の一つとして始まりました。その後、健康増進も目的とした太極拳が実践されるようになりました。

太極拳の歴史については諸説ありますが、道教の僧、Chang San-Feng(張三豊)を起源とし、彼が動物の動きを模した一連の13の型を編み出したとする民間伝承が残っています。また、張三豊は瞑想や内力の概念を重視しました(一方、カンフーやテコンドーなど他の武道では外力を重視しています)。 意識を集中したり特別な姿勢を維持したりするなど型となるテクニックを用いて意識的に精神機能を働かせ、思考の流れを中断し、心身をリラックスさせるために行うものです。

"tai chi(太極拳)"という言葉は"tai chi chuan"の略であり、"internal martial art(内面の武道)"、"supreme ultimate fist(究極の拳)"など様々な形に翻訳されています。また、"taiji"や"taijiquan"と呼ばれることもあります。

太極拳は、中国の陰陽*(相反する体内の力)や気**(生命エネルギーや生命力)の概念を取り入れたものです。太極拳を実践することによって、健康的な陰陽バランスを保ち、気の流れを整えると言われています。

太極拳は個人でもグループでも実践されています。中国では、近くの公園で太極拳を行うのが一般的で、出社前の早朝によく見られます。様々な流派がありますが、すべての流派で、ゆっくりとリラックスした優雅な動作とともに次の動作に移ります。身体は常に動いており、姿勢も重要です。自然を思い起こす名称が付いた動作もあります(例:「虎を抱いて山へ帰る」)。太極拳を実践するには、気を散らす思考をやめて集中します。深くリラックスした呼吸を保ちながらも、意識は型となる動きに集中させます。

*陰陽:中医学において陰と陽の概念は、相反するが相補的な働きもある2つの力と表現されています。陰は冷たい、遅い、不活発などの人の特徴を表し、陽は熱い、興奮、活発などの特徴を表します。健康は陰陽のバランスによって得られ、疾患はアンバランスによって気の流れが遮断されることで生じるというのが主な理論です。
**qi:中医学において「気」とは、霊的・感情的・精神的・身体的な健康を調整する生命エネルギーや生命力であり、陰陽の相反する力によって影響を受けるとされています。

米国における太極拳の現状

2007年に行われた国民健康調査(米国民が利用している補完療法の包括的調査を含む)によると、推定230万人の米国成人が、過去12ヶ月間に太極拳を行っていました。

太極拳は下記の様々な健康関連の目的で実践されています。

  • 身体に負担の少ない運動、体重負荷運動、有酸素運動としての効用
  • 健康状態、筋力、筋肉の協調運動や柔軟性の向上
  • 身体バランスの強化と転倒リスクの低下(特に高齢者)
  • 変形性関節炎などに伴う痛みやこわばりの緩和
  • 睡眠の改善
  • 全般的な健康

太極拳研究の現状

太極拳の健康効果に関する科学的研究が進められています。高齢者を対象とした複数の研究があり、太極拳の効用として、転倒の予防および心血管機能の改善効果や全般的な健康増進効果について調査されています。2007年にNCCIHが助成した、水痘帯状疱疹ウイルス(帯状疱疹を引き起こすウイルス)に対する免疫反応の研究では、太極拳には高齢者の免疫システムを強化し全般的な健康を増進させる可能性が示唆されました。また、太極拳は、乳癌患者の身体機能の向上や、HIV感染者のQOLの向上についても研究されています。さらに、心血管疾患、高血圧、変形性関節炎など様々な疾患に対する太極拳の効果の可能性についても調べています。2008年には、NCCIHが助成し公表した研究の総括で、26件の研究のうち22件で太極拳が被験者の血圧を低下させたと報告されています。

一般的に太極拳の研究は小規模であることから、研究デザインに限界があり、その結論が限定されることがあります。複数の研究結果では、太極拳を有効な治療法として広く推奨する前に、さらなる研究が必要であることが示されています。

副作用とリスク

太極拳は比較的安全な運動ですが、下記の注意点があります。

  • 他の運動療法と同様に、やり過ぎると筋肉痛やねんざを起こすことがあります。
  • 食事の直後、疲労感が強い時、活動性感染症に罹患している時は、太極拳を控えたほうがよいでしょう。
  • 妊娠中や、ヘルニア、関節障害、腰痛、骨折、重度の骨粗しょう症がある場合は、太極拳の特定の型について、医療スタッフが修正したり控えたりするよう指示することがあります。

ビデオ:太極拳と気功~健康と幸せのために~ [14分9秒;5つのチャプター別に視聴可能]

このビデオは、健康増進のための運動として太極拳と気功を収録しています。これらの運動療法は一般的に安全とされており、健康的な生活習慣を促進するセルフケアとして実践されています。補完的な健康療法の実践を検討する場合は、総合的に安全な医療を受けられるよう、必ず医療スタッフに相談してください。

トレーニング、免許、証明書

太極拳の指導者に免許は必要なく、また、連邦政府や各州が太極拳の実施を規制することもありません。伝統的な太極拳は師範から教わります。指導者になるには、指導助手などの経験を積み師範免状を取得しなければなりません。現在では、トレーニングプログラムが多様化し、修了証書を授与したり、週末に研修会が開かれたりしています。指導者になるための標準的なトレーニングはありません。

太極拳の実施をお考えの方に

  • 通常医療の代わりに太極拳を利用する、または、病的疾患について医療機関を受診することを先送りにするために太極拳を利用しないでください。
  • 何か疾患がある場合やしばらく運動を中止していた場合は、太極拳を始める前に医療スタッフにご相談ください。
  • ビデオや書籍では、太極拳の動作を必ずしも正確かつ安全に習得できるとは限らないことに留意してください。
  • 太極拳の指導者を目指す場合、トレーニングや経験について各自で確認してください。
  • 関心のある健康状態と太極拳について、公表されている研究を探してみましょう。
  • あなたが行っている補完療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
    医療スタッフに補完療法について話す際のポイントについては、NCCIH’s Time to Talk campaignをご覧ください。

【補足】

NCCIH’s Time to Talk campaignの翻訳サイトは以下を参照してください

NCCIHによる研究助成

NCCIHでは下記に関して太極拳の影響を調べる研究を支援しています。

  • 閉経後女性の骨量の減少
  • キャンサーサバイバー
  • 高齢患者のうつ
  • 筋肉痛、倦怠感、不眠症などの線維筋痛の症状
  • 変形性膝関節症
  • 慢性心不全患者
  • 関節リウマチ

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト: nccih.nih.gov
E-mail:info@nccih.nih.gov

■ PubMed®

国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、公表文献の情報および(ほとんどの場合)科学・医学雑誌の論文からの短い要約が掲載されています。

ウェブサイト:www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed

■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)

国立衛生研究所(NIH)[米国]が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。

ウェブサイト:www.nih.gov/health/clinicaltrials/

■ Research Portfolio Online Reporting Tools Expenditures & Results (RePORTER)

RePORTERは、研究機関において、政府が助成し現在実施されている科学・医学研究プロジェクトに関する情報のデータベースです。

Web site: projectreporter.nih.gov/reporter.cfm

主な参考文献

国立補完統合衛生センター(NCCIH)[米国]は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたのプライマリーヘルスケア提供者(かかりつけ医等)の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについて意思決定をする場合は、必ずかかりつけの医療スタッフと相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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